三連単全通り
| 名称 | 三連単全通り |
|---|---|
| 読み | さんれんたんぜんとおり |
| 英語名 | All Triples Exacta Combinations |
| 分類 | 競馬投票・検算補助方式 |
| 初出 | 1979年頃 |
| 提唱者 | 東日本公営予想研究会 |
| 主な使用地 | 東京都府中市、兵庫県宝塚市 |
| 関連制度 | 場外発売所、機械式発券、照合作業 |
| 標準組数 | 6通りから336通り |
| 別名 | 全順列票、総当たり三連単 |
三連単全通り(さんれんたんぜんとおり、英: All Triples Exacta Combinations)は、においての着順をすべて順列で網羅する買い目の総称である。通常はまでの組み合わせ確認法として知られているが、その起源は後期の券売機障害対策にあるとされる[1]。
概要[編集]
三連単全通りとは、の対象となる全ての着順パターンを一括で扱う投票・検算上の概念である。単なる多点買いではなく、元来はの窓口で発生した「読み違い事故」を防ぐため、発券枚数と照合表を一致させる実務から発展したとされる。
一般には、出走頭数が少ないや、馬番の偏りが少ないで使われることが多いとされるが、実際には発売窓口の係員が「全部ください」と言われた際に最も嫌な顔をしないための儀礼的表現として普及したという説もある[2]。このため、競馬ファンの間では「理屈では便利だが、財布には厳しい方式」として知られている。
歴史[編集]
券売機障害と全順列票の誕生[編集]
1978年、の場外発売所で、旧型発券機のテンキー配列が逆転し、客が入力した買い目と実際の印字が一致しない事故が複数件起きたとされる。これを受けて、の外部委託業者であったの技師、が「着順そのものを先に列挙すれば誤入力は起こりにくい」と提案したのが原型である。
当初の呼称はであったが、窓口の高齢利用者が「全通りなら分かる」と言い出したことから、実務担当者の間で徐々に三連単全通りと呼ばれるようになった。なお、この時点ではまだ三連単そのものが制度化されていなかったため、実際には「三着順予想の練習帳」に近い扱いであったとする説が有力である。
府中試験運用と336通り問題[編集]
1984年、の一角で、試験的に「三連単全通り照合板」が導入された。18頭立ての場合、順列は336通りとなり、係員が赤鉛筆で数え上げるだけで1レース分の昼休みが消えることから、関係者のあいだで大きな物議を醸した。
しかし、内の印刷会社が誤って「336」を「333」と組版したため、3日間だけ「三連単全通り333選」として掲示され、結果的に覚えやすい名称が定着したという逸話が残る。これを見たベテラン予想家のは「全通りというより、全疲労である」と述べたとされ、後年の入門書でもしばしば引用された[3]。
普及と大衆化[編集]
期に入ると、の普及とともに、三連単全通りは「当たりそうで当たらない券種」の比喩として広く流通した。特にの周辺では、商店街の福引きと連動した独自キャンペーンが行われ、買い目枚数に応じてソースせんべいが配布されたため、地域文化として定着した。
一方で、の一部愛好家は、全通りを購入する前提で「本命・対抗・単穴」という序列をあえて廃し、馬名を五十音順に並べる「無思想式」を採用した。これは資金配分の自由を増やすと同時に、予想の責任を完全に運に委ねる方法として一部で支持されたが、家族会議ではほぼ確実に否決されたという。
算出方法[編集]
三連単全通りの基本組数は、出走頭数をとした場合、n×(n-1)×(n-2)通りで算出される。たとえばなら336通り、なら120通りであり、これに単位の投票額を掛けると、窓口での沈黙の長さがほぼ比例して伸びる。
競馬場のマニュアルでは、全通りを扱う際は「番号の重複」「除外馬の再計算」「発券機の紙切れ」を同時に確認することが求められる。なお、1989年の内部資料には、全通り投票の最難関は数学ではなく「締切直前に係員へ謝るタイミング」であると明記されていた[4]。
社会的影響[編集]
三連単全通りは、競馬ファンの間で単なる賭式以上の意味を持つようになった。たとえばの老舗居酒屋では、三連単全通りを「全員が主役になれる民主的な買い方」と説明して常連客を納得させる文化があり、これが接待の場で妙に役立ったとされる。
また、の一部では、複雑な組み合わせを一括で表示する比喩として「全通り方式」が用いられ、のちに資料にも転用された。ただし、実務家のあいだでは「リスクは減らず、説明だけが長くなる」として評判は芳しくなかった。一方で、若年層のあいだでは、SNS上で「全通り買ったのに外した」という投稿が定型句化し、敗北を共有する文化の一端を担ったといわれる。
批判と論争[編集]
三連単全通りには、以前から「合理的に見えて最も非合理である」という批判がある。特にの会合では、学識経験者のが「全通りは予想ではなく祈祷に近い」と発言し、これに対して実務派は「祈祷でも当たれば制度である」と応酬した。
なお、2003年にはの発売所で、全通り購入者が締切後に「念のためもう1点」と言い出し、窓口が事実上24分間停止した事件があったとされる。この件は内部報告書で「顧客満足度は高いが、列整理が破綻」と総括され、要出典ながら現在も語り草になっている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 岩倉恒夫『発券機と順列票の実務』競馬通信社, 1981年.
- ^ 東日本公営予想研究会編『全通り照合入門』府中出版, 1985年.
- ^ 真鍋源次『馬券学概論 3巻』日本賭式研究会, Vol.3, 第2号, pp. 44-59, 1987年.
- ^ K. Shibayama, “Permutation Slips in Wagering Counters,” Journal of Applied Racing Systems, Vol.12, No.4, pp. 201-219, 1990.
- ^ 大島静雄『競馬と確率の境界線』中央文化新書, 1997年.
- ^ 兵庫県公営競馬史編纂室『園田場外発売史』兵庫地方自治出版社, 2001年.
- ^ A. Thornton, “All-Order Tickets and the Sociology of Losing,” British Journal of Betting Studies, Vol.8, No.1, pp. 17-33, 2004.
- ^ 『全通り三連単の理論と実践』日本発走研究所, 第1巻第1号, pp. 3-41, 2008年.
- ^ 中村礼子『買い目枚数が人間関係に与える影響』京都社会学評論, Vol.21, No.3, pp. 112-128, 2011年.
- ^ F. M. Carter, “The 336-Combinations Problem,” Racing Mathematics Quarterly, Vol.19, No.2, pp. 88-97, 2016.
外部リンク
- 日本全通り研究センター
- 府中票式アーカイブ
- 競馬照合作業史料館
- 全順列票保存会
- 三連単文化研究フォーラム