急性エロがり症候群
| 分類 | 精神身体反応症候群 |
|---|---|
| 提唱 | 日本羞恥神経学会 |
| 初出 | 1978年ごろ |
| 主な症状 | 突然の耳介発赤、発話回避、椅子の背もたれへの過剰接触 |
| 原因 | 笑い・気まずさ・古い掲示物の反復視認など |
| 標準検査 | 羞恥誘発面接、薄明下自己申告法 |
| 関連地区 | 渋谷、新宿、横浜中華街周辺 |
| 対処 | 静穏化、鏡面刺激の遮断、甘味飲料の投与 |
急性エロがり症候群(きゅうせいえろがりしょうこうぐん、英: Acute Erogari Syndrome)は、やに対して突発的な羞恥亢進と姿勢収縮を示すとされる、にの医療現場で報告された症候群である。初期の症例群ではが一定せず、のちにの提唱を経て現在の名称に整理されたとされる[1]。
概要[編集]
急性エロがり症候群は、外見上は単なる赤面や気まずさに見えるが、本人の主観では「社会的に過熱した状態」へ一気に移行する点が特徴である。特に、・・深夜のなど、逃避経路が限定された空間で強く現れるとされる。
この症候群はの周辺で観察された症例記録を起点に、のちにとの境界領域で研究対象となった。なお、当初は「エロ化性羞恥反射」と呼ばれたが、患者団体が「症状名として露骨すぎる」として抗議し、現在の名称に落ち着いた経緯がある[2]。
歴史[編集]
発見の経緯[編集]
最初に記録されたのは、の小規模診療所であったとされる。診療録には、患者がラジオ体操の放送中に突然「意味もなく背筋を伸ばし、視線を床に落とし、後退りした」とあり、担当医のが「単なる照れでは説明しがたい」と記したことが、後年の引用で有名になった[3]。
1982年にはの港湾労働者を対象とした調査で、昼食時にを開封した瞬間に症状が誘発される例が複数見つかった。研究班は、弁当箱の蓋裏に付着した湿気が「自己注視を過剰に高める」と結論づけたが、この仮説は後にほぼ支持されなかった。
学会による整理[編集]
、はの貸会議室で「急性エロがり症候群暫定診断基準」を採択した。基準には「急激な首の縮み」「自分の名前を呼ばれる前からのうなずき」「『ちょっと失礼します』の頻回使用」など、臨床上きわめて観察しやすいが再現性に乏しい所見が並んでいた。
一方で、同学会はに「鏡の前でだけ重症化する例」が一定数あると報告し、これをと命名した。会場では拍手が起きたが、後に議事録の脚注へ小さく「実証は不十分」と追記されている。
社会への浸透[編集]
に入ると、インターネット掲示板で「エロがり」は半ば冗談として拡散し、症候群名だけが一人歩きした。とくにのゲームセンターで発症したという投稿が話題となり、同地のには「赤くなるのが止まらない」という相談が月平均38件寄せられたとされる[要出典]。
その後、の健康情報番組で「気まずさの身体化」という一般向け解説が行われ、症状概念は一度だけ全国区になった。もっとも、放送翌週には番組内の専門用語が視聴者アンケートで七割以上誤読され、研究者の側が説明に追われる結果となった。
症状と診断[編集]
典型例では、発症の前駆として「妙にまばたきが増える」「ペンを必要以上に回す」「相手の発言に対し0.7秒遅れて笑う」といった前兆がみられるとされる。重症例では、の発赤が以内に左右対称へ広がり、本人はそれを隠そうとして逆にで顔面中央部を圧迫する。
診断にはが用いられ、質問紙の第4項「近所の人に見られていると思う頻度」が有効性の高い項目として知られている。なお、の研究班は、薄明条件下での自己紹介を3回繰り返させると感受性が17%上昇するという結果を示したが、被験者数が24名であったため、学術的評価は分かれている。
鑑別としては、単なる、集団面接時の緊張、または発表資料の誤字を見つけた直後の社会的絶望などが挙げられる。特に「自分の苗字だけがスライドに大きく表示された場合」は、急性エロがり症候群との境界が曖昧であるとされる。
病態仮説[編集]
羞恥神経過敏説[編集]
最も広く引用されるのは、のらが提唱した羞恥神経過敏説である。これは、社会的注目を受けた瞬間に扁桃体周辺の「恥ずかしさ回路」が暴走し、身体の防御反応として縮こまり動作が出現するという仮説である。
中村らはさらに、の実験で、被験者に「おでんの具を一つ選んでください」とだけ言い続けると症状が誘発されやすいと報告したが、再試験では結果が大きく揺れた。研究室の一部では、これは被験者ではなく実験者側が先に照れていたためだと噂された。
都市気圧変動説[編集]
一方、の都市環境班は、急性エロがり症候群の多発がの混雑率と相関するとして、これを都市気圧変動説と呼んだ。特に、からへの移動中に、広告看板の視線が「患者の自己意識を増幅させる」という説明がなされた。
この説は、看板の人物像が患者を見返しているように感じられる「相互羞恥現象」を導入した点で評価されたが、説明が長すぎるために一般臨床には普及しなかった。
甘味回復仮説[編集]
にはの食品心理班が、糖分摂取が発作後の回復時間を平均11分短縮するとのデータを発表した。これを受けて、院内売店ではとが処方同等品として扱われた時期がある。
もっとも、同班は「甘味そのものが治療するのではなく、甘味を受け取るという事実が患者の自尊心を回復させる」と補足しており、学会誌では「医療というより接遇の問題ではないか」との書評が付された。
治療と対応[編集]
標準的対応は、まず発症環境から刺激を減らすことである。具体的には、蛍光灯の照度を下げ、鏡面素材を布で覆い、会話を単位に区切る方法が推奨された。特に内では、ボタン脇に配置された案内図が症状を悪化させるとして、案内板だけが一時的に撤去された例もある。
薬物療法としては、のほか、地方病院では独自に「冷やし麦茶法」が用いられた。これは発症直後に常温の麦茶をゆっくり飲ませることで自己意識を間延びさせる手法で、成功率は施設差が大きい。なお、の試験では、笑いを堪えながら治療説明を行う医師の方が改善率が高かったという、きわめて困った結果が残っている。
患者教育では、「赤面は失敗ではない」「沈黙は必ずしも悪化ではない」といった再定義が重視される。もっとも、パンフレットの最後に「ただし人前で『俺、今きてる』と宣言するのは避けてください」と書かれており、編集会議の痕跡がうかがえる。
文化的影響[編集]
急性エロがり症候群は、医学よりもむしろとにおいて長く生き残った概念である。とりわけの即売会では、症状名をもじったサークル名が毎年数十件確認され、2016年には「エロがり対策本」が同人誌売上上位20位に入ったとされる。
また、の深夜番組では「きまりが悪い瞬間に床を見る角度を競う」企画が放送され、これが症状の一般理解を一時的に誤らせた。研究者側は反発したが、結果的に「症候群を説明するには、まず視線の置き場を考えねばならない」という奇妙な教育効果を生んだ。
近年では、就活面接やオンライン会議におけるカメラ恐怖の文脈で再解釈されている。とくに以降、画面越しに自分の顔が表示される環境が患者の発作率を上げたとされ、これをの再流行と呼ぶ論者もいる。
批判と論争[編集]
本症候群をめぐっては、そもそも疾患概念として成立するのかという批判が根強い。の一部委員は、「社会的不快を病名化しただけではないか」と指摘し、の総会で採択延期を求めた。
また、初期症例の多くがに偏っていることから、都市生活者特有の比喩を医療化したに過ぎないとの見方もある。一方で、地方の温泉地でも発症報告があるとして、やの旅館組合が静かに協力していたという記録が残る[要出典]。
さらに、症例集に登場する「発作時の決め台詞」がどれも妙に文学的である点も論争の的である。後年の調査では、記録者のが当時流行していた携帯小説の愛読者であったことが判明し、記述の一部に脚色が含まれる可能性が示唆された。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 高瀬俊一郎『急性エロがり症候群症例集成』東京医学社, 1984, pp. 12-39.
- ^ 中村静枝・佐伯宏『羞恥神経過敏の臨床』日本臨床心理出版, 1999, Vol. 18, No. 3, pp. 201-219.
- ^ S. Nakamura, H. Saeki, “Acute Erogari Syndrome and Urban Self-Consciousness,” Journal of Applied Embarrassment Studies, 2001, Vol. 7, No. 2, pp. 55-74.
- ^ 渡辺精一郎『現代赤面学入門』青嶺書房, 1992, pp. 88-113.
- ^ Margaret A. Thornton, “Mirror-Induced Erogari Episodes in Metropolitan Clinics,” The International Review of Shame Medicine, 2008, Vol. 12, No. 4, pp. 410-433.
- ^ 日本羞恥神経学会 編『急性エロがり症候群 暫定診断基準 第3版』学会事務局, 1995, pp. 1-16.
- ^ 国立精神・神経医療研究センター研究班『薄明下自己申告法の有効性』精神神経研究, 2013, 第45巻第1号, pp. 23-41.
- ^ 佐伯宏『エロがりの社会史』文化病理研究所, 2004, pp. 140-168.
- ^ Y. K. Hayashi, “Sweet Beverage Response after Acute Erogari Attack,” Food and Mood Quarterly, 2014, Vol. 9, No. 1, pp. 4-18.
- ^ 中野由里子『都市気圧変動説とその周辺』地方医学評論, 2017, 第31巻第2号, pp. 77-96.
- ^ 東雲一馬『きまりが悪い瞬間の比較文化史』霞文庫, 2006, pp. 5-29.
外部リンク
- 日本羞恥神経学会アーカイブ
- 都市赤面研究センター
- 急性エロがり症候群データベース
- 羞恥臨床ニュースレター
- エロがり民間伝承収集室