「杏仁豆腐のもこもこパジャマ」
| 分野 | サブカルチャー・ネット文化 |
|---|---|
| 起源とされる時期 | 概ね2013年ごろ |
| 主な媒体 | 掲示板、画像ミーム、短尺動画 |
| 象徴モチーフ | 杏仁豆腐/ふわふわ素材/パジャマ |
| 活動形態 | 感想の頒布(レシピ改変・擬人化画像・擬似擬音) |
| 成立形態 | 二次創作の連鎖による言葉の定着 |
杏仁豆腐のもこもこパジャマ(きょうにんどうふのもこもこパジャマ)とは、冷たいデザートを擬似的に“着る”ような気分を共有する和製英語的造語を指す。〇〇を行う人をもこパジャヤーと呼ぶ。
概要[編集]
「杏仁豆腐のもこもこパジャマ」は、インターネットの発達に伴い拡張した“食感メンタル”の表現語として知られている。具体的には、杏仁豆腐のとろり感を、冬の寝具に変換して語ることで、心の温度を調整したように見せる文化である。
明確な定義は確立されておらず、派生語も多い。にもかかわらず、2010年代後半には、画像と短文の組み合わせで瞬時に伝達できる汎用ミームとして認知され、もこパジャヤーの自称人口は「全国で約1,942人(2020年の推計)」とする集計も出回った。もっとも、その数は“ログの残存率”を補正していないとして異論がある[1]。
定義[編集]
この語は、冷たいデザートの食感を「擬似衣装」に置き換える比喩として用いられる。杏仁豆腐の表面に走る細かな揺れを“起毛”になぞらえ、食べる瞬間を「着替え」に見立てる点が特徴とされる。
また、行為者は「もこパジャヤー」と呼ばれる。もこパジャヤーは、杏仁豆腐を現物で用意する場合もあるが、レシピを口頭や文章だけで再現する「乾式もこ化」も盛んになった。さらに、写真撮影時に入れる“擬音タグ”(例:「ぷるん」「もこっ」)を、頒布資料の共通フォーマットとする習慣がある[2]。
この文化には“もこもこパジャマ”という和製英語的な語感だけが独立して流通した時期があるとされる。すなわち、必ずしも杏仁豆腐を食べないにもかかわらず、「もこパジャヤーです」と名乗る者も現れ、定義の揺れが物語化に寄与したという指摘がある[3]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源としては、2012年末にの小規模カフェ「雲海喫茶アルゴリズム」(札幌市内ではないとされる)で行われた“食感擬装ナイト”が挙げられている。参加者は、杏仁豆腐の器に温度差を作る試作器具を置き、スプーンを入れる直前にだけ甘い香りを強調する仕掛けを披露したとされる[4]。
当時、掲示板「もこもこ掲示板」では、レポートが「甘いのに眠い」「冷たいのに柔らかい」という矛盾語で埋まり、それが翌年のミーム化の土壌になったと説明される。特に、店員の提案した合言葉「杏の粒度、豆の密度、寝具の層度」が、のちに略されて「杏豆寝層」と呼ばれたという記録がある[5]。
年代別の発展[編集]
2013年は、画像投稿が中心であった。投稿テンプレートには「器(白)/泡(少)/影(長)」などの条件が入り、もこパジャヤーは“見た目の説明で食感が伝わる”ことを競ったとされる。2014年には擬音が標準化し、特定の擬音(「もこ…」「ぷる…」)を使うと反応率が上がるとする観測が共有された。
2016年には、の同人即売会「第7回やわらか寝具系技術展示会」で、杏仁豆腐の“もこ化”手順を同人誌の形で頒布する者が現れた。頒布部数は「当日限定で312部」とされるが、数え方が不明(“手渡しの返金分”を含めるか否か)であるため、正確性は揺れている[6]。
2018年は、短尺動画に移行し、スプーンの角度と照明の色温度を数字で語る文化が強まった。たとえば「白色LED 4000K、影の先端まで 7.2mm」などの“過剰精密”が好まれ、明確な定義は確立されておらずとも、文化は自己増殖したと記される[7]。
インターネット普及後[編集]
インターネットの発達に伴い、流通は国内にとどまらず、ミーム輸出が試みられた。2019年には、英語圏のファンが「pajama dessert mood」という訳語で紹介したが、語感が合わないとして、日本語原文のまま引用する文化が残ったとされる。
2021年ごろからは、配信サイトで“もこ化ASMR”が盛んになった。配信者は、杏仁豆腐の表面に指を触れた音を加工し、「衣装の起毛工程」として説明する。ここでは、実際の調理よりも物語の説明が重視されたという指摘がある[8]。
一方で、初期の掲示板文化を知らない層が「食べ物レビューだ」と誤解する事例も増え、コメント欄でしばしば火花が散ったとされる。誤解を“もこ化”の儀式として受け入れることもあり、議論が文化の内側に吸収されていったという見方がある[9]。
特性・分類[編集]
もこパジャヤーの表現は、一般に「装着」「擬音」「層度」の3系統に分類されるとされる。装着系は“着用”の比喩が前面に出て、擬音系は「もこっ」「ぷるん」といった音の文字化が主役である。層度系は、質感を段階(例:層1〜層4)で語る傾向があり、数字のロマン化が見られる[10]。
さらに、派生表現として「杏豆夜更かしパジャマ」「冷却ふわ綿カバー」「寝具転写プリン(ただし杏仁豆腐縛りが強い)」などが報告されている。これらは“必ずしも杏仁豆腐である必要がない”とされつつも、コミュニティ内では「材料の裏切りは温度差の暴力」と冗談交じりに言及されることがある[11]。
投稿作法としては、(1)器の色を記す、(2)撮影角度を記す、(3)睡眠状態を短く宣言する、という手順が定例化した。たとえば「器=白皿、角度=45度、睡眠=今夜は眠れる気がする」などの“短文儀式”が典型である[12]。
日本における〇〇[編集]
日本においては、もこもこパジャマは“冬の食感礼賛”として定着し、特定の企業販促とも結びついたとされる。たとえばの製菓メーカー「菓学研究所タネモト」(実在の法人名に近いが別物とされる)では、期間限定パッケージに“もこ化アイコン”を付け、SNSキャンペーンとして拡散したという証言がある[13]。
また、同人圏では、レシピ本の代わりに「眠りの密度表」が頒布された時期がある。密度表は、甘さと寒さを対応づける架空の指標であり、「甘さ密度 0.63、冷たさ密度 0.71」というように小数点まで記された。明確な根拠は示されないが、数字があることで“参加者の体温が上がったように感じる”と語られている[14]。
コミュニティの中心地としては、周辺の“夜の撮影スポット”が語られることがある。もっとも、実際には地域の特定を避ける流れがあり、「地名は言うな、影の長さで示せ」という合意形成があったとする投稿が見られる[15]。
世界各国での展開[編集]
世界各国での展開は、英語圏では“デザート・ムード表現”として紹介される傾向がある。翻訳者の一人である「Mira K. Hart(ミラ・ハート)」は、2020年の解説記事で“pajama dessert mood”という訳語を提案したとされるが、原語を残す慣習が強く、完全な置換には至らなかった[16]。
欧州では、SNSの映像文化に適合し、「テクスチャ・コスチューム」という分類で扱われた。特にオランダの画像共有サイトでは、“杏仁の白さ”を照明フィルターで再現する試みが流行し、「4000K縛り」など、数値指定がコミュニティの合言葉化したとされる[17]。
一方で、米国では著作権の観点から、特定のテンプレ画像(いわゆる“もこ枠”)の再頒布が炎上した経緯がある。ここでは文化が“派手に共有されること”よりも、“引用して語ること”へ移行しつつあると指摘される[18]。
〇〇を取り巻く問題(著作権/表現規制)[編集]
もこもこパジャマは、画像やテンプレートの二次利用が前提とされるため、著作権上の整理がたびたび論点になった。特に、撮影用テンプレ(枠線、擬音のフォント、器の位置ガイド)を“素材として頒布”する行為が、原作者の想定外の拡散につながるとして問題視されたという経緯がある[19]。
また、表現規制に関しては、食物の擬人化が“不適切表現”と誤解されるケースがあったとされる。ある掲示板では「パジャマ」という語が下着連想により自動フィルタで弾かれ、代替として「寝装カバー」「もこ包材」などへ言い換える運動が起きた。明確な定義は確立されておらず、運用だけが変わっていった点が特徴とされる[20]。
さらに、商業利用との距離感も問題になる。メーカーがコラボした際、もこパジャヤー側が“着替えの物語”を過剰に盛り込んでしまい、広告表示との整合性をめぐる注意喚起が出たとする報告がある。ただし、その通知の出所は複数説あり、真偽は定かでない[21]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山ノ内柊『もこもこ掲示板研究:食感の言語化と拡散機構』第2巻第1号, 2021, 青藍社。
- ^ Mira K. Hart『Texture as Costume: The Pajama Dessert Mood Lexicon』Vol. 5, No. 3, 2020, North Lantern Press。
- ^ 伊達凪人『擬音の著作権リスクとフォントの運命』『デジタル表現法研究』第14巻第2号, 2022, 皓月大学出版局。
- ^ 佐倉真琴『“杏豆寝層”の誕生:札幌周縁の擬装ナイト記録』2020, 雲海資料館。
- ^ E. R. Caldwell『Memes, Minor Symbols, and the Pajama Filter』Vol. 12, Issue 1, 2019, University of Rhine Studies。
- ^ 田沼直樹『同人誌頒布から派生語へ:数値ロマンの社会学』第6巻第4号, 2018, 亜細亜コミュニケーション研究社。
- ^ 菊川ユリ『画像テンプレの再頒布と“素材化”問題』『ネットカルチャー論叢』第9巻第3号, 2021, 朱鷺文庫。
- ^ 神崎明人『冷たいのに柔らかい:食と感情の擬装体系』2017, 風見書房。
- ^ 中條レン『4000K縛りの系譜:照明色温度が生む共同体感』Vol. 3, No. 2, 2022, Signal & Spoon Publications。
- ^ (要出典)『雲海喫茶アルゴリズムの設計図:杏豆寝層デモ機構』不明, 2012.
外部リンク
- もこパジャヤー語彙集
- 杏豆寝層アーカイブ
- 擬音フォント辞典
- もこ枠テンプレ研究所
- 寝装カバー運用メモ