殺戮の天使
| タイトル | 殺戮の天使 |
|---|---|
| 画像 | 架空のキービジュアル(白い翼と黒い火種のシルエット) |
| 画像サイズ | 320px |
| キャプション | “翼は守るためではなく、数えるために折られる”という帯文 |
| ジャンル | アクションロールプレイングゲーム(ハンティング&祈祷連携) |
| 対応機種 | ステーションアーク |
| 開発元 | 冥府機関セルビウス |
| 発売元 | 白燈商会(はくとうしょうかい) |
| プロデューサー | 村雲ハルマ |
| ディレクター | リヨン・カスパール |
| 音楽 | セラフィム・トーンアーカイブ(作曲:黒羽ミオ) |
| シリーズ | 天使狩り |
| 発売日 | 2016年10月23日 |
| 対象年齢 | CERO:Z(18歳以上相当) |
| 売上本数 | 全世界累計 142万本を突破(発売後18か月時点) |
| その他 | セーブは最大24枠、祈祷ログはクラウド同期(当時の仕様) |
『殺戮の天使』(英: Satsuriku no Tenshi、略称: SAT)は、2016年10月23日に日本の冥府機関セルビウスから発売されたステーションアーク用アクションロールプレイングゲーム。メディアミックスも含む天使狩りシリーズの第1作目である[1]。
概要[編集]
『殺戮の天使』(SAT)は、禁書式の聖堂都市を舞台に、プレイヤーが祈祷師見習いとして[[天使]]を狩り、報酬を「血誓通貨」に換算して強化する[[アクションロールプレイングゲーム]]である[2]。
本作は、殺傷の倫理を問う作風が話題となりつつも、実際のゲーム体験としては落ち着いた探索と、短時間での祈祷連携による高頻度コンボが中心に設計されたとされている。キャッチコピーは「翼を折れ、名を刻め。」である[3]。
企画の発端は、法務省の民間委託であった「記録可能な暴力表現の自己検査」研究を、冥府機関セルビウスがゲーム化したことだとされる。ただし、社内資料では“自己検査”という語が1度も登場せず、代わりに[[聖堂通信]]という隠語が反復されていたという指摘もある[4]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
プレイヤーは主人公[[ユリウス・ヴァール]]として操作し、戦闘では近接武器と祈祷の2系統を同時に運用する。祈祷は装備品ではなく「呼吸単位」で管理され、息継ぎタイミングにより祈りの精度が変化する仕組みが採用された[5]。
ゲームシステムの特徴として、「翼部位の損耗」がスコアに直結する。翼を貫いても勝利条件にはならず、一定以上の損耗を与えたうえで、最後に“名の読み上げ”を実行しなければ討伐ログが封印されるとされた[6]。
戦闘の流れは、(1)探索で収集した[[誓詞符]]を装填、(2)敵の[[光輪]]が点滅するタイミングで祈祷を同期、(3)処刑ではなく“数え上げ”を完了させる、という3段構えで構成される。なお、開発当初は処理負荷の都合で同期窓が100ミリ秒とされていたが、発売直前のパッチで68ミリ秒へ短縮されたと報告されている[7]。
アイテム面では、祈祷用の触媒として[[墨澱の結晶]]、回復として[[白骨茶]]、攻撃補助として[[折翼の錫杖]]が代表格である。落ちものパズル要素として、祈祷ログの欠片が階段状に落下し、プレイヤーが“正しい順序”で並べ替えるミニゲームが複数ステージに挿入されている[8]。
ストーリー[編集]
物語は、[[聖堂都市グラニア]]において「天使が増殖する周期」が観測された時代から始まる。周期は“[[天蓋暦]]の第13節”に一致しており、夜毎に空から黒い羽毛が降るため、住民は羽毛を掃かずに数えることで災厄を抑えようとしていたとされる[9]。
主人公ユリウスは、父の遺した[[祈祷帳アッシュ]]を手がかりに、天使討伐を“収奪”ではなく“訂正”として遂行することを誓う。ただし作中では、訂正の対象が誰の罪なのかが明確にされず、後半になるほど選択肢が同一の結果を生成する「見かけの分岐」が増えると知られている[10]。
特に有名な章として、[[水路門]]における対決が挙げられる。水路門では天使が倒されるたびに、敵ではなく主人公側の“祈りの言葉”が先に消える仕掛けが採用され、プレイヤーが自分の選択を取り戻せないまま次段階へ進むことが話題となった[11]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公[[ユリウス・ヴァール]]は、祈祷師見習いでありながら、翼の読み上げに必要な音階が欠けているとされる。欠けた音階は“第4旋律だけが空白”と作中で定義され、プレイヤーの戦闘スタイルにも影響するとされた[12]。
仲間として[[サラフィナ]]が登場する。サラフィナは記録係であり、討伐ログを「未来の証拠」として保管する役割を担う。彼女は戦闘に直接参加せず、代わりに[[天使の影紋]]を解析することで、祈祷の同期窓を一時的に拡張する支援スキルを提供する[13]。
敵対勢力には[[聖堂警務局ドーマー]]がある。同局は“羽毛は数えれば安全”という住民信仰を利用し、密かに都市の資源配分を操作していたとされる。公式設定では腐敗が否定されるが、攻略サイトでは「ドーマーの通達文は3行目が毎回同じ誤字になる」ことが指摘されている[14]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界観では、天使は単なる敵ではなく[[契約器官]]として扱われる。天使の翼は情報媒体であり、切断するとログに変換されるとされるが、実際のゲーム内表現ではログが“羽根の形のフォント”として落ちてくるため、プレイヤーは視覚的に矛盾を体験する設計になっている[15]。
[[天蓋暦]]は都市の行政と祈祷の両方に用いられる暦である。天蓋暦では、月ではなく“祈りの成功率”が日を規定し、成功率が70%を切ると翌日の探索ルートが勝手に変わるとされる。ただし、この70%は作中では一度も数値表示されず、解析者による後追い推定で“常に72.3%に揺れている”とされている[16]。
ゲーム内通貨の[[血誓通貨]]は、敵の討伐ではなく「名の読み上げの完了」により増減する。結果として、同じ天使でも読み上げが崩れると報酬が半減するという仕様があり、プレイヤーの倫理感がマネー設計に直結する構造として語られた[17]。
開発/制作(制作経緯/スタッフ)[編集]
冥府機関セルビウスは、前身部門で映像編集向けの圧縮技術を扱っていた経緯があり、本作では“祈祷ログの保管”を高速化するため、音声波形から祈りの言語パターンを抽出する独自ミドルウェアが組み込まれたとされる[18]。
プロデューサーの[[村雲ハルマ]]はインタビューで、「暴力表現ではなく、記録の作法を遊ばせるべきだ」と述べたと記録されているが、同席したディレクター[[リヨン・カスパール]]は「記録は遊ばれて壊れる」と別発言を残している[19]。なお、両者の発言が同一記事内で矛盾することから、編集の段階で脚色が入ったのではないかとする検証もある。
スタッフには、ゲームの戦闘AIを担当した[[東雲レイナ]]、祈祷エフェクトを設計した[[クレイマー・ユイ]]、UIの“羽根フォント”を作った[[トリステン・グライフ]]が参加したとされる。開発日報では、翼の光り方の調整回数が「合計219回、うち“折翼の錫杖”は37回差し替え」と記述されていたという[20]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは[[セラフィム・トーンアーカイブ]]による全34曲で構成され、祈祷部分では歌詞が存在せず、音階のみが提示される形式が採用された[21]。
代表曲として、戦闘テーマ[[『翼数え』]]、探索テーマ[[『白骨茶の湯気』]]、ラスト付近で流れる[[『第4旋律の空白』]]が挙げられる。特に『翼数え』は、プレイヤーの入力タイミングに応じてテンポが“1.07倍”“0.93倍”へ揺れる仕様があり、体感としては心拍より少し遅いと評された[22]。
一方で、楽曲の一部が実在の儀礼音声データを“整形している”のではないかという疑義が生まれ、発売当初の配信プラットフォームでは歌唱権の扱いが問題視されたとされる。公式側は「旋律の再構成」であると説明したが、ファンの解析では同一波形が2箇所で短く欠けていたことが報告されている[23]。
他機種版/移植版[編集]
発売から1年後、ステーションアーク専用の移植ではなく“互換パッケージ”として[[天使狩り: 継ぎ目の版]]が配信された。互換ではグラフィック解像度が最大で0.8倍に抑えられる代わりに、祈祷同期窓が8ミリ秒拡張される調整が入ったとされる[24]。
また、周辺機器として[[墨澱コントローラ]]が案内された。これは触媒装填を再現するために、振動パターンが祈祷ログの“欠片落下”と連動する仕様だった。ただし、発売月には振動が弱すぎるという苦情も多く、修正パッチでは振動強度が“+12%”と明記された[25]。この数値はパッケージにも印字されており、当時の熱心なユーザーがスクリーンショットを共有したことで広まった。
評価(売上)[編集]
発売直後にミリオンセラーを記録したとされ、全世界累計は発売後18か月で142万本を突破した。日本国内では初週で38.6万本、2週目で21.4万本とされ、以後の販売曲線は“宗教的儀礼ゲーム”としては比較的急な減衰だったと報告されている[26]。
日本ゲーム大賞に関しては、複数部門の候補に入ったのち、最終的に[[日本ゲーム大賞]]の“表現設計部門”にて受賞した。公式には「記録と倫理の統合」が評価理由とされたが、当時の評論家の間では「実はUIの羽根フォントが強かったのでは」という冗談混じりの論評も出回った[27]。
一方で、暴力表現の解釈について批判があり、Z指定の理由が“技術的な処理”ではなく“演出の言語”にあったのではないかとする指摘もある。ただし、検証に用いられた版が互換パッケージであったため、結論がぶれたという批判もあり、評価は二極化した[28]。
関連作品[編集]
本作を題材にした[[メディアミックス]]として、テレビアニメ『翼数えの聖堂』が放送された。アニメではゲームよりも主人公の“第4旋律の空白”が物語の中心として扱われ、視聴者投票でエンディングが変わるという仕掛けが話題となった[29]。
また、冒険ゲームブック『血誓の章』が出版され、各章が[[聖堂都市グラニア]]の一部地形に対応する形式をとった。書籍はページ番号と祈祷ログの行数が一致する設計になっており、ファンが“攻略ではなく照合”を楽しむ文化が生まれたとされる[30]。
後続シリーズでは“折翼の錫杖”を再解釈したスピンオフや、天使ではなく[[聖堂警務局ドーマー]]側視点の作品が登場したが、総じて原作のような倫理選択の曖昧さは維持されたと評価されている[31]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本として『殺戮の天使 討伐ログ完全索引』が発売され、祈祷同期窓の“推定値”一覧や、[[誓詞符]]の組み合わせ表が掲載された。特に付録の“羽根フォント表”は、文字の形が翼部位と相関しているとして熱狂的に引用された[32]。
ほかに、音楽関連の書籍『セラフィム・トーンアーカイブの解析術』、アニメ設定資料『翼数えの聖堂 演出簿』、さらに世界観読み物『天蓋暦の統計学』が刊行された。『天蓋暦の統計学』は、成功率が72.3%に揺れるという解析を“歴史統計として扱う”という奇妙な学術風スタイルで人気となった[33]。
なお、店頭で誤配布された薄い冊子『折翼の錫杖 取扱注意』が一部で転売され、実用ではなく“封入された祈りの暗号カード”が目的だったと語られている[34]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
ただし、以下は本作に関する“制作側の説明として流通した体裁”を踏襲した架空の文献である。編集者の注釈が混在し、文献によって数値が微妙に揺れる点もまた、作品の読み解き方に影響を与えるとされる[35]。
- 村雲ハルマ「『殺戮の天使』における記録設計の試み」『ゲーム表現研究』第12巻第3号, pp.41-58, 2017年。 - リヨン・カスパール「祈祷同期窓の縮退とプレイヤー心理」『インタラクティブ・オーディオ工学』Vol.9 No.1, pp.12-27, 2018年。 - 東雲レイナ「翼部位損耗スコアの妥当性検証」『行動計測とゲーム』第5巻第2号, pp.101-119, 2019年。 - 黒羽ミオ「セラフィム・トーンアーカイブの作曲意図」『現代作曲論叢』第3巻第4号, pp.77-96, 2017年。 - 『天使狩りシリーズ総覧』(白燈商会編集部編)白燈商会, 2020年。 - “Satsuriku no Tenshi: A Myth of Metrics” Journal of Narrative Mechanics, Vol.4 No.2, pp.203-221, 2019. - “Archival Violence and Player Ethics in SAT” Proceedings of the International Symposium on Game Rhetoric, pp.55-63, 2020. - トリステン・グライフ「羽根フォントの形状規則」『UI研究年報』第7巻第1号, pp.9-18, 2018年。 - クレイマー・ユイ「互換パッケージにおける同期窓の再調整」『家庭用ゲーム技術』第21巻第6号, pp.314-333, 2017年。 - 『日本ゲーム大賞公式記録(架空版)』日本ゲーム大賞事務局, 2016年。
脚注
- ^ 村雲ハルマ「『殺戮の天使』における記録設計の試み」『ゲーム表現研究』第12巻第3号, pp.41-58, 2017年。
- ^ リヨン・カスパール「祈祷同期窓の縮退とプレイヤー心理」『インタラクティブ・オーディオ工学』Vol.9 No.1, pp.12-27, 2018年。
- ^ 東雲レイナ「翼部位損耗スコアの妥当性検証」『行動計測とゲーム』第5巻第2号, pp.101-119, 2019年。
- ^ 黒羽ミオ「セラフィム・トーンアーカイブの作曲意図」『現代作曲論叢』第3巻第4号, pp.77-96, 2017年。
- ^ 『天使狩りシリーズ総覧』(白燈商会編集部編)白燈商会, 2020年。
- ^ “Satsuriku no Tenshi: A Myth of Metrics” Journal of Narrative Mechanics, Vol.4 No.2, pp.203-221, 2019.
- ^ “Archival Violence and Player Ethics in SAT” Proceedings of the International Symposium on Game Rhetoric, pp.55-63, 2020.
- ^ トリステン・グライフ「羽根フォントの形状規則」『UI研究年報』第7巻第1号, pp.9-18, 2018年。
- ^ クレイマー・ユイ「互換パッケージにおける同期窓の再調整」『家庭用ゲーム技術』第21巻第6号, pp.314-333, 2017年。
- ^ 『日本ゲーム大賞公式記録(架空版)』日本ゲーム大賞事務局, 2016年。
外部リンク
- 冥府機関セルビウス 公式アーカイブ
- 白燈商会 SAT サポートページ
- 天蓋暦 解析コミュニティ
- 翼数えの聖堂 放送資料館
- 血誓通貨 統計Wiki