マズイフード(ベトナムの食品メーカー)
| 業種 | 加工食品・冷蔵物流 |
|---|---|
| 本社所在地 | 第3区(資料により揺れ) |
| 設立年 | 1987年(別説として1991年) |
| 主な製品分野 | 即席麺、発酵調味料、惣菜 |
| 評判 | 『まずい』が話題化し、結果として広告効率が上がったとされる |
| 流通の特徴 | 夜間配達と小売直契約 |
| 関連組織 | 監査記録(との言及) |
| 主な言語圏 | ベトナム語、仏語の販促物が混在 |
は、で展開されたとされる食品メーカーである。味の評価をめぐっては不評が先行しつつも、独特の技術と流通網によって一時期に一定の支持を得たとされる[1]。なお、会社名の表記揺れが多く、と見なされる資料も存在する[2]。
概要[編集]
は、味の評判が悪いこと自体を商品価値として転換した企業であると説明されることが多い。とくに、店頭での試食評価が「まずい」という短い語に収束したため、のちに社内ではスローガン化されたとされる[3]。
一方で、同社の成長は「まずさ」だけでなく、保存設計と流通運用の細部に支えられていたとも指摘される。つまり、味が伸び悩む局面ほど、品質管理の記録が逆に精密になったためであるとされる[4]。
歴史[編集]
起源:『味見不能』から始まった原型[編集]
同社の創業は、実は食品とは無関係な技術者集団の余剰設備に遡ると語られることがある。資料上の起源としては、1970年代末に付属の試作キッチンで、香気成分を計測するための密閉容器が導入されたことが「マズイフード」の原型だとされる[5]。
当時の研究者は、容器内の温度勾配が香気評価を壊すことを発見したとされる。そこで彼らはあえて温度勾配を均一化せず、むしろ「人が味見できない条件」を作り、後から回収して品質を推定する手順を確立したとされる[6]。この推定手順こそが、後年の『まずい』判断を早期に大量へ転用できる仕組みになったとされる。
1987年、ホーチミン市で小規模に惣菜を出した際、試作品の初期バッチが全体的に不評だった。しかし、その不評が店頭で定型化し、聞き取り調査の集計が単純になることでロット管理が楽になったとされる。結果として「まずい」ことをデータ化する方向へ舵が切られた、という筋書きが採られている[7]。
発展:夜間配達と『3桁のまずさ』標準化[編集]
同社が広く知られる転機は、1998年の夜間配送契約であったとされる。契約先にはの関連窓口が名を連ねたとする資料があり、同社は午後10時から午前1時までの3時間に限定して納品する代わりに、値引き枠を確保したと説明される[8]。
また、同社の品質は数値で表現された。とくに「まずさ」を直接測るのではなく、官能評価を三段階に圧縮し、その結果を“3桁のコード”で記録する方式が採用されたとされる。社内文書では例として「027:塩味の到達遅延」「103:発酵香の立ち上がり不足」「372:油膜による喉越しの違和感」などが挙げられ、これがのちの広報用の語彙へ転用されたとされる[9]。
この方式は一見すると風変わりであるが、実際には冷蔵庫の温度逸脱を逆算する用途が主だったと指摘されている。つまり、味を当てに行くよりも、温度履歴から『まずい可能性』を先に予告するための仕組みであるとされる[10]。そのため、評判が悪化しても欠品が減り、逆に継続購入につながったという説明が残っている。
社会への波及:『笑える不味さ』が市場を作った[編集]
の製品が注目されたのは、味の改善よりも「ネタとして消費される」回路が整ったからだとされる。2004年、ホーチミン市の市場周辺で、屋台の主人が「これがマズイフードや!」と叫ぶ即興口上を始めたのが発端だとする伝承がある[11]。
この口上は、客にとっては挑戦状のような役割を持ち、買う理由が“味”から“イベント”へ移ったとされる。一方で、同社は炎上を恐れていたはずなのに、社内では「レビューの拒否率は広告費換算で毎月2.7%下がる」という奇妙な指標を作っていたと報告されている[12]。
ただしこの波及は好意ばかりではなく、学校給食への試験導入では自治体内で反対も出た。提案書では「1食あたりの異臭苦情は統計上0.31件/1000食で収まる」と書かれていたが、その“0.31”の意味をめぐって説明不足として批判が起きたとされる[13]。こうした摩擦が、さらに『まずいのに売れる』という評価の固定化へ寄与したという見方もある。
製品と技術[編集]
同社の代表的なジャンルは、即席麺のほか、発酵調味料、温め直し前提の惣菜であるとされる。とくに即席麺では、麺の茹で時間を“味ではなく戻り具合”で規定するという発想が語られている。社内規程では、乾麺の戻り率を「12分時点で56〜59%」に合わせるとされ、これを外れるロットは自動的に“まずい側”へ分類される仕組みになっていたと説明される[14]。
発酵調味料では、温度ではなく容器の材質の熱容量を基準にしたとされる。金属容器は熱容量が小さいため立ち上がりが速く、樹脂容器は遅い。この差が結果として官能評価へ影響すると考えられ、「まずさコード」に直結したという[15]。
なお、同社の宣伝では「まずいからこそ、追い調味の楽しさが生まれる」といった言い回しが使われたとされる。ここでいう追い調味は顧客任せのように見えるが、実際は定量の追加パックが同梱されていたとする証言がある。ホーチミン市の倉庫で確認されたとされる同梱率は、未開封のまま残っている比率から推定して“92.4%”とされるが、当時の記録は一部欠落しているという[16]。
批判と論争[編集]
批判の中心は、まず「不味さを売りにする」姿勢であった。消費者団体のは、味を改良する努力が後回しになっているのではないかと問題視したとされる[17]。
一方で、同社側の説明は一貫していたとされる。「まずさの予測は品質安全に直結する」という主張である。2009年の衛生指針改定の議論で、の担当者が『“味の不満”が早期に検知されるなら、廃棄が減る』という趣旨の発言をしたとされるが、当該発言の一次記録が示されていないため、真偽には揺れがある[18]。
また、業界内では“3桁のまずさ”の運用が過度に恣意的だという指摘も出た。ロットが「027」に寄りやすい月だけ、広告文が強くなるのではないかという疑惑が持ち上がり、社内の広報責任者が“数字を使えば反論が減る”と語ったとする伝聞が広まった[19]。この発言は後に“切り貼りされた社内メモ”ではないかとする反論もあり、論争は長引いたとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ Pham Van Dung「『味のデータ化』とホーチミン市場の購買行動」『ベトナム食品研究紀要』Vol.12, No.3, pp.41-58, 2003.
- ^ Nguyen Thi Lan「夜間配送が品質苦情を変える:サイゴン都市輸送局との協働事例」『交通・衛生ジャーナル』第5巻第2号, pp.101-119, 2006.
- ^ Le Minh Thanh「三段階官能評価コードによるロット推定」『食品計測学の進歩』Vol.8, No.1, pp.9-27, 2008.
- ^ 坂田由美子『官能評価の統計学—分類と圧縮の実務』海風書房, 2011.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton「Perception Compression in Food Quality Assurance」『Journal of Sensory Systems』Vol.21, No.4, pp.201-225, 2014.
- ^ Tran Quang Huy「発酵調味料の容器熱容量モデル」『アジア発酵技術年報』Vol.3, pp.77-96, 2005.
- ^ 田中良介『市場の言葉が商品を変える』東京学術出版, 2016.
- ^ Alexandre Dubois「Retail Humor and the Commodification of Taste Failure」『International Review of Food Marketing』Vol.9, No.2, pp.55-73, 2018.
- ^ Nguyen Van Khuong『まずさコード運用マニュアル(改訂版)』ホーチミン商工局出版部, 2010.
- ^ R. C. Hanley「食品事故報告の欠測処理:0.31件の解釈」『Public Health Data Notes』第2巻第1号, pp.13-18, 2007.
外部リンク
- Masui Food アーカイブ倉庫
- ホーチミン夜間物流資料室
- 官能評価コード研究会
- ベンタン市場の口上コレクション
- 食品衛生局 ウェブ監査ログ