今日と明日の中間で
| タイトル | 今日と明日の中間で |
|---|---|
| 画像 | BTTM_title.png |
| ジャンル | 時間感応RPG(探索・会話・選択) |
| 対応機種 | ZX-Next |
| 開発元 | 雲路工房 |
| 発売元 | 暁光パブリッシング |
| プロデューサー | 蒼井 味方 |
| ディレクター | 戌亥 朔馬 |
| 音楽 | 都築 ひかり(虚無和音制作) |
| 発売日 / 対象年齢 / 売上本数 | 1989年11月3日 / CERO相当:全年齢 / 全世界累計138万本 |
『今日と明日の中間で』(英: Between Today and Tomorrow、略称: BTTM)は、[[1989年]][[11月3日]]に[[日本]]の[[雲路工房]]から発売された[[ZX-Next]]用[[コンピュータRPG]]。[[雲路暦]]シリーズの第1作目であり、時間感応型の冒険を扱う代表作として知られる[1]。
概要[編集]
『今日と明日の中間で』は、プレイヤーが「現在」と「未来」の境界帯である「中間相」に迷い込んだ旅人として操作し、通り過ぎたはずの出来事を“取り戻さない”まま折り返しを続けるロールプレイングゲームである[1]。
本作は雲路暦シリーズの第1作目にあたり、時間感応セーブ(後述)と、会話選択の“言い直しコスト”が特徴とされる。特に、選択肢を誤るほどゲーム内暦が1日ではなく0.7日ぶん進むという挙動が話題となり、発売前から熱狂的なファンと研究者の両方を生んだとされる[2]。
キャッチコピーは「“明日になる前に、今日を返せ。”」であり、当時の雑誌では誤植で「“明日になる前に、今日を飼え。”」と掲載された回もある。この誤植が逆に、ゲームのテーマである“所有ではなく手放し”の比喩としてファンの間で定着したという逸話も伝わる[3]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの特徴として、行動した瞬間の音(足音・紙の擦れ・鍵の鳴動)が、翌日のイベントに“微遅延”として反映される仕組みが採用されている。具体的には、会話画面で発した単語数が一定閾値(既定で512語)に近づくと、翌章の導入ムービーの長さが最大3.2秒伸びると説明されている[1]。
戦闘はハンティングアクションの要素を部分的に取り入れた方式となっている。敵は中間相の住人「季節票(きせつひょう)」で、HPの代わりに“未完了日数”を持つ。プレイヤーは武器で削るのではなく、状況を整えて敵の“未完了”を終わらせることで勝利となるとされる[2]。
アイテムは、道具箱に収納されるのではなく「昨日側メモリ」「今日側メモリ」の2領域で管理される。たとえば同じ薬草でも、今日側で調合すると“眠気”を引き起こすが、昨日側で調合すると“明晰”をもたらすといった逆転が起こりうる。対戦モードは対戦といってもPVPではなく、同じ章を別の選択で回した記録を“照合”する形が採られたとされる[3]。
オフラインモードでは、オフライン特典として「午前0時未満のデータ」が解禁される。発売当時の攻略記事では、この条件が“プレイヤーの生活習慣”に依存するというもっともらしい噂が立ち、実際に多くのユーザーが深夜プレイを始めたと報告されている[4]。
ストーリー[編集]
物語は、架空の都市の旧駅前から始まる。プレイヤーは終電のアナウンスが途切れた直後、ホームの掲示板にだけ存在する“未来の落書き”を見つけるところから始まる[1]。
中間相の規則として、「出来事は戻せないが、順番だけは入れ替えられる」と説明される。旅人は「今日の駅員」「明日の運転手」の名を持つ二つの影に導かれ、すでに終わった出来事へ向けて歩く。しかし実際には出来事を“修正”せず、プレイヤー自身の内語(頭の中で言った言葉)だけが変化していく点が核心とされる[2]。
各章末には“折り返し儀式”があり、選んだ言い直しに応じて世界の地図が縮む。地図が縮むほど移動は速くなるが、同時に失われる会話も増える。公式ガイドブックではこれを「速さの税」と呼び、時間感応型RPGのルールとして整理したとされる[3]。
終盤では、プレイヤーが“中間相を終わらせる”か、“終わらせない”かを迫られる。ただしエンディング分岐は分かりやすい善悪ではなく、どちらを選んでも次の周回で世界の音が変わる仕組みになっているとされる[4]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公は名前のない旅人として提示され、オプションで「あなたの口ぐせ」を入力すると会話選択肢の表記が微妙に変化する。開発スタッフはインタビューで、これを“プレイヤーの未来が先に混ざる演出”と説明した[1]。
仲間には、旧駅前の清掃員「」がいる。彼女は濡れた床にだけ足跡を残すという設定で、会話を始める前に必ず“床の乾き具合”を聞いてくる。ファンの間では、実在の気象学者をモデルにしたのではないかと推測が広がったが、真偽は不明とされる[2]。
敵役としては、季節票の集団「」が登場する。彼らは攻撃ではなく“日付の請求”を行い、戦闘中にプレイヤーへ期限のない督促状を渡すという風変わりな演出を行うとされる[3]。
また、終盤で現れる「」は味方にも敵にもなりうる存在で、プレイヤーが“明日へ渡すはずだった言葉”を預かる係として描かれる。公式は曖昧に語っているが、プレイヤーが一度でも会話を言い直さなかった場合のみ、彼の台詞が“過去形”になるという報告がある[4]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の中心概念は「今日と明日の中間で」であり、時間帯そのものではなく“判断の境界”を指すとされる。作中では「中間相(ちゅうあいそう)」として説明され、ここでは“確定した後悔”のみが残ると書かれている[1]。
ゲーム内の暦としてが存在し、1日は24時間ではなく、7つの“読了区間(どくりょうくかん)”で構成されるとされる。読了区間は「夜の章」「朝の段」「昼の余白」などの文学的名称を持ち、プレイヤーの行動によって区間境界が±0.3区間ずれる仕様があるとされる[2]。
また、設定上の国家機関としてが登場し、紙の書類で時間を管理している。具体的には「申請されたために起きた出来事」だけが中間相に滞留し、申請の有効期限がゲーム進行に影響する。奇妙なことに、この制度はゲーム内では“合理的”と評価されている[3]。
重要アイテムとしてが設定される。通貨は現金ではなく、会話中の“言い直し回数”に比例して増減し、0回だと強くなるが、逆に大事な手がかりが減るというトレードオフがある。これがユーザーのプレイスタイルを二分し、掲示板で延々と議論が続いたとされる[4]。
開発/制作[編集]
本作は、開発会社が1988年に行った“無理なプロトタイピング祭”から生まれたとされる。蒸気機関の部品を流用してタイマーを読み取る装置を作り、そこで得た不規則なクリック音をゲームBGMに変換する試みが起点になったという[1]。
プロデューサーのは、時間表現を数式ではなく“失言の体温”で扱うべきだと述べたとされる。実際、開発では音声データの代わりに紙テープの擦過ノイズを収集し、会話選択に対応させたという。もっとも、当時の社内記録の一部は「テープが溶けたので、想像で埋めた」と記されていたと報告されている[2]。
スタッフ構成としては、ディレクターが章設計、デザイナーが中間相のマップ圧縮(縮むほど描写が減る方式)の調整を担当したとされる。プログラマーのは、0.7日進む挙動を“丸め誤差の美学”として説明したが、後年になって同氏が「美学ではなくバグだった」とも語っていたとする証言がある[3]。
制作経緯としては、発売日が[[11月3日]]に設定された理由が、暁光パブリッシングの社内会議で「午前0時をまたぐと世界の音が変わる」と発言されたことに由来すると説明される。ただし出典が社内メモのみであり、信憑性は揺れている[4]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは率いる虚無和音制作が担当した。作中曲は“メロディが進むほど同じ小節が戻る”構造になっており、プレイヤーは気づかないまま中間相に慣らされていくと説明される[1]。
代表曲として『雨の読了区間』や『未完了日の鐘』が挙げられる。『未完了日の鐘』は、BTTMの“0回言い直し”ルートでだけ第2旋律が鳴るよう調整されているとされる。ファンは、これを「ゲームが沈黙で演奏する曲」と呼んだとされる[2]。
また、音のエラーハンドリングが話題である。プレイヤーが会話を途中で中断すると、曲が正しくフェードアウトせず、代わりに0.9秒だけ“次の章の音”が混ざる仕様がある。攻略サイトではこの混ざりを解析し、次に起きるイベントを当てた例が報告されたが、実際に再現できたかは不明とされる[3]。
他機種版/移植版[編集]
本作は当初ZX-Next専用として発売されたが、1991年にの委託で“記憶最適化”版が制作されたとされる。これにより、セーブ領域の取り扱いが改善され、時間感応セーブの誤差が±0.2日から±0.05日に縮んだと説明されている[1]。
移植版としては、1993年に据え置き機の後継相当へ移植されたが、移植先では処理負荷の都合で“言い直し通貨”の細かな増減が簡略化された。結果として、上級者が楽しむはずの「0.7日進行」の挙動が、0.8日として表示される場面が出たと報告された[2]。
バーチャルコンソール対応としては、2008年に配信が始まった。配信時にはオリジナルROMの解析が行われ、誤って削られていた“深夜プレイ特典”のトリガーが復元されたとする説明が付された。ただし、その条件の詳細が「プレイ時間の合間で気温が一致した場合」などとされ、根拠が曖昧と指摘された[3]。
評価(売上)[編集]
売上は好調で、全世界累計138万本を突破したとされる。国内だけでも約64万本が1990年末までに出荷されたと記録されており、当時としては“中間相RPG”という珍しいジャンルが一定の支持を得たことを示す指標とみなされた[1]。
日本ゲーム大賞は受賞歴が整理されており、本作は1990年度ので“時間設計賞”に相当する部門を受賞したとされる[2]。ただし、受賞の正式名称は当時の資料で揺れがあり、編集者によって“時間設計賞”と“時間表現賞”が混用されたとする指摘がある[3]。
一方で批判もあり、レビューでは「会話選択が面白いのに、正しい言い直しが運ゲーに見える」といった声が上がった。特に、敵の“未完了日数”がプレイヤーの睡眠リズムで変わると勘違いしたユーザーが続出し、フォーラムが荒れた時期があったとされる[4]。
関連作品[編集]
関連作品として、同シリーズの第2作『曖昧な駅名の旅』や第3作『返せない約束の地図縮尺』が挙げられる。これらはいずれも中間相を舞台としているが、ゲームの進行ルールは改変され、会話選択の言い直しコストが段階的に軽減される設計になっているとされる[1]。
また、テレビアニメ化としては『雲路暦・中間相物語』が放送されたとされる。アニメでは季節票が擬人化され、祝日税官が“請求を歌う悪役”として描かれた。ファンの間では、本作の世界観が音楽へ強く寄っていたことがアニメ演出に反映されたとの評価があった[2]。
冒険ゲームブックとしても『今日と明日の中間で:折り返しの手引き』が出版され、プレイヤー自身の選択を“読了区間表”に記入する形式が採られたとされる[3]。ただし、当時の版では誤植により“読了区間表”の行が1行欠落し、ユーザーが独自補完を行った逸話がある[4]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本として『雲路暦公式ガイドブック(折り返し税計算編)』が刊行された。特に“速さの税”の計算表が付録として収録され、選択肢の文字数が翌章の歩行時間に与える影響を、表にして提示したとされる[1]。
他にも『言い直し通貨の全記録 0回から9回まで』や『季節票図鑑:未完了日数の見分け方』などの書籍が出版された。『季節票図鑑』では、敵の足元の湿度(数値で81.3%などと表記される)によって残日数が推定できるとする記述があり、一部の読者には“それは観測できるのか”というツッコミを生んだ[2]。
音楽関連としては『雨の読了区間:虚無和音の分解譜』が発売された。これは作中曲を“戻る小節”の位置まで記載し、演奏者の間で参考資料として流通したとされる[3]。
さらに、非公式グッズとして“中間相キーホルダー”が流行した。素材はアルミではなく、触れると手袋の匂いがする特殊樹脂だと説明されたが、実際には製造ロットで匂いがばらついたとする証言があり、返品が増えたという[4]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 雲路暁政庁『中間相実務報告書:読了区間の規則化』第1部門, 雲路暁政庁出版局, 1989年.
- ^ 蒼井 味方『会話は戻らないが進む:BTTM開発覚書』暁光パブリッシング, 1990年.
- ^ 戌亥 朔馬『縮む地図と速さの税』雲路工房資料集, 1991年.
- ^ 都築 ひかり『虚無和音:雨の読了区間の構造解析』音像学研究会, Vol.3 No.2, 1992年.
- ^ 真鍋 朱藍『中間相の空気設計:紙の擦過ノイズの設計指針』第12巻第4号, コンピュータ芸術誌, 1993年.
- ^ 神楽 直胤『0.7日の丸め誤差は美学か?—実装メモ(抜粋)』ZX-Next技術年報, pp.114-127, 1991年.
- ^ Kazuo A. Sora『Time-Feels in Narrative RPGs: Between Today and Tomorrow』Journal of Uncertain Interfaces, Vol.7 No.1, pp.55-79, 1994.
- ^ M. Thornton『Audio-Driven Event Systems in Late-80s Console RPGs』Proceedings of the Soft Chronology Workshop, pp.201-219, 1995.
- ^ ファミ通編集部『ファミ通クロスレビューゴールド殿堂:雲路暦総覧』ファミ通, 2009年.
- ^ 高松 霧人『季節票図鑑:未完了日数の見分け方』青白書房, 1992年(ただし表記の一部に誤植があると報告されている).
外部リンク
- 雲路暦アーカイブ
- BTTM解析掲示板(時限式)
- 虚無和音楽譜共有所
- 雲路工房 旧資料倉庫
- 祝日税官コレクション