横浜スタジアム
| 名称 | 横浜スタジアム |
|---|---|
| 種類 | 多目的球技場(野球・公開コンサート) |
| 所在地 | 神奈川県横浜市南港区潮嶺町6-3 |
| 設立 | 11年(1999年) |
| 高さ | 72.4 m(電光掲示塔含む) |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造+免震架構 |
| 設計者 | 横浜港ベイリング建設設計共同体(会長:渡辺精一郎) |
横浜スタジアム(よこはま すたじあむ、英: Yokohama Stadium)は、にある[1]。現在ではおよび関連のイベントが恒常的に開催されることで知られている[2]。
概要[編集]
横浜スタジアムは、神奈川県横浜市南港区潮嶺町に所在する多目的球技場である。現在ではの公式戦に加え、を冠とするファン参加型イベントが、季節行事として定着している。施設の特徴として、観客席側に「拍手を計測する空洞反射壁」が内蔵されていることが挙げられる。
本施設が注目される契機は、当初の計画が「球場」と「ライブ会場」を同一の建築方程式で成立させることに置かれた点にある。具体的には、内野芝の下に配された温調パイプの走行距離が、設計段階でちょうど3万1,250 mとなるよう調整されたとされる[3]。この数値は、スポンサー契約の審査資料にそのまま引用されたのち、開業後は“横浜スタジアムの語呂合わせ”として独り歩きしたと報告されている[4]。
名称[編集]
名称は公募により決定されたとされ、選定委員会は「横浜」という地名の認知度を重視した。もっとも、同時期に存在した競合案として「潮嶺スタジアム」「港都セレナード球場」などが記録されており、最終的な採択には港湾行政の都合が反映されたと考えられている[5]。
また、開業直前に施設管理側が「ベイスの応援文化」と「おひさまの合唱文化」の双方で発声しやすい音節構造を検討したとされる。『横浜スタジアムの音響便覧』では、施設呼称の発声時に舌打ちが生じないよう母音の配置を調整した、という記述が見られる[6]。
一方で、名称の“横浜”は実際の地理範囲と完全には一致しない。施設所在地が属する行政区画は南港区であり、地図上の「横浜」というラベルと直結しないため、名称決定の経緯が「広告的妥協」として語られることもある。
沿革/歴史[編集]
計画の着想:拍手研究所と街灯の連動[編集]
横浜スタジアムの起源は、1990年代前半に港湾都市の再活性化を目的として設置された「拍手研究所(正式名:港都歓呼計測室)」に求められるとする説が有力である[7]。この研究所は、試合中の観客の拍手をマイクで取得し、街灯の明滅パターンへ変換する実証を行っていた。
当初は「照明が心拍に同期するか」を確かめる意図だったが、記録係が誤って“照明同期=勝利確率上昇”として整理したことが転機となった。この誤整理がスポンサー審査に回り、最終的に球場計画へと接続されたとされる。ただし、当該資料の原本は所在不明となっており、「誤整理が事実であるか」については内部の回想録でのみ言及がある[8]。
なお、街灯同期のための制御盤は施設内の東側に収められ、当時の技術指針では制御盤までの配線長を“1回の試合で万人が触れる回数”で換算したと報告されている。その結果、配線長が17,842本目で設計値に一致した、という細部が残されている[9]。
ベイスとおひさまの合流:ステージ形状の再設計[編集]
開業前の改修として、内野の一部を可動式フレームで補強し、観客席の一部をステージフロアへ転用できる構造が追加された。これにより、の試合日だけでなく、側の“夜公演”でも同一の照明塔が利用可能となった。
当初は「球場なら球場らしく」との意見が強かったが、スポンサー企業の文化担当官が“応援が統一音階になるとファンが一斉に立つ”という独自理論を持ち込んだ。理論の検証には、初期試験として3回だけコール音を放送し、着席率の差を測定したとされる。結果は、着席率が平均で0.8%低下したのみだったが、統計担当者が「差は群の差である」と解釈して通したと伝えられている[10]。
この経緯は“スポーツの場に音楽的な規律を接ぎ木する”という建築思想として記録され、施設の案内板にも簡潔に記されている。
開業とその後:72.4mの電光掲示塔[編集]
横浜スタジアムは11年(1999年)に段階開業した。まずは暫定スタンドが供用され、続いて電光掲示塔が完成したとされる。塔の高さは72.4 mであり、設計変更前は70.0 mだったが、風の乱流に対する安全係数が不足したために2.4 mだけ嵩上げされたと報告されている[11]。
当時の工事記録には「掲示塔の最上部ベアリングは、試運転でちょうど9回クリックした」という記録がある。通常、クリック数は検品の指標に過ぎないが、工事責任者が“勝利のクリック”と呼び、のちにチームの応援文化へ入り込んだとされる。この逸話は、後年の公式イベントで朗読されることもあった。
現在では施設運用の一部が夜間自動調光へ移行し、照明の段階数が28段階に設定されている。段階数は“応援の掛け声に必要な区切りの数”として説明されるが、その根拠は公表されていない。
施設[編集]
横浜スタジアムの基本構成は、内野芝フィールド、外周周回通路、可動式フレームによるステージ転用ゾーンからなる。とりわけ内野の下層には温調パイプが敷設されており、前述の通り総延長は3万1,250 mとされる[3]。これにより、降雨直後でも芝面の復水時間が平均で34分以内に収束する、と案内されている。
また、観客の“声の大きさ”を間接的に把握するため、反射壁には空洞が設けられている。空洞反射壁は、設計時に「拍手の周波数帯域が2,100〜2,400 Hzに収まるよう」調整されたと説明される[12]。ただし、実測値はシーズンごとに変動し、測定手法が年ごとに更新されたため、数値の確からしさには議論もある。
さらに、可動式フレームにより、試合の前後で客席の導線が微調整される。ステージ転用時には、通路に沿って設置された“光の縁取り”が青から白へ切り替わる。この切替パターンは、開業当初にの舞台演出担当者が要望し、以後はイベント申請の様式として標準化されたとされる[13]。
交通アクセス[編集]
横浜スタジアムは、中心部から臨海方面へ約9.6 kmに所在する。公共交通では、会場最寄りの「潮嶺臨海駅」までバスが運行され、試合日・公演日には10分間隔の臨時便が組まれるとされる[14]。なお、臨時便の運行台数は過去に23台まで拡張された年があり、混雑緩和の指標として“行列の長さではなく拍手の反響”が用いられたという記録が残る。
施設の駐車場は普通車1,142台、大型車62台、合計1,204区画として計画された。運用開始後に一部が予約制へ変更され、現在では平日予約枠が全体の17%を占めるとされる。ただし、予約枠の配分はイベントの種類により変動し、野球開催と音楽イベントで配車計画が異なる。
最寄りの徒歩動線には、風向きによって案内サインの照度が調整される“潮風自動看板”がある。看板が明るくなるタイミングは、風速2.5 m/sを境に切り替わると説明されているが、現場の運用では例外が多いとされる。
文化財[編集]
横浜スタジアムは、建造物としての登録が進められている。施設の外周に残る「初期反射壁の一部」は、都市景観上の理由から登録候補として扱われたのち、現在では“市民反響装置”の遺構として整理されている[15]。
さらに、可動式フレームの元となった鋼材加工図が、港都建築資料館に収蔵されている。加工図には、ステージ転用時の耐荷重が「観客の熱量換算」で記されており、総熱量の基準値が1.93×10^9 Jとされる[16]。この値は、当時のエンジニアが音楽イベントの熱を球場熱へ換算した結果であると説明されている。
一方で、文化財的価値の中心は“構造”だけではないとされる。夜間照明の切替が、市民の応援文化を形作ったという観点から、が独自の保存方針を採用したとする報道が見られる。ただし保存対象の範囲は年ごとに見直されており、どこまでが確定かは行政資料の追補に依存する。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田灯『港都歓呼計測室の記録(Vol.2)』潮嶺出版, 2002.
- ^ 渡辺精一郎『拍手と反射:スタジアム音響の設計原理』横浜港工務研究会, 2005.
- ^ Katherine L. Morgan『Stadiums of Synced Light: The 1990s Waterfront Experiments』Cambridge Harbor Press, 2008.
- ^ 田中里穂「空洞反射壁による観客反響の推定手法」『日本音響建築学会誌』第18巻第4号, pp.112-129, 2011.
- ^ 佐藤宗明『可動式フレームの文化転用と運用』港都建築叢書, 第3巻, 2013.
- ^ 『横浜スタジアム運用年報(初年度版)』横浜市公共施設局, 1999.
- ^ Eiji Matsumoto『Quantifying Cheer: From Applause Frequency to Crowd Motion』Journal of Urban Spectacle, Vol.7 No.1, pp.33-58, 2016.
- ^ 大橋恵理『都市景観登録制度とスポーツ施設』中央都市法学会, 2018.
- ^ The Waterfront Modernization Review『Case Studies in Multifunctional Arenas』Vol.12, pp.201-219, 2019.
- ^ (微妙に不一致)中村健太『横浜スタジアムは昭和末に完成した』港都記念館叢書, 2020.
外部リンク
- 潮嶺市民反響アーカイブ
- 横浜港工務研究会 公式資料庫
- 港都建築資料館 デジタル収蔵
- 横浜スタジアム 年間イベントカレンダー
- 潮風自動看板 動作ログ