柴犬ボンバー
| 名称 | 柴犬ボンバー |
|---|---|
| 別名 | しばボン、炸裂柴、BOM-42 |
| 初出 | 1978年ごろ |
| 発祥地 | 東京都・杉並区の私設展示室 |
| 提唱者 | 片桐一之助 |
| 分類 | 映像演出技法・民俗的擬態 |
| 関連機関 | 日本毛並み文化研究会 |
| 流行期 | 1980年代後半 - 1990年代前半 |
| 特徴 | 跳躍直前の静止と極端な間 |
| 主な伝播媒体 | 8mm映写機、地域回覧ビデオ |
柴犬ボンバー(しばいぬぼんばー、英: Shiba Inu Bomber)は、後期にの民間調査団体から提唱された、柴犬の跳躍動作を爆発的に見せるための演出技法である[1]。のちに圏の祭礼映像と結びつき、短尺映像文化の一種として知られるようになった[2]。
概要[編集]
柴犬ボンバーは、が座位から一瞬で跳ね上がる挙動を、あたかも小規模な爆発反応のように見せるために整理された演出概念である。一般には犬のしつけ技術と誤解されやすいが、実際には、、および戦後の家庭用撮影文化が交差して成立した複合的な現象とされる。
名称は、にの私設資料室で行われた試写会の際、投影機の過熱でフィルム音が「ボン」と鳴ったことに由来するとされる。もっとも、この説明は後年に整えられたものであり、当時の記録には「柴の一発芸」などの曖昧な表現しか残っていない[3]。
成立の経緯[編集]
前史[編集]
起源を末期の縁日芸に求める説がある。特にの見世物小屋で行われていた「伏せ犬の驚き芸」が原型で、観客の手拍子に合わせて犬が飛び上がる様子が、後世の柴犬ボンバーに連なるとされる。ただし、当時の番付には犬種の記載がなく、研究者の間では後付けの系譜整理ではないかとの指摘もある[4]。
提唱者片桐一之助[編集]
現代的な形式を定めたのは、民間演出家のである。片桐はからで「小型犬の沈黙時間」に関する私家版ノートをまとめ、1978年の公開実演で、静止3.2秒・跳躍0.7秒・着地後の首振り1回という三工程を標準化した。彼は後年、自著『毛並みの物理学』で「爆発とは音ではなく期待の崩壊である」と記している[5]。
日本毛並み文化研究会の介入[編集]
にはが介入し、柴犬ボンバーを単なる芸ではなく「地域の感情圧縮技法」と再定義した。これにより、からまでの会場で講習会が開かれ、受講者は全員、白手袋と赤い巻尺を携行することが義務づけられた。参加者は年間約1,800人に達したとされるが、集計の根拠は残っていない[6]。
技法[編集]
柴犬ボンバーの基本は、犬を無理に動かすことではなく、動く寸前の緊張を観客に読み取らせる点にある。標準型では、視線固定、前足の微細な反復、尻尾の半径8センチ以内の揺れが重視され、これらを一拍遅れの口笛で破裂させることで、視覚上の「炸裂感」が生じると説明される。
一方で、の実演家はこれを大胆に変形し、着地後に布製の旗を同時に広げる「二次爆風型」を発明した。観客アンケートでは満足度97.4%と記録されたが、同時に「犬がやや困惑している」と答えた者も12%存在した[7]。
流行と社会的影響[編集]
家庭用ビデオ文化への浸透[編集]
後半、柴犬ボンバーは家庭用ビデオの定番題材となった。特にの地域情報番組の再現風映像が流行し、の視聴者投稿欄には「祖父母が泣いた」「なぜか正月に流すと縁起がよい」などの投稿が相次いだ。これを受けて、ビデオレンタル店の一部では「小型犬演出」棚が設けられたとされる。
自治体との関係[編集]
、の文化振興課は柴犬ボンバーを地域イベントの公式演目候補に挙げたが、爆発音に聞こえる効果音の使用をめぐり、消防との協議が必要になった。最終的には「音量70デシベル以下」「着地半径2メートル以内」という条件付きで試行されたが、記録映像の大半が逆光で確認不能であったため、実施の有無をめぐって今も議論が残る。
海外への伝播[編集]
にはのアートスペースで紹介され、英語圏では“shiba detonation choreography”と訳された。現地の批評家は「日本のペット文化が、ここまで工学化されているとは思わなかった」と評したが、実演を見た来場者の多くは、単に犬が突然走っただけだと理解したという。なお、この誤解が逆に人気を高めたとする説がある[8]。
批判と論争[編集]
批判の中心は、柴犬ボンバーが動物愛護の観点から過度に演出化されているのではないかという点にあった。とくに前半には、動物行動学者のが「爆発という語が参加者の興奮を煽り、犬の意思表示を見落とさせる」と指摘した[9]。
これに対し支持者は、「ボンバー」とは危険性ではなく瞬発の比喩であり、むしろ犬の自然な躍動を可視化するものだと反論した。また、片桐一之助の弟子筋は、柴犬ボンバーの本質は犬ではなく観客の側にあり、驚きの反射速度を測る社会実験であると主張している。
もっとも、とされる逸話も多い。たとえばの公民館で、柴犬ボンバーの実演中に停電が起き、暗闇の中で犬だけが完璧なタイミングで跳ねたため、会場の全員が「事前に仕込まれていた」と思い込んだという話は、現在では半ば都市伝説扱いである。
受容[編集]
に入ると、柴犬ボンバーは実演芸というよりインターネット上の比喩として生き残った。短い動画に極端な緩急が付いているものを「柴犬ボンバー型編集」と呼ぶ用法が定着し、特にの黎明期において、唐突なカットの代名詞として使われた。
また、では反応時間の教材として引用されることがあり、の巡回展示では「犬と編集の境界」というコーナーで小型模型が展示された。説明パネルの末尾に「なお、実際の犬は爆発しない」と書かれていたことが、来場者の間で妙な好評を博したという。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 片桐一之助『毛並みの物理学』私家版研究所, 1981.
- ^ 大庭真奈「小型犬の跳躍における期待値の操作」『動物行動と演出』Vol. 12, No. 3, pp. 41-58, 1992.
- ^ 日本毛並み文化研究会編『柴犬ボンバー講習録 第4輯』東京民俗資料出版, 1984.
- ^ 佐伯俊介「杉並区私設映写会と地域芸能の再編」『映像民俗学紀要』第8巻第2号, pp. 101-127, 1990.
- ^ Margaret L. Thornton, “Compressed Surprise in Canine Performance,” Journal of Applied Folklore, Vol. 7, No. 1, pp. 9-22, 1995.
- ^ 中村志保『爆風のない爆発――昭和後期の視覚効果史』青嶺書房, 2003.
- ^ Hiroshi Tanaka, “Shiba Detonation and Audience Reflex,” East Asian Media Studies, Vol. 4, No. 2, pp. 66-79, 1998.
- ^ 大庭真奈『動物の沈黙と公共空間』みすず文化出版, 1994.
- ^ 片桐一之助「毛並みの物理学補遺:跳躍半径の測定」『日本演出工学会誌』第2巻第11号, pp. 5-17, 1982.
- ^ 『犬爆発年鑑 1991』関東芸能資料センター, 1992.
外部リンク
- 日本毛並み文化研究会アーカイブ
- 杉並区地域演出史データベース
- 柴犬ボンバー映像保存会
- 関西短尺文化研究フォーラム
- 架空民俗学電子年報