新けものフレンズ
| タイトル | 新けものフレンズ |
|---|---|
| ジャンル | 群像劇、擬人化、サバイバル、学園 |
| 作者 | 三枝 惣太郎 |
| 出版社 | 星雲出版 |
| 掲載誌 | 月刊アニマル・コア |
| レーベル | コア・コミックス |
| 連載期間 | 2014年5月号 - 2018年11月号 |
| 巻数 | 全9巻 |
| 話数 | 全47話 |
『新けものフレンズ』(しんけものふれんず)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『新けものフレンズ』は、とを掛け合わせた独特の作風で知られる作品である。舞台となる「サファリ・リング」において、人間の言語を習得した動物型少女たちが共同生活を営む様子を描き、連載開始直後から読者層を急拡大させた。
本作は、元来はの広報企画として立ち上がったものが、途中で編集会議の判断により長編漫画へ転化したという珍しい経緯を持つ。『新』の名は再出発を意味すると同時に、旧来の分類学を更新するという作者の思想を示すものとされる[2]。
制作背景[編集]
企画の起点は、に星雲出版編集部へ持ち込まれた、わずか14ページの試作冊子『けもの案内帳』である。これはの小規模印刷所で、三枝が深夜の校正待ち時間に描いた落書きを元に構成されたとされ、初期稿にはキリンではなく「電柱を見間違えるロバ」が主役として登場していた[要出典]。
連載化にあたっては、当時の編集長・が「動物図鑑を読むように物語を進めよ」と指示したことが重要であった。これにより各話末に必ず1つだけ架空の生態メモが付される形式が確立し、読者は物語と事典を往復させられる構造になった。なお、作中に頻出する「フレンズ化」は、の観測ドローンが偶発的に発見した超微粒子の影響で説明されているが、学会では現在も半ば冗談として扱われている[3]。
あらすじ[編集]
探索編[編集]
主人公のは、サファリ・リングの中央駅で記憶を失った状態で目覚める。彼女は、案内役の・と出会い、島内に散在する「保全区画」を巡る旅へ出ることになる。探索編では、地図が正確であるほど道に迷うという逆説が繰り返され、読者から「地形描写が妙に本格的で怖い」と評された。
この編の山場は、第7話「北灯台の昼夜逆転」である。ここでミナミは、昼間にしか点灯しない灯台の管理人と対話し、サファリ・リングの夜が行政上の理由で一時停止されていることを知る。あまりに説明が役所的であったため、ネット上では設定考証ではなく公共工事資料として扱われた時期がある。
学園航行編[編集]
第2部にあたる学園航行編では、島内の移動学園船が登場する。乗組員は全員がフレンズであり、航海術、調理、気象観測を同時に授業として行うという、制度上かなり無理のある教育課程が採用されている。
ここで描かれる文化祭「潮汐祭」は、本作を代表する名場面の一つである。発光クラゲのゼリーを2000個並べる競技、午睡の長さを競う早寝選手権など、競技種目の半分以上が自治体の安全基準を満たしていないが、作中では毎年正常に実施されている。作者は後年のインタビューで「祭りは大きいほど法が追いつかない」と語ったとされる。
環境再生編[編集]
終盤の環境再生編では、サファリ・リングを管理すると、島に眠る旧型人工知能の対立が主軸となる。MOTHER-9は、フレンズたちの行動ログをもとに「最も幸福な生態系」を再計算しようとするが、その結果として全域が全天候型の草原に改造されかける。
最終決戦は、海面から1.8メートル浮上した観測塔の上で行われ、ミナミが「分類は守るためにあるのではなく、見直すためにある」と叫ぶ場面で締めくくられる。この台詞は学習教材に引用された一方、分類学会からは「概念の使い方がやや勇ましすぎる」と注記された。
登場人物[編集]
主要人物の多くは、動物の特徴と人間社会の役割を一対一で対応させた設計になっている。なかでもは、記憶喪失でありながら行政書類だけは妙に読めるという特異な性質を持ち、シリーズ全体の導線役を担った。
は、常に敬語で話すキツネ型フレンズで、作中では最も理屈っぽい人物である。元は案内標識の音声合成案から派生したキャラクターであり、単行本第3巻の余白には「人間よりも先に注意書きを読む」と記されている。なお、というペンギン型フレンズは人気投票で常に上位であったが、劇中ではいっさい泳がないため、ファンの間で「陸上ペンギン」として語り草になった。
敵対勢力としては、の監察官がいる。彼女は悪役でありながら毎回やたらと妥当な手続きを踏むため、読者アンケートでは「最も信用できる敵」として別枠扱いされた。
用語・世界観[編集]
作中世界の中核概念は、フレンズ、保全区画、ミラジェン、そして「擬似生息地」の4つである。フレンズとは、動物由来の性質を保持しつつ人語を解する存在であり、島内の各施設に居住しながら、種ごとの習性に応じた自治を行うとされる。
サファリ・リングは全周約42キロメートルの環状人工群島で、内部は12の気候帯に分割されている。北側は氷霧地帯、南側は干潟地帯、西側は夜行性生物優先区、東側は風車群が密集する物流区とされ、島内移動に必要な通行証は毎月17日に更新される。通行証の色が地位を示すという設定は、当初は読者に難解とされたが、後に「現代日本のポイントカード社会を先取りした」と再評価された。
ミラジェンは、フレンズ化の鍵となる霧状物質であるが、その起源は作中でも曖昧に保たれている。第31話で研究員が「濃度を測るたびに数値が2桁だけ増える」と記録しており、ファンの間では実質的に感情で増減する物質ではないかと考えられている。
書誌情報[編集]
単行本はからにかけてより刊行された。第1巻には連載前の試作4話が収録され、背表紙の番号が途中で1つ抜けているため、初版の一部には第2巻の前に“第1.5巻”が挟まるという珍事が起きた。
第6巻以降は特装版が同時発売され、各巻に「島内生態シール」12種のうち3種がランダム封入された。これにより全国の書店でシールだけを抜かれた紙箱が大量に返品され、出版流通史上の小さな事件として記録されている。
メディア展開[編集]
には制作によるテレビアニメ化が行われ、全24話が放送された。アニメ版は原作よりもコメディ色が強く、特に第11話の「自動改札を説得する回」はSNSで切り抜きが拡散され、シリーズの知名度を決定づけた。
その後、『新けものフレンズ the Ring』、リズムゲーム『フレンズ・クロックワーク』、および内の水族館と連動したスタンプラリーが実施された。特にスタンプラリーでは、から方面まで無意味に広い範囲を移動させる設計が話題となり、「公共交通機関で体感するメディアミックス」と呼ばれた。
また、海外展開ではの教育番組局が第1話を生態教材として再編集し、動物保護団体の一部から高評価を受けた一方、原作の謎解き要素が全削除されたため、ファンからは「最も穏やかな改変」と評された。
反響・評価[編集]
『新けものフレンズ』は、累計発行部数を突破したとされ、には一時的に社会現象となった。作品の人気は、単なる萌え擬人化に留まらず、分類学、観光政策、さらには地方博物館の来館者数にまで波及したと分析されている。
一方で、作中の生態設定は緻密である反面、説明の精度が高すぎて逆に読者を置き去りにするという批判もあった。特に第5巻の付録である「サファリ・リング風速表」は、連載漫画の付録としてはあまりに本格的で、気象予報士試験の勉強に流用した読者がいたという。
もっとも、作品の評価を決定づけたのは、敵味方を問わず全員が妙に真面目である点だとされる。結果として本作は、可愛らしい外観の内部に行政文書的な硬さを忍ばせた異色作として記憶されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北川良平『擬態と群像の編集術』星雲出版, 2019, pp. 44-71.
- ^ 三枝惣太郎『新けものフレンズ制作ノート』コア・コミックス, 2018, pp. 12-39.
- ^ 伊賀上ミチ「人工群島における擬似生息地の設計」『環境設計評論』Vol. 18, No. 2, 2017, pp. 55-83.
- ^ Harold P. Linden, “Friend-Form Species and Serialized Ecologies,” Journal of Fictional Zoology, Vol. 7, Issue 4, 2018, pp. 201-229.
- ^ 水無瀬礼子『サファリ・リング観光史』海鳴社, 2020, pp. 101-146.
- ^ 田所一樹「ミラジェン粒子の観測誤差について」『季刊・仮想生物学』第12巻第1号, 2016, pp. 9-26.
- ^ Margaret A. Thornton, “Cartography of Animated Islands,” Pacific Media Studies, Vol. 11, No. 1, 2019, pp. 3-18.
- ^ 嶋崎トオル『夜だけ点灯する灯台の手引き』白波書房, 2017, pp. 5-33.
- ^ 本庄千尋「『新けものフレンズ』における分類の可逆性」『アニメ文化研究』第9巻第3号, 2021, pp. 77-94.
- ^ 『新けものフレンズ 完全生態資料集』星雲出版編集部, 2019, pp. 4-219.
外部リンク
- 星雲出版 公式アーカイブ
- 月刊アニマル・コア デジタル書庫
- 新けものフレンズ 生態資料室
- サファリ・リング 観測委員会
- フレンズ図鑑共同研究会