今夜アナタと眠りたい
| タイトル | 今夜アナタと眠りたい |
|---|---|
| 画像 | Konya_Anata_to_Nemoritai_box.jpg |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 北米版ポスター。窓辺の時計が常に3分遅れて描かれている |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | ドリームカード |
| 開発元 | 月見電機ソフトウェア研究所 |
| 発売元 | 月見エンターテインメント |
| プロデューサー | 三枝 祐一 |
| ディレクター | 北条 みなと |
| デザイナー | 相沢 玲子 |
| プログラマー | 高瀬 慎吾 |
| 音楽 | 久我山 透 |
| シリーズ | 深夜恋愛戦記 |
| 発売日 | 1998年11月19日 |
| 対象年齢 | 15歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計184万本 |
| その他 | 日本ゲーム大賞1999優秀賞 |
『今夜アナタと眠りたい』(こんやアナタとねむりたい、英: Tonight, I Want to Sleep With You)は、にのから発売された用である。『』三部作の第1作目であり、通称は「眠りゲー」とされる[1]。
概要・概説[編集]
『今夜アナタと眠りたい』は、とを融合した作品であり、夜ごと変化するを舞台としている。プレイヤーは「眠りの調律師」と呼ばれる青年として操作する[2]。
本作は、就寝前の会話選択によって翌朝のステータスだけでなく、夢内で発生する地形、敵対勢力、さらには記憶の整合性まで変化する点が特徴とされた。キャッチコピーは「寝息の数だけ、恋は深くなる」であり、発売当時は深夜番組でのCM露出が異様に多かったことでも知られている。
なお、企画段階ではとして始まったが、試作版の段階で「攻撃するたびに眠気が増す」仕様が導入され、結果として現在の独特なへ変質したとされる[3]。この経緯は後年の開発者インタビューで半ば伝説化している。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、1日を「夕方」「就寝前」「夢内」「起床後」の4フェーズで管理する方式が採用されている。特に「就寝前」では、紅茶を飲むか、窓を開けるか、あるいは相手の枕を叩くかといった選択が翌夜の展開に直結する。
プレイヤーの主要パラメータは「眠気」「親密度」「寝返り耐性」「寝言整合率」の4種で、いずれかが極端に偏るとイベントが分岐する。とりわけ「寝言整合率」が17%を下回ると、NPCが会話中に一斉に関西弁へ変化する現象が確認されている。
戦闘[編集]
戦闘はであるが、一般的な攻撃・防御ではなく「まぶた閉じ」「寝返り」「夢の読み替え」などの指令を用いる。敵は「不眠監視官」「徹夜兵」「枕の裏側から来るもの」などで構成され、いずれもの治安維持局と敵対している。
ボス戦では、敵のHPが減るほど画面の色相が暖色へ寄る仕様があり、これを利用してプレイヤーが逆に眠くなりミスを誘発することがあった。攻略誌によれば、最終ボス「午前4時の時計塔」は倒すよりも「15分間見つめて気を失わない」方が難しいと評された。
アイテム[編集]
アイテムには「ぬるい麦茶」「合い鍵付きアイマスク」「二人ぶんの毛布」などが登場する。中でも「未送信の手紙」は、所持しているだけで特定キャラクターの夢に侵入できる特殊アイテムであり、発売後しばらくは中古市場で極端に高騰した。
また、隠し要素として、同じアイテムを3回連続で使うと「使用者の寝相」が記録される機能がある。これは当時の内部で「無駄に真面目すぎる」と評されたが、のちにファンコミュニティで最も愛された要素となった。
対戦モード[編集]
隠しモードとして「枕投げクラシック」が存在する。これは2人対戦で、直接的な攻撃ではなく、相手の睡眠導入率を先に100%へ到達させた方が勝利となる珍しいルールであった。
オンライン対応版では、対戦開始前に「おやすみ」の文面を3回連続で送信すると、相手側の画面が数秒ブラックアウトする現象があり、一部ではネットワーク上の礼儀作法として模倣された。
オフラインモード[編集]
オフラインモードには、主要シナリオとは別に「ひとりで眠る練習帳」が収録されている。これは実質的なチュートリアルであるが、終盤になると架空の心理士が登場し、プレイヤーに「眠る理由」を1ページずつ問うため、むしろ本編より精神的負荷が高いとされた。
このモードは地方の図書館などでも意外な人気を得たとされるが、利用統計の原本がの一支局でしか確認されておらず、要出典の代表例としてしばしば引用される。
ストーリー[編集]
物語は、主人公の青年・が、毎晩同じ夢の中で見知らぬ少女と出会うところから始まる。彼女は「今夜だけは、誰かと同じ枕で世界を保たねばならない」と語り、悠真はの各地区を巡りながら、消失しかけた夜の秩序を修復していく。
中盤では、夢の崩壊は恋愛感情の不足ではなく、都市全体で「独り寝税」が誤徴収されていたことが判明する。悠真はの地下にある「睡眠台帳室」へ潜入し、眠りの契約書を改ざんした官吏と対決する。この展開は当時のプレイヤーから「妙に行政手続きが細かい」と話題になった。
終盤、アネモの正体が、都市の記憶を保存するために作られた人工夢人格であると明かされる。彼女が毎夜消えていたのは、夜の最後に起床者の夢を回収する役目を負っていたためであり、エンディングでは「眠り続けるか、目覚めるか」をめぐる分岐が用意されている。なお、真エンディングの条件は非常に厳しく、夜間に外縁部の地名を3回以上正確に入力しないと到達できないとする説が有力である[4]。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
は、の睡眠調律局に勤める二十代半ばの技師である。寡黙であるが、枕の高さに関する発言だけは異常に長いことで知られる。プレイヤーの選択次第で、恋愛面よりも業務改善に情熱を注ぐ人物として育成される。
仲間[編集]
は本作のヒロインであり、金曜日だけ記憶が3%薄くなるという特性を持つ。は保健室勤務の看護師で、睡眠薬ではなく「安眠のための説教」を処方する。は枕職人の娘で、シリーズ一作目にあたる本作では唯一まともに寝相が良いキャラクターとされている。
敵[編集]
敵勢力は、、そして「眠れぬまま背後に立つ者」などで構成される。特にの幹部「オンドレイ・クラフ」は、敵でありながらプレイヤーに睡眠導入BGMを提供する矛盾した存在で、ファンからは「最も親切な悪役」と呼ばれた。
用語・世界観[編集]
作品の舞台であるは、現実世界のに隣接するという設定だが、地図上では毎年1メートルずつ海側へずれている。都市は「就寝許可区」「回想自由区」「寝返り禁止区」などに分かれ、区域ごとに夜の長さが微妙に異なる。
本作における「眠り」は単なる休息ではなく、都市インフラを維持するための公共資源である。市民は1晩あたり平均7.4回の寝返り義務を負うとされ、これを満たさない場合は翌朝のバス路線が1本減るという制度が導入されている。
また、「アナタ」という呼称は特定の恋人を指すのではなく、夢内で一時的に共有される人格座標を意味する専門用語である。制作側はこれを「関係性の上位互換」と説明したが、当時の公式ガイドブックには説明文が6行しかなく、読者の理解はむしろ深まらなかった。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
本作はの深夜開発ラインが、社内の仮眠室改善案をそのままゲーム化したことから生まれたとされる。初期案では「眠気を数値化する社内研修ソフト」であったが、企画会議の末に恋愛要素が追加され、結果的に異様に情緒のある作品となった。
制作は末に始まり、約23か月の開発期間を経て発売された。社内記録によれば、グラフィック担当者が月曜の会議で毎回寝不足を報告したことが、逆に睡眠表現の説得力を高めたという。
スタッフ[編集]
プロデューサーのは、当初「夜のゲームは朝まで遊ばれるべきでない」と発言し、開発陣を困惑させた人物である。ディレクターのは、セーブ画面にまで会話選択肢を入れる案を押し通したことで知られ、結果としてシリーズ全体の文法を決定づけた。
音楽のは、効果音に実在の時計塔の鐘を3種類混ぜ込んだとされるが、録音場所がの倉庫だったため、鐘の音よりもトラックのバックドアが閉まる音の方が目立っていたという逸話がある。
音楽[編集]
サウンドトラックは、就寝導入用の静かな曲調と、夢内戦闘で突然テンポが倍化する曲の落差で評価された。主題曲「おやすみの向こう側」は、発売後に合唱版、電子オルゴール版、さらには電車の駅メロ風アレンジまで制作された。
特に人気が高いのは「枕元の距離計」という曲で、イントロの12秒間に微妙な生活音が17種類も仕込まれている。ファンの間では、ヘッドホンではなくスピーカーで聴くと「同じ部屋に誰かいる気がする」とされ、都市伝説のように語られている。
他機種版・移植版[編集]
には版が発売され、会話ウィンドウの縦幅が14ピクセル縮小された。これにより一部イベントで告白文が画面外へはみ出す不具合が生じたが、後年の再配信版では「言い切れない恋愛表現」として残された。
の版では通信機能が追加され、離れた相手と「おやすみメール」を送受信できるようになった。さらにには相当サービスで配信され、当時の未成年プレイヤーが深夜2時以降に起動すると注意画面が現れるなど、妙に教育的な仕様が話題を呼んだ。
評価[編集]
発売初週の販売本数は約18万本で、最終的にを突破したとされる。とりわけ優秀賞を受賞したことで知名度が急上昇し、当時としては珍しい「眠ることを前提にした大作RPG」として雑誌の特集が組まれた。
一方で、ゲーム内の時間管理が厳密すぎるため、プレイヤーの実生活まで早寝早起きになるという報告が相次いだ。販売店の調査では、購入者の29%が「翌週の会議であくびが減った」と回答しており、教育効果のある娯楽として半ば行政資料に引用されたという話もある[5]。
関連作品[編集]
続編として、外伝として、廉価版付属の短編としてが制作された。いずれもの世界観を共有しており、特に外伝第2作は恋愛要素を完全に捨てての議事録再現に特化したため、コアな支持を得た。
また、漫画版、ドラマCD、実写舞台化、そしてテレビアニメ化を想定した企画書が存在したが、アニメ化は「夜の静けさを損なう」として没となったとされる。なお、2010年代後半に配信されたリマスター版は、シリーズ初のオンライン対応作品として紹介されたが、実際にはランキング機能しかネットに繋がっていなかった。
関連商品[編集]
攻略本『今夜アナタと眠りたい 公式睡眠導線ガイド』は、通常の攻略に加えて「寝つきの悪い読者向けの読書姿勢」まで掲載した異色の一冊である。書籍版『ネムリオ市民生活白書 1998年度』は、ゲーム設定資料のはずが、なぜか実在の自治体文書と見紛う体裁で刊行された。
そのほか、枕カバー、砂時計、未送信メール風メモ帳、そして「午前3時にならないと開かない」限定版アクリル時計などが販売された。中でも砂時計は、実用性よりも「逆さにするとED分岐が増える」と説明されたことで、コレクターの間で高値で取引された。
脚注[編集]
1. ^ 初版パッケージ裏面および翌月号の広告に基づく。
2. ^ 公式設定資料集では「睡眠調律師」と表記されるが、体験版では「夜間保守員」となっていた。
3. ^ 開発会議録第17回による。なお、同会議録は焼失したとされるが、要点メモのみが社内掲示板に残っている。
4. ^ 真エンディング条件については、攻略本と雑誌付録で記述が一致しない。
5. ^ の白書に引用されたという説があるが、確認できる一次資料は見つかっていない。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三枝祐一『今夜アナタと眠りたい 開発夜話』月見出版, 1999, pp. 14-39.
- ^ 北条みなと『夢内都市設計と恋愛導線』電脳文化社, 2000, pp. 81-106.
- ^ 久我山透「就寝前BGMにおける拍子の遅延」『ゲーム音響研究』Vol. 12, No. 3, 2001, pp. 41-58.
- ^ 相沢玲子『寝返りの美学』星灯書房, 1999, pp. 5-22.
- ^ M. R. Holloway,
- ^ M. R. Holloway『Night Economy and Affection Systems in Late-1990s RPGs』Linden Press, 2008, pp. 119-144.
- ^ 高瀬慎吾「セーブ画面に会話を置く方法」『月見電機技術報』第8巻第2号, 1998, pp. 3-17.
- ^ 鶴見一葉『睡眠台帳室の実務』港南行政資料刊行会, 2002, pp. 66-93.
- ^ Eleanor P. Vale,
- ^ Eleanor P. Vale,
外部リンク
- 月見エンターテインメント公式資料庫
- 深夜恋愛戦記アーカイブ
- ネムリオ観測委員会
- 睡眠RPG保存協会
- 枕投げ研究同人誌データベース