日本家具工業組合
| 名称 | 日本家具工業組合 |
|---|---|
| 設立 | 1898年(明治31年) |
| 設立地 | 東京府京橋区木挽町 |
| 本部 | 東京都中央区日本橋堀留町 |
| 会員数 | 約2,480社(2024年時点) |
| 目的 | 家具規格の統一、木材流通の調整、座具文化の保護 |
| 主な活動 | 組合規格の制定、展示会、技能認定、家具災害復旧支援 |
| 通称 | 日家組、またはKAGU-31 |
(にほんかぐこうぎょうくみあい、英: Japan Furniture Industry Guild)は、の家具製造業者・修復業者・設計監理者が連合し、木工規格の策定と座面高度の統一を目的として設立された業界団体である[1]。明治末期にの建具職人たちが「椅子を政治から守る」運動を起点として成立したとされる[2]。
概要[編集]
日本家具工業組合は、家具製造業における標準化と流通調整を目的とする全国組織である。特にとの規定で知られ、業界内では「見えないが、触るとわかる法律」とも呼ばれている。
同組合は、創立当初から単なる商工団体ではなく、家具を通じて生活様式そのものを改良することを理念に掲げたとされる。一方で、1920年代には組合規格が家庭内の「座り方」を画一化しすぎるとして、の一部研究者から批判を受けた記録が残る[3]。
歴史[編集]
創立期[編集]
起源は、の木挽町で開かれた「冬越し家具対策会議」に求められる。会議では、寒冷期に膨張する材の扱いをめぐって職人間で激論となり、その場に居合わせた棟梁・が「個々の匠の癖は美しいが、戸棚が勝手に鳴るのは困る」と発言したことが設立の契機になったとされる[4]。
初期の組合は、畳文化と西洋家具の衝突を調停するため、、、の三部門に分かれていた。とりわけ抽斗封印委員会は、子どもが引き出しに入る事故が相次いだことから、引き出し一段ごとに「開閉音は3.2デシベル以内」とする基準を導入したという。
戦前の拡張[編集]
末期から初期にかけて、組合はへ支部を広げた。1927年には「組合家具展覧会」がで開催され、来場者は4日間で延べ12万4,600人に達したとされる。展示品の中には、雨天時に自動で脚を1.5センチ伸ばす「可変卓」があり、新聞各紙はこれを「家庭内の土木工事」と評した[5]。
ただし、拡張の過程では木材の等級をめぐる内部抗争も起きた。特に派と派の対立は深刻で、1931年の理事会では議長席の背もたれが途中で交換される事態に発展した。これが後に「背もたれ政変」と呼ばれている。
戦後改革と規格化[編集]
、の生活改善政策に呼応する形で、組合は戦後再編を実施した。ここで導入された「JF-48規格」は、机の高さをに固定し、各家庭の食卓が書斎化しすぎないよう調整するものであった。
1955年にはの助言を受け、家具の輸出包装に「逆さにしても猫が乗れる強度」を求める独自試験が加わった。これは後に海外で好評を博し、市場では日本製家具が「静かに自己主張する家具」として紹介されたという。
事業[編集]
組合規格と認定制度[編集]
組合の中核事業は、と総称される規格群の制定である。そこには、椅子の座面は「10分間着座後に思想が沈静化すること」、書棚は「地震時に本が落ちる速度を職人が説明できること」など、実務と半ば哲学を混ぜた条項が含まれていた[6]。
1962年に始まった「家具技能師」認定制度では、受験者は実技試験として、釘を使わずに三段箪笥を組み立て、さらにその箪笥に対して1時間以内に「家族会議の場としての安定性」を説明しなければならない。合格率は初年度8.7%だったが、1970年代には逆に高騰し、問題視されたという。
展示会と広報[編集]
組合は毎年、で「全日本家具生活博」を主催しているとされる。この博覧会では、来場者が実際に座れる「会議用長椅子ロード」や、押すと背筋が伸びる「自己矯正ソファ」などが話題を集める。
1984年の展示では、組合広報部が開発した音声案内機「かぐたん」が導入され、案内の最後に必ず「お客様、立ち上がる際はご自身の家具観をお確かめください」とアナウンスしたため、各紙で小さく報じられた。なお、この年の来場者数は約31万8,000人とされるが、集計表の一部が桐箱に紛れたため、正確な数字は要出典である。
災害支援と復旧[編集]
以降、組合は「家具復旧班」を設置し、倒壊した家具の接合部を現地で再生する活動を行った。2011年のでは、会員各社が延べ1,140台の箪笥と890脚の椅子を無償修復したとされ、特にの仮設住宅では「引き出しが戻るだけで泣いた」という声が記録されている。
この分野での活動は高く評価されたが、一方で2016年には「被災地におけるテーブル高さの統一が過剰である」との指摘もあった。組合はこれに対し、現地説明会で高さ違いの座卓を12種類並べて応答したという。
社会的影響[編集]
日本家具工業組合は、住宅設計や学校備品の標準化に長く影響を及ぼしたとされる。特にの集合住宅ブームでは、組合が提唱した「四畳半対応三人掛けソファ」が若い世帯の象徴として流行し、のパンフレットにも引用された。
また、組合の月刊誌『家具と暮らし』は、単なる業界誌を超えて生活哲学の媒体として読まれた。1978年号に掲載された「棚板は人間関係を保つか」という論考は、との双方で長く引用されたとされる。ただし、同誌の編集部が一時期、紙面余白を埋めるために部材の乾燥時間を詩的に紹介していたため、学術的信頼性には揺らぎがあった[7]。
批判と論争[編集]
組合に対する批判で最も有名なのは、「家具に思想を持ち込みすぎている」というものである。1989年には夕刊で、組合が制定した「応接間における沈黙時間推奨指針」が、家庭内の会話を過度に管理するのではないかと論じられた。
また、2003年の理事会では、椅子の背もたれ角度をにするかにするかで6時間以上紛糾し、議事録には「ここで一旦、座り直しを提案」とだけ記されている。さらに、2019年には一部会員が「日本家具工業組合」の名称が堅すぎるとして、通称を「JFGA」に改称する案を出したが、長老会が「英字化は引き出しの魂を失う」として退けた。
なお、組合が制定した「木目の見え方に関する倫理綱領」は、地域材振興に寄与した一方で、若手デザイナーからは「木目の個性を行政化している」との反発も強かった。
組織[編集]
中央本部と委員会[編集]
本部はに置かれ、内部は総務局、規格局、災害復旧局、そして非公開の「静音審査室」から成る。静音審査室では、役員が椅子に座った際の軋み音を測定し、年度ごとの組合印象を算出しているとされる。
組合の最高意思決定機関は「全国家具評議会」であり、年1回開催される。2022年の評議会では、議題47号「学習机における鉛筆転がりの地方差」が採択され、以後、机天板の微妙な傾斜角に都道府県差を残す方針が確認された。これは業界関係者の間でも賛否が分かれている。
加盟区分[編集]
会員は「製造会員」「修理会員」「意匠会員」「木材会員」の四区分に分かれている。木材会員は山林組合と誤解されがちだが、実際には乾燥工程を監督する技術者集団であり、会合では木材を前にして湿度の話しかしないことで知られる。
2024年時点の会員数は約2,480社、準会員を含めると3,100超とされる。もっとも、この数値は春季の入退会が激しいため、毎年7月に微妙に変動するという。
年表[編集]
1898年 - 木挽町で設立総会が開かれる。
1927年 - 第一回組合家具展覧会がで開催される。
1948年 - JF-48規格を策定する。
1962年 - 家具技能師認定制度が始まる。
1984年 - 音声案内機「かぐたん」を導入する。
2011年 - 東日本大震災の復旧支援を行う。
2022年 - 全国家具評議会で机天板傾斜角の地方差維持が議決される。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯俊彦『日本家具規格史序説』東洋木工出版, 2008, pp. 41-79.
- ^ 渡邊玲子『座る国の近代化』木犀社, 2011, pp. 12-36.
- ^ Harold T. Mercer, “The Silent Drawer Doctrine in Early Japanese Guilds,” Journal of East Asian Material Culture, Vol. 18, No. 2, 1997, pp. 201-228.
- ^ 宮原敬一『戦後家具政策と生活様式』日本生活史研究会, 1999, pp. 88-117.
- ^ Eleanor P. Shaw, “Measuring Chair Angles in Postwar Urban Japan,” Industrial Design Review, Vol. 9, No. 4, 2005, pp. 55-74.
- ^ 高橋みどり『木目の倫理学』北澤書房, 2016, pp. 9-51.
- ^ 内田善行『組合広報と展示会の社会史』中央経済文化社, 2020, pp. 133-168.
- ^ N. Fujimura, “KAGU-31 and the Standardization of Domestic Silence,” Kyoto Papers on Social Engineering, Vol. 3, No. 1, 2018, pp. 1-19.
- ^ 『日本家具工業組合史 第三巻』日本家具工業組合史編纂室, 1974, pp. 302-355.
- ^ 『かぐたん取扱説明書とその周辺』組合資料刊行委員会, 1984, pp. 7-14.
外部リンク
- 日本家具工業組合デジタルアーカイブ
- 全日本家具生活博 公式記録室
- 木挽町近代工芸史研究所
- 日家規標準仕様閲覧館
- 家具復旧班 活動報告サイト