彡(゚)(゚)
| 別名 | ミツ目記法、二点対称顔 |
|---|---|
| 分野 | デジタル記号論 / ジャーナリング文化 |
| 使用媒体 | 掲示板、匿名チャット、短文SNS |
| 表現要素 | 彡(曲線)+(゚)(゚)(二点) |
| 成立時期 | 2000年代初頭(とされる) |
| 代表的な機能 | 驚き・無言の同意・監視への緊張の「呼吸」 |
| 関連語 | ミツ読み、ぷぷ同調、間符号 |
(みつ(ぷ)(ぷ))は、感情や意図を視覚的に表す記号的表現として、主にのネット文化で用いられるとされる[1]。元来は匿名掲示板の「間」や「空気」を代弁する記法だったと説明されることが多いが、発祥には諸説がある[2]。
概要[編集]
は、文章の中に置くことで、話者の心的状態を「顔」として提示する記号であるとされる。特に、文字列そのものが意味を持つというよりも、読者がそこに一瞬で表情を補完できる点が特徴とされてきた。
由来については、(゚)を「目」、彡を「眉間の揺れ」と見なす解釈が早くから広まった。結果として、記号の並びは感情語の代替として機能し、謝罪・同調・嘲笑・疲労などのニュアンスを、数文字で伝える手段として扱われたと説明される。
一方で、記号論の観点からはが「意味」ではなく「間(ま)」を共有するための装置になったとも指摘されている。実際、ある調査では、特定スレッドにおける返信速度が平均で短縮したと報告されたとされるが、同時にデータの取得条件は「記述不能」扱いになっている[1]。
成立と歴史[編集]
前史:二点対称顔の実験文化[編集]
の萌芽は、公式掲示板よりも早く、学内の端末室で行われた「即時反応の書式実験」にあったとされる。文部科学省の外郭的研究会として知られる(当時の正式名称は)が、2003年に「遅延を減らす文体」をテーマに試作したと語られることがある[3]。
この試作では、質問文に対する返答を“語”ではなく“符号”で返す方式が採用され、目印として「(゚)(゚)」型の二点が頻用されたとされる。研究班は、二点の間隔を、彡の曲率半径を(フォントレンダリング換算)と決めたとされ、妙に具体的であるほど採用率が上がったという逸話がある。
ただし、その実験記録の原本は内の倉庫火災で失われたとされる。火災の原因は不明とされる一方、当時の責任者としての関係者名が挙がったことがあり、関係者は「記号に責任はない」とだけ述べたと伝えられる[4]。
成立:匿名掲示板の“空気救命”プロトコル[編集]
彡(゚)(゚)が一般化したのは、匿名掲示板で「返事が遅れるほど空気が壊れる」問題が顕在化したことにあるとされる。特にのデータセンターを拠点にした運用者たちが、遅延や誤読を抑えるための“空気救命プロトコル”を広めたと説明される[5]。
このプロトコルでは、肯定のための語を禁止し、「瞬き」や「目の動き」を表す記号のみを許可したとされる。結果として、(゚)(゚)に彡を添えることで、感情の温度を“下げても下げすぎない”形に調整できるとして、が「万能の中間表情」として採用された。
なお、当時の掲示板運営が設定したとされる規則として、「彡(゚)(゚)は一レスにつき最大まで」「最後の記号が彡の場合は未返信扱い」などが挙げられる。しかし、これらは後年になって“書き手の癖”として語られ、運営規約の真正性は疑問視されたとされる[2]。
普及と変種:ぷぷ同調・監視顔・疲労彡[編集]
普及期には、が「同調」「監視」「疲労」の三分類に整理された。分類を担ったのは、表現研究者というより“誤読を直したい人”のコミュニティであり、東京のカフェチェーンに集まって議論したと伝えられる。
同調版は、彡がわずかに長い形を取り、送信者の“反論しない姿勢”を示すとされた。監視版は、(゚)(゚)の左右が片方だけ強調されるように見えるフォント環境で発生し、その結果「監視されているが怒っていない」状態を表す符号として扱われたとされる。疲労彡は、反復して使うほど弱っていくとされ、二日で使用者の気力が落ちるという(誰が測ったかは不明の)実感値が共有された[6]。
さらに、変種として「彡(゚)(゚)→彡(。)(。)」「彡(゚)(゚)→ミ彡(゚)(゚)」などの派生が生まれたとされるが、これらは「同じ意味にしたい人が“気分で変えた”」結果だとする説がある。実際、あるまとめサイトでは、派生が増えるたびにスレが荒れ、最終的に“正しい彡”が何かをめぐる儀式化が進んだと報告されている[7]。
社会的影響[編集]
は、言語学のような硬い学問ではなく、「誤解したくない」実務の中で強く受け入れられたとされる。特に企業のカスタマーサポート部門が、クレーム対応における“温度差”を下げるために、定型文の一部を符号に置き換えたという証言がある。
たとえばの架空企業ではあるがが、2011年の社内メッセージにて「謝罪の文言より先に彡(゚)(゚)を置く」方針を採用したとされる。これにより初動返信の平均がに短縮したと社内資料で語られたが、資料には「対象は自己申告の怒り度上位顧客」と注記されている。つまり因果は曖昧であるが、効果“っぽさ”だけが先行したという指摘がある[8]。
また、政治的文脈でも観測された。選挙期間中に、特定の候補への沈黙支持を、直接名指しせずの反復で示す「無名の拍手」が出現したとされる。ただし、これが本当に支持を意味したのか、単なる絵文字疲れなのかは判別が難しく、批判側は「記号による責任の希薄化」として糾弾したと報道されている[9]。
批判と論争[編集]
批判としては、が曖昧さを武器にするため、受け手の解釈負担が増えるという点が挙げられる。特に古い端末では彡のカーブが潰れて“別の感情”に見えることがあり、誤読が連鎖した事例が記録されたとされる。
一方で、「誤読こそコミュニティの調整機構である」とする擁護もある。すなわち、誤読が起きたときに、相互に“正しい彡”を教育し合うことで関係が作られるという考え方である。ただし、この教育が過熱すると、今度は“正しさの査定”が暴力化し、彡の形状をめぐる職人戦が始まると指摘される[10]。
さらに、盗用問題も議論された。ある研究者は、が特定の団体のシンボルを連想させるように変化した時期があると述べ、「記号の商標化」や「表現の囲い込み」が起きたと指摘した。ただし、当時の団体名は伏せられ、後から「それは単なるフォントだ」と反論が出たという経緯がある[11]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 中村理紗『掲示板表情学—(゚)の微分と社会—』新潮技術文庫, 2012.
- ^ Margaret A. Thornton『Semiotic Delays in Anonymous Chats』Journal of Digital Gesture Studies, Vol. 7 No. 2, pp. 41-63, 2016.
- ^ 【文部省学術端末所作調整班】『即時反応文体の試作報告書(内報)』文部省, pp. 12-58, 2003.
- ^ 小倉春彦『記号に責任はないと言った日』東京大学出版局, 2008.
- ^ 山手拓『空気救命プロトコルの設計思想』大阪通信工学会誌,第18巻第4号, pp. 201-229, 2010.
- ^ イザベラ・モラレス『疲労彡と反復の心理物理』The International Review of Textual Microfaces, Vol. 3 No. 1, pp. 9-27, 2014.
- ^ 匿名編集局『“正しい彡”議論の全ログ(まとめ)』アノニム出版社, pp. 1-300, 2015.
- ^ 北海デリバリー株式会社『クレーム初動の温度設計:符号導入効果』社内資料, pp. 3-19, 2011.
- ^ 鈴木亜希『政治的沈黙の記号化—彡(゚)(゚)から読み替える—』政治コミュニケーション研究,第22巻第1号, pp. 77-99, 2013.
- ^ 田中正輝『曖昧さの教育と共同体の形成』言語社会学年報, Vol. 10 No. 3, pp. 300-331, 2017.
- ^ Kenta Hoshino『On Font-Dependent Emotion Misattribution』Proceedings of the Symposium on Interface Semantics, pp. 88-104, 2019.
外部リンク
- 彡(゚)(゚)研究所
- ぷぷ同調アーカイブ
- 間符号辞典(非公式)
- 空気救命プロトコル資料庫
- 正しい彡検定ベンチ