ラップスタアDIS2次誰ディスろうかなッ!
| タイトル | ラップスタアDIS2次誰ディスろうかなッ! |
|---|---|
| ジャンル | 音楽バトル、学園、群像劇 |
| 作者 | 霧島ハジメ |
| 出版社 | 東雲出版 |
| 掲載誌 | 月刊ビートクロス |
| レーベル | ビートクロス・コミックス |
| 連載期間 | 2014年4月 - 2019年11月 |
| 巻数 | 全11巻 |
| 話数 | 全78話 |
『ラップスタアDIS2次誰ディスろうかなッ!』(らっぷすたーでぃすにじだれでぃすろうかなっ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ラップスタアDIS2次誰ディスろうかなッ!』は、の私立鏡坂高校を舞台に、即興ラップの対決文化を通じて生徒たちが自己表現と階級意識を競い合う構成のである。作中では「DIS2次」と呼ばれる二次選抜制度が物語の核となっており、相手を論破するのではなく、韻とリズムで人格を可視化するという独自のルールが採用されている。
連載開始当初は学園コメディとして読まれていたが、第3巻以降にの地下イベント「B-BOX 11.2」編が導入されると支持を拡大し、累計発行部数は2019年時点で約420万部を突破したとされる。なお、作中で用いられる「ディスろうかなッ!」という語尾は、読者投稿欄に集まった約1,800通の案から編集部が採用したものとされている[2]。
制作背景[編集]
作者のは、もともとのコピーライター出身で、2009年ごろにのクラブイベントで行われた即興対決を取材したことを契機に本作の構想を得たとされる。霧島は当初、ラップを題材にした青春群像劇を提案したが、編集会議で「二次試験の緊張感と相性がよい」と判断され、現在のような“DIS2次”という制度設定に再構成された。
制作初期には、主人公の口癖をめぐって編集部と作者の間で3か月にわたる協議があり、最終的に「誰をディスるか迷う」という作品名が先に決まったという逸話が残る。実際にはこの作品名が長すぎるため、初回掲載時の扉絵では『ラップスタアDIS2次』までしか入らず、残りの語尾は写植班が手作業で継ぎ足したと伝えられている[3]。
また、は本作のために実在の音楽監修チームとは別に「韻律編集室」を設置し、1話あたり平均14回の擬音差し替えを行ったという。特に第17話の「母音の連鎖崩壊」シーンは、単行本化の際に3ページ分が全面修正され、以後の学園ラップ漫画における定番演出の原型になったとされる。
あらすじ[編集]
入学編[編集]
主人公・は、鏡坂高校の特別進学クラスに転入したばかりの1年生である。彼は初日に校内放送で「DIS2次選抜」の存在を知り、放課後の体育館裏で先輩たちが即興ラップによる自己紹介を行っている現場に遭遇する。そこで、彼が何気なく口にした「誰をディスろうかなッ!」という一言が録音され、学内で半ば伝説化することになる。
この編では、リクがラップの技術よりも先に“相手の弱点を見抜く観察眼”を評価され、予備選抜に通過するまでが描かれる。なお、彼の初バトル相手はのであり、ミオが提出期限の遅いプリントを韻にされて沈黙した場面は、単行本1巻の帯に「教科書に載せたい敗北」として紹介された[4]。
地下大会編[編集]
第2部では、舞台がの地下会場「B-BOX 11.2」に移り、校外の強豪たちが参戦する。ここで登場するは、1秒あたり6.4音節を畳みかけるという異常な高速ラップで知られ、観客の拍手が拍数として扱われるという奇妙な演出が確立された。
一方でリクは、相手のリリックをそのまま鏡写しに返す「リフレクト韻」を会得し、試合ごとに勝敗が入れ替わる心理戦へ発展する。地下大会編の最終盤では、会場の照明が故障し、審査員が懐中電灯と手元のスコアカードだけで採点を続けた結果、得点が0点台から98点台まで乱高下する事件が起きたとされる。
文化祭編[編集]
文化祭編では、鏡坂高校全体が「韻の屋台村」と化し、各クラスが焼きそば、演劇、模擬店の代わりに即興バトルを出し物として競い合う。ここでの焦点は勝敗よりも、世代間の価値観の衝突に置かれている。
とりわけのが、ラップを「騒音ではなく礼儀作法の一種」と解釈し、校則第42条に「8小節以内での自己主張」を追加しようとするエピソードは有名である。この改定案は職員会議で否決されたが、なぜか翌年の生徒手帳には仮採用版が印刷されてしまい、訂正シールが8万枚出回ったという。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、音感よりも観察力に優れたタイプとして描かれる。韻の技術は平凡であるが、相手の癖や沈黙の間を利用した返しに長け、作中では「間をディスる男」と呼ばれる。
は保健委員長であり、理詰めのフロウを得意とする。彼女は衛生観念が強く、ステージ上でも消毒用アルコールを小道具に使うため、読者アンケートでは「一番真面目なのに一番怖い」と評された。
は地下大会編から登場するライバルで、常にイヤモニを装着している。彼の母親が元の構成作家であることから、司会回しまで自己演出に含める戦法が特徴である。
は学園側の規律を象徴する人物で、ラップを制度化しようとする異色の大人として機能する。終盤では、彼が学生時代に地方予選で敗退していた事実が明かされ、以後の“韻の教務主事”騒動につながっていく。
用語・世界観[編集]
作中の「DIS2次」とは、一次選抜を通過した者が、二次選抜で“誰をどうディスるか”の設計力を問われる制度を指す。単なる罵倒合戦ではなく、相手の長所を逆手に取って自己表現へ変換する点が特徴であり、評議会では「教育的バトル形式」として一部肯定された。
「韻圧値」は、言葉の密度と感情の強度を数値化した作中独自の指標で、最大値は100ではなく128とされる。これは作者が規格の影響を受けた結果らしいが、作中では説明されないまま進行するため、読者の間では要出典扱いの設定として知られている[5]。
また、鏡坂高校では校内放送が毎週金曜に「16小節時報」を流し、午前8時15分のチャイムに合わせて生徒が即興で返答する習慣がある。公式には安全指導の一環とされているが、実際には文化祭の余韻を引きずったまま制度化されたものであり、近隣住民からは「朝だけ妙に治安がよい」と評された。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、通常版のほかに各巻ごとの限定スリーブ版が存在する。第5巻では、初版のみ背表紙の並びが逆順になっていたため、書店員が整列作業に平均23分余計にかかったという。
なお、完全版BOXは2019年12月に発売され、全11巻に加えて設定資料集『DIS2次補遺ノート』、作者インタビュー小冊子、未使用フロウ集のCD-ROMが付属した。初版帯には「累計発行部数420万部突破」「テレビアニメ化決定」と大きく記され、当時のでは深夜0時の開店時に整理券が即日枯渇したと伝えられる[6]。
メディア展開[編集]
2017年にはテレビアニメ化され、ほかで放送された。アニメ版ではラップシーンの音響監修にの実在クラブスタッフが参加したとされるが、実際には声優の息継ぎ音を極端に強調した演出が話題となり、深夜帯としては異例の視聴率4.8%を記録した。
また、舞台化も行われ、の中劇場で上演された際には、観客参加型の“ディス合戦”が導入された。ここでは客席の拍手がスコアに反映される仕組みが採用され、終演後に会場の床へ残った紙吹雪の量が約3.2トンに達したという。
さらに、スマートフォン向けゲーム『DIS2次ポケット』も配信されたが、入力判定が極端に厳しく、ラップの精度よりも端末のマイク性能が勝敗を左右したため、レビュー欄では「音ゲーなのか口ゲーなのか判別不能」と評された。
反響・評価[編集]
本作は、学園漫画における対話表現の更新として高く評価された一方、罵倒表現の扱いをめぐって議論も生んだ。教育関係者の一部からは「自己肯定感を育む構造がある」と肯定されたが、PTA連絡協議会の一部では「昼食後に読むと語彙が荒れる」との指摘があった。
読者人気投票では、主人公のリクよりも相沢ミオが常に上位に入り、最終回直前の第74話アンケートではミオが1位、リクが3位、なぜか校長が2位となった。これは校長が第71話で披露した“無韻の説教”が中高生に刺さったためとされるが、編集部は理由を明言していない。
なお、2018年にはのライブハウスとのタイアップ企画が開催され、来場者の約17%が作品名を正しく書けなかったことから、会場限定グッズに「DIS2次誰ディス」の略称ロゴが追加された。この略称がSNSで独り歩きし、作品の認知度をさらに押し上げたとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島ハジメ『ラップと校則のあいだで』東雲出版、2018年.
- ^ 佐伯真琴「学園ラップ漫画における即興性の制度化」『月刊ビート研究』第12巻第3号、pp. 44-61, 2019.
- ^ A. Thornton, "Rhythm as Discipline in Contemporary Japanese Comics," East Asian Media Review, Vol. 8, pp. 112-139, 2020.
- ^ 三輪ユキ「『DIS2次』現象と若年層の自己表現」『コミック文化論集』第5巻第1号、pp. 7-29, 2017.
- ^ 平賀和人『韻律編集室の1000日』東雲出版、2020年.
- ^ M. Keller, "Battle Lyrics and School Space: A Case Study of Rap Manga," Journal of Popular Narrative, Vol. 14, No. 2, pp. 201-228, 2021.
- ^ 神崎玲子「校内放送の音楽化と規律形成」『教育社会学季報』第41号、pp. 88-103, 2018.
- ^ 霧島ハジメ『DIS2次補遺ノート』東雲出版、2019年.
- ^ 渡辺精一郎「中野区における地下文化の半公共化」『都市芸術史研究』第19巻第4号、pp. 155-176, 2020.
- ^ L. Moreno, "Who to Diss Next? The Semiotics of Contest Naming," Comics & Society, Vol. 6, pp. 1-24, 2019.
外部リンク
- 月刊ビートクロス公式アーカイブ
- 東雲出版作品案内
- 鏡坂高校同窓会資料室
- DIS2次研究会
- 韻律編集室便り