二人部屋爆発
| 名称 | 二人部屋爆発 |
|---|---|
| 分類 | 居住空間における圧力異常現象 |
| 初出 | 1968年、東京都内の学生寮 |
| 命名者 | 渡辺精一郎(寮設備研究会) |
| 主な発生環境 | 二人用居室、旧式換気扇、共同生活寮 |
| 研究分野 | 建築工学、社会心理学、災害文化論 |
| 俗称 | ツインルーム・フラッシュ |
| 関連法規 | 共同宿舎安全指導要綱 |
| 備考 | 一部資料では「第3種静圧破裂」とも呼ばれる |
二人部屋爆発(ふたりべやばくはつ、英: Twin-Room Detonation)は、やにおいて二人用の部屋の空気圧が急激に不均衡となり、扉・壁材・私物が同時に外側へ押し出される現象を指す用語である。元来はに内の学生寮で報告された実験事故に由来するとされ、のちにとの双方で語られるようになった[1]。
概要[編集]
二人部屋爆発は、二人で使用する居室において、会話の停止・換気不足・荷物の偏りが重なった際に、室内外の圧差が局所的に高まり、扉が跳ね開いたり、カーテンレールが外れたりする現象であるとされる。とくにからにかけての木造下宿や旧制寮で多発したと記録されている[2]。
学術的にはの小論として扱われたが、のちに「同室者間の緊張が物理現象として可視化されたもの」と解釈するの流れが生まれ、末期には大学の新入生向け安全講習の定番例となった。なお、の前身組織が1974年に行った調査では、年間約3,200件の「軽度二人部屋爆発未遂」が報告されたとされるが、集計方法には疑義がある[3]。
起源[編集]
起源は秋、の旧制寮「向丘共同館」に遡るとされる。同寮で換気改善のために導入された試験用ファンが、二人部屋の片側だけに風を送り続けた結果、机上の辞書、下宿代の封筒、湯飲みが壁面に吸い寄せられ、最終的に押し戸が内圧で外側へ開放されたという[4]。
この記録を残したのが、当時の講師であった渡辺精一郎である。渡辺は後年、現象の中心に「二人でいることによる空気の遠慮」があると述べ、物理的圧力と対人圧力を同じ図に重ねた手書き図版を学会に提出した。これが奇抜でありながら妙に説得力を持ったため、以後「二人部屋爆発」という語が半ば専門用語として定着したとされる[5]。
発展[編集]
寮設備研究会の時代[編集]
にはの若手分科会として寮設備研究会が設置され、二人部屋爆発の発生条件が「窓の開閉頻度」「夜食の匂い」「ラジオの音量」の三因子で整理された。報告書によれば、特に台における両者の同時消灯が爆発率を17%押し上げたという。
この時期には、木造寮の廊下で突然ドアが鳴ると「また爆発か」と学生が笑って受け止める慣習ができ、むしろ現象を一種の通過儀礼として楽しむ文化が形成された。もっとも、落下した蛍光灯で負傷した例もあり、要出典ながら危険性は無視できない。
自治体による規格化[編集]
、内の公立寄宿舎で相次いだ騒音苦情を受け、二人部屋の「安全爆圧基準」が地方条例に試験導入された。ここで初めて、部屋面積未満では「静穏型」、それ以上では「拡散型」と分類する手法が採られた。
この規格化は全国へ波及し、系の施設では扉の蝶番に意図的な遊びを持たせる改修が行われた。ただし、改修後に「爆発そのものは減ったが、同室者の関係が悪化した」とするアンケート結果もあり、技術的解決と生活感情の調整は別問題であることが示されたとされる。
分類[編集]
二人部屋爆発は、発生様式によりいくつかに分類されている。最も古い分類はの『共同宿舎気圧誌』に掲載されたもので、現在でも現場職員に参照されることがある[6]。
第一に、物理的爆発に近い「扉飛翔型」があり、旧式の木枠ドアが数十センチ跳ねる。第二に、空気より会話が先に破綻する「沈黙先行型」があり、こちらは実害は少ないが記録上は最も多い。第三に、洗濯物と教科書が同時に散乱する「生活破片型」である。まれに、豆腐鍋だけが無傷で廊下へ移動する「供物残存型」もあり、これは寮の守り神現象として扱われた[7]。
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脚注
- ^ 渡辺精一郎『共同宿舎における静圧異常の観察』日本建築学会出版局, 1972.
- ^ 佐伯光太郎「二人部屋爆発の社会学的研究」『集団生活研究』Vol.14, No.2, 1979, pp. 33-58.
- ^ M. A. Thornton, Twin-Room Pressure Events in Postwar Japan, University of Edinburgh Press, 1984.
- ^ 小林郁夫『寮生活と扉の物理学』東京工業出版会, 1988.
- ^ Y. Nakamura and H. Bell,
- ^ The Silent Room Rupture Hypothesis
- ^ Journal of Domestic Architecture
- ^ Vol. 22, Issue 4, 1992, pp. 201-219.
- ^ 高瀬菜穂子『共同体の換気と沈黙』朝日学術選書, 1995.
- ^ 藤堂義明「爆発強度指数の再検討」『京都社会工学紀要』第11巻第1号, 1991, pp. 7-26.
- ^ Christopher Wrenford, Roommate Shock and the Ethics of Airflow, Cambridge House Press, 2001.
- ^ 松浦健二『二人部屋爆発の民俗誌』みすず書房, 2008.
- ^ 植田真理子「寮の北東角における圧差と噂」『住環境文化学会誌』第6巻第3号, 2014, pp. 88-104.
外部リンク
- 共同宿舎安全研究センター
- 寮設備史アーカイブ
- 日本二人部屋学会
- 静圧異常データベース
- 向丘共同館記念資料室