日本映像協会奨励賞
| 主催 | 日本映像協会 |
|---|---|
| 種別 | 映像分野の奨励賞 |
| 対象 | 新人・準新人の映像作品および制作者 |
| 授与時期 | 毎年春季(3月下旬)とされる |
| 選考方法 | 一次選考(書類・上映)と二次選考(講評会) |
| 副賞 | 協会制作スタジオの短期無償枠+記念トロフィー |
| 所在地(事務局) | 東京都港区芝浦一丁目(とされる) |
| 公式表記 | JVA奨励賞(通称) |
(にほんえいぞうきょうかいしょうれいしょう)は、映像分野の新進制作者を奨励する賞である。受賞作は比較的若い才能による挑戦として扱われ、が主催し年次で選考されるとされている[1]。
概要[編集]
は、新進の映像制作者や少人数チームによる意欲的な作品を後押しすることを目的としているとされる。評価の軸は「映像表現の工夫」「地域性や一次資料の活用」「撮影・編集・音響の総合的な統一感」などに置かれることが多い[1]。
選考の運用としては、まず一次選考では応募作品を「視聴ログ(計測)付きで提出」させ、二次選考ではと呼ばれる非公開の合評会で、審査員が同一条件で視聴し直す手続が採用されると説明されてきた。なお、会場の暗幕の厚みや、視聴距離を測るためのレーザー位置まで細かく決められていることがあり、事務局は「同じ光の中で夢を測る」と表現しているという[2]。
本賞は、国際的な映画賞のように大規模予算の作品を前提とせず、むしろ小回りの利いた制作現場で生じる“事故の創意”を肯定する文化として語られることがある。特に、受賞者に配られる「協会制作スタジオ無償枠」には、月ごとの稼働可能時間が分単位で割り当てられるとされ、配分の最小単位が“7分”であると記録されていた年もある[3]。
概要(選定基準と運用)[編集]
選定基準は年によって細部が変わるが、基本的には「映像の技術的完成度」よりも「完成までの試行錯誤の筋の通り方」が重視されるとされる。審査員は作品を評価する際に、(1)冒頭30秒の情報密度、(2)音響の“呼吸”のタイミング、(3)テロップの出し方による観客誘導、(4)編集点の意図性、(5)光源設計の整合性、の5項目を点数化するという[4]。
一次選考では、応募者が自作品の「色相分布(ヒストグラム)」と「音声ダイナミクス(RMS値)の推移」を提出する運用があったとされる。提出フォーマットが年々細分化され、ある年には「RMS値は小数第2位まで」「波形の単位はdBではなく“協会標準単位(JVAユニット)”」といった独自規格が混入したことで、ネット上で“独自世界の言語”と揶揄された経緯がある[5]。
二次選考の講評会では、審査員が作品を視聴しながら“ツッコミを短冊に書き込む”方式が採られることがあるとされ、短冊の記入欄には「嘘っぽいのに妙にリアル」「妙に科学っぽいのに出典不明」「静かすぎて怖い」など、評価項目にしては情緒的な項目が並ぶとも言われている[2]。このように、統一された採点表に見えて、運用の現場では独特の文化が積み重なっていったと説明されることが多い。
歴史[編集]
設立の経緯と“映像計測礼式”[編集]
がを設けた背景には、1960年代末から続いた“自主制作の乱立”があるとされる。国や自治体が補助金を出すほど制作が加速した一方で、撮影機材の性能差が大きく、同じ作品でも「見え方」が人によって変わりやすかったとされたのである[6]。
そこで協会内の常任委員会では、作品の価値を一定条件で比較するための“映像計測礼式”が提案されたとされる。礼式とは、審査前に会場の照度を揃え、音響の残響時間を一定に保ち、さらに視聴者の姿勢(背筋角度)を測るという、やや儀礼的な手順を指す。のちにこの手順を“儀礼の形を保ちながら人の目を育てる”ための制度として定着し、その象徴として奨励賞が位置づけられたと説明されることがある[7]。
初年度の選考規程はやけに具体的で、「審査員は視聴ログを読んでから講評に入ってはならない」「講評開始時の時計秒針は必ず“12秒前後”で止めるよう調整する」など、監査条文に近い文言が入っていたとされる。この“秒針”条文は後に形骸化したが、協会の年次報告書では“習慣として続けられた”と書かれ、半信半疑のまま引用され続けたという[3]。
発展と、受賞後の“制作スタジオ割当”[編集]
奨励賞は、受賞者に与えられる「協会制作スタジオ無償枠」が実効性を持ったことで注目されたとされる。当初は撮影機材の貸与が中心だったが、現場では“編集と音響の時間が不足する”問題が繰り返し指摘された。そのため、無償枠の配分は撮影ではなく編集工程に寄せられたという[8]。
ある年の内規では、スタジオの無償利用時間が「月内合計 1840分」「ただし連続利用は最大 73分まで」といった制約で細かく規定されたとされる。さらに、利用の予約はの事務局窓口だけで受け付け、オンライン予約は「同一曜日のアクセスが偏るため」禁止されたという。理由は“人気が集中すると機材の癖が転写される”という、映像品質に関する疑似科学的な説明で、当時の若手は半分冗談として聞いていたが、数年後に実際のトラブルが起きたことで一気に真剣味が増したとされる[5]。
受賞者の社会的影響としては、地方都市でのミニドキュメンタリーや企業の採用動画が“奨励賞フォーマット”を真似るようになったことが挙げられる。特に、協会が推奨する「音響で地域の季節を語る」考え方は、広告業界にも波及したとされ、の制作会社の間では「JVA的サウンドにすると面接辞退率が下がる」という噂が流れたとされる。ただし、関連する統計資料は未公開とされ、実際の因果関係は「読み替えである」との指摘も残った[9]。
制度の揺れと“監査委員会の夜会”[編集]
長い歴史の中で、本賞には“制度の揺れ”もあったとされる。2010年代前半、応募増に伴い審査体制が追いつかず、一次選考の視聴ログ提出に不正があったのではないかという疑念が出た。協会は問題を受け、監査を強化するために「監査委員会の夜会」を設けたとされる[10]。
夜会では、提出されたヒストグラムと音声ダイナミクスの整合性を調べる“突合儀式”が行われた。そこで発見されたとされるのが、ある応募作品が本番とは異なる素材でログを生成していた点である。ただし、当該制作者側は「編集の説明責任として、便宜的な代替素材でログを作っただけ」と説明し、協会内部でも解釈が割れたという[10]。
この事件は、制度の透明性の議論を呼び、本賞の運用は“厳格”へと寄った。一方で、若手は「ログを整えるのが目的化する」と不満を漏らした。協会は「創意を壊さないために規格を最小化した」と説明したが、最小化の基準が“全体の仕様書を1.3倍にすること”だったため、皮肉として受け止められたという[11]。
批判と論争[編集]
批判として多いのは、奨励賞が“計測礼式”に寄りすぎている点である。作品を評価するはずが、視聴ログの提出形式や独自単位(JVAユニット)への適合が重くなり、映像表現の自由が削がれるのではないか、という指摘があった[5]。特に、審査員の講評短冊に見られる情緒的評価が、主観の幅を広げると懸念された。
また、受賞者のその後のキャリア形成に関しても論争があった。協会は「受賞により協会スタジオ枠が確保されるため制作が前進する」と説明してきたが、ある年の集計では受賞者のうち 38% が“スタジオ枠を実利用できなかった”とされる。この数字は協会の資料としては提示されたものの、理由の内訳が「生活環境」「関係者都合」「天候(※雷雲注意)」のように分類され、研究者からは「会計として成立していない」との批判が出た[12]。
さらに、受賞作が地域を描く際に「地域の季節感が先に商品化される」問題が指摘された。協会は“地域性の表現支援”を謳ったが、実際には受賞映像が後に観光キャンペーンのBGM素材として転用される例が増えたという。これに対し、協会側は「素材転用は制度上も許容される」としつつも、出典表記の徹底が十分ではなかったとして、編集ガイドラインの改定を行ったと報告されている[1]。ただし、改定ガイドラインの施行日が“昭和”表記のまま残っていたため、現場では読み間違いが起きたと笑われたという。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 日本映像協会 編『日本映像協会年次報告書(奨励賞関連資料)』日本映像協会, 1979.
- ^ 山田啓太『奨励賞制度における視聴ログの運用と評価構造』映像評価研究会, 1996.
- ^ M. Thornton『Quantifying Subjective Praise in Film Juries』Journal of Visual Assessment, Vol. 12, No. 3, pp. 41-58, 2004.
- ^ 鈴木美咲『音響ダイナミクスが観客誘導に与える影響に関する一考察』日本音響教育学会, 第7巻第2号, pp. 91-103, 2011.
- ^ Catherine W. Lewis『The JVA Unit Controversy: When Standards Become Stories』International Review of Media Policy, Vol. 19, No. 1, pp. 1-22, 2013.
- ^ 高橋慎一『地域映像と「季節の語り」—奨励賞フォーマットの波及—』地域メディア研究所, 2018.
- ^ 渡辺精一郎『映像計測礼式の社会技術史』映像工学叢書, 第3巻第4号, pp. 205-231, 1987.
- ^ 佐藤隆之『講評会における短冊記入方式と合意形成』映像制作法研究, pp. 33-47, 2009.
- ^ International Guild of Audiovisual Arts『Studiobased Incentives: Case Studies』IGAA Press, Vol. 5, pp. 77-104, 2016.
- ^ 藤原和泉『“秒針条文”と審査の儀礼性:日本映像協会の内部文書分析』映像史研究, 第21巻第1号, pp. 12-30, 2020.
- ^ (タイトルが微妙におかしい)『日本映像協会奨励賞の雷雲分類と実務上の教訓』港区災害映像監督部, 2002.
- ^ 稲田由里『受賞後実利用率の算定モデルとその限界』映像政策紀要, Vol. 8, No. 2, pp. 160-175, 2015.
外部リンク
- JVA奨励賞アーカイブ
- 日本映像協会 公式講評会ログ
- 港区制作支援窓口(記録倉庫)
- 映像計測礼式解説ページ
- JVAユニット換算表