ラズナイト
ラズナイト(らずないと)は、の都市伝説の一種である[1]。
概要[編集]
は、夜更けの路地裏で「呼びかけのないのに足音だけが増える」と言われる怪談として全国に広まった都市伝説である。
噂の内容では、目撃された人物が口にしないはずの言葉を後から録音データに残され、聞き返すほど恐怖が増すとも言われている。なお、地域によってはは「青い誤差」や「信号の亡霊」とも呼ばれるという話である。
同種の怪奇譚として、夜間の防犯カメラにだけ異常なノイズが映るという伝承も結びつけられ、妖怪というより「現象にとりつかれるタイプのお化け」とされることが多い。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は、架空の港湾都市(しののめこう、にあるという伝承)で見つかったとされる「歩行遅延報告書」に求められるとされる。
伝承では、1997年の冬、の物流倉庫付近で深夜に人が減るはずの時間帯なのに、センサー上では「平均歩行速度が0.6m/sから0.3m/sへ急降下した」と記録されたという。ところが翌朝、倉庫監視室の職員が確認すると、記録されていたのは人のログではなく、なぜか『呼吸のピッチ』だったと噂が立った。
この報告書をめぐって、の研修資料に「ラズ(=誤差の接頭語)+ナイト(夜)」という造語が紛れた、と言われており、これが名称の起源だとする説がある。ただし資料の現物は見つからないとされるため、正体は不明である。
流布の経緯[編集]
流布の経緯は、2004年の携帯電話向け掲示板「深夜の駅前帳」に投稿された「録音だけが先に鳴る」という目撃談に端を発したとされる。
投稿者は、家の外灯が消えてから30秒後に自分の部屋で着信音が鳴ったが、画面には着信履歴が残らなかったと述べた。ところが翌日、友人が持っていた携帯の録音フォルダに、本文とは無関係な『ラズナイト、ラズナイト』という音声が重なっていたという。
噂は、同掲示板の「三点検証」スレッドで急速に広まり、目撃談が増えるほど、恐怖が増すとされた。さらに、2008年にのローカル局が『夜のノイズは誰の声か』を特集し、ブームが加速したと語られている。なお、この番組で画面に一度だけ映った“薄い青の楕円”が、正体に関する手がかりだとされることがある。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
は人の姿で出没するというより、出没する場所の「速度感覚」をずらす存在として伝承されている。噂では、目撃された人物が「追い越されたのに転んでいない」と語り、言い伝えとして“先に曲がるはずの角が曲がらない”現象が繰り返される。
伝承の中心は「音の遅延」であるとされ、恐怖の核心は録音にだけ現れる点だという話である。たとえば、夜道を歩いていた学生が『助けて』と誰かの声を聞いたが、周囲には誰もいなかった。しかし帰宅してから録音を再生すると、声の主は自分の母語のアクセントで囁いていたと目撃談が語られた。
一方で、怪談を扱うウェブサイトでは、を“妖怪としての個体”ではなく、“言葉を後から呼び出す怪異”と分類する意見もある。噂の中では、名前を呼ばれた者ほど録音が増え、パニックが始まるとも言われている。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとして、路地裏版、駅前版、学校版の三系統があるとされる。路地裏版では、出没地点が「T字路から半径17.3m以内」と語られ、なぜか単位まで細かいと噂がある。
駅前版では、深夜の改札付近でICカード残高が減るのではなく、残高の表示が“別の時間”を指すようになるとされる。言い伝えでは、20時12分を示していたはずの画面が、気づいたときには翌日の03時07分に固定されていたという。
学校版は、学校の怪談の一種として語られることが多い。伝承では、内の架空の公立(架空校名)で、放課後の音楽室だけが『空気の拍』を遅らせると言われた。吹奏楽部の録音だけが波形を二重に映し、指揮者がその瞬間に倒れたという目撃談が広まったとされるが、出典は曖昧である。
また、さらに細かな派生として「ラズナイトは青信号に宿る」とする説や、「ラズナイトの出没はカメラのフレームレートで変わる」とする説があり、後者では24fpsだと見えるが30fpsだと消える、と言われている。
噂にみる「対処法」[編集]
噂の対処法は、恐怖を鎮めるというより“拡散を止める”方向で語られている。まず、声が聞こえたときに振り返らず、代わりに靴紐を結び直すことが推奨されたという話がある。
言い伝えでは、ラズナイトは「行動の前倒し」を好み、振り返りという“遅延の上書き”を与えると、次の出没が自分の部屋にまで波及する、とされる。全国に広まった注意喚起としては、録音データを即時共有しないこと、SNSにアップロードしないことが強調されている。
さらに、対処法として「音声ファイルの先頭1.2秒だけを切り取って再生する」という実験が流行したが、効果があったという目撃談と、逆に悪化したという反対談が混在している。要出典とされる現象だが、『切り取ったはずの区間が別の音声に残った』という報告があるとされる。
社会的影響[編集]
はマスメディアに取り上げられるたびに、夜間の防犯行動や録音文化に影響を与えたとされる。
たとえば、2009年、架空の行政機関が「深夜の音声共有の自粛」を含む注意文書を出し、コンビニの店内放送で“録音の拡散は怪異を呼ぶ”という比喩が流されたと噂がある。実際の公文書は確認されないとされる一方、貼り紙写真が掲示板に出回ったため、ブームはさらに加速した。
また、職場でも影響が出たと語られ、の一部では夜勤者の研修で「撮影よりも呼吸を止めるな」と教えられたとされる。噂の範囲ではあるが、怪談が労務の言葉に変換され、体調管理マニュアルの一節として“パニックの連鎖を断つ”が採用されたという話もある。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化・メディアでは、ホラー番組やネット短編に頻出する都市伝説として扱われてきた。特に、録音の波形を“キャラクター化”する演出が定番となり、青いノイズが笑い話のように引用されることもある。
2008年の特集番組以降、トークバラエティ内で『ラズナイト案件』『ラズナイト録』といった擬似用語が使われ、若者の間で“原因不明の違和感”を茶化す流れが生まれたとされる。
一方で、音響制作の界隈では、都市伝説をネタにするだけでは済まず、「夜間収録で発生するエイリアシング(ただし要出典)」が物語の根拠として語られ、マスメディアの後追い取材が増えたとも言われる。終盤になるほど“目撃談が増えるほど、正体が近づく”という演出が繰り返され、怪談にまつわる怪奇譚として様式化された。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山縣柚月『路地裏スペクトル録音学:都市伝説から読む恐怖の伝播』東雲書房, 2011.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton『Acoustic Delay as Folklore Mechanism: A Survey of Night-Time Witness Reports』Journal of Uncanny Media, Vol. 12, No. 3, pp. 41-63, 2013.
- ^ 鈴木慎吾『日本の怪談における「共有」の倫理』怪談文化研究会, 2012.
- ^ 高橋明里『防犯と噂のインターフェース:深夜アーカイブの社会学』東京夜間出版, 第2版, 2014.
- ^ 内山カナ『“青いノイズ”と呼ばれる現象の記述史』波形学叢書, 2010.
- ^ 佐伯礼二『都市伝説の統計学:ラズナイト到達率17.3m仮説』港湾理工出版, Vol. 3, No. 1, pp. 5-19, 2015.
- ^ 北川由梨『学校の怪談と校内録音:教育現場における恐怖の再生』学園怖書房, 2016.
- ^ Elias W. Hart『The Semiotics of Name-Calling in Urban Legends』Cambridge Lantern Press, 2018.
- ^ 神奈川夜間安全推進局『深夜音声データの取扱い(試案)』(架空)官報別冊, 2009.
- ^ 青柳守『ラズナイト・メディア論:ブーム形成と視聴率の相関』月刊怪談レビュー, 第7巻第4号, pp. 88-112, 2008.
外部リンク
- 深夜の駅前帳アーカイブ
- 東雲港怪異記録センター
- 港湾サテライトTV:夜のノイズ特集
- 都市伝説音響データベース
- 東雲学園・卒業生掲示板(怪談用)