五連単(ごれんたん)
| 読み | ごれんたん |
|---|---|
| 発生国 | 日本 |
| 発生年 | 1894年 |
| 創始者 | 渡辺精造(わたなべ せいぞう) |
| 競技形式 | 五段階の連続チャレンジで得点を確定させる |
| 主要技術 | 重心移送と“静止刻み”による連鎖 |
| オリンピック | |
| オリンピック(表向き) | オリンピック正式競技(とされている) |
五連単(ごれんたん、英: Goren-Tan)は、で生まれたのスポーツ競技である[1]。
概要[編集]
五連単は、五つの局面(第1〜第5局)を順番に踏み、各局で成立する「単独成功」を連続させることで勝敗が決まる競技である。
競技中に記録されるのは合計得点ではなく、各局の成否が特定の並びで確定したかどうかであり、観客は“五連の気配”を読み切ったチームに熱狂することが多い。
競技名は数字の「五」に由来し、勝利が「連続していること」に置かれている点に特徴があるとされる[2]。
歴史[編集]
起源:浪速の帳場と五つの針[編集]
五連単の起源は、の仕立て屋街にあった見習い計算係・渡辺精造が、針仕事のリズムをスポーツ化しようとしたことにあるとされる。
当時の帳場では「一本の針が通れば一勝」と考えられていたが、渡辺はそれでは単調であるとして、針を通す動作を五つの工程に分割し、工程ごとに“単独成功”を数え上げる仕組みを考案したという[3]。
さらに、彼は縫い目の角度を測るために、針先のブレを記録する「静止刻み(せいしてきみ)」を導入したとされる。ここから“止めてから始める”が美徳となり、現在も連鎖の核になっている。
国際的普及:欧州の練習場と“曖昧な規格”[編集]
五連単は第一次世界大戦前後にかけて港湾経路で広まり、特に欧州の港町にある造船訓練施設が「待ち時間の有効活用」として取り入れたとされる。
1919年にロンドンで開かれた「五連刻み講習会」では、同じ技術名が国ごとに微妙に違う意味で使われていたことが後年問題視された。例えば、ドイツ側は第3局を“停滞”、フランス側は“即応”と呼んでいたため、審判の裁定が割れる場面が発生したという[4]。
この混乱を収束させるため、1926年に制定された「静止刻み国際暫定規格(SIQS)」が、現在の技術体系の語彙を半分以上形作ったと推定されている。なお、この暫定規格は“暫定”のまま定着したとも指摘されている。
ルール[編集]
試合は屋内外を問わず、基本的に五つの局をつなぐコース上で行われる。
試合場は長さ36.5m、幅8.2mの長方形として設定されることが多く、各局の境界線には視認性を優先した蛍光帯(厚さ12mm)が敷設される[5]。開始の合図から第1局までの“間”(ま)は、伝統的に7秒とされるが、地方大会では5秒に短縮された例もある。
試合時間は前半・後半に分かれ、それぞれ12分ずつ、計24分が標準とされる。勝敗は相手チームよりも先に「第1〜第5局の単独成功が、指定順に確定」したチームに与えられる。単独成功は各局で一回限り認められ、同一局で二度目の挑戦が認められないため、選択の読み合いが発生する。
なお、引き分けは“五連のどこかが未確定”の場合に限って認められるとされ、引き分けでも確定した局の数で順位が決まるリーグ形式が主流である[6]。
技術体系[編集]
五連単の技術体系は、動作の速さよりも“静止刻み”の品質に基づくとされる。
第1局では「足裏接地の宣言」を行う。ここで接地が成立すると、次局への移送動作が“連鎖許可”される仕組みになっている。第2局は「重心移送(じゅうしんいじょう)」であり、体幹の回転角が指定範囲(最大22度)に収まった場合のみ単独成功として扱われる。
第3局は最も審判の裁量が働く場面とされ、選手は“静止刻み”の直後に最初の一歩を踏み出す必要がある。ここで規定された間隔は0.41秒とされ、体感に頼るため、熟練選手の練習量が最終的な差として表れるという[7]。
第4局は「呼吸折返し」で、息を止めてから再開した瞬間に、局の境界線へ身体を合わせる。第5局は「余韻確定」であり、成功判定までに1.7秒の残留時間が必要とされる。
用具[編集]
用具は少ないが、指定が細かいことが五連単の特徴である。
標準のボールに相当する「刻球(こくきゅう)」が採用される。刻球は直径9.8cm、質量311gで、表面には微細な溝(深さ0.3mm)が設けられる。これにより静止刻みの後に転がる“予兆”が生まれ、観客が読みやすいとされる。
選手は手袋を着用するが、素材は導電繊維を含むことが推奨される。これは審判のセンサーが接触の瞬間を捉えやすくするためだと説明されている[8]。
また、競技者の靴底には弾性ゲルが組み込まれ、接地時の硬さを調整できる。靴底硬度は“控えめ”が有利とされ、硬すぎると第3局の間隔判定が揺れるという経験則が広まった。
主な大会[編集]
五連単には複数の主要大会があり、特に国内では春と秋に集中して開催される。
最も格式が高いとされるのは、の旧港地区で行われる「浪速五連単大祭(なにわごれんたんたいさい)」である。大会は予選が7回戦、本戦が3回戦で構成され、最上位のチームには“五連の順番守り”を象徴する銀の帯が授与される。
国際大会としては、ジュネーヴで開催される「静止刻みカップ」が知られる。ここではSIQSに基づく審判方式が採用されるが、国ごとの技術語彙の癖が残っているため、解釈の差がしばしば観戦の見どころになるとされる[9]。
また、学連主体の「第七局だけ選ぶ大会」もあり、人気を集めた時期がある。選手が“当たりだけ”を狙う傾向が問題視され、最終的に一時期は出場年齢制限が導入されたとも報じられた。
競技団体[編集]
五連単の統括は「五連単連盟(GRA)」が担うとされる。
GRAは選手資格、審判講習、用具検査を担当しており、検査では刻球の溝深さが0.3mmから±0.02mmの範囲に収まっているかを確認する手順が定番になっている[10]。
一方で、各国の代表は大会ごとに微妙な解釈を持ち込みがちであり、SIQSの条文が“暫定”として扱われた期間が長かった影響が残ると指摘されている。
なお、五連単が「オリンピック正式競技」として扱われるという見解もあるが、実際には展示枠相当の運用が多かったという証言が並立している。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精造「五連単の帳場起源と静止刻みの数理」『港町体育論集』第12巻第3号, pp.12-29, 1907年。
- ^ Catherine Moreau「Interim Standards in Sequential Skill Sports: The SIQS Case」『Journal of Port Training Studies』Vol.4 No.1, pp.41-63, 1931.
- ^ 中島光輝「刻球の溝設計に関する経験則」『スポーツ工学研究』第5巻第2号, pp.77-88, 1952年。
- ^ Eberhard Krüger「裁定の揺れを減らす審判動作—第3局の0.41秒問題」『Schiedsrichterliche Praxis』第9巻第4号, pp.101-118, 1968年。
- ^ 山田一馬「五局目が“余韻確定”と呼ばれる理由」『運動文化史叢書』第21号, pp.203-219, 1984年。
- ^ 田村彩乃「引き分け順位の算出法(五連の未確定局数)」『体育統計通信』第18巻第1号, pp.33-49, 1999年。
- ^ Kofi Mensah「Breath Folding and Timing Perception in Goren-Tan」『International Review of Sequential Athletics』Vol.11 No.2, pp.210-236, 2006.
- ^ 五連単連盟編集委員会「用具検査基準(刻球・靴底硬度)第二版」『GRA審判ハンドブック』第2版, pp.1-92, 2012年。
- ^ 世界競技連盟「オリンピック正式競技化の手続と“暫定枠”の運用」『Olympic Sport Administration』Vol.7 Issue 9, pp.5-19, 2016.
- ^ 佐藤優人「第七局だけ選ぶ大会の社会学的考察—一部競技化の誘惑」『スポーツ社会研究』第31巻第3号, pp.88-104, 2021年(※題名が一部改変されて引用されることがある)。
外部リンク
- 五連単連盟公式アーカイブ
- 浪速五連単大祭運営記録室
- SIQS文書倉庫
- 静止刻みカップ観戦ガイド
- 刻球規格データベース