球神論
| 名称 | 球神同盟 |
|---|---|
| 略称 | QSD |
| 設立 | 1987年 |
| 設立地 | 東京都千代田区 |
| 解散 | 1999年(表向き) |
| 種類 | 秘密結社 |
| 目的 | 球体儀礼の保全と自転調整 |
| 本部 | 神田鍛冶町の旧倉庫 |
| 会員数 | 最大推定1,240人 |
| リーダー | 桐生 圓蔵 |
球神論(きゅうしんろん、英: Sphere Deity Theory)とは、を聖なる媒体とみなし、級の組織がとを通じてを調整しているとする陰謀論である[1]。球状の物体が多い年ほどが安定するという主張と結びつき、による長期的ながあると信じられている[2]。
概要[編集]
球神論は、、、などの球形物が、単なる用具や装飾品ではなく、世界の秩序を保つための「回転装置」であるとする陰謀論である。支持者は、球体が多用された国家ほど政情が安定しやすいと主張し、やが長年これを隠蔽してきたとする[1]。
この説は、1980年代後半のの古書店街とアマチュア天文サークルを中心に拡散したとされる。初期には冗談めいた都市伝説として扱われていたが、のちに「球神同盟」と呼ばれる集団が体系化を進め、のみならず、、にも信者が生まれたとされる[2]。
背景[編集]
球神論の背景には、末期に流行した「円環」「循環」「回転」に関する疑似科学ブームがあるとされる。特に1985年の関連資料の再流通、の球技場建設ラッシュ、さらにの惑星観測映像の断片的な再編集が、球体に神秘性を与えたと指摘されている[3]。
また、当時の系の深夜番組で、野球の投球回転数と景気変動を無理に結びつけるコーナーが放送され、これを真に受けた視聴者が「回転の政治学」を唱え始めたのが起点であるという説が有力である。もっとも、放送台本の現存箇所にはそのような記述はなく、検証は困難であるとされる。
起源と拡散[編集]
起源[編集]
球神論の原型は、の古書店「三輪堂」で1987年に発見されたとされる謄写版冊子『球体礼讃入門』に見いだされる。同書の著者は桐生圓蔵とされるが、実在を確認できる公的記録は少ない[4]。冊子では、地球儀、ビリヤード球、衛星写真の丸い輪郭を例に挙げ、「権力は直線ではなく球面を好む」と主張していた。
桐生は内の小規模な貸会議室で講演会を重ね、参加者に青いゴム球を配布したという。配布数は最終的に1万8,400個に達したとされるが、会計記録には1,900個分しか残っておらず、ここに初期拡散の誇張があるとみられている。
各国への拡散[編集]
1990年代前半には、の都市伝説研究家が球神論を「球面支配仮説」として紹介し、の地下出版界隈で流布した。続いてでは、のニューエイジ系ラジオ番組が「回転する地球と回転する経済」を同一視する特集を組み、英語圏で Sphere Deity Theory の呼称が定着したとされる[5]。
一方ででは、のサッカークラブ関係者が儀礼的にボールを磨く習慣を「球神への奉仕」と解釈し、スポーツ文化と結びついた。なお、では似た主張があったものの、ボールよりの方が象徴性が強いとして広まらなかったとする研究もある。
主な主張[編集]
主な主張内容[編集]
球神論の中心命題は、「球形は管理可能性の最終形態である」というものである。支持者は、球体はどの方向から見ても同一であるため、やにおいて情報を均質化しやすいと主張する。また、の形状が国家の統制装置として設計されたとする説もある[6]。
さらに、の満ち欠け、の自転、の開催周期が、同一の「球面年表」に従っているとする見方がある。これは科学的に否定される一方、支持者は「否定されること自体が隠蔽の証拠である」と再反論するため、議論が終わらない構造になっている。
その他の主張[編集]
派生説として、ボールの縫い目の数が世界情勢を左右するという「縫合数支配論」がある。とりわけ公式球の縫い目が108回であることから、やと結びつける論者が現れた[7]。
ほかに、球神論者の一部はの購入が増えると政権交代が起こりやすいと主張し、実際に2010年から2014年にかけて主要書店の地球儀売上と選挙報道量を比較した自前の表を提示した。しかし、比較対象が毎回3件しかなく、統計としては粗雑であるとの指摘がなされている。
批判・反論と検証[編集]
球神論に対しては、やの一部研究者から、概念が広すぎて反証不能であるとの批判が出された。特に、球体でないものが提示されると「まだ球神化していないだけ」と逃げるため、科学的な議論になりにくいとされる[8]。
また、統計局の公開データを用いた簡易検証では、球形物の保有量と政情安定度に有意な相関は確認されなかった。ところが支持者側は、データセットからやを除外したことを「恣意的な捏造」と呼び、逆に検証者を陰謀の一部とみなした。
社会的影響と拡散[編集]
球神論は、直接的な政治運動へ発展することは少なかったが、や動画サイトではミーム化し、「球を磨くと真相が見える」という定型句が流行した。2021年にはの交差点で、球体型ヘルメットを被った一団が通行人に卓球ボールを配る騒ぎがあり、報道各社が「新手の偽情報」として扱った[9]。
一方で、やでは、球神論を皮肉った商品が売れた。とくに「自転を整える」という名の地球儀クリーナーは年間約32万本を売り上げたとされ、皮肉が商業化した例としてしばしば言及される。
関連人物[編集]
桐生圓蔵は球神論の創始者とされる人物で、元はであったとする説がある。彼は「球面の倫理」を説く講義で知られ、聴衆にバウンド回数を数えさせる奇妙な訓練を行ったという。
次に重要なのが、英訳者のマーガレット・A・ソーンダース博士である。彼女は出身の文化人類学者とされ、論文『The Sacred Sphere and the Managerial Cosmos』で球神論を学術用語化した。ただし、該当論文の掲載誌は休刊しており、確認は容易ではない。
ほかに、の古書店主・石橋隆三、の深夜ラジオ司会者・宮内レイ、の元サッカー選手ジウベルト・ナシメントらが拡散に関与したとされる。
関連作品[編集]
球神論は、その奇妙さゆえに映画・ゲーム・書籍の題材にもなった。1998年の映画『回転する国』では、の港湾地区を舞台に、球体型の隠し金庫をめぐる諜報劇が描かれたとされる。
2006年発売のゲーム『Sphere Conspiracy』は、プレイヤーが世界各地のボールを回収し、からまでの回転同期を保つ内容で、当時のレビューで「無駄に学術的」と評された。
書籍では、篠原一樹『球神論入門――丸いものはなぜ危険か』、およびエレナ・ロッシ『The Orbit of Power』が有名である。前者は帯文に「あなたはまだ平面で考えている」と書かれていたとされ、古書市場で妙に高騰した。
脚注[編集]
[1] もっとも広く流通している定義である。
[2] 初期の球神同盟内部資料『白球議定書』による。
[3] 当時の番組表と講演会記録を照合した独自研究がある。
[4] 三輪堂旧蔵目録にはタイトルのみが残る。
[5] 英語圏では 1993年頃から使用例が確認されるとされる。
[6] ただし、野球場の設計史とは整合しない。
[7] 縫い目数と宗教象徴の対応関係は要出典である。
[8] 反証不能性は球神論研究の最大の論点である。
[9] ただし、配布された球は後日、企業ノベルティであった可能性が高い。
参考文献[編集]
木村啓介『球面思想の戦後史』筑摩書房, 2008年.
Margaret A. Saunders, “The Sacred Sphere and the Managerial Cosmos,” Journal of Comparative Paranoia, Vol. 12, No. 3, pp. 44-79, 1994.
中野涼子『都市伝説と回転儀礼』岩波書店, 2011年.
Giovanni Berti, “Il pallone e il potere: una lettura circolare,” Quaderni di Sociologia Simbolica, Vol. 8, No. 1, pp. 10-33, 1997.
佐伯真一『陰謀論の民俗学』新曜社, 2014年.
H. C. Ellsworth, Sphere Politics in Late Modern Japan, Cambridge University Press, 2002.
宮内レイ『真夜中の球体放送局』リトルモア, 1995年.
上村拓也『回転する国家とその信徒たち』勁草書房, 2020年.
Eleanor Whitby, “The Geometry of Hidden Rule,” Review of Esoteric Governance, Vol. 5, No. 2, pp. 101-128, 2009.
桐生圓蔵『球体礼讃入門』三輪堂刊, 1987年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 木村啓介『球面思想の戦後史』筑摩書房, 2008年.
- ^ Margaret A. Saunders, “The Sacred Sphere and the Managerial Cosmos,” Journal of Comparative Paranoia, Vol. 12, No. 3, pp. 44-79, 1994.
- ^ 中野涼子『都市伝説と回転儀礼』岩波書店, 2011年.
- ^ Giovanni Berti, “Il pallone e il potere: una lettura circolare,” Quaderni di Sociologia Simbolica, Vol. 8, No. 1, pp. 10-33, 1997.
- ^ 佐伯真一『陰謀論の民俗学』新曜社, 2014年.
- ^ H. C. Ellsworth, Sphere Politics in Late Modern Japan, Cambridge University Press, 2002.
- ^ 宮内レイ『真夜中の球体放送局』リトルモア, 1995年.
- ^ 上村拓也『回転する国家とその信徒たち』勁草書房, 2020年.
- ^ Eleanor Whitby, “The Geometry of Hidden Rule,” Review of Esoteric Governance, Vol. 5, No. 2, pp. 101-128, 2009.
- ^ 桐生圓蔵『球体礼讃入門』三輪堂刊, 1987年.
外部リンク
- 球神論アーカイブ協会
- 回転史研究所
- 国際球面文化学会
- 三輪堂デジタル目録
- 夜間陰謀論資料館