宮本圭
宮本圭(みやもと けい)とは、の都市伝説に関する怪奇譚の一種[1]。夜間の通話ログに「折り返し不要」とだけ表示される、と言われている[2]。
概要[編集]
は、主にスマートフォンの端末履歴や通信履歴の「微細な欠損」にまつわる都市伝説として語られている。噂では、電話をかけた側には発信記録が残るのに、受けた側の画面には一切の応答履歴が出ないとされる[3]。
この伝承は「妖怪」と呼ばれることもある。というのも、噂の焦点が“人”の名前であるにもかかわらず、姿や年齢が定まらず、全国に広まった段階では「正体は不明のまま通信だけが先に行方を消す」という話へ収束したためである[4]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源としてよく挙げられるのは、1997年頃にの一部で広まった「深夜・同報誤配信」事件である。自治体の地域安全課が公表したとされる資料では、着信の宛先が統計上で“存在しない加入番号”に紛れ、結果として通話が「成立したのに記録だけが無効化された」と記述された、と噂されている[5]。
このとき、誤配信の一覧に紛れていた名としてが現れた、と言われている。さらに、当時の電信担当者が「名簿の欠けは2桁目が必ず抜ける。しかも抜けた2桁目のパターンは“圭”の筆順に似ている」と語ったという目撃談がある[6]。ただし、これを裏付ける公的文書が示されたことはないとされる。
流布の経緯[編集]
流布の決定打になったのは、2009年に掲示板で投稿された“折り返し不要”のスクリーンショットである。そこには、通話履歴の欄に「着信:宮本圭(0:00〜0:07)」とあり、通話時間だけが7秒で固定されていた、と目撃談では語られた[7]。
その後、2016年にの関連部署を名乗るアカウントが「迷惑番号の自動記録除外が確認されている」と投稿したことがマスメディアに拾われ、噂は一気にブームへ移行したとされる[8]。なお、この投稿は後に“なりすまし”だったとも言われている。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
噂では、は“本人が電話をかける”のではなく、“相手の端末だけが連絡を受け取ったように見える”存在だとされる。伝承に登場する言い伝えとして最も多いのは、夜更けに着信したあと、相手が折り返そうとすると「圏外」「電波が微弱です」「同一人物が現在対応中です」という説明文が順番に入れ替わる、という怪奇譚である[9]。
また、出没に関する目撃談では、着信画面が一度だけ白飛びし、その後に微細な文字列が現れるとされる。その文字列は「返信しないで、あなたの記録は先に消える」と読める、と言われている[10]。一方で、別の伝承では「宮本圭は“恐怖”ではなく“校正”のために現れる」とされ、端末の誤入力を訂正する“妖怪”だとも語られている[11]。
さらに細部にこだわる語り手によれば、恐怖が強いのは“曜日”である。つまり、金曜日だけが確率的に出没しやすいのではなく、午前1時と午前1時7分に着信が重なるとき、恐怖が“固着”するという話がある。固着とは、解除操作をしても履歴が消えない状態であり、全国に広まった時期の被害談の語彙であったとされる[12]。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとしては、「は改札で見られる」というものがある。具体的には、駅のIC改札機の履歴照会でだけ“来訪者名”欄に宮本圭が出るが、乗車記録がゼロになる、と言われている[13]。この話はの小さな駅で目撃されたとされ、のちに学校の怪談として採用されたとされる。
別系統の派生では、学校の掲示板に貼られた注意書き「折り返し禁止」が、翌朝には別文に差し替わっているという噂がある。その文面は「あなたの端末が先に謝罪するまで待て」とされ、不気味さから不登校気味の生徒が増えた、と誇張気味の話が拡散された[14]。
さらに、都市伝説の“出没”パターンとして「BluetoothをOFFにしたのに、履歴だけがONに戻る」という報告も混ざっている。正体が通信のバグではないかという見方もあるが、噂の語りでは“仕様変更”では説明できないほど、7秒で話が完結する、と強調される[7]。
よくある勘違いとして「宮本圭は特定の姓と結びつく」という誤情報がある。そこで一部の語り手は、苗字を変えても“圭”の漢字だけは置換されない、とまで言うが、信ぴょう性は低いとされる。
噂にみる「対処法」[編集]
伝承の対処法は、意外にも“無視”が中心である。まず、着信があった場合は折り返しをしないこと、次に端末の通知履歴から当該項目を削除すること、さらに機内モードを「3分間だけ」有効にすると、噂の連鎖が止まるとされる[15]。
ただし、ここには細かい手順があるとされる。語り手によると、機内モードを3分にするのは“2分だと遅延が残り、4分だと別のログが増える”からだという。例として、削除したはずの通話履歴が「通話時間0:00として復活する」ケースが報告された、と言われている[16]。
また、出没が疑われる日は「冷静な文字数制限」を設けるべきだとする声もある。具体的には、着信直後にSNSへ投稿せず、代わりにメモアプリへ短い一文(10〜14文字)だけを書いてから閉じるとよい、という怪談がある[17]。この対処法は“恐怖を拡散させない呪いの解除”として語られることがあるが、科学的根拠は示されていないとされる。
社会的影響[編集]
の噂が広まった時期には、通信会社のコールセンターへの問い合わせ件数が増えた、と語られることがある。とくに「着信だけ残る」「相手側が応答した形跡がない」という相談が、1か月あたり約3,200件前後あったという推計が出回った[18]。もっとも、実際の統計として確認されたわけではないとも言われている。
学校の場では、情報モラル教育の名のもとに都市伝説が利用されることがあった。たとえば、生徒指導資料に「不審着信の対処として折り返しをしない」だけでなく、「履歴共有をしない」という項目が追加され、これが噂の存在を“教材化”した例だと批判された[19]。
一方で、ブームの副作用として「履歴削除のしすぎで、連絡すべき相手の記録まで失う」事故も報告されている。噂の語りでは、そこに“正体が恐怖を増幅している”ような表現が入るため、軽いパニックを引き起こしたとされる[20]。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化面では、深夜ラジオやネット配信で「折り返し不要の7秒」というフレーズが定型文のように扱われた。番組内では、実際の通話音声の代わりに、7秒ぶんだけ無音が流される演出があり、聴取者の間で“聞いたら戻れない”と恐怖をあおった、と言われる[21]。
書籍では、都市伝説研究を装った文体のノンフィクションが複数刊行された。その中には、を“妖怪としての通信”の代表例とみなす論考があり、誤配信やログ欠損を「現代の憑き物」と説明することで読者の納得を狙った、とされる[22]。
ただし、メディアの扱いは一様ではない。あるドキュメンタリーは「不気味さを煽っただけで、出没の証拠がない」として早期に打ち切られたとも噂される。これが結果として、逆にの“正体不明”を強める材料になった、とする指摘がある[23]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 中村ユキオ『夜更けの7秒:通話履歴から生まれた怪談学』河出書房新社, 2017.
- ^ 佐藤明里『現代都市伝説の“データ欠損”表象』明鏡大学出版局, 2020.
- ^ Hiroshi Tanaka, “The Seven-Second Phenomenon in Japanese Calling Logs,” Journal of Urban Folklore, Vol. 12, No. 3, pp. 41-58, 2019.
- ^ 田中昌平『改札履歴と妖怪—ICログが示す正体不明』東京書林, 2018.
- ^ 【総務省】地域通信リスク検討会『誤配信の社会的影響(仮)』内閣府資料, 第6回会合, pp. 12-19, 2016.
- ^ Margaret A. Thornton, “Parasitic Notifications: Modern Superstition and Error Messages,” Proceedings of the International Conference on Myth-Tech, Vol. 4, pp. 77-90, 2021.
- ^ 吉田玲奈『怪談を教材にする——折り返し禁止の授業設計』教育社, 2014.
- ^ 山口慎二『不気味な無音:音声欠落が生む恐怖』青藍出版社, 2015.
- ^ Daisuke Kobayashi, “Micro-Text Shifts on Smartphone Screens,” Bulletin of Applied Folklore Systems, 第2巻第1号, pp. 1-16, 2022.
- ^ 松本研吾『妖怪のデータ補正(第3版)』エイト出版, 2023.
外部リンク
- 夜更けの7秒まとめ
- 通話ログ欠損アーカイブ
- 駅の改札怪談データベース
- 学校の怪談研究会(資料庫)
- 情報モラル授業用スライド共有場