劇場版ガンダムSEED 逆襲のアスラン
| 作品名 | 劇場版ガンダムSEED 逆襲のアスラン |
|---|---|
| 原題 | Ashran Strikes Back |
| 画像 | Seed_Ashran_poster.jpg |
| 画像サイズ | 240px |
| 画像解説 | 公開時のキービジュアル |
| 監督 | 榊原ユウジ |
| 脚本 | 榊原ユウジ、三好葉子 |
| 原作 | 矢島拓巳『SEED年代記』 |
| 原案 | C.E.映画化企画委員会 |
| 製作 | 高瀬誠一、木村ミチル |
| 製作総指揮 | 天野光司 |
| ナレーター | 真堂岳人 |
| 出演者 | 坂本遥、井上透、望月レナ ほか |
| 音楽 | 早瀬章人 |
| 主題歌 | 「Fallen Horizon」/ LUNA VOX |
| 撮影 | デジタルシネマユニットX-7 |
| 編集 | 久保田修 |
| 制作会社 | サンライズ・ネクサス |
| 製作会社 | C.E.映画製作委員会 |
| 配給 | 東亜エンターテインメント |
| 公開 | 2007年8月11日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 約9億2000万円 |
| 興行収入 | 18億4000万円 |
| 配給収入 | 10億7000万円 |
| 上映時間 | 127分 |
| 前作 | 機動戦士ガンダムSEED 背徳の宙域 |
| 次作 | 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 2 -アスランの帰還- |
『劇場版ガンダムSEED 逆襲のアスラン』(げきじょうばんがんだむしーど ぎゃくしゅうのあすらん、原題: Ashran Strikes Back)は、に公開された日本の。制作、原作・脚本・監督はで、興行収入はを記録したとされる[1]。
概要[編集]
『劇場版ガンダムSEED 逆襲のアスラン』は、世界を舞台とする劇場用アニメーション作品である。元来は系列で放送された深夜企画の総集編案として始まったが、途中で「主役の逆襲」を前面に押し出す再編集が行われ、独立した映画として成立したとされる。
公開当時は、系列の外伝映画として扱われた一方、内部資料では「アスラン三部作」の第2章に位置づけられていた。配給元のは、初動3日間でを見込む保守的な宣伝を行っていたが、実際には都市部のレイトショーを中心に動員が伸び、最終的にを記録したとされる[1]。
作品の特徴は、アスラン・ザラを「作戦の天才ではなく、会議で最も発言権の強い男」として描いた点にある。これによりシリーズ内の人物像が半ば反転し、放送局の編成担当者からは「説明資料が足りない」と苦情が出たという逸話が残る[要出典]。
あらすじ[編集]
の周縁宙域で続く停戦交渉の最中、は連合系の技術艦に密かに乗り込むことになる。彼の目的は、かつて自らが封印に関与したとされる「可変慣性炉」の記録媒体を奪還することであり、同時にの行方を追うの独自行動を止めることでもあった。
中盤では、に似た外観を持つ偽装艦が登場し、ここでアスランは3度にわたって艦内会議を中断させる。とくに第2会議では、彼が「戦争を止めるにはまず議事録を止めるべきだ」と発言する場面があり、後年のファン研究では本作を「政治劇としても読める」とする解釈が生まれた。
終盤、アスランは自らが放棄したモビルスーツを再起動させ、月面都市上空で決戦に臨む。最後は敵味方双方の通信回線を掌握し、全軍に向けて12分間の演説を行うが、その間に実際の戦闘がほぼ止まってしまうため、劇場では「ここが一番アツいのに絵が少ない」と評された。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
アスラン・ザラ 本作の中心人物。前半では優柔不断な調整役として扱われるが、後半で急に「指揮官権限」を要求し始めるため、劇中人物の中で最も権限と感情の振れ幅が大きい。演出上は常に逆光で描かれ、制作現場では「逆襲の人物なのに顔が見えない」と話題になった。
直接的な戦闘参加は少ないが、全編を通じて通信越しに存在感を示す。脚本初稿では登場時間が17秒しかなかったが、試写後に台詞が倍増し、最終的には「声だけで最強」という扱いに変更された。
調停者でありながら、実は作戦会議の議事進行を支配している人物として描かれる。彼女が持つ演算端末は、後に関連商品として単独販売され、全国の中高生が「資料整理用」と称して所持したとされる。
本作では助演的な位置づけで、アスランの逆襲を最も冷静に観察している人物である。公開当時のパンフレットではなぜか紹介文が3行もあり、編集部内で「シンにしては長文」と言われた。
その他[編集]
艦内通信の保守担当として登場するが、実際には会議室の照明を遠隔で操作する重要人物である。彼女の操作により、重要場面だけ照度が0.7ルクス上がるという凝った演出が施された。
回想場面でのみ登場するが、語り口が妙に長く、観客からは「実質的な予告編ナレーター」と見なされた。彼の台詞の一部は公開後に削除され、DVD版でのみ復活している。
本作オリジナルの幻影的存在として追加された人物で、アスランの潜在意識に現れる。設定資料集では「本人ではないが、本人以上に本人らしい」と説明されている。
キャスト[編集]
アスラン・ザラを、キラ・ヤマトを、ラクス・クラインを、シン・アスカを、メイリン・ホークを、ギルバート・デュランダルをがそれぞれ務めた。
主役級の配役は公開2か月前まで非公表とされ、劇場前売券の裏面にだけ声優名が印刷されるという珍しい販促が行われた。なお、試写版ではアスランの怒号があまりに多かったため、は収録後に喉を冷やす専用の保冷マフラーを使用していたとされる[要出典]。
英語版吹替ではらが参加し、海外版では「逆襲」が直訳されず『Counterstrike of Ashran』に変更された。これは配給会社が「revenge という単語はやや重い」と判断したためである。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
監督は、脚本はとが担当した。絵コンテは全412カット中298カットが榊原による手描きであり、残りは会議資料の裏紙にラフが描かれていたという。
メカニックデザインはの系譜を継ぐ、キャラクターデザインはが務めた。特殊技術はが担当し、モビルスーツの発光部だけを1フレーム遅らせて描く「位相遅延彩色」が導入された。
製作委員会[編集]
製作はが行い、、、、の4社が中心となった。委員会内では「アスランをどこまで逆襲させるか」で3回の再決議があり、最終的に「やや逆襲、だいぶ協調」とする妥協案が通った。
配給は、宣伝協力はが担当した。ロビー展示では、劇中の通信端末を模した巨大パネルが設置され、来場者がボタンを押すたびにアスランの台詞が流れる仕掛けがあった。
製作[編集]
企画[編集]
企画は末、の仮設会議室で行われた「SEED再構成会議」に端を発するとされる。当初はテレビシリーズの総集編第3弾として構想されていたが、榊原が「総集編ではアスランが足りない」と主張し、映画化へ転換された。
また、配給側が当初想定していたタイトルは『アスラン、帰れない』であったが、試写アンケートで「帰れないなら逆襲するしかない」との回答が多く、現タイトルに決定したという。
美術・CG・彩色・撮影[編集]
美術監督のは、の設計にあたり千葉県の臨海工業地帯を参考にしたと述べている。背景美術では、艦内の空気圧が高い場面ほど壁面の青みを0.3段階強める「圧力色彩法」が採用された。
CGは全編の約41%に使用され、特にモビルスーツの膝関節だけを実写並みに作り込む方針が話題になった。撮影工程では「影を先に作ってから本体を置く」逆順合成が試みられ、これが『DVD色調問題』の遠因になったと指摘されている。
音楽・主題歌・着想の源[編集]
音楽はが担当し、オーケストラと電子音を1:1で混在させる作風が用いられた。主題歌「」はによるもので、サビの終わりに通信ノイズを3秒入れる構成が、劇場音響との相性の良さから高く評価された。
着想の源はの政治映画と、深夜番組の早朝再放送を同時に見ていた榊原の体験にあるとされる。なお、本人は後年「アスランは最初、逆襲する予定ではなく、ただ会議室から出られない男だった」と語っており、作品の成立過程を考えるうえで重要な証言とされる[2]。
興行[編集]
公開時のキャッチコピーは「」で、都市部では深夜先行上映が実施された。初週は、、などの大型館で満席が相次ぎ、特に男性客の再来率が高かったという。
封切り後は、夏休みアニメ興行の中で中堅規模ながら安定した推移を見せ、最終的にを記録した。配給収入はで、当時のシリーズ映画としては前作の記録を抜いたとされる。なお、週末ランキングではロングラン実写恋愛映画を1週だけ上回ったことが宣伝文句に使われた。
リバイバル上映は、とで2週間限定で行われた。テレビ放送版は本編をからに短縮したもので、会議シーンが大幅に削られたため、視聴者から「逆襲ではなく要約」と呼ばれた。
反響[編集]
批評面では、映像面の完成度と会話劇の異常な密度が注目され、誌は「モビルスーツより議事録が強い」と評した。いっぽうで、物語構造が複雑すぎるとの指摘もあり、特にアスランの動機が「責任」「嫉妬」「停戦管理」の3つにまたがっている点は、初見では理解しづらいとされた。
受賞面では、第21回の長編部門にノミネートされ、を受賞した。また、では観客投票4位を記録し、審査員コメントで「説明は多いが、勢いがある」と評された。
売上記録としては、公開第5週に前週比を示し、夏休み終盤の落ち込みを回避したことで知られる。ファンの間では「アスランが勝った唯一の公開週」と呼ばれている。
テレビ放送[編集]
初回の地上波放送はの深夜枠で行われ、平均視聴率、瞬間最高視聴率を記録した。これは同時間帯の映画枠としては異例であり、放送翌日の新聞番組欄では「あの会議室が帰ってきた」と紹介された。
その後もやで再放送され、特に3回目の放送では冒頭5分がスポンサー差し替えで別アングルに変更された。視聴者からは「何度見てもアスランの逆襲が始まらない」という感想が寄せられた。
関連商品[編集]
本編に関する関連商品としては、サウンドトラック『』、公式パンフレット、アスランの通信端末を模した玩具、および設定資料集『』が発売された。とくには、発売初日に都内12店舗で完売し、後日オークション市場で定価の4.6倍に高騰した。
派生作品としては、ノベライズ版『逆襲のアスラン 外伝・月面の午後』、漫画版『アスラン会議録』、さらに舞台化企画『逆襲のアスラン in SHIBUYA』がある。舞台版では実際にモビルスーツを出さず、長机3台と赤い照明だけで決戦を表現したため、批評家から「最も安上がりなSEED」と称された。
脚注[編集]
注釈 [1] ただし、興行収入は再上映分を含むかどうかで数字がからまで揺れる。 [2] 榊原ユウジの発言として紹介されるが、実際には制作資料集の編集部コメントと混同されている可能性がある。
出典 『C.E.映画年鑑 2008年版』東亜メディア出版。 『アニメーション映画論集 第14巻第2号』日本映像学会。 『SEED年代記 補遺・劇場版編』矢島拓巳。 『月刊ファントム・スクリーン』2007年9月号、特集「議事録の中の戦争」。
参考文献[編集]
榊原ユウジ『逆襲の設計図』サンライズ文庫, 2008年. 三好葉子『劇場版アニメの会議学』メディアハウス, 2009年. 矢島拓巳『SEED年代記 外縁史』東亜書房, 2007年. Kevin L. Morley, "Reverse Heroism in C.E. Cinema", Journal of Japanese Animation Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 2010. 田所一馬『彩色遅延と群像演出』映像技術社, 2011年. M. A. Thornton, "The Politics of Mecha Briefings", Screen and Narrative, Vol. 8, Issue 1, pp. 9-26, 2009. 早瀬章人『音楽で読む艦内会議』リズム社, 2008年. 新海原典子『アスラン現象とその周辺』中央評論社, 2012年. 『アニメ映画の収益構造と深夜再放送』文化産業研究所報告書, 第5巻第1号, pp. 3-18. 『DVD色調問題の研究:2000年代前半アニメ作品を中心に』映像保存会誌, Vol. 4, No. 2, pp. 88-102, 2014年.
脚注
- ^ 『C.E.映画年鑑 2008年版』東亜メディア出版, 2008年.
- ^ 矢島拓巳『SEED年代記 補遺・劇場版編』東亜書房, 2007年.
- ^ 榊原ユウジ『逆襲の設計図』サンライズ文庫, 2008年.
- ^ 三好葉子『劇場版アニメの会議学』メディアハウス, 2009年.
- ^ Kevin L. Morley, "Reverse Heroism in C.E. Cinema", Journal of Japanese Animation Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 2010.
- ^ M. A. Thornton, "The Politics of Mecha Briefings", Screen and Narrative, Vol. 8, Issue 1, pp. 9-26, 2009.
- ^ 田所一馬『彩色遅延と群像演出』映像技術社, 2011年.
- ^ 早瀬章人『音楽で読む艦内会議』リズム社, 2008年.
- ^ 新海原典子『アスラン現象とその周辺』中央評論社, 2012年.
- ^ 『アニメ映画の収益構造と深夜再放送』文化産業研究所報告書, 第5巻第1号, pp. 3-18, 2014年.
外部リンク
- C.E.映画資料アーカイブ
- 東亜エンターテインメント作品ページ
- サンライズ・ネクサス公式年表
- アニメ映画研究会データベース
- 月面都市アポロン・ベイ観光局