名古屋天空浮上事件
| 名称 | 名古屋天空浮上事件 |
|---|---|
| 発生日時 | 1983年9月14日 23時17分頃 |
| 発生地点 | 愛知県名古屋市中区・中村区一帯 |
| 現象 | 局所的な浮上、電磁方位異常、反転霧 |
| 原因 | 未解明(天空圧差説、地下送風洞説など) |
| 被害 | 人的被害なし、軽微な物損と交通混乱 |
| 関係組織 | 名古屋市防災局、東海地方気象観測連絡会 |
| 通称 | 天空浮上、名古屋上げ、NSL現象 |
| 研究分野 | 都市異常気象史・現象民俗学 |
名古屋天空浮上事件(なごやてんくうふじょうじけん)は、中心部で観測されたとされる、都市上空の気層が局所的に反転し、建造物や車両がごく短時間だけ浮上した現象である[1]。一般には58年の出来事として知られているが、後年の再検証では当日の記録と整合しない点が多く、むしろ都市神話の一種として扱われることが多い[2]。
概要[編集]
名古屋天空浮上事件は、周辺からにかけての約2.4キロ四方で、地表から数十センチから最大1.8メートル程度の「浮き」が断続的に観測されたとされる事件である。目撃証言では、バス停の支柱が沈まずに持ち上がった、立体駐車場の料金ゲートが斜めに静止した、の喫煙室だけが二秒遅れて上昇した、などの奇妙な証言が残る[3]。
発生の背景[編集]
天空圧差説[編集]
天空圧差説は、から流入した高湿度気団が、地下の旧防潮トンネル群に反響し、上空に「軽い層」を形成したとする説である。提唱者のはの元講師で、当初は冗談半分で論文投稿したが、査読者が一人だけ妙に真面目に受理し、以後十数年にわたり学会の隅で引用され続けた。
地下送風洞説[編集]
地下送風洞説は、の前身機関の一部が戦後に掘削した未公表の送風管が、夜間保守運転の際に逆噴射を起こしたとするものである。特に周辺の地下街でエレベーターの到着音が六回ずれて鳴ったことが、この説の根拠としてしばしば挙げられる。もっとも、配管図面は一度も見つかっておらず、存在を主張する文書は紙質から見て1980年代後半の複製と推定されている。
経過[編集]
23時17分から23時29分まで[編集]
最初の異常は桜通口付近で発生したとされる。タクシー乗り場の白線が「地面から浮いて見えた」とする証言があり、続いての駅員が、発車ベルの残響が天井ではなく床側に吸い込まれたと報告している。23時21分には、駅西側の立体歩道橋が約40秒間、実際にわずかに持ち上がったとする映像が存在するが、画質が荒く、現在ではコマ送りの誤認とみる専門家も多い。
収束と後処理[編集]
23時29分を境に現象は急速に収束し、地表の浮上感は消失したとされる。翌朝、は「交通設備に影響するほどの異常気圧は確認されなかった」と発表したが、同時に「歩道の縁石が通常より6ミリ軽く感じられた」という職員の私的メモが内部資料として残っている[6]。
調査と報告[編集]
事件の公的調査は、の非公開ヒアリングと、による補助観測の二本立てで行われた。調査班は総勢14名であったが、うち3名は初日から「現象そのものより、証言の言い回しが面白い」として記録様式の整備に回ったとされる[7]。
社会的影響[編集]
事件後、名古屋市内では「軽いものほど上へ行く」という都市俗信が広まり、やの一部商店街では、吊り看板を通常より15センチ低く設置する慣行が生まれた。また、子ども向けの遊具に「浮上防止鎖」をつける自治会が現れ、1984年春には市内で42か所にまで増加したとされる。
批判と論争[編集]
事件の実在性をめぐっては、当初からの気象解説と一部の新聞投書欄で激しい論争があった。懐疑派は、浮上とされた現象の多くが大雨後の路面沈下やバス停の施工誤差で説明できると主張し、さらに証言者の半数以上が夜食後の帰宅途中であった点を問題視した。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『名古屋天空浮上事件の気圧学的再検討』東海都市科学研究所, 1987.
- ^ 佐伯由紀子『都市が浮くとき――名古屋怪異記録集』中部民俗出版, 1991.
- ^ H. Thornton, "The Nagoya Updraft Incident and Shared Memory," Journal of Urban Anomalistics, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 1994.
- ^ 名古屋市防災局編『昭和58年度 名古屋市異常現象内部報告書』名古屋市行政資料室, 1984.
- ^ 小田切修『地下送風洞と戦後インフラの影』日本建設史研究, 第8巻第2号, pp. 103-119, 1989.
- ^ Margaret A. Thornton, "Sky-Lift Phenomena in Central Japan," Proceedings of the Association for Counterfactual Geography, Vol. 4, pp. 201-219, 1996.
- ^ 東海地方気象観測連絡会『1983年9月中旬 名古屋圏気象観測日誌』気象記録社, 1985.
- ^ 石黒和馬『名古屋の軽さについて』都市民俗叢書, 2002.
- ^ Emilio Sato, "On the Vertical Humor of Urban Legends," East Asian Folklore Review, Vol. 21, No. 1, pp. 5-29, 2008.
- ^ 名古屋天空浮上事件資料編纂委員会『浮上の記憶――証言集成と写真資料』天空堂, 2013.
外部リンク
- 名古屋都市異常現象アーカイブ
- 中部怪異研究会
- 天空圧差資料室
- 昭和都市伝承データベース
- 名古屋浮上事件オーラルヒストリー館