出口凛太郎
| 名前 | 出口 凛太郎 |
|---|---|
| 本名 | 出口 りんたろう |
| ニックネーム | 凛太郎/出口さん |
| 生年月日 | 1991年9月7日 |
| 没年月日 | — |
| 出身地 | 群馬県前橋市 |
| 血液型 | A型(本人談) |
| 身長 | 168 cm |
| 方言 | 上州弁 |
| 事務所 | 鯨のしっぽプロダクション |
出口 凛太郎(でぐち りんたろう、〈平成3年〉 - )は、日本のピン芸人・司会者・演出補佐。[[鯨のしっぽプロダクション]]所属。[[群馬県]]出身である[1]。
略歴/来歴[編集]
出口凛太郎は、の商店街で育ったとされる。本人の証言では、幼少期から「笑いは会計書類のように正確であるべき」と教えられ、怪談よりも帳簿の行間に恐怖を覚えたという[1]。
に高校卒業後、東京での修業のため[[鯨のしっぽプロダクション]]付属の簡易養成講座へ応募した。書類審査の段階で、志望動機欄に「NSC東京本校の“笑い検定”を通過し、観客の呼吸数を測定してからネタを出す」とだけ書いたにもかかわらず通過したとされ、担当者の記録が後に業界紙で“異常に具体的な失敗例”として引用された[2]。
、初めて一人で出た公開オーディションの持ち時間は3分だったが、実際には8分17秒かけて自己紹介し、司会の[[地球儀テレビ]]制作担当が「時間に追い付けなくなった」と発言したという。本人は後年、あれは“視聴率の遅延を待つ儀式”だったと語っている[3]。この逸話は、誇張とされつつも、以後の作風が「遅れてくる笑い」を軸にしたことと結び付けられ、半ば公式の伝承になった。
人物[編集]
出口凛太郎は、異常なほどに“計測”を好む芸人として知られている。ライブでは客席に向けて、目に見えない速度で進むタイマーを口頭で宣言する。たとえば「今から3分後に、笑いが発生する確率が82%に到達します」と言い、到達すると必ず自分の前歯を1回だけ指で触る[4]。
また、司会業では切り返しの型を極端に減らす方針があるとされる。本人は「型が多いと、観客の“自由運動”を奪う」との信条を持ち、番組内ではテロップの出る秒数まで暗記している。実際、[[地球儀テレビ]]の深夜帯番組『[[遅延する朝礼]]』では、提供読みを0.7拍遅らせる“微遅延”演出が評価され、視聴者投稿が1,204件寄せられたと報じられた[5]。
一方で、プライベートは静かで、前橋市時代から続く「自宅の換気扇の音を録り、月末に“労働歌”として整列」する癖があるとされる。本人は笑いながら「換気扇は一番正直に嘘をつく。人は信じすぎると負けます」と述べる[6]。この姿勢が、後述の“起源は架空でも定義は正しそう”なネタ構造に反映されていると指摘される。
芸風/作風[編集]
出口凛太郎の芸風は、独特の“手続き的ボケ”と“遅延ツッコミ”を組み合わせた一人漫才・即興パフォーマンスに整理される。ボケでは、対象を現実の制度として説明するふりをしながら、最後にその制度の存在を否定する。ツッコミでは逆に、否定を制度化して観客に「え、今のどういうこと?」を与えるとされる[7]。
代表的な型として、[[家計簿]]・[[住民票]]・[[電波法]]などの語彙を、舞台上の小道具にして扱う“書類コント”がある。たとえば『領収書の未来』では、領収書を束ねると雷が鳴るという“仕様”を読み上げ、観客が納得した直後に「仕様はありません、ただあなたの顔が仕様に見えただけです」と畳む。終わり方が監査のように冷たいことから、笑いの温度が高温でも低温でも成立する不思議さがあると評される[8]。
なお、起源については、芸人としての背景に見えて実は社会制度のパロディが混ざる“疑似百科事典”形式が多用される。本人は「言葉を定義してしまうと、嘘でも世界ができる」と語り、定義の正しそうさを最優先して構成する。そのため、観客が最後に「嘘じゃん!」と気づくまで、約30〜45秒の猶予が計算されているとされる[9]。
この構成に関して、配信番組『[[百科嘘寄席]]』の検証企画では、出口の独白が観客の笑い声を直接増やすより先に、沈黙の長さを延ばす効果があることが“沈黙統計”として示された。集計はMCの協力で行われ、沈黙が平均0.6秒増えると、笑いが平均1.3回増えるという相関が提示されたと報じられている[10]。
受賞歴[編集]
出口凛太郎の受賞歴は、審査員の評価が分かれることで知られる。過度に制度っぽい説明が評価される年と、説明が長すぎるとして不利になる年が交互に来るためである。
の『[[NSCお笑い手続きグランプリ]]』では、最終決戦で自作の“台本監査”を読み上げたにもかかわらず、採点がわずか0.03点差で逆転負けしたとされる。本人は「0.03は心の針の太さです」と冗談めかして語った[11]。ただし当時の公式記録では最終得点の小数点が途中で丸められており、“丸めの嘘”が原因だったのではないかという憶測も出た。
その後、の『[[R-1ぐんま遅延王決定戦]]』で優勝した。優勝ネタは『遅延する朝礼』の発展形で、冒頭に「朝礼は遅延してから始まります」と宣言し、会場の時計を見ている観客の視線を計測するふりをする内容であったとされる[12]。ただし審査員コメントでは「最初から最後まで“正しい嘘”だった」とある一方、「正しい嘘に見せかける嘘があった」とも付記されている。
出演[編集]
テレビでは、地上波深夜の冠枠として『[[出口凛太郎の手続きTV]]』(隔週レギュラー)が知られている。番組では毎回、“架空の行政様式”を1枚ずつ配り、視聴者はそれを折る角度で次回予告が変わるとされるが、実際には角度に関係なく同じ予告が流れる。にもかかわらず、番組側は「角度で変わったように見える心」を検証したとして、視聴者投稿を継続的に募集した[13]。
ラジオでは、[[J-RADIO]]の『[[沈黙の審査員室]]』でパーソナリティを務めた。放送回によっては、メールの到着時間が極端に遅い回があり、出口はそれを“笑いの検品待ち”と呼んでいたとされる[14]。
また、舞台では単独ライブ『[[帳簿の縦線]]』『[[定義される観客]]』を開催している。ライブではセットが簡素である代わりに、マイクスタンドを90度に固定して“角度誤差”をネタにする。たとえば「今の角度は90度ではありません。視線が作った90度です」と言うことで、観客が自分の見方を笑う構造になっていると分析される[15]。
映像作品としては配信映画『[[規則の中の自由]]』(劇中演出補佐)に出演し、エンドロールでは自分の名前を“誤字のまま”出すこだわりが話題になった。配信後のコメント数は、開始48時間で4,982件に達したとされる[16]。
作品/単独ライブ/書籍[編集]
ディスコグラフィーとしてはCD『[[正しい嘘のファンファーレ]]』があり、収録ネタはすべて“一語ずつ定義する形式”で統一されているとされる。実際のトラック構成が「定義→反証→再定義→謝罪→拍手を要求」になっている点が特徴で、聴衆からは“法廷コントの音声版”と評された[17]。
単独ライブでは『[[帳簿の縦線]]』(2020年)で全国ツアーを行い、会場ごとに“観客の拍手のタイミング”を微修正したとされる。修正幅は、会場の座席数に応じて0.1拍ずつ増減させたと本人は語っているが、座席数との相関が本当にあるかは不明である[18]。ただし、同ライブのパンフレットでは“仮説としての修正”が脚注付きで掲載されており、百科事典の文体を模したユーモアが際立っている。
書籍としては『[[嘘の起源は丁寧に書け]]』(2022年)がある。内容は“架空の制度史”の読み物であり、出口自身が「制度は人の恐れを管理するので、笑いも恐れを管理する」と論じたとされる。もっとも、一部の章で年号表記が途中から違っており、編集部によれば“わざとの整合性崩し”であったという。
歴史[編集]
“定義する笑い”の誕生[編集]
出口凛太郎の芸の中心である“定義する笑い”は、本人の語りによれば、子どもの頃に読んだ図鑑が起点とされる。ただし、その図鑑の題名はたびたび変わるとされ、取材記録上では3種類の書誌情報が残っている。編集者が整理し直した結果、「題名が違うのは、図鑑が“その場の気分で題名を変えるタイプ”だったため」とまとめられた[19]。
一方で、業界側の別説では、出口がの市民講座で“生活安全マニュアル”の朗読係を務めたことが原因だとされる。マニュアルでは文章が妙に硬く、誤読が許されない。出口はその硬さに反発し、誤読こそが笑いになるように訓練した、という。この時に覚えた“句点の位置への執着”が、現在の文章型ボケに残っていると分析されている[20]。
なお、定義の起源をさらに遡る説では、出口が大学時代に“笑いの免許”を扱う架空の研究会に参加したことが語られる。研究会は実在せず、議事録がなぜか市役所の情報公開コーナーに置かれていたとされるが、これも後に怪談として扱われた。ただしその議事録の文章は今もライブの構成に似ているとされる[21]。
社会への影響と“遅延の文化”[編集]
出口凛太郎の活動は、単にお笑いの形式にとどまらず、メディアの“説明の仕方”へ影響を与えたとされる。『[[遅延する朝礼]]』以降、トーク番組では「結論を先に言わず、結論の定義だけを先に提示する」手法が増加したとの指摘がある[22]。
また、配信界隈では、視聴者がコメントを打つタイミングを制御する企画が“出口的”と呼ばれるようになった。具体的には、配信中に「次の一言でコメントが採用されます」と予告し、実際には一切採用しない。しかし“採用されなさ”が面白くなるように設計されている。出口本人は「採用されない方が、人は正確に笑える」と述べたとされる[23]。
批判もあり、制度っぽい笑いが社会の不信を助長するのではないかという声が出た。そのため番組内では、説明をするだけ説明し、最後に必ず“訂正としての笑い”を挟む方針が採られたとされる。ただしこの訂正が毎回同じではないため、視聴者は“訂正の方式”を当てにいくようになり、結果として新しい視聴行動が生まれたとされる[24]。
批判と論争[編集]
出口凛太郎の“遅延ツッコミ”には、誤解を招くという批判がある。特に、テレビでの発言が技術用語に似ている場合、視聴者が本当に何かの仕様だと勘違いすることがあるためである。
一例として、の生放送で「笑いは法律で保管されています。保管期限は72分です」と発言した件では、放送後に複数の市民団体から“法に関する誤解”として注意喚起が出たとされる。もっとも、当該団体がどの自治体に属していたかは不明で、記者会見の日時が後に入れ替わったという。とはいえ、番組側は謝罪ではなく“定義の再確認回”を組み、出口は「謝るのではなく、定義を更新します」と言って続行した[25]。
他にも、ネタ作りが“百科事典の見出し”に似ている点から、作家性よりも形式が前に出ているとの指摘がある。出口はこれに対し「形式は器、笑いは水。器だけでは冷たいが、水が入れば熱くなる」と述べたとされるが、観客によって受け取り方は割れている[26]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 出口凛太郎『嘘の起源は丁寧に書け』文庫凛社, 2022年.
- ^ 山中航太『遅延の笑いと沈黙統計:深夜帯の言語行動分析』『日本放送芸能学会誌』第18巻第2号, 2023年, pp. 41-58.
- ^ 佐々木恵理『手続き的ボケの構文論:百科事典風パフォーマンスの研究』東京: 情報口述研究所, 2024年, pp. 19-37.
- ^ K. Thornton『Definition-First Comedy: Timing and Audience Misbelief』Vol. 7, No. 1, Comedy Studies Review, 2021, pp. 101-132.
- ^ 地球儀テレビ編『沈黙の審査員室 メモリアルブック(特別版)』地球儀テレビ出版局, 2020年.
- ^ 前橋市文化振興課『生活安全マニュアル朗読記録(誤読編)』前橋市, 2011年, pp. 5-12.
- ^ 鯨のしっぽプロダクション『鯨のしっぽ養成講座 履修要項(第3版)』鯨のしっぽ出版, 2012年.
- ^ 『R-1ぐんま遅延王決定戦 審査講評集』群馬県芸能委員会, 2021年, pp. 77-84.
- ^ 田村誠司『笑いの免許制幻想:メディア史の裏側』社会模倣社, 2019年, pp. 223-249.
- ^ Matsuda, A.『Audience Delayed Applause as a Narrative Device』Vol. 12, Comedy & Media Journal, 2022, pp. 9-26.
外部リンク
- 鯨のしっぽプロダクション 公式ページ
- 百科嘘寄席 公式アーカイブ
- 地球儀テレビ 出演者データベース
- 前橋市観光文化メモ(誤読編)
- 正しい嘘のファンファーレ 特設サイト