国際うまみ祭
| 正式名称 | 国際うまみ祭 |
|---|---|
| 英語名称 | International Umami Festival |
| 開催目的 | うまみ文化の普及、発酵技術の交換 |
| 初回開催 | 1978年 |
| 提唱者 | 杉本良造、エレナ・M・ハワード |
| 主催 | 国際うまみ祭実行評議会 |
| 主会場 | 横浜港大さん橋特設会場 |
| 参加国数 | 最大48か国(2019年時点) |
| 来場者数 | 年平均約18万3,000人 |
| 関連分野 | 食品科学、民俗学、調味料研究 |
(こくさいうまみまつり、英: International Umami Festival)は、の評価、調理技法の交換、ならびに発酵食品の国際的な相互理解を目的として開催される祭典である。20世紀後半にの港湾研究会を母体として成立したとされる[1]。
概要[編集]
国際うまみ祭は、、、、ならびに各国の塩味文化を比較展示する複合祭典である。一般には料理イベントとして認識されることが多いが、実際にはにおける貿易倉庫の湿度管理実験から派生した学術催事であるとされる。
祭典は試食会、講演会、香りの同定競技、樽詰め保存の実演などで構成され、会場内では濃度0.3%未満のだし液を「第一級うまみ標準液」として扱う独特の規定がある。なお、2011年以降はの無形文化遺産候補を目指す動きがあり、関係者の間では「遺産化すると味が丸くなる」との指摘もある[要出典]。
歴史[編集]
前史:港湾試験区時代[編集]
起源は、の港湾衛生課に所属していた杉本良造が、輸入の保管中に発生した香気の変化を記録したことにさかのぼる。杉本はこの現象を「潮風うまみ効果」と命名し、の食塩分析室へ持ち込んだところ、英国出身の食品化学者エレナ・M・ハワードと意気投合したとされる。
両者はに私的な試食会を開始し、参加者が味の第一印象を三段階で記入する「味覚速報票」を配布した。票の集計では、参加者の72.4%が「最初は地味だが三口目で危険」と回答したとされ、この記録が後の祭典形式の原型になった。
創設と初回開催[編集]
、横浜港の旧倉庫第4号棟で第1回国際うまみ祭が開催された。主催はで、当初の参加国は日本、英国、タイ、ペルー、ノルウェーの5か国のみであったが、会場で出されたの温度が高すぎてノルウェー代表が途中退席したため、翌年から「試食前の温度申告」が義務化された。
また、この回では出展物の一つとして「うまみ歩幅計」が展示された。これは、試食後に来場者が何歩まっすぐ歩けるかを測定する装置で、平均歩数が13.8歩に達したため、食品としての成功ではなく「感覚の攪乱装置」として注目された。
国際化と制度化[編集]
にはとで巡回展が行われ、うまみの定義をめぐる国際会議が併催された。ここで採択された「横浜覚書」では、うまみを「舌に残る持続性のある穏やかな満足」と定義し、同時に「香りに負ける場合は補助判定員を置く」とする実務規定も定められた。
さらにには、会場が周辺へ拡張され、倉庫群を再利用した「発酵回廊」が整備された。これは出展者が半年ごとに温度帯を変えながら展示を更新する方式で、特にの納豆研究班とのジャンチチームが、湿度管理をめぐって三年間にわたり共同研究を行ったことが有名である。
催事内容[編集]
試食・講評部門[編集]
祭典の中心は「うまみ審査」であり、の元仲買人らが考案した7項目の採点表に基づいて評価される。項目は持続性、立ち上がり、余韻、塩角の丸さ、鼻腔残香、器への残留、そして食後会話の長さである。
2016年には、評価委員がを食べ比べる際に沈黙時間を競う競技が追加され、最長記録は8分12秒であった。優勝者は「味が完成すると人間はまず謝る」とコメントしたとされる。
研究展示部門[編集]
の展示では、系の発酵技術を応用した標準培地、アミノ酸濃度を可視化する寒天板、ならびに「だしの鳴き声」を測定する擬似聴覚装置が並ぶ。特に1989年の展示で公開された「昆布圧縮年表」は、海藻を板状に並べて熟成速度を都市別に比較するもので、来場者の半数以上が年表の方を先に食べたという。
また、2013年以降はの後援を受け、香りの記憶に関するワークショップが常設化された。ここでは参加者が空の茶碗を見ながら「うまみの幻味」を報告する訓練が行われ、熟練者は1分以内に二度うなずけるとされた。
市民参加企画[編集]
一般来場者向けには「家庭だし持込選手権」「世界の味噌とその倫理」「最短で飯を呼ぶ音声実験」などが用意される。中でも人気が高いのは、空の丼を前にして最も説得力のある食レポを行った者に贈られる「空丼賞」で、受賞者には木箱入りの3.2kgと、翌年の招待状が授与される。
なお、2018年からはの指導により、会場内のスープ類はすべて500ml単位で提供することが定められた。これにより「飲み足りないが撮りやすい」との評価が生まれ、SNS上での拡散率が前年度比で約1.6倍になった。
社会的影響[編集]
国際うまみ祭は、単なる食の催事にとどまらず、の再評価との国際交流に寄与したとされる。特に後半以降、海外の料理学校で「うまみ」を独立した味覚として教える教材が増えた背景には、本祭の巡回展示が少なからず影響したとする研究がある。
一方で、会場周辺の飲食店では、開催期間中に客が全員「とりあえずだしを」と注文するため、メニューの単純化が進みすぎたという批判もある。横浜市内の老舗そば店では、祭典会期中のみ薬味の配置が逆転する現象が起き、常連客の半数が席を間違えたという[要出典]。
また、の観点からは、だし殻の再資源化や昆布包装材の堆肥化が進み、2020年には「発酵廃棄物ゼロ宣言」が採択された。ただし実際には、宣言文の末尾に「なお、試食後の箸洗浄水は別枠とする」と書かれており、ここに祭典の現実的な妥協が表れている。
批判と論争[編集]
祭典に対しては、うまみを神聖視しすぎているとの批判がある。特には、2015年の声明で「味覚を宗教化した都市イベント」と評し、審査員の白衣着用が過剰演出であると指摘した。
また、会場で配布される「うまみ認定証」は、取得後3年間にわたり家庭内の味噌汁濃度を年2回報告する義務があるため、参加者の一部からは「ほとんど免許制度である」と不満が出た。さらに、2007年の「昆布重量偽装事件」では、展示用昆布の一部に乾燥ワカメが混入していたことが発覚し、実行委員会は再発防止のために目視検査係を3名増員した。
ただし、関係者は一貫して「これは文化保全であって統制ではない」と説明しており、現在でも会期中の苦情件数は年間平均17件前後に抑えられている。
開催地と運営[編集]
横浜港の役割[編集]
主会場となるは、潮風による熟成促進効果があるとされ、祭典の象徴的空間として扱われている。特に旧税関倉庫のレンガ壁は、味噌樽の香気を安定させる「文化的断熱材」と呼ばれ、写真映えと保存性の両立に寄与した。
運営側によれば、港湾エリアを用いることで国際貨物の導線と参加者の導線を重ねることができ、異国の食材が到着したその日のうちに公開審査へ回せるという利点がある。
実行体制[編集]
運営はが担い、下部組織として試食監査部、香気分析部、器材管理部、ならびに雨天時だけ稼働する「汁こぼれ対策室」が置かれる。各部門には民間企業、大学、料理人組合、港湾労組の代表がそれぞれ1名ずつ参加することになっており、会議では議題の4割が椀の深さに費やされるとされる。
評議会の議事録は毎年ほぼ同じ形式で保存されるが、1998年の議事録だけは「だしの未来は静かである」という一文で締められており、後世の研究者の間で最も引用率が高い。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 杉本良造『港湾だし学序説』横浜食文化研究叢書, 1981年, pp. 14-39.
- ^ Elena M. Howard, 'Salt Wind and Residual Savour', Journal of Coastal Food Studies, Vol. 12, No. 3, 1972, pp. 201-228.
- ^ 国際うまみ祭実行評議会 編『横浜覚書とその周辺』港湾文化出版, 1987年, pp. 5-71.
- ^ 佐伯千尋『発酵回廊の設計思想』中央味覚評論社, 1996年, pp. 88-114.
- ^ Y. Sugimoto and E. M. Howard, 'A Quantitative Trial of Umami Afterglow', Proceedings of the Pacific Culinary Symposium, Vol. 4, No. 1, 1979, pp. 33-52.
- ^ 田村康介『だしの国際流通史』日本食文化学会, 2008年, pp. 122-176.
- ^ Margaret L. Fenwick, 'Umami as a Civic Instrument', International Review of Food Policy, Vol. 8, No. 2, 1999, pp. 55-79.
- ^ 山田一枝『味の素朴と制度化』東洋栄養新報社, 2013年, pp. 9-41.
- ^ 欧州食品倫理協会『Taste, Ritual, and White Coats』Brussels Institute Press, 2015年, pp. 1-63.
- ^ 横浜市文化局『港湾倉庫における汁物運営年報 2020』, 2021年, pp. 3-29.
- ^ 藤本静『昆布重量偽装事件の記録』海鳴書房, 2009年, pp. 77-92.
- ^ Harold J. Peck, 'The Geometry of Soup Bowls in Festival Settings', Culinary Anthropology Quarterly, Vol. 19, No. 4, 2018, pp. 410-436.
外部リンク
- 国際うまみ祭実行評議会公式記録館
- 横浜港発酵文化アーカイブ
- 世界だし協議会資料室
- 味覚速報票デジタル保管庫
- 港湾食文化研究センター