必殺・ポポンガチュー
| タイトル | 必殺・ポポンガチュー |
|---|---|
| ジャンル | 異能アクション、怪奇冒険、ブラックコメディ |
| 作者 | 三ツ橋 玲央 |
| 出版社 | 玄槍社 |
| 掲載誌 | 月刊グラディオール |
| レーベル | グラディオール・コミックス |
| 連載期間 | 1997年3月号 - 2004年11月号 |
| 巻数 | 全18巻 |
| 話数 | 全142話 |
『必殺・ポポンガチュー』(ひっさつ・ぽぽんがちゅー)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『必殺・ポポンガチュー』は、末から前半にかけて流行した「音撃異能」系の代表作とされる作品である。拳法、民俗学、都市伝説、深夜特撮の文法を混ぜ合わせた独特の作風によって、当時の少年誌・青年誌の境界に位置する読者層から強い支持を集めたとされる[1]。
作品タイトルの「ポポンガチュー」は、作中で敵の急所を三拍子で打つ必殺技名であると同時に、の港町で伝わる鳴り物儀礼に由来するという設定が語られている。ただし、この由来については連載初期に編集部が後付けで整えたものとする説もあり、ファンの間では長らく論争の対象となった[要出典]。
発行部数は累計1,240万部を突破したとされ、にはテレビアニメ化、さらに舞台化、ドラマCD化、携帯電話用短編配信などのメディアミックスが行われた。特に地方の深夜帯で放送された第17話「三味線岳の逆回転」は、放送当日に問い合わせが1,800件を超えたという逸話が残っている。
制作背景[編集]
作者の三ツ橋玲央は、もともと中野区の貸本系同人サークルで活動していた人物で、ごろに「肉体の動作を擬音化した漫画」を構想したとされる。『必殺・ポポンガチュー』の原型は、同人誌『鉄菓子少年録』の巻末に載った4ページ漫画で、そこに登場した雑魚敵の断末魔が「ポポン」であったことから発展したという。
連載開始時、編集部は当初タイトルを『必殺!! ポポンガチェン』に変更する案を提示したが、三ツ橋が「語感が硬すぎる」として拒否したため、最終的に現行題名に落ち着いた。なお、題字ロゴの「・」の位置は、のロゴデザイン室が11案を比較したうえで決定したとされるが、実際には担当編集の昼休みの落書きが採用されたという証言もある。
作画面では、当時としては珍しくで送られた修正指示がそのまま写植に反映され、線の荒さが作品の勢いとして評価された。また、連載第1話の扉絵に描かれた「ポポンガチュー・フィールド」は、のちにの某イベント会場に再現ブースが設けられ、来場者数は2日間で約4万6,000人に達したとされる。
あらすじ[編集]
黒砂編[編集]
物語は、横浜市の埋立地に建つ古い市場「黒砂中央卸売仮設棟」から始まる。主人公の火無瀬イオリは、魚の競り声の中にだけ聞こえる異音「ポポン」を追って、失踪した父の手帳を手がかりに地下水路へ潜る。そこで彼は、三拍子で骨格のズレを正す古流拳「ポポンガチュー」を継承してしまう。
この編では、毎話のように市場の天井が崩れ、かつて海に沈んだの倉庫街が一瞬だけ浮上する描写が繰り返される。第6話でイオリが「右手で二拍、左足で一拍」と呟きながら巨大なタコ型怪人を封じた場面は、連載初期の読者アンケートで1位を獲得したとされる。
白拍子山編[編集]
次章では、イオリ一行がの白拍子山にある廃ロープウェイを訪れる。山中では、古文書を写した紙吹雪が風に乗って意思を持つかのように舞い、登場人物たちはそれを読むために逆立ちで移動しなければならないという奇妙なルールが導入された。
ここで初登場する敵組織は、音を奪うことで武器を無力化する集団として描かれた。第28話では、同盟の首領・黒沼ガルシアが、標高1,733メートルの展望台で「山は黙るほど強い」と語るが、直後に観光客の持ち込んだスピーカーで敗北する展開が、奇妙なリアリズムとして語り草になった。
終拍流転編[編集]
終盤では、ポポンガチューが単なる必殺技ではなく、世界そのものを更新するための「拍動式記述法」であったことが明かされる。イオリたちは千代田区の地下にある旧帝都記録庫へ入り、開閉するページの間に封じられた「未発生の事件」を順番に消していく。
最終決戦では、技の完成形である「必殺・ポポンガチュー零式」が披露され、敵味方を含む全登場人物の台詞が1コマだけ無音になる演出が用いられた。この回は掲載時に「漫画なのに読者が息を止めた」と評され、のちに単行本で1ページ増補された。
登場人物[編集]
火無瀬 イオリは本作の主人公で、出身の17歳という設定である。無口であるが、口を開くたびに周囲の空気圧が変わるため、本人は会話を極端に短くする癖がある。連載中盤で、祖父が実はの「拍術研究家」であったことが判明し、血統ものとしての側面が強まった。
鯨丘 ミナはヒロインで、廃寺の鐘楼を住処にしていた元雑技団員である。彼女は技を受ける前に必ず竹笛で4拍子を鳴らす習性があり、作中では「鳴らすことで攻撃の軌道を測る」役割を担った。人気投票では3回連続1位を記録したとされるが、投票用紙の半数が同じ筆跡だったという噂もある。
黒沼 ガルシアは敵組織の総帥で、銚子市の出身という珍妙な経歴を持つ。元は海洋気象庁の臨時研究員だったが、波音を消す研究を進めるうちに、あらゆる「拍」を否定する思想へと傾倒したとされる。作中ではもっとも理屈っぽい悪役として知られている。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、人間の身体には「拍核」と呼ばれる器官が存在し、感情が高ぶると第3肋骨の裏側で微弱な振動を起こすとされる。ポポンガチューは、この振動を三段階で増幅し、対象の筋肉記憶を上書きする技法であると説明される。科学的には意味不明であるが、作中ではの論文が示唆されるなど、妙に本格的な裏付けが付与されている。
また、作中には「チュー語」と呼ばれる独自の掛け声体系が存在する。これは戦闘中の呼吸法であると同時に、古い祭礼歌の文法を簡略化したものとされ、地域ごとに発音が異なる。とくに沿岸部の「ポポン・チュン派」は、最後の音を鼻に抜くことで潮流を読むという設定になっており、設定資料集では2ページにわたり発音記号が載っている。
世界観の根幹には、「記録されない出来事は起こったことにならない」という法則がある。これにより、敵が強くなるほど作中のコマ割りが細かくなり、最終的には1ページに96コマが詰め込まれる回もあった。編集部は当初これを「絵が窮屈すぎる」と懸念したが、読者アンケートでは「情報量が多くて得した気分になる」と好評だった。
書誌情報[編集]
単行本はからグラディオール・コミックスとして刊行され、全18巻が発売された。第1巻は10月、第18巻は2月にそれぞれ発売され、累計発行部数は紙版・電子版合算で1,240万部を突破したとされる。
各巻には巻末特典として「拍の観察メモ」が付属し、作者が取材先で録音した駅の発車メロディーや、の防波堤で採取した波音の譜面が掲載された。とりわけ第9巻の帯に記された「読めば肩が軽くなる」という宣伝文句は、当時の書店員の間で妙に評判となった。
また、限定版には「ポポンガチュー反復シール」が封入され、3枚集めると応募者全員に“無音の必殺ポスター”が送付された。なお、このポスターは配送途中で折れないよう三つ折りで送られたが、かえって技の軌跡が再現されるとしてファンの間で高値で取引された。
メディア展開[編集]
には系列にてテレビアニメ化され、全26話が放送された。アニメ版では必殺技発動時に実写の手拍子映像が挿入される演出が採用され、深夜帯にもかかわらず視聴率6.8%を記録した回があるとされる。
さらに、にはの劇団「空白劇場」によって舞台化され、出演者が本当に3拍子で床を踏むため舞台床の補強費が想定の2.4倍に膨らんだという。ドラマCD版では黒沼ガルシア役に重低音の効いた声優が起用され、ファンからは「台詞を聞くと背筋が伸びる」と評価された。
ゲーム化企画も存在し、携帯端末向けの音律アクション『ポポンガチュー 〜三拍子の逆襲〜』が配信されたが、端末ごとに判定が異なり、成功率が最大17%しか出ない機種があった。なお、これを「作品世界と現実の拍が同期しているため」と説明する広告文が問題視されたが、逆に話題を呼んだ。
反響・評価[編集]
本作は、当初は「勢いだけの深夜漫画」と見られていたが、民俗学的なモチーフと過剰な擬音表現の組み合わせが再評価され、以降は研究対象としても扱われるようになった。とくに人文科学研究所の公開講座で「拍動と物語構造」という題で取り上げられた際には、定員140名に対して応募が1,900件を超えたという。
一方で、難解な設定と途中から増え続ける専門用語のため、初見では全体像を把握しづらいとの批判もあった。また、連載後期の展開については「必殺技の説明が長すぎる」とする声と、「説明が長いこと自体が技の強さである」とする擁護が拮抗した。編集後記では作者自身が「3回に1回くらい読者に置いていかれてほしい」と書いており、これは名言として引用されている。
なお、小樽市で行われた原画展では、来場者が展示パネルの前で無意識に手拍子を始める現象が相次ぎ、警備員が「静かにご鑑賞ください」と注意するほどだった。これにより本作は、一部のファンから「読むと身体が先に理解する漫画」と呼ばれた。
脚注[編集]
[1] 三ツ橋玲央『必殺・ポポンガチュー 連載記録抄』玄槍社編集部、2006年。 [2] 月刊グラディオール編集部「新連載告知と拍の研究」『月刊グラディオール』1997年3月号、pp. 12-15。 [3] 早瀬澄子「音律異能漫画の成立と市場受容」『現代大衆文化研究』Vol. 14, No. 2, 2011, pp. 44-59。 [4] 黒田一真『深夜アニメにおける無音演出の系譜』玄槍社学術文庫、2015年。 [5] 国立拍動医学研究所 編『拍核の存在証明に関する試論』第3版、2004年。 [6] 斎藤ミドリ「三拍子技法と読者身体反応の相関」『漫画表現学報』第22巻第4号、2018年、pp. 101-118。 [7] 『アニメ版 必殺・ポポンガチュー 公式設定資料集』ブレイズテレビ出版局、2003年。 [8] 杉本丈「港湾民俗と擬音信仰」『民俗と記号』Vol. 8, No. 1, 2009, pp. 7-21。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三ツ橋玲央『必殺・ポポンガチュー 連載記録抄』玄槍社編集部、2006年.
- ^ 月刊グラディオール編集部「新連載告知と拍の研究」『月刊グラディオール』1997年3月号、pp. 12-15.
- ^ 早瀬澄子「音律異能漫画の成立と市場受容」『現代大衆文化研究』Vol. 14, No. 2, 2011, pp. 44-59.
- ^ 黒田一真『深夜アニメにおける無音演出の系譜』玄槍社学術文庫、2015年.
- ^ 国立拍動医学研究所 編『拍核の存在証明に関する試論』第3版、2004年.
- ^ 斎藤ミドリ「三拍子技法と読者身体反応の相関」『漫画表現学報』第22巻第4号、2018年、pp. 101-118.
- ^ 『アニメ版 必殺・ポポンガチュー 公式設定資料集』ブレイズテレビ出版局、2003年.
- ^ 杉本丈「港湾民俗と擬音信仰」『民俗と記号』Vol. 8, No. 1, 2009, pp. 7-21.
- ^ 小橋洋平『深夜帯における異能作品の視聴動態』白銀社、2012年.
- ^ 長谷川ルリ「ポポンガチュー語の音韻構造」『比較架空語学』第5巻第1号、2014年、pp. 3-19.
外部リンク
- グラディオール文庫データベース
- 玄槍社アーカイブ
- ポポンガチュー研究会
- 拍動文化資料館
- 深夜漫画年鑑オンライン