全日本非正規労働者組合
| 名称 | 全日本非正規労働者組合 |
|---|---|
| 略称 | ぜんひせ組 |
| ロゴ/画像 | からし色の盾に、折れた鍵と青い雇用契約書を重ねた図柄 |
| 設立(設立年月日) | 1997年6月14日(設立総会決議第3号に基づき設立) |
| 本部/headquarters(所在地) | 東京都千代田区霞が関一丁目(外務協働館ビル別館) |
| 代表者/事務局長 | 事務局長 渡辺精一郎(わたなべ せいいちろう) |
| 加盟国数 | 国内組織のため該当なし(代替指標として都道府県加盟数 47) |
| 職員数 | 常勤職員 128名、兼務含む運用要員 312名(2023年度) |
| 予算 | 2024年度予算 18億3,420万円(分担金+助成金) |
| ウェブサイト | ぜんひせ組 公式記録ポータル |
| 特記事項 | 「契約の見える化」標準書式『ひせき帳』を発行し、労使協議の議事録様式を統一している |
全日本非正規労働者組合(ぜんにほんひせいきろうどうしゃくみあい、英: All-Japan Non-Regular Workers Union、略称: ぜんひせ組)は、における非正規労働者の権利擁護と「雇用の可視化」を目的として設立されたである[1]。設立。本部はに置かれている[2]。
概要[編集]
は、非正規労働者の労働条件が「契約書の体裁」だけでは把握しきれないという問題意識のもと、労働者の請求手続きを簡素化し、雇用の可視化を推進することを目的として設立されたの民間非営利団体である[1]。公式には「当事者の記録権」を中核として掲げ、組合員が自己の雇用状況を体系化して提示できるようにする取り組みを活動を行っている[3]。
1997年の設立以来、組合は「分断された雇用データ」を一本化するため、都道府県単位の事務局と、企業の人事部門を相手とする標準交渉様式を整備してきた。本部はに置かれており、理事会と総会の二層運営が設置法に基づき運営される形式をとると説明されている[2]。なお、組合の内部資料では「非正規」を単に雇用形態の分類ではなく、契約情報の粒度によって測る指標として扱っているとされる[4]。
歴史/沿革[編集]
創設の経緯[編集]
当初は、1990年代半ばの都市部における「更新条項の差し替え」が問題化したことが直接の契機とされる。組合史では、が紙片として散逸し、労働者側が同じ条件でも別の年度に異なる説明を受ける事態が続いたため、「記録を一枚に圧縮する技術」が必要になったとされる[5]。
その流れで、当時の社会運動家であった 渡辺精一郎(後の事務局長)が、霞が関周辺で開催された「契約雛形統合ワークショップ」に参加し、議事録を共通書式化する提案を行った。この提案が発展して、1997年6月14日に設立総会決議第3号が採択され、として『雇用記録統合促進設置法(仮題)』が「所管官庁の外局」に相当する形で整備されたと説明されている[1]。ただし、この設置法の正式名称は文献により揺れがあるとの指摘がある[6]。
発展と分権化[編集]
2000年代に入ると、組合は都道府県ごとの支部を増やし、「47支部・47帳簿」という分権モデルを採用した。組合内部では「47」という数値が象徴化され、すべての都道府県で同一の点検項目を採用する運用が分担金の配分と結びつけられたとされる[7]。
また、2008年には企業向けの交渉支援プログラム『議事録の標準化パッケージ』が理事会で決議され、労使協議の席での発言内容を後から照合できるようにする仕組みが導入された。ここで導入された「ひせき帳」(非正規契約の可視化帳簿)は、後に労働局の研修でも参考資料として扱われたとされるが、外部からは「実務に過剰な書式統制を持ち込んだ」と批判されることもあった[8]。
組織[編集]
組織構成[編集]
組織は、理事会、総会、ならびに各専門部局で構成される。総会は年1回開催され、議案は原則として「契約書式」「記録運用」「紛争対応」の3領域に整理され、決議の形で採択されるとされる[9]。理事会は常勤理事を中心に置かれ、予算の執行計画が分担されるため、会計の透明性が運営の要と説明されている[10]。
主要部局としては、契約可視化局、紛争調停局、教育広報局、統計監査局が存在する。統計監査局は、組合員が提出した「雇用粒度スコア」データの整合性を点検する職員を配置するとされ、職員の専門性は内部資格で認定される[11]。この資格には『第12期 観察実務者認定(更新条項対応)』のようにやや風変わりな名称がついていた時期があると記録されている[12]。
管轄と外局の扱い[編集]
組合は国内全域を管轄として活動を行っているが、紛争対応は都道府県支部が一次受け皿となる。標準書式の運用指針は本部から配布される一方で、支部独自の添付資料(自治体との協働文書)が認められることにより、形式の統一と柔軟性を両立させているとされる[3]。
また、組合は「技術支援の外局」として『ひせき帳 編集室』を置いている。編集室は、契約書の文章を読み替えるのではなく、労働者が把握できる形に整形する技術を担うと説明されている。ところが、整形が過度である場合には「文章の意味が変わるのでは」との疑義が出やすく、編集室の権限は理事会の承認に基づき運営されるとされる[13]。
活動/活動内容[編集]
組合は、労働者向け相談のほか、企業人事部門向けの標準交渉会議を開催し、労使双方の合意形成を支援する活動を行っている[14]。代表的な事業は、標準化された契約情報の収集・整理・提出を促す『ひせき帳』の配布と、雇用粒度スコアの点検である[4]。
具体的には、組合員が月次で「契約の一致率」「説明の反復回数」「更新条項の差し替え発生率」などの指標を記録し、四半期ごとに支部へ提出する仕組みが採用されているとされる。ここで用いられる一致率は、組合の内部計算では「ページ数ではなく、条項見出しの一致割合である」と説明されている[15]。この計算方法により、同じ内容でも見出しが違うだけでスコアが下がるため、「形式的な作業が増える」という反論もあるとされる[8]。
さらに、学校向けの出前講座も実施されている。教育広報局は、非正規雇用に関する基礎を「契約の術語」として教えるとし、授業用スライドでは『更新条項は呪文ではなくログである』のようなキャッチコピーが採用されたことがあると報告されている[16]。このように、文字通り“記録”を武器にする活動が重視されている点が、組合が支持を得る理由として挙げられる。
財政[編集]
組合の財政は、分担金、助成金、教育事業の受託費によって運営されるとされる。2024年度予算は18億3,420万円であるとされ、内訳は「記録整備関連費 7億2,190万円」「相談対応人件費 6億5,840万円」「標準書式開発費 2億4,110万円」「広報・研修費 2億1,280万円」と報告されている[17]。
なお、予算の執行は理事会決議に基づき行われ、年度内に余剰が発生した場合には、翌年度の支部向け機材購入費へ振替される運用があるとされる[10]。その一方で、統計監査局が提出する内部監査報告書では「年度末に計上される“検査費”が膨らむ傾向」が示された年もあるとされ、細目の費目がやや複雑だと感じられることもあると指摘されている[18]。
財政の透明性として、総会資料は本部サイトで公開されるが、公開範囲は「個人情報の抑制に基づき運営される」とされる。外部の会計士が閲覧できる仕組みはあるものの、閲覧申請には「30営業日内の審査」といった運用が付されるため、批判の的になりやすいとされる[19]。
加盟国(国際機関の場合)[編集]
本組合は国際機関ではないため加盟国の概念は採用されていない。ただし、公式資料では支部ネットワークを「国内版の加盟国に相当する枠」として扱い、都道府県加盟数は47であると報告されている[7]。各支部は同一の点検項目を遵守するよう求められており、支部間で処理速度のばらつきが生じた場合には、本部の統計監査局が是正指示を行う運用があるとされる[11]。
また、海外の研究機関との共同研究については、法人としての提携という形で行われる。近年は『非正規労働の可視化指標』をテーマに、欧州の労働史研究団体と意見交換が行われているとされるが、当該記録の公開範囲は非公開とされることが多いと説明されている[20]。
歴代事務局長/幹部[編集]
歴代の事務局長としては、創設期の渡辺精一郎(1997年就任、2020年まで)が最もよく知られている。渡辺は、雇用の可視化を「契約書の読み替えではなく、提出可能な証拠の整形」と定義した人物として語られる[5]。
その後は、2020年に佐伯真帆(さえき まほ)が就任し、相談窓口の標準応答テンプレートの改訂を担当したとされる[21]。さらに、2022年からは教育広報局長の林田隆介(はやしだ りゅうすけ)が、出前講座のカリキュラムを大幅に刷新したと報告されている[16]。なお、幹部会の議事録では「“粒度”という言葉が一部で難解すぎる」という自省が記録された年があり、用語の注釈文のページ数まで理事会が統制したとされる[22]。
一方で、統計監査局の首席監査官は、外部からは匿名であるとされる。匿名運用は内部の説明責任を弱めるとの見方があり、透明性の課題として語られることがある[18]。
不祥事[編集]
組合には幾つかの不祥事があり、特に有名なのは2016年の「ひせき帳改訂リーク事件」である。事件では、次期改訂案の一部が支部の特定職員経由で流出し、先行して雇用粒度スコアの運用テストが行われたとされる。組合は、テスト自体は違法ではないとしつつも、情報管理の不備として理事会決議による減給処分を実施したと発表した[23]。
また、2021年には相談対応の遅延が続き、組合員の間で「一次受けまで平均14日を要する」との不満が噴出した。組合側は、平均値は「金曜日申請が多かった月の補正」と説明し、実際の一次受け平均は11.6日であると訂正したとされる[24]。ここでの小数点第1位へのこだわりが、かえって“計算のための計算”だと疑われたといわれる。
さらに、2023年には「統計監査局が提出した監査報告書のページが1枚欠落していた」問題が発生したとされる。組合は、欠落は印刷工程の都合であり、内容は口頭説明で補完したとしたが、口頭補完の範囲が明文化されていなかったため、外部監査の要請が出たと報道される[18]。このように、組合は“記録”を武器にしながらも記録管理で揺れたという矛盾が、批判と笑いの両方を生んだ。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 全日本非正規労働者組合『ひせき帳運用要綱(第9版)』編集室, 2024年。
- ^ 渡辺精一郎『雇用の粒度と記録権』霞が関書房, 2003年。
- ^ 佐伯真帆『相談窓口の標準応答テンプレート設計』千代田学術出版, 2021年。
- ^ 林田隆介『出前講座は“呪文”ではない:非正規契約教育の実務』新宿教育研究社, 2020年。
- ^ 高橋めぐみ「非正規労働における条項見出しの一致率の社会的効果」『日本労働記録学会誌』Vol.12, No.4, pp.33-58, 2015年。
- ^ Martha L. Thornton「Document Granularity in Informal Employment: A Comparative Note」『Journal of Contract Anthropology』Vol.7, Issue 2, pp.101-129, 2018年。
- ^ Santos, R. & Kuroda, T. “Standard Negotiation Minutes and Labor Mobility” 『International Review of Work Records』第3巻第1号, pp.77-96, 2019年。
- ^ 全日本非正規労働者組合『2024年度年次報告(財政編)』, 2024年。
- ^ 内閣府外局監査局『分担金の透明性指針(試案)』中央官庁叢書, 2019年。
- ^ 小澤一郎『労働記録統合促進設置法の実務的読み替え』法律文化社, 2010年(第2版のタイトル表記は原題と異なるとされる)。
外部リンク
- ぜんひせ組 公式記録ポータル
- ひせき帳 編集室アーカイブ
- 統計監査局 監査資料閲覧サブポータル
- ひせき帳 研修スライド倉庫
- 全国支部連絡会議 議事録索引