機動戦士ガンダム 鉄華団vs.ソレスタルビーイング
| タイトル | 機動戦士ガンダム 鉄華団vs.ソレスタルビーイング |
|---|---|
| 画像 | Tekkadan_vs_Celestial_Being_poster.png |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 筐体側面に描かれた対峙図 |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | ドリフト・アーケード、セレス端末32、アストラルポケット |
| 開発元 | ナインブリッジ工房 |
| 発売元 | 北斗玩具電子 |
| プロデューサー | 三輪田 恒一 |
| ディレクター | 羽室 玲子 |
| デザイナー | 岡部 進也 |
| プログラマー | 島津 亮太 |
| 音楽 | 志水 ひかる |
| シリーズ | 逆走ガンダム |
| 発売日 | 1998年11月12日 |
| 対象年齢 | CERO相当区分B |
| 売上本数 | 初回出荷38万本、累計124万本 |
| その他 | 通称は鉄ソレ。対戦モードと協力プレイの双方に対応 |
『』(きどうせんしがんだむ てっかだんぶいえすそれすたるびーいんぐ、英: Mobile Suit Gundam: Tekkadan vs. Celestial Being、略称: 鉄ソレ)は、にのから発売された用。シリーズの第4作目である[1]。
概要[編集]
『』は、に流行した「部隊対決型」の代表作として知られている作品である。プレイヤーは側または側の部隊長として、限られた補給線と奇妙に高性能な旧式機体を運用しながら、からに至る戦線を渡り歩く。
本作の最大の特徴は、通常の戦闘に加えて「現場判断値」という独自パラメータが存在する点にある。これは、補給担当が3分で組み上げた通信プロトコルや、敵味方双方の整備班のやけに高い美的意識まで反映される仕様であり、当時の雑誌レビューでは「戦術と根性と、あと少しの工具箱が勝敗を決める」と評された[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームはを基調とするが、戦闘前に実施される「段取り会議」フェイズが極めて重要である。ここではが部隊の食糧、弾薬、機体の肩パーツ交換の優先度を決定し、選択を誤ると次のマップで全員の士気が微妙に下がる。
また、戦闘マップは六角形ではなく、工場見学のパンフレットを模した「折り線グリッド」で構成される。これにより、移動経路が直感的でありながら、なぜか一度踏み込むと戻りづらい設計になっている。
戦闘[編集]
戦闘では、各ユニットに「推進熱」「会話圧」「整備負債」の3種の内部値が設定されている。推進熱が一定を超えると必殺技「灰色の再起動」が発動するが、同時に会話圧も上昇し、味方同士の長話イベントが強制挿入される。
対戦モードでは、に加え、同一筐体での疑似が可能であった。もっとも、協力しているはずなのに片方の陣営の補給が先に尽きることが多く、結果として友情が試される仕様として有名である。
アイテム[編集]
アイテムは「装甲板」「栄養ゼリー」「通信針」「謎の六角ナット」などが登場する。特に「謎の六角ナット」は、装備すると会話の選択肢が1つ増えるという効果があり、攻略本では「実質的な自由度拡張パーツ」として分類されていた。
なお、発売初期版では「鉄華団特製スパイス」が店売り最強回復アイテムであったが、後年ので入手経路が露骨に厳しくなった。
対戦モード[編集]
対戦モードでは、の突進力との遠距離支援が対照的に設計されている。勝敗は単純な撃破数ではなく、最後に残った補給箱の数によって決まるため、攻め続けても勝てないことが珍しくない。
全国大会では、開始12秒で両者が同じ資源タンクに集まり、結果として引き分けになる試合が3年連続で起きたことから、運営側が「資源の独占は禁止」とする特則を追加したとされる[3]。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは、通信回線が不安定な地方店舗向けに実装された一人用キャンペーンである。ここではプレイヤーは倉庫番のように部品を運びながら、時折発生する非常停止を手動で解除しなければならない。
このモードは後に家庭用版へも移植され、ならぬ「店頭デモ映像の連続上映」が話題となった。実際には上映時間の7割が整備中の静止画であったが、逆にそれが没入感を高めたと評価されている。
ストーリー[編集]
物語は、の辺境都市で両組織が「遺棄された共同作戦端末」をめぐって偶然対立するところから始まる。端末は本来、戦争を止めるための調停機であったが、起動には2つの部隊が互いの旗印を同時に認証する必要があり、結果として全面衝突に発展する。
中盤では、の若き指揮官ミハル・バルガンと、側の観測士セレナ・アークライトが、同じ補給線を別々に守ろうとして鉢合わせする。ここで発生する選択肢「譲る」「交渉する」「先に食べる」はいずれも一長一短であり、最終的にはどれを選んでも整備班が苦労する。
終盤では、双方が争っていた端末が「戦場の記憶を帳簿化する装置」だったことが判明する。プレイヤーは過去の戦闘ログを精算し、部隊の赤字を解消しなければ真エンディングに到達できない。この会計処理要素が賛否を呼んだが、後年は「RPGに必要なのは勇気と仕分けである」と再評価された。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
ミハル・バルガンは側の主人公で、17歳ながら工具の扱いに異常に長けている。戦闘では前線に出るよりも、壊れた通信機を3秒で直して士気を上げる役割が大きい。なお、開発資料によれば、彼の初期案は「無口な整備主任」であったが、会話イベントが足りないという理由で変更されたという。
セレナ・アークライトは側の副主人公で、理論派だが地図の角を必ず折る癖がある。プレイヤー間では「折り目の女王」と呼ばれ、戦闘よりも会議で強い。
仲間[編集]
仲間キャラクターには、食料管理を担当するロゼ・タリー、遠隔射撃のエルンスト・ヴァン、なぜか毎回パイプ椅子を持ち歩く整備員ケンゾウ・シバが登場する。とりわけケンゾウは、破損した機体を修理するたびに「これであと2回は戦える」と言うため、プレイヤーから半ば迷信の対象となっていた。
また、条件を満たすと短時間だけ共闘する中立キャラ「灰港の老人」が出現する。彼は攻略上はほぼ役に立たないが、周辺の店の半額券をくれるため、実質的な隠し要素として人気が高い。
敵[編集]
敵側には、資源回収局の督戦官カシオ・ベイン、無人機群を率いるマドカ・リュート、そしてボス戦専用の自動裁定機「ジュディカス07」が存在する。とくにジュディカス07は、HPが減ると自分で審判を下して戦闘を終了しようとするため、プレイヤーに「勝つ前に納得させる」という新しい発想を要求した。
雑誌付録の設定資料集では、敵キャラクターの多くが本来は味方候補だったと示唆されており、この曖昧さが本作の人間関係の妙味を支えている。
用語・世界観[編集]
本作の世界観は、とを結ぶ物流戦争を背景としている。国家や宗教よりも、補給路、整備契約、旧式端末のリース期間が重要視される社会であり、都市国家の多くは「戦う前に請求書が来る」ことで知られている。
用語面では、「鉄華団」は単なる部隊名ではなく、臨時雇いの作業班から発展した互助組織を指す。一方の「ソレスタルビーイング」は、表向きは観測機関であるが、実際には戦闘記録を収集して未来の紛争を予測する半ば民間の研究体であるとされる。
設定資料には「量産型機体よりも、現場で改造された個体の方がなぜか強い」という記述があり、これは後にの審査講評で「現代的なものづくりの寓話」とまで呼ばれた。ただし、装甲の規格が毎回違うため、整備員からは不評であった。
開発[編集]
制作経緯[編集]
開発は、に吹田市の試作展示会で行われた「部隊対立シミュレーション」の出展が原型である。来場者の多くが戦闘よりも補給画面に熱中したため、企画がそのまま拡張され、正式にゲーム化された。
プロデューサーの三輪田 恒一は、当初「反復作業が楽しいゲーム」を目指していたが、結果として「反復作業に人間関係が混ざるゲーム」へ変化したと回想している。
スタッフ[編集]
ディレクターの羽室 玲子は、戦闘テンポの遅さを意図的に残したとされる人物で、後年のインタビューで「焦らせるほど、補給のありがたみが増す」と語った。プログラマーの島津 亮太は、当時まだ珍しかった分岐型会話AIを独力で実装し、数百通りの無駄話を発生させたことで知られる。
音楽の志水 ひかるは、内の中古スタジオで収録した金属音を、旋律より先に打ち込みへ流し込む手法を採用した。これにより、戦闘曲が妙に工具箱っぽい響きになったと評されている。
音楽[編集]
サウンドトラックは、電子音主体でありながら、低周波の足音や配管の共鳴を意図的に残した構成である。代表曲「灰色の起動歌」は、とが交互に入れ替わるため、プレイヤーがセーブ画面でも落ち着かないと話題になった。
発売後には『機動戦士ガンダム 鉄華団vs.ソレスタルビーイング オリジナル・サウンドログ 2.7』がから出荷され、初回盤には未使用SEとして「警告音だけで4分続くトラック」が収録された。これはコレクターの間で高値で取引されたが、一般にはあまり聴かれていない。
他機種版・移植版[編集]
には版が発売され、対戦モードの通信安定性が向上した一方、会話イベントの一部が文字数制限のため要約されてしまった。にはへ移植され、縦持ち時のみ発動する簡易戦闘が追加された。
さらにの再配信版では、旧店舗向けに存在した「オフラインモード」が逆に標準機能となり、オンライン接続をしなくても一部イベントが再生されるようになった。これにより、原作の「回線がなくても揉める」設計思想が正しく継承されたとされる。
評価[編集]
発売初週で18万本、最終的には国内累計124万本を記録したとされる。特にでは、戦闘よりも補給の重要性を前面に出した点が高く評価され、4人のレビュアーのうち2人が満点に近い点数を付けたという[4]。
一方で、売上のピークが大型連休ではなく「棚卸し明けの平日」に集中したことから、販促担当者の間では「説明すると売れ、説明しすぎると疲れる」作品として記憶されている。なお、海外版の出荷数は推定27万本とされるが、地域ごとの箱サイズが違うため正確な集計は難しい。
関連作品[編集]
本作の成功を受けて、続編『』が企画されたほか、携帯用の落ちものパズル『鉄ソレ・ブロック班』、及びハンティングアクション風の派生作『ソレスタル採掘隊』が制作された。
また、ゲーム本編の人気に伴い、同名のドラマCDと、店頭販促用のミニアニメ『整備室の午後』も展開された。なお、後者は実質的に1時間ずっと工具を磨く映像であったが、一定の支持を得たという。
関連商品[編集]
攻略本としては『機動戦士ガンダム 鉄華団vs.ソレスタルビーイング 完全段取り読本』がから刊行された。本文の半分近くがアイテムの入手経路一覧で占められ、残り半分が「会話圧を下げるコツ」に割かれている。
書籍では『鉄華団と会計の科学』『ソレスタルビーイング観測記録集』などが出ており、いずれもゲームの設定理解よりも、なぜこの世界で請求書が戦術文書になるのかを解説する方向に偏っている。その他、限定版には六角ナット型のUSBメモリと、折り線グリッドを印刷したマウスパッドが付属した。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三輪田 恒一『鉄華団vs.ソレスタルビーイング開発秘録』星環出版, 2002年.
- ^ 羽室 玲子『会議で勝つゲームデザイン』白鷗メディア, 2001年.
- ^ 志水 ひかる『灰色の起動歌と金属音の作法』月見書房, 1999年.
- ^ 岡部 進也「折り線グリッド戦闘の試み」『ゲーム設計学報』Vol.14, No.2, pp. 33-49, 2000年.
- ^ 田所 由美『補給と士気の相関に関する一考察』北斗電子研究所, 1998年.
- ^ Ernest Holloway, "Logistics in Narrative RPGs", Journal of Imaginary Interactive Systems, Vol. 7, No. 1, pp. 11-28, 2003.
- ^ Margaret T. Arden, "Hexagons Are Overrated: A Study of Fold-Line Maps", Digital Ludology Review, Vol. 2, No. 4, pp. 201-219, 2005.
- ^ カシオ・ベイン「自動裁定機ジュディカス07の運用記録」『統合戦線年報』第9巻第3号, pp. 88-102, 1999年.
- ^ 北浦 仁志『鉄ソレ攻略大全 2.7』サイドルート社, 2004年.
- ^ Lydia M. Carrow, "The Economy of Friendly Fire in Early Console RPGs", pp. 77-91, in Proceedings of the 9th Asterian Game Studies Symposium, 2006.
外部リンク
- ナインブリッジ工房 公式資料館
- 北斗玩具電子 アーカイブ
- 鉄ソレ保存会
- 逆走ガンダム年表委員会
- 折り線グリッド研究室