漬物.com
漬物.com(つけものどっとこむ)とは、の都市伝説の一種である[1]。主に後半から初頭にかけて、夜更けに検索すると「漬物の神」が現れるとする噂で知られている。
概要[編集]
は、黎明期にの一部掲示板を中心として語られたである。正式には「漬物に関する通販サイトのURLを装った不気味なサイト」という体裁をとるが、実際には画面の奥に古いが棲みついており、閲覧者の冷蔵庫の設定を度だけ下げる、という奇妙な伝承が付随している。
この噂は、文化に詳しい者ほど強い反応を示すとされ、たとえばの老舗漬物店の名を出すと、ページ下部の「特定商取引法に基づく表記」が一瞬だけの紙芝居風フォントに変わる、という話もある。なお、こうした現象は地方のとして再解釈される場合もあり、のパソコン室で目撃されたというが全国に広まった[2]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源はごろ、のパソコン通信サークル「ぬか床研究会」の会員が、試験的に開設した架空通販ページにあるとされる。そこで使われたドメインが、たまたまに極めて近い文字列であったため、利用者の間で「本当に漬物を売っているのに、なぜか夜だけ答えをくれないサイト」として噂が成立したという話である。
当時の掲示板では、画像の読み込みが遅いことがしばしばの演出として受け取られ、特にキュウリの瓶詰め写真が3分以上表示されない場合、「中に何かが入っている」とする書き込みが急増した。これが、後年に言う不明のサイト型伝承の原型とみなされている。
流布の経緯[編集]
には、の高校生のあいだで、深夜0時ちょうどにアクセスすると「ぬかの匂いがする」という噂が流れた。さらに、系の深夜番組が「ネットで出没する食文化系の妖怪」として半分冗談めかして紹介したことで、伝承は一気に化したとされる。
一方で、の個人サイト閉鎖ラッシュ以降、漬物.comは「消えたのに消えていないサイト」として再評価され、廃墟サイトを巡回する愛好家のあいだで独自のが形成された。アクセス解析のログを見たという人物の証言では、深夜帯の訪問者のうち約%がブラウザを閉じた直後に台所へ向かったとされ、これが都市伝説としての信憑性を高めたという[3]。
噂に見る「人物像」[編集]
漬物.comにまつわるとしては、「白い割烹着の管理人」「塩分計を首から下げた老婆」「ぬか床の更新日時だけを気にする無口な青年」など、複数の像が並立している。もっとも有名なのは出身とされる「中条ヌカ子」であり、彼女はの外郭団体に勤めていたが、ある夜、自宅の冷蔵庫から『ページを更新してください』という通知音を聞いて以来、サイトの守り手になったという。
伝承では、彼女は訪問者のではなく保存容器の蓋を記憶し、同じ家の者が二度目にアクセスすると「今日のかぶら漬けはまだ早い」とだけ表示する。なお、彼女の年齢は歳から歳まで諸説あり、写真も拡散のたびに頬のしわが一枚ずつ増えるため、実在性が確認できないとされている。
伝承の内容[編集]
この都市伝説の中心は、漬物.comを閲覧した者の冷蔵庫内で、保存していた漬物の並びが翌朝だけ整列しているという現象である。とくに、、の順番が厳密に守られている場合、サイト側の「おもてなし」が成立したと解釈されるという。
また、ページ内の検索窓に「塩」と入力すると、通常は何も起きないが、回連続で検索した者のスマートフォンに限り、の古い岸の倉庫番号が表示される、という目撃談がある。これは怪奇譚として語られる一方で、単なる自動補完の誤作動だったとする説も有力である。
委細と派生[編集]
地域差[編集]
では「漬物.comの管理人は雪の日だけ現れる」とされ、ページ背景が一面の薄紫になるという。これに対しでは、アクセス後に表示される注意書きが「乳酸発酵中」とだけ出る派生が知られ、閲覧者が味噌汁を作り始めるという奇妙な後日談が付く。
の一部では、サイト名が「つけものどっとこむ」ではなく「つけもの・どっと・こむ」と3拍で唱えないと開かないとされ、地域ごとにの細部が変化している。こうした差異は、口伝の過程で漬物の熟成具合が文化圏ごとに置き換わったためと説明される。
学校内での派生[編集]
では、深夜にへ入ると、未使用の机上に漬物石だけが残っているという形に変化する場合がある。特に前の準備期間には、「ウェブサイトを開いたはずが、印刷室から漬物の匂いがした」という話が増えるとされる。
一部ののあいだでは、漬物.comを見た翌日に弁当の中の梅干しが消える代わりに、クラス全員の連絡帳に『次は浅漬けを持参』と書かれていた、という派生もある。これはの一種として語られることが多い。
噂にみる「対処法」[編集]
伝承上、漬物.comに遭遇した際の対処法は、ブラウザを閉じることではなく、冷蔵庫を3回軽く叩いてからを一切れ入れることとされる。これにより、サイトの「塩気」が下がり、管理人の機嫌が直るという。
別の流派では、アクセス前に白ごはんを茶碗半分だけ残しておくと、ページが読み込み中に「足りません」と表示して閉じられるため安全とされる。ただし、ながら、残したご飯を翌朝まで放置すると家族の誰かが必ず漬物を足すため、結局は閲覧者側の生活習慣が改善されるだけだとも言われている。
社会的影響[編集]
漬物.comの流行は、上のが食品文化の再評価に結びついた初期事例の一つとされる。実際、前半には、地方の漬物組合が「うちの樽は出没しません」と書いた注意書きを同封する事例が確認されたという[4]。
また、若年層のあいだで「古いサイトほど味がある」という認識が広まり、閉鎖寸前の個人サイト保存運動にも影響した。もっとも、これがの拡大ではなく、単に祖母のぬか床を手伝う機会を増やしただけだという指摘もある。
文化・メディアでの扱い[編集]
の深夜ラジオ『月曜ぬか床倶楽部』では、漬物.comを「サーバーに棲む」として朗読するコーナーが設けられ、リスナーから約通の投稿が寄せられたとされる。また、地方のでは、実在の漬物店を取材したつもりが、セットの背景にだけページロゴが映り込む事故が起きたという。
漫画や短編小説では、漬物.comはしばしば「見れば腹が減る不気味なサイト」として描かれた。なお、刊のホラーアンソロジーに収録された『ドメインの奥のぬか床』では、管理人が最後まで姿を見せず、代わりに404エラーの裏で壺漬けが発酵を続ける場面が高く評価された。
脚注[編集]
[1] 中村、2020年、pp. 14-19。
[2] 佐伯、2004年、pp. 88-91。
[3] 田所、2002年、Vol. 7, No. 3, pp. 201-209。
[4] 関西漬物文化研究会『ぬか床とウェブ初期の民俗誌』第2巻第1号、pp. 33-41。
参考文献[編集]
・中村由紀『日本ネット怪談史 1995-2005』青霜社, 2020.
・佐伯隆一『発酵する画面——初期ウェブと食の民俗』東都出版, 2004.
・T. Hayashi, “Pickles, Domains, and Urban Legends in Early Japanese Web Culture,” Journal of Digital Folklore, Vol. 12, No. 2, pp. 55-73, 2017.
・田所静香「深夜アクセスと冷蔵庫行動の相関」『民俗情報学研究』Vol. 7, No. 3, pp. 201-209, 2002.
・関西漬物文化研究会『ぬか床とウェブ初期の民俗誌』第2巻第1号, 2003.
・M. A. Thornton, “Fermented Interfaces and Haunted Storage Pages,” New Media & Myth Quarterly, Vol. 4, No. 1, pp. 9-26, 2008.
・小松原圭『怪談サイトの実践的読み方』風見書房, 2011.
・山岸みどり「表示されない画像と匂いの想像力」『情報文化論集』第19巻第4号, pp. 144-158, 2006.
・Christopher Vale, “The Domain Name as Spirit Vessel,” The Review of Internet Antiquity, Vol. 3, No. 4, pp. 77-84, 2015.
・長谷川一郎『ブラウザ越しの妖怪学』白河社, 1999.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 中村由紀『日本ネット怪談史 1995-2005』青霜社, 2020.
- ^ 佐伯隆一『発酵する画面——初期ウェブと食の民俗』東都出版, 2004.
- ^ T. Hayashi, “Pickles, Domains, and Urban Legends in Early Japanese Web Culture,” Journal of Digital Folklore, Vol. 12, No. 2, pp. 55-73, 2017.
- ^ 田所静香「深夜アクセスと冷蔵庫行動の相関」『民俗情報学研究』Vol. 7, No. 3, pp. 201-209, 2002.
- ^ 関西漬物文化研究会『ぬか床とウェブ初期の民俗誌』第2巻第1号, 2003.
- ^ M. A. Thornton, “Fermented Interfaces and Haunted Storage Pages,” New Media & Myth Quarterly, Vol. 4, No. 1, pp. 9-26, 2008.
- ^ 小松原圭『怪談サイトの実践的読み方』風見書房, 2011.
- ^ 山岸みどり「表示されない画像と匂いの想像力」『情報文化論集』第19巻第4号, pp. 144-158, 2006.
- ^ Christopher Vale, “The Domain Name as Spirit Vessel,” The Review of Internet Antiquity, Vol. 3, No. 4, pp. 77-84, 2015.
- ^ 長谷川一郎『ブラウザ越しの妖怪学』白河社, 1999.
外部リンク
- 日本怪談データベース
- 旧式サイト保存委員会
- ぬか床民俗研究所
- 深夜ネット伝承アーカイブ
- 食文化都市伝説センター