ロリペディア
| 種類 | 草創期の編集文化(印刷物→オンライン媒体) |
|---|---|
| 主な対象 | 学習用の体裁を持つ短文・図解コンテンツ |
| 成立時期 | 1998年ごろ |
| 普及地域 | 、を中心に全国へ |
| 運営形態 | 非営利の編集組合と有志ボランティア |
| 特徴 | ページ下部に“注釈を装う遊び”が多い |
| 関連概念 | ミニノート式索引、寸法暗号、逐語コラージュ |
| 批判点 | 出典の体裁のみを整える慣行が問題視された |
ロリペディアは、で発展したとされる「小さな(ロリサイズの)百科事典」文化を指す呼称である。1990年代末に学生サークルと印刷業者の協業によって普及し、のちにオンライン化されたとされる[1]。ただし、その実態は百科事典というより「都市伝説の整理術」を模した媒体であったとする指摘もある[2]。
概要[編集]
ロリペディアは、「百科事典(ペディア)」の形式を借りつつ、情報量を意図的に“縮小”して提示する媒体・編集作法の総称として語られることが多い。とくに、項目の見出しに対して本文が短く、代わりに挿絵や脚注ふうの段落が密集する点が特徴とされる。
成立の経緯は複数の系譜で説明されている。一つは、学習ノートの薄型化に合わせて「読む時間」を最適化する必要が生まれたという見方である。もう一つは、出版社の倉庫で余った小型製本紙を消費するため、編集者が“百科事典っぽさ”だけを残したという説である[3]。このため、ロリペディアは制度的な学術資料というより、知識を“飾りの鎧”で統治する試みだったと考えられている。
なお、オンライン化が進んだ後は、が「短文情報の信頼性確保」を掲げた指針を検討した時期と重なるともされるが、実際には検討の材料としてロリペディアの“体裁テクニック”が引用されたにとどまる、という異説もある[4]。このように、ロリペディアは真面目な顔でふざける技術の総称として認識されている。
歴史[編集]
前史:薄型製本と「注釈ゲーム」[編集]
ロリペディアの前史として、の印刷会社「栞文(しおりぶん)工房」が1993年に開始したとされる“8ミリ注釈規格”がしばしば挙げられる。この規格では、脚注欄が常に本文より短く、しかも必ず行間を0.8ミリ空けることが定められた。編集者はその余白を「読者の推理を促す余地」と呼び、注釈の中に小さな矛盾を混ぜる遊びが流行したとされる[5]。
この時期、学習系の雑誌が人気を得ていた一方で、学校の図書室では蔵書の貸出冊数が月平均2.7万冊に達するようになり、紙の補充速度が間に合わなくなったという。そこで、薄型で軽い“携帯百科”が求められ、ロリペディアの雛形が形成されたと推定されている。もっとも当時の協力者は「百科事典を作るのではなく、百科事典の形を借りて会話を作る」ことに熱心だったと語られる[6]。
また、の学生団体「港湾索引研究会」は、索引を“寸法暗号”として扱う方針を採用した。具体的には、項目の下線の長さを数字(例:12=1.2cm)に対応させ、裏面にだけ“読み取り表”を載せる方式である。ロリペディアの編集者はこの手法を「読ませない読書」と称し、短文でも知識を“所有した気分”にさせる技術として洗練した[7]。
成立:1998年の「ロリ版」騒動[編集]
ロリペディアの名称が広まる契機は、1998年にの「神田和紙会館」で開かれた“ミニ図解市”だとされる。このイベントで、参加者が「Lori(小型)Pedia(百科)」と書いたシールを配布し、そのシールを貼った小冊子だけが規定の会計台帳に記載されたという。記録係によれば、貼付率は初日で31.4%に達したが、2日目はなぜか18.9%に落ちたとされる[8]。
落ちた理由は、ロリペディアの編集方針が「短いほど正しい」という誤解を生んだためだと推測されている。実際には、項目ごとの“装丁上のルール”が重要視され、本文の内容は編集会議で後回しにされたこともあったという。その結果、ある項目では「原因:未確認」と明記しつつ、結論は断定調で終えるという構成が採用されたとされる[9]。この“断定の快感”が読者の支持を得た一方で、批判も同時に生じた。
さらに、オンライン化の前段階として、ロリペディアは郵送交換ネットワーク「折返便」によって加速した。会員が毎月100通ではなく、なぜか“ちょうど111通”を送ると相互照会が成立するという変則ルールがあったとされる。編集者はこれを“巡回編集の儀式”と呼んだが、外部から見ると単なる強制的な手続きに見えたとも述べられている[10]。
拡張:オンライン辞典と社会的誤読[編集]
2000年代に入り、ロリペディアはウェブ掲示板の投稿形式を取り込み、項目はHTMLの見出し階層で“縮小された百科”として再現された。特にの地域サーバ「OSAKA-MiniIndex」が、行間(line-height)を1.12に固定するテンプレートを配布したことで、ロリペディアらしさが標準化されたとされる。テンプレ配布後、アクセスログ上で「脚注ボタン」へのクリック率が平均6.02%から9.77%へ上昇したという報告もある[11]。
この時期、ロリペディアは“学術的”に見えるが実際は編集技法の遊びが中心であることが、ゆっくりと露呈した。たとえば、の研究会資料で用いられた「参考文献の体裁」についての話が、いつの間にかロリペディアの定型表現として流用されたという指摘がある。ただし、ロリペディア側は「体裁は情報の一部」と反論し、脚注のフォントサイズすら“出典の熱量”として扱うに至ったとされる[12]。
社会への影響としては、誤読を前提にしたコミュニケーションが普及したことが挙げられる。短文で断定し、注釈で逃げ、挿絵で納得させる。こうした様式が若年層の文章観を変え、のちに“情報の結論より、結論の形を先に作る”習慣を補強したと指摘されている。もっとも、ロリペディアが単純に悪影響だったわけではなく、情報探索を軽量化した側面もあったという点が、議論として残されている[13]。
編集技法[編集]
ロリペディアの典型的な項目は、見出し→1〜3文の説明→脚注の体裁を持つ“オチ”で構成される。説明文は一見すると定義や特徴が揃っているが、本文中の数字はしばしば“検証不能な計測”として置かれる。たとえば「視認性はA4換算で0.71倍」といった値が出てくるが、換算の前提は説明されないことが多い[14]。
また、項目の裏に「編集会議の決定ログ」が添付される場合があり、そこには“誤植を正確に誤植扱いする”という方針が書かれていたとされる。実際には、わざと同音異義の語を差し替え、読者が検索し直さざるを得ない状況を作ることで、結果的に学習が進むという主張があった。ロリペディアの編集者はこれを「再訪問学習」と呼んだ[15]。
用語の選定は、社会的に広く知られた単語ほど“薄く”扱われる傾向がある。つまり、歴史上の出来事よりも、出来事の“言い回し”が先に収集される。そうすることで、読者が自分の記憶と照合しやすくなり、内容の真偽を問う前に納得してしまう構造が生まれるとされた。なお、このような構造は一部の批評家から「知識の擬態」と呼ばれたが、ロリペディア側は“擬態こそ入門”だと反論した[16]。
批判と論争[編集]
ロリペディアは、出典の体裁が整っているにもかかわらず、肝心の根拠が薄いと批判されることがある。特に脚注で引用される文献名が実在しそうな形式を取りながら、出版社名や巻号の桁が微妙に不自然である点が問題視された[17]。このため、検証目的の読者から「見た目の学術性が学習を妨げる」との声が出た。
一方で、擬似学術を許容する文化として肯定する意見もあった。たとえば、の職員経験者である「伊達礼次郎」は、短文情報の整理は最初の一歩として価値があるとしつつ、「疑うための訓練として脚注を置いたのではないか」という見方を示したとされる[18]。この主張に対しては、「疑う訓練なら、もう少し誠実な疑いの設計が必要だ」と反論があった。
論争のハイライトは、2007年に発生した“11行差分事件”である。ロリペディアの人気項目が更新された際、本文は同一のように見えたが、脚注の位置だけが11行分ずれていた。結果として一部のリンクが誤爆し、読者が全く別の人物を引用先と誤認したという。事件後、編集者は「差分は読者への遊び」と説明したが、翌年には閲覧規約に“脚注の整合性監査”が追加された[19]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中律朗「ロリサイズ情報の受容過程:注釈規格からの接続」『情報文化研究』第12巻第3号, pp. 41-67, 2001.
- ^ Margaret A. Thornton「Form over Proof in Micro-Reference Media」『Journal of Speculative Literacy』Vol. 8 No. 2, pp. 113-138, 2005.
- ^ 鈴木眞琴『薄型製本と余白設計』栞文出版, 1999.
- ^ 伊達礼次郎「“再訪問学習”としての短文断定」『図書館実務』第24巻第1号, pp. 22-35, 2003.
- ^ K. Yamamoto「Indexing as Cipher: The 0.8mm Interval Convention」『Asian Documentation Review』Vol. 15 No. 4, pp. 201-226, 2006.
- ^ 北條克己『折返便—草創期ネットワークの制度設計』神田書房, 2002.
- ^ M. Alvarez「Pseudo-Citation and the Appearance of Scholarship」『International Journal of Editorial Rhetoric』Vol. 3 No. 1, pp. 9-31, 2008.
- ^ 佐藤青嵐「11行差分事件の社会的波及」『メディア監査年報』第7巻第2号, pp. 77-92, 2009.
- ^ 【誤った書名】“ロリペディアの真実を読む” 日本ロリ学会編, 『角川ミニ辞典叢書』第1巻, 2010.
- ^ 海老原和也「クリック率が示す脚注の快感:テンプレート固定の効果」『ウェブ計量行動論』第19巻第5号, pp. 301-329, 2012.
外部リンク
- ロリペディア保存庫
- ミニノート式索引アーカイブ
- 寸法暗号プレイヤー
- 脚注監査プロジェクト
- 折返便同窓会