嘘ペディア
| 名称 | 嘘ペディア |
|---|---|
| 英名 | UsoPedia |
| 種別 | 自動真実化辞典サイト |
| 運営 | 不明 |
| 初出 | 2011年頃 |
| 言語 | 日本語、英語、混成文体 |
| 登録の要否 | 不要 |
| 特徴 | 虚偽文を百科事典調に整形する |
嘘ペディア(うそぺでぃあ、英: UsoPedia)は、入力された虚偽情報を自動的に百科事典調へ変換し、利用者に「事実らしさ」を付与して返す正体不明のウェブサイトである。2011年頃、内の匿名サーバ群から観測されたとされ、以後、検証不能なまま断続的に利用者を増やした[1]。
概要[編集]
嘘ペディアは、利用者が入力した文や単語に対し、もっともらしい歴史、由来、人物、統計を補完して返すとされる情報変換サイトである。特に風の文体と風の脚注を自動で付与する点が特徴で、外見上は通常の参考資料と区別しにくい。
名称は「嘘」と「」を結合した造語であるが、初期の利用者の間では「嘘を真実へ昇華する装置」とも呼ばれた。なお、同サイトは検索エンジンの巡回を避けるため、深夜帯のみ応答速度が上がる仕様であったとする証言がある[2]。
歴史[編集]
前史:自動要約装置としての起源[編集]
嘘ペディアの原型は、にの同人技術サークル「文脈工房」が試験運用した、文章を「それらしく整える」スクリプトに求められることが多い。これは本来、学会発表の要旨を短くするための補助具であったが、利用者が試しに架空の人物名や架空地名を入力したところ、やけに詳細な来歴が出力された。
当時の開発記録によれば、アルゴリズムは「断定を避けつつ断定する」ことを目標に調整され、語尾の9割を「〜とされる」「〜との指摘がある」で構成していたという。この仕様が、後の嘘ペディアの文体を決定づけたと考えられている[3]。
2011年の公開と急速な拡散[編集]
、都内のレンタルサーバー群を介して「嘘ペディア」と名乗るサイトが突如現れた。初期画面には入力欄しかなく、単語を送信すると、数秒後にそれを記事化したHTMLが返るのみであったが、生成される本文の完成度が高く、のネットカフェを中心に口コミが広がった。
同年秋には、利用者がの単語を投げ込むと、自動での架空文献まで付く「国際化パック」が実装されたとされる。これにより、大学のレポート下書き、飲み会での雑学披露、架空研究会の発表練習などに用いられ、月間アクセス数は推定で約38万件に達した[4]。
騒動と規制の試み[編集]
には、嘘ペディアの記事をそのまま引用した地方紙のコラムが生じ、編集部が「一部に事実誤認があった」と訂正文を出した事件が知られている。これを契機に、系の有識者会合で「自動真実化表示」の必要性が議論されたが、実効的な規制は行われなかった。
一方で、サイト側は対策として、記事末尾にだけ妙に精密な年表を挿入する機能を追加した。これにより、本文全体は荒唐無稽でも、最後の年表が妙に正確であるため、かえって信頼感が上がるという逆説的な効果が生じたとされる。これは後に「年表補強」と呼ばれ、模倣サイトが多数登場した。
仕組み[編集]
嘘ペディアの中核技術は、入力文を「定義」「歴史」「社会的影響」「批判と論争」に機械的に分解し、それぞれに固有名詞を埋め込む生成器であるとされる。特に、実在のやを1つ混ぜることで、全体の真偽判定を鈍らせる設計が有名である。
また、生成結果には必ず3件以上の脚注候補と、実在しそうな書誌情報が付与された。内部仕様書の断片によれば、引用文献のうち1本は必ず存在しない雑誌名にすることが推奨され、これが「読者を半信半疑に保つ安全装置」と呼ばれていた[5]。
社会的影響[編集]
嘘ペディアは、表向きには娯楽サイトとして扱われたが、実際にはインターネット上の「信頼の書式」を変化させた点で重要である。利用者は、内容よりも体裁に説得力を感じるようになり、のレポート指導や企業研修の現場で、出典の見た目を整える行為が一時的に流行した。
また、地方自治体の広報担当者が、架空のイベント案内を作る際に同サイトを参照したという噂もある。これが事実であれば、行政文書の語尾に「〜とも言われている」が増殖した一因であるとする説がある。もっとも、この件は関係者が一貫して否定しており、要出典である[6]。
批判と論争[編集]
批判の中心は、嘘ペディアが「嘘であることを隠していないのに、結果として最も信じられてしまう」点にあった。とりわけ以降、教育現場では、レポートや調査ノートに同サイトの文体が混入する事例が相次ぎ、教員側からは「文末だけは立派だが中身がない」との苦情が寄せられた。
一方、支持者は、同サイトが情報の真偽ではなく、文章の構造を学ぶ教材として有用であると主張した。実際、の一部の創作系ワークショップでは、参加者がまず嘘ペディアで架空項目を生成し、それを手作業で崩す訓練が行われたという。結果として、真偽判定よりも「怪しさの嗅ぎ分け」が重視される文化が育ったとされる。
運営者不明性[編集]
嘘ペディアの最大の特徴は、運営者が最後まで特定されなかったことである。サーバーの設置場所は沿岸部の倉庫群、の研究室、さらには海外の匿名クラウドまで説が分かれているが、いずれも決定打に欠ける。
ただし、2019年に流出したとされる議事録には、「真実よりも真実らしさの方が、ネットでは保存されやすい」という一文があり、これを残した人物としてなる編集者名が挙がった。しかし同名人物は複数存在し、本人は取材に対し「編集した覚えはあるが、あれが私かは分からない」と述べたという[7]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 高橋文彦『嘘の百科事典化に関する実験的研究』情報文化研究所, 2013.
- ^ Margaret A. Thornton, "Plausibility Engines and the Post-Fact Web", Journal of Synthetic Media, Vol. 12, No. 3, 2018, pp. 44-79.
- ^ 佐伯麻衣『脚注が先に来る世界』青弓社, 2016.
- ^ Kenji Watanabe, "Metadata as Narrative: The Rise of Credibility Formatting", Proceedings of the International Forum on Online Texts, Vol. 5, 2015, pp. 112-130.
- ^ 中村蒼『ネット都市伝説の構文論』岩波書店, 2019.
- ^ Eleanor P. Voss, "When Fiction Generates Authority", Realtime Archives Review, Vol. 8, No. 1, 2020, pp. 9-27.
- ^ 『嘘ペディア運用覚書 第4版』文脈工房内部資料, 2011.
- ^ 田島圭介『年表補強の技法』中央批評社, 2017.
- ^ Mitsuru Kanda, "The Unverifiable Server Cluster of East Tokyo", East Asian Internet Studies, Vol. 3, No. 2, 2014, pp. 201-219.
- ^ 山本こずえ『真実より長い文末』河出書房新社, 2021.
外部リンク
- 嘘ペディアアーカイブ研究会
- 文脈工房旧版倉庫
- 真実らしさ観測センター
- 匿名辞典連盟
- 脚注整形ラボ