『ロコアート』
| タイトル | ロコアート |
|---|---|
| ジャンル | 美術冒険、学園、都市ファンタジー |
| 作者 | 蒼井真澄 |
| 出版社 | 白鳩書房 |
| 掲載誌 | 月刊クリプト |
| レーベル | クリプトコミックス |
| 連載期間 | 2007年4月号 - 2012年11月号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全86話 |
『ロコアート』(ろこあーと)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『ロコアート』は、の旧倉庫街を舞台に、絵筆の代わりに「局所座標」を操る少年少女たちが、都市そのものを再構成する競技「ローカル・アート」に挑む物語である。作中では、線画が現実のやに干渉するという独特の設定が採られており、連載当時は「図解漫画なのに読後感が妙に熱い」と評された[2]。
本作は、2000年代後半のにおける看板作品の一つであり、単行本は累計発行部数320万部を突破したとされる。特に第4巻収録の「下町アーチ反転事件」は、読者投稿欄で賛否が割れた一方、地元の商店街振興会が非公式に推奨図書として配布したという逸話が残る[3]。
制作背景[編集]
作者のは、もともとの美術予備校で構図講師を務めていた人物とされ、2004年頃にの再開発工事を見学した際、「街は人間の共同制作物である」という着想を得たと伝えられる。編集部の記録によれば、当初は『仮題・街の余白』として企画されていたが、担当編集のが「タイトルに発火性が足りない」として現行題へ変更したという[4]。
また、作品内の局所座標理論は、出身の作画スタッフが持ち込んだ製図テンプレートをもとに構築されたともいわれる。ただし、作者本人は後年の座談会で「理屈は半分以上が勘である」と述べており、初期設定資料の端に『※三角形はなるべく信じる』と書き込まれていたことが確認されている。なお、このメモの真偽は現在も要出典扱いである[5]。
あらすじ[編集]
序盤・下町試技編[編集]
の旧工場に暮らす中学生のは、壁に描いた線が一時的に現実の寸法へ干渉する異能を持つ。彼は、区内で密かに行われる局所座標競技「ローカル・アート」の存在を知り、老舗画材店の店主に導かれて競技会へ参加することになる。序盤は地味な修練回だが、遼が初めて描いた1.2メートルの仮橋が翌朝まで残ってしまうくだりが、本作の方向性を決定づけたとされる[6]。
中盤・三ノ輪迷路編[編集]
三ノ輪を舞台にした中盤では、敵対校が編み出した「面積詐称」技法が登場する。これは、狭い路地を遠近法で広く見せることで観客の認知を揺さぶるもので、作中では公式審査員が3秒で失神したと記録されている。遼たちは、地下の旧排水路を利用した即席アトリエで対抗策を磨き、ここでヒロインのが初めて「輪郭は嘘をつく」と発言し、名台詞として定着した。
終盤・湾岸再配置編[編集]
終盤では、臨海部に建設された巨大展示施設「ロコドーム」をめぐり、都市の地図そのものを書き換える最終競技が展開される。遼は、幼少期に失われたの渡し跡を復元するため、禁じ手とされる「全域下描き」を使用し、半径4.8キロにわたって風景を再配置する。最終話で描かれた朝焼けの俯瞰図は、単行本発売後にポスター化され、実際のの一部で観光案内に誤用されたという[要出典]。
登場人物[編集]
は、本作の主人公であり、寡黙だが測量だけは異様に正確な少年である。作中では「1ミリの誤差は友情の崩壊より重い」と言い切る場面があり、読者アンケートの常連人気1位を獲得した。
は、理論派のヒロインで、局所座標の理屈を暗唱できるほどの天才である。一方で、路面のひび割れを見ると無意識に修正線を引いてしまう癖があり、文化祭編では校庭の白線を3回塗り直し、教師陣から半ば伝説扱いされた。
は、の画材店「三ツ橋堂」の店主で、かつてローカル・アート全国大会の審査補助を務めたとされる。彼の持つ古い方眼紙は「絶対に折るな」と言い伝えられており、遼にとっては師匠であると同時に、世界観説明を最も長く担う人物でもある。
用語・世界観[編集]
ローカル・アートは、局所的な描線操作によって現実の空間認識へ干渉する架空競技である。作中では、、、、といった技法が体系化されており、各技法には公式認定の難度等級が存在する。
また、競技会はやで開催されることが多く、審査員は美術評論家、測量士、元鉄道設計士などで構成される。特に「線が引かれた後に空気が少しだけ静かになる」という設定は、連載中盤で導入されたもので、ファンの間では作品屈指の発明として知られている。なお、作中で用いられる「座標の匂い」という表現は、実在しないにもかかわらず妙に説得力があるとして話題になった[7]。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、全14巻構成である。第1巻から第6巻までは下町試技編、第7巻から第10巻までは三ノ輪迷路編、第11巻以降は湾岸再配置編として収録され、各巻末には作者による「線のあとがき」が付された。
また、限定版には「折りたたみ式ローカル定規」と「復元用トレーシングペーパー」が封入されたが、あまりに実用的すぎて書店員が棚に並べる際に困惑したという。第9巻の初版帯には「累計発行部数180万部突破」と記載されたが、その後の増刷で数字が320万部へ更新され、帯の差し替えが追いつかなかった店舗もあった。
メディア展開[編集]
2010年には制作によるテレビアニメ化が行われ、深夜帯ながら平均視聴率2.8%を記録したとされる。アニメ版では局所座標の演出にが多用され、特に第8話の「墨田川ねじれ橋」回は、作画班が橋の角度を毎カット微調整したため、放送終了後に「橋だけで一話作った」と評された。
ほかにも、、、携帯向けの位置情報ゲーム『ロコアート・リローデッド』が展開され、東京都内の商店街を巡るスタンプラリーが社会現象となった。なお、実写映画化企画も一時存在したが、ロコドームの再現費用が見積額12億4,000万円に達したため、中止されたとされる。
反響・評価[編集]
本作は、美術教育関係者から「構図の教育に使える」と評価される一方、地理教師からは「地図の理解を5%くらい壊す」と懸念された。特に圏の中高生の間では、ノートの余白に局所座標を書き込む模倣行為が流行し、学校によっては三角定規の持ち込み数を制限する措置が取られたという。
批評面では、序盤の完成度と終盤の壮大さの落差が高く評価された半面、「理論が進むほど作者の気分でルールが増える」との指摘もある。また、最終章で登場した『都市は未完成の版画である』というモノローグは、誌上で特集が組まれるほど引用されたが、その後、同じ号の読者投稿欄に「版画としては版が多すぎる」と送られた投書が小さく掲載された。
脚注[編集]
[1] 白鳩書房編集部『月刊クリプト総目録2007-2012』白鳩書房、2013年。
[2] 早乙女圭介「都市構図漫画における局所干渉表現」『現代漫画研究』Vol. 18, No. 2, pp. 41-58, 2011年。
[3] 墨田区商店街連合会『ロコアートと下町振興の記録』墨田資料叢書第7巻、2014年。
[4] 西園寺隆『編集者はタイトルを鍛える』白鳩書房、2012年。
[5] 東京藝術大学視覚文化研究室「蒼井真澄初期資料における注記群」『藝文年報』第22号, pp. 9-13, 2016年。
[6] 佐倉みのり「初期『ロコアート』に見る競技漫画の下地」『漫画構図学会誌』Vol. 9, No. 1, pp. 102-119, 2010年。
[7] Margaret H. Ellison, The Smell of Coordinates: A Study in Fictional Cartography, Routledge, 2015.
[8] 蒼井真澄『線のあとがき』クリプトコミックス、全14巻収録特典、2012年。
[9] 望月孝一「湾岸再配置編の都市観」『架空都市論集』第5巻第3号, pp. 77-96, 2013年。
[10] 白鳩書房広報室『アニメ「ロコアート」放送記録』白鳩書房、2011年。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 白鳩書房編集部『月刊クリプト総目録2007-2012』白鳩書房、2013年.
- ^ 早乙女圭介「都市構図漫画における局所干渉表現」『現代漫画研究』Vol. 18, No. 2, pp. 41-58, 2011年.
- ^ 墨田区商店街連合会『ロコアートと下町振興の記録』墨田資料叢書第7巻、2014年.
- ^ 西園寺隆『編集者はタイトルを鍛える』白鳩書房、2012年.
- ^ 東京藝術大学視覚文化研究室「蒼井真澄初期資料における注記群」『藝文年報』第22号, pp. 9-13, 2016年.
- ^ 佐倉みのり「初期『ロコアート』に見る競技漫画の下地」『漫画構図学会誌』Vol. 9, No. 1, pp. 102-119, 2010年.
- ^ Margaret H. Ellison, The Smell of Coordinates: A Study in Fictional Cartography, Routledge, 2015.
- ^ 望月孝一「湾岸再配置編の都市観」『架空都市論集』第5巻第3号, pp. 77-96, 2013年.
- ^ 白鳩書房広報室『アニメ「ロコアート」放送記録』白鳩書房、2011年.
- ^ 河原崎冬馬「線が先か街が先か」『美術と地図』Vol. 4, No. 1, pp. 5-22, 2012年.
外部リンク
- 白鳩書房 作品案内
- 月刊クリプト 公式アーカイブ
- ロコアート アニメ版制作記録
- 墨田区ローカル・アート振興資料館
- 蒼井真澄 仕事場インタビュー集