生きる
| コンビ名 | 生きる |
|---|---|
| 画像 | なし |
| キャプション | 生存確認ライブ「今日も息してます」より |
| メンバー | 佐伯命、三ツ橋継 |
| 結成年 | 2012年 |
| 解散年 | 活動中 |
| 事務所 | 生存企画 |
| 活動時期 | 2012年 - |
| 芸種 | 漫才、コント |
| ネタ作成者 | 佐伯命 |
| 出身 | 、 |
| 出会い | 都内の夜間専門学校の生存学研究会 |
| 旧コンビ名 | 仮呼吸 |
| 別名 | 生き残り屋 |
| 同期 | 白紙委任、うす明かり電車 |
| 影響 | 生存確認芸、反復不安ネタ |
| 現在の代表番組 | 『朝の生存点検』 |
| 過去の代表番組 | 『深夜の息継ぎ会議』 |
| 現在の活動状況 | ライブ、配信、ラジオ中心 |
| 受賞歴 | 生き方賞2019、都会の余白賞2021 |
| 公式サイト | 生存企画公式プロフィール |
生きる(いきる、英: IKIRU)は、・の架空の芸能事務所所属のお笑いコンビ。2012年に結成され、独特の生存確認漫才で知られる。M-1グランプリ2018年準決勝進出[1]。
メンバー[編集]
佐伯命(さえき いのち、1988年生)は出身のボケ担当で、ネタ作成も担う。小学生時代から「息を止める遊び」に異常な執着を見せたとされ、本人は後に「止めるためではなく、再開の瞬間を笑いにしたかった」と語っている。
三ツ橋継(みつはし つぐ、1987年生)は出身のツッコミ担当で、舞台上では比較的冷静であるが、実際にはネタ中に5回以上まばたきを忘れることがある。両者ともの生存学研究会で出会い、当初は別々に活動していたが、互いの卒業制作で「人間はなぜ立ち上がるのか」を扱ったことから意気投合した[2]。
コンビ名の由来は、命が「この世で最も簡潔な動詞は『生きる』である」と主張した一方、継が「それを名乗るなら、毎回ちゃんと生きてきた証拠が必要だ」と返したことにある。以後、舞台上では開演前に両者が5秒間だけ無言で立つ習慣が定着し、ファンの間では「生存確認」と呼ばれている。
来歴[編集]
結成まで[編集]
2012年、の地下稽古場で開催された「若手実演家のための自己申告会」において、佐伯と三ツ橋は偶然同じ『将来の不安』欄を提出したことをきっかけに知り合った。提出用紙の余白に、佐伯が「生きるとは反復である」と書き、三ツ橋がその下に「いや、反復しながら交通費を払うことである」と書き足した記録が残る[3]。
当初のコンビ名は『仮呼吸』であったが、所属オーディションの審査員が「語感が強すぎて医療行為と誤解される」と指摘したため改題された。改称後の初舞台では、マイクテストの代わりに二人で深呼吸を10回行い、客席の3割が内容を理解する前に笑ったという。
東京進出[編集]
2015年に活動拠点をへ移し、以後はライブハウス、青果市場の倉庫、公共図書館の閉館後ホールなど、会場選びの振れ幅が極端であった。特にの小劇場で行われた単独ライブ『酸素の配給』では、会場の換気性能が低かったため、ネタ中の「息を止めるボケ」がやけに説得力を持ってしまったとされる。
この頃から、二人はの若手向け番組の構成作家に「会話が常に再起動している」と評され、短いフレーズを反復する漫才で注目を集めた。2018年にはで準決勝進出を果たし、審査員の一人が「笑いながら人生の手続きに思いを馳せた」とコメントしたことが話題となった[4]。
芸風[編集]
芸種は主に漫才であるが、コントでも独自性を発揮している。ネタの基本構造は、佐伯が「今日も生きてしまった」と過剰に重く切り出し、三ツ橋が「言い方が年末調整なんだよ」と返す形式で、そこから生存、睡眠、通勤、納豆の混入率など、生活に極めて近いが少しだけ不穏な話題へ展開していく。
漫才では「現在形の恐怖」を扱うことが多く、コントでは病院、役所、深夜のコインランドリーを舞台にした『確認』シリーズが知られる。特に『住民票を取りに来た男』は、本人確認のたびに別人格が増えていくという設定で、東京と千葉の区境に詳しい観客ほど笑うとされる[5]。
また、両者の掛け合いは一見すると論理的であるが、終盤に必ず「生きるって、結局どこから数えるんですかね」という問いへ収束する。これは命が専門学校時代に受講していた「時間と主体」の講義資料をネタに転用したもので、資料の角に“要再提出”と赤字で書かれていたという逸話がある。
エピソード[編集]
二人は2020年、無観客配信ライブの冒頭で、誤って開演5分前に全力でネタを終えてしまい、その後の5分間をただ座って過ごした。この無言の時間が「最も生きるを体現した瞬間」と評され、切り抜き動画がで87万回再生された[6]。
また、2022年には主催の防災啓発イベントに出演し、司会者から「命を守る話を」と依頼されたにもかかわらず、二人は「まず自分たちの命名の由来から」と切り出してしまった。結果として、避難経路の説明よりも先に“舞台上での立ち位置の確保”が重要であると説明し、主催側から感謝状を受けた一方、翌年からは持ち時間が3分短縮された。
ファンの間では、三ツ橋がネタ中に一度も噛まなかった日は「継日和」と呼ばれているが、2024年時点で公式に確認されたのは年に2回のみである[要出典]。なお、本人たちはこの呼称を「人間のコンディションを天気で測るな」としてあまり好んでいない。
出囃子[編集]
出囃子はの『Tong Poo』の冒頭3秒を再編集した『息の切れ目版』であるとされる。これは命が音楽編集ソフトの体験版を使って自作したもので、再生すると最初の1音だけ妙に長く残るため、観客が「始まる前から終わりそう」と感じる構造になっている。
一時期はのライブハウスで誤って『蛍の光』が使用されていたが、二人が退出しかける客席を見て「それだと我々が閉店の一部になる」と抗議し、現在の形に落ち着いた。ライブ関係者の間では、出囃子が鳴った瞬間に三ツ橋が背筋を伸ばすため、照明より先に空気が整うともいわれる。
賞レース成績・受賞歴[編集]
2017年のでは3回戦で敗退したが、その際のネタが「敗退コメントを言う前提で展開されている」として一部の編集者に高く評価された。2018年は準決勝進出、2019年は2回戦で敗れたが、敗因として「マイクスタンドに対して礼儀正しすぎた」ことが挙げられたという[7]。
受賞歴としては、2019年にの新人寄り企画「生き方賞」を受賞し、2021年にはの「都会の余白賞」を受けた。いずれも笑いの技術よりも、都市生活の隙間を精密に拾う観察眼が評価されたとされる。また、2023年には予選会場で審査員席の椅子配置を勝手に修正し、注意を受けたが、これが逆に「現場適応力の高さ」として話題になった。
出演[編集]
テレビでは系の『朝の生存点検』や風の深夜帯番組に出演し、短時間で“生きているかどうか”を確認する企画を続けている。レギュラー番組は少ないが、ラジオではの深夜枠を模した配信番組『夜間生存会議』で安定した人気を得た。
映画出演としては、2021年公開の短編『ゼロ時の息継ぎ』にて、二人とも端役ながら役名が「受付A」「受付B」であったことがかえって話題を呼んだ。舞台ではやの小劇場を中心に活動し、テレビドラマでは深夜のワンシーンに「通りすがりの確認係」として登場することが多い。
ネット配信では風の生配信企画『今日も一応、在席』で、視聴者から送られた「まだ間に合うか」という相談に対して、毎回異なる角度から「間に合うとは何か」を検証した。CMでは風の炭酸水広告に出演し、商品名を一度も言わずに炭酸の音だけで30秒を持たせたため、広告業界の一部では伝説扱いとなっている。
作品[編集]
CDとしては、2020年に『生存確認ベスト』をリリースしている。収録内容は漫才の切り抜き音源と、三ツ橋が間違えて録音した洗濯機の終了音が半々で構成され、結果的に「家事をしているときに聴くと心が落ち着く」と口コミで広まった。
DVD『仮呼吸の時代』では、結成初期の稽古場映像が収められており、佐伯がカウントを取りながら自分の台詞で泣きそうになっている場面が削除されずに残っている。なお、特典映像には「ネタが終わった後に二人で何を話しているか」を5分間ひたすら収録した副音声が付属しており、ほぼ全編が「明日、息しやすいかな」である。
単独ライブ[編集]
単独ライブは毎年1回以上の頻度で行われ、タイトルはいずれも生活感と生存不安を同時に刺激するものが多い。代表的なものに『酸素の配給』『今日も息してます』『徒歩圏内の奇跡』『まだ休憩ではない』などがある。
2023年の単独ライブ『息をするための手順書』はの小ホールで開催され、当日配布されたパンフレットが36ページにも及んだ。そこにはネタの解説のほか、三ツ橋による「舞台袖で水を飲む回数の統計」が掲載され、観客の一部が学会発表と勘違いしたという。
また、2024年の東京公演では、開演直前に会場の空調が故障し、客席が一斉にうちわを取り出した結果、演者より観客の生存意欲が勝っていたとして評判になった。二人はこの回について「最も客席が頼もしい夜だった」と総括している。
書籍[編集]
2022年、佐伯命の初のエッセイ『生きるのに遅い朝』が風の体裁で刊行された。内容は芸人論というより日常の遅刻記録に近く、各章末に「結論:だいたい間に合う」と書かれているのが特徴である。
翌年には、二人共著の『漫才と呼吸のあいだ』が発売され、ネタ作りの方法論が細かく記された。そこでは「ツッコミは空気を切るのではなく、空気の戻り先を作る役割である」という独自理論が展開され、一部の演芸研究者の間で密かに引用されている[8]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐藤恒雄『現代漫才における生存語彙の研究』生存企画出版、2021年、pp. 14-37.
- ^ 三宅理沙『反復する笑いと都市の空気』日本演芸学会誌 Vol. 18, No. 2, 2019, pp. 55-72.
- ^ 近藤匠『東京小劇場における息継ぎの演出』演劇評論 第24巻第4号, 2020, pp. 101-118.
- ^ Margaret H. Bell, 'Breathless Timing in Japanese Duo Comedy', Journal of Urban Performance, Vol. 9, No. 1, 2022, pp. 201-219.
- ^ 高橋千尋『生きるという題名の芸人史』下北沢文化研究所紀要 第11号, 2023, pp. 5-29.
- ^ Daniel S. Porter, 'Verification Gags and the Logic of Pause', Comedy Studies Quarterly, Vol. 7, No. 3, 2021, pp. 88-104.
- ^ 市川風太『深夜配信における“在席”概念の拡張』配信芸能ジャーナル 第6巻第1号, 2024, pp. 33-49.
- ^ 小野寺由佳『漫才と呼吸のあいだ』芸人文庫、2023年、pp. 1-256.
- ^ A. W. North, 'The Economics of Living on Stage', Review of Performance Cultures, Vol. 12, No. 4, 2020, pp. 77-93.
- ^ 清水良介『息をするための手順書』演芸研究資料集、2024年、pp. 2-19.
外部リンク
- 生存企画 公式プロフィール
- 漫才データベース ひとこと档
- 東京小劇場アーカイブ
- 夜間生存会議 公式配信ページ
- 下北沢演芸連盟 年鑑