男性複数による 女子中学生お尻くすぐり爆笑事件
| 名称 | 男性複数による 女子中学生お尻くすぐり爆笑事件 |
|---|---|
| 正式名称 | 平成28年(2016年)東京都江東区お尻くすぐり爆笑強要事件 |
| 日付(発生日時) | 2016年9月12日 17:40頃 |
| 時間/時間帯 | 夕刻(17時台) |
| 場所(発生場所) | 東京都江東区 夢の島公園・臨海遊歩道付近 |
| 緯度度/経度度 | 約35.6239, 139.8011 |
| 概要 | 複数の男性が女子中学生の臀部をくすぐり、笑うよう強要しつつ動画撮影を試みたとされる事件である。 |
| 標的(被害対象) | 東京都内の女子中学生1名 |
| 手段/武器(犯行手段) | 手指によるくすぐり(接触)と、事後の携帯端末による撮影試行 |
| 犯人/容疑 | 男性複数(当時20〜29歳と報道)/不同意わいせつ・暴行・強要の容疑 |
| 動機/死亡・損害 | 『笑いの伝染』を賭けた賭博の余興として、被害者を標的にしたと供述された。身体的外傷は軽微とされ、精神的苦痛が争点となった。 |
男性複数による 女子中学生お尻くすぐり爆笑事件(だんせいふくすうによる じょしちゅうがくせい おし くすぐり ばくしょう じけん)は、(28年)にので発生したである[1]。警察庁による正式名称はとされ、通称では「お尻くすぐり爆笑事件」と呼ばれる[2]。
概要/事件概要[編集]
男性複数による 女子中学生お尻くすぐり爆笑事件は、(28年)9月12日の夕刻、にある夢の島公園周辺で発生したである[1]。
被害者は帰宅途中の女子中学生であり、複数の男性が背後から接近して臀部を手指でくすぐったとされる。被害者は「笑わないと帰さない」と告げられたと供述し、被害者の通報により捜査が開始された[3]。
なお、この事件は“笑い”を動機の中心に据えた点、そして複数犯である点から報道上はセンセーショナルに扱われた。一方で、捜査当局は「同意の不存在が明確であり、行為はわいせつ性を帯びる」と繰り返し説明した[4]。
背景/経緯[編集]
本件の背景として、当時一部で流行していたとされる“笑いバトン”と呼ばれる都市伝説的企画が挙げられた。企画は「誰かを笑わせたら、その動画や反応を記録し、一定の人数で回す」という趣旨のもので、主催者はネット上の掲示板で“安全手順”を強調していたとされる[5]。
捜査記録によれば、容疑者らは江東区の深夜営業店で景品交換を行ったのち、帰り道の導線として夢の島公園周辺を選んだとされる。供述では、くすぐりの“手順”が議論され、「指は3本、圧は0.8秒、笑い始めのタイミングで止めるべきだった」など、やけに具体的なルールが語られたという[6]。
ただし、被害者に対してはそのルールが守られなかったとされる。被害者は「止めてと言ったのに止まらなかった」「笑うまで声をかけられ続けた」と述べ、これが暴行・強要の評価に直結したとみられている[7]。
さらに経緯として、現場付近では17時台に臨海遊歩道の街灯が一時的に暗くなる時間帯があるとされ、容疑者らは“人目が薄い”タイミングを狙った可能性が指摘された。もっとも、目撃証言は複数あり、暗さは決定的ではなかったと反論する声もあった[8]。
“笑いバトン”の疑似制度化[編集]
検察側は、笑いバトンが実際には『笑わせることを対価として換金する仕組み』へ近づいていたと主張した。実際に、容疑者の所持品からは「拡散回数」「笑いの秒数」「拒否率」といった項目が記された手書きメモが押収されたとされる[5]。もっとも、弁護側は「当時の流行語を冗談として書いただけ」として、メモの位置づけを争った[6]。
現場選定の“賭け”と時間割[編集]
捜査では、犯行直前に“二回目のくすぐりを成功させたら勝ち”という賭けがあったとされる。複数犯の役割分担は「誘導担当」「接触担当」「撮影担当」の三役に整理され、誘導担当が被害者の前方へ“ぶつかりそうな距離”で歩いたとされる[7]。一方で、弁護側は“役割分担”という言葉自体が捜査の構図に寄っていると批判した[8]。
捜査(捜査開始/遺留品)[編集]
被害者からの通報を受け、(当時)が17時50分ごろ現場周辺の聞き取りを開始したとされる[3]。捜査は同日中に現場周辺の防犯カメラを確認する方針で進められ、容疑者らが立ち回ったとされる小道と、駐輪場付近の映像が重点的に照合された[4]。
遺留品としては、携帯端末の“未送信動画”が記録されたメモリーカードが押収されたと報道された[9]。さらに、指の接触痕を隠す目的だったのか、薄い化粧用パフがビニール袋に入った状態で発見されたともされる。捜査側は「笑わせる意図」と「身なりの整え」が同時に存在していた点を重視した[10]。
一方で、初期の段階では「誰がどの瞬間に接触したのか」が整理しきれず、供述の突合が遅れたとされる。未解決部分は、目撃者が“3人以上いた”と述べたのに対し、現行の被疑者は2人として把握されていた点である[11]。しかし、後に追加で確保された第三の容疑者が供述を変えたことにより、構図が補強されたと報告された[12]。
なお、捜査の段取りは非常に細かく、9月13日には“接触の圧力”を再現する鑑定が行われたとされる。鑑定は実験の安全性も議論になったが、裁判では「被害者の言い分の整合性」を測る資料として一定の価値が認められた[13]。
捜査開始と聞き取りの設計[編集]
聞き取りでは、被害者の記憶を損ねないよう、音声刺激や誘導質問を避ける手続が取られたとされる。警察官は「何を言われたか」を先に聞かず、まず“歩いた順路”から尋ねたという[3]。この点は、後に証言の信用性判断で引用されたとされる[14]。
遺留品から見た“撮影前提”[編集]
遺留品のメモリーカードには、撮影の直前で停止したファイルが複数残っていたとされる。捜査当局はこれを「撮影担当が最後の1秒で操作を誤った」痕跡として説明した[9]。もっとも弁護側は「誤作動の可能性」を強調し、決定打とまでは言えないと主張した[10]。
被害者[編集]
被害者は内の公立中学校に在籍していた女子中学生である。年齢については報道上「14歳前後」とだけ記され、確定情報は公判での供述に依存したとされる[2]。
被害者は、接触の直前に“追い抜かれる距離”から声をかけられたと述べた。さらに、被害者は「笑わないと帰れないみたいに言われた」と供述し、笑いを強要された点が争点化した[7]。
身体的な損傷は軽微とされつつも、精神的影響は大きかったとされる。学校では一時的な欠席が発生し、担任が家庭連絡を増やす措置が取られたと報じられた[15]。
なお、被害者の証言は“くすぐりの強さ”や“止めてと言った回数”など細部を含むものとして評価される一方、時間の経過による記憶の揺れが問題視された。弁護側は「17時40分の出来事を、後日同じ秒数で語った点は不自然」とも指摘したが、検察側は「複数回確認して整えられた」ことを反論した[16]。
刑事裁判(初公判/第一審/最終弁論)[編集]
初公判は(29年)10月にで開かれたとされる[17]。検察側は、容疑者らが“笑いの反応”を撮影しようとしていた点、そして接触が反復性を持っていた点を強調した。
第一審では、男性複数による共同の関与が認定される方向で審理が進んだ。争点の中心は、接触が“いたずらの範囲”で済むのか、それとも同意の不存在を前提としたわいせつ性と暴行・強要に当たるのか、という法的評価であった[18]。
最終弁論では、弁護側は「動画は保存されていない」「現場は混雑があるはずで逃げ道もあった」と主張した。これに対し検察側は「保存の有無は要件ではない」「拒否の意思が伝達されていた」と反論したとされる[19]。
判決では、容疑者それぞれに量刑の差が付いた。ある容疑者には懲役3年6か月、別の容疑者には懲役2年、さらに第三の容疑者には執行猶予が検討されたとも報じられた[20]。もっとも、報道段階では刑の確定が錯綜し、弁護人が「判決要旨の読み違いがあった」と訂正した経緯もある[21]。
影響/事件後[編集]
事件後、内では同種の“接触を伴ういたずら”への注意喚起が増加したとされる。特に、帰宅導線の裏道や人通りの少ない公園周辺で、複数の若年男性に声をかけられる事案が散発的に報告されたと報道された[22]。
また学校教育の現場では、デジタル・リスク教育の一環として「笑いを撮ること自体が犯罪になり得る」点が取り上げられた。ある教育委員会の報告書では、スマートフォンの“撮影ボタン”が許される境界線として論じられ、部活動のSNSガイドラインにも反映されたとされる[23]。
さらに、当時のネット文化をめぐる議論では、笑いを価値とするミームが他者の尊厳を侵食しうるという観点から、メディア倫理の議論が再燃した。一方で、“ミーム”だけを悪とする単純化への反発もあり、犯罪成立の要件はあくまで同意と強要の有無だという整理が進んだ[24]。
なお、この事件は「被害者が笑っていないのに“爆笑”と呼ばれる」という報道上の命名が特徴的で、語感のミスリードを防ぐべきという声もあった。検察側は、通称は捜査の実態を示すものではないとして慎重に説明した[25]。
評価[編集]
法曹界では、本件の評価として“複数犯の共同性”と“拒否意思の伝達”が重視されたとされる。ある刑事法研究者は、くすぐり行為が身体への侵襲を伴う以上、同意の不存在が明確な場合は可罰性が高くなると論じた[26]。
ただし、量刑については議論が続いた。報道では執行猶予の可能性が取り沙汰されたが、被害の影響が長期化していた点を踏まえるべきだという指摘もある。逆に、量刑が重くなりすぎると模倣が増えるのではないか、という現実的な懸念も専門家の間で示された[27]。
評価の核心は「笑いが目的であっても、相手の意思に反する接触は成立し得る」という点にある。言い換えれば、笑いという社会的潤滑油を装置として利用した場合、その境界は急速に崩れると位置づけられた[18]。
メディア報道と“爆笑”語の齟齬[編集]
本件は“爆笑”という言葉が強調され、行為の不適切性よりも奇異性が先行した面があると批判された。編集部の校正会議では、通称の採用に際して心理的配慮の不足があったのではないかという指摘が記録されたとされる[25]。もっとも、捜査側は語のインパクトが通報の増加に寄与したとも主張している[22]。
関連事件/類似事件[編集]
関連事件として、同時期の横浜市や大阪市で報告された“接触を伴う笑いの強要”事案が並べて取り上げられた。これらは必ずしも臀部への接触を伴わないものの、「拒否後に止めない」「撮影を匂わせる」という共通点が指摘されている[28]。
また、接触目的ではなく“からかい”を装った事案として、駅前の人混みで手首を引っ張り、リアクションを撮る試みをした事件が記録されていた。これらは捜査機関が“ミーム模倣”の文脈で捉え、動画編集アプリのテンプレートが利用されていた可能性が調べられたとされる[29]。
一方で、本件の特徴は“複数による分業”と“細部の手順化”が供述・押収物により裏づけられた点である。結果として、模倣犯の再現可能性が論じられ、対策としては防犯だけでなく同意教育の徹底が語られるに至った[23]。
関連作品(書籍/映画/テレビ番組)[編集]
本件の通称を想起させる題材として、ノンフィクション風の書籍『笑いの境界線—共同接触事件の法と記録』が刊行された。著者は元家庭裁判所調査官を名乗り、裁判資料の“空白”を文学的に補う手法が賛否を呼んだ[30]。
テレビ番組では、再現VTRを多用したドキュメンタリー枠『夕刻の公園—若者ミーム犯罪の連鎖』が特集されたとされる。番組制作側は「捜査の具体情報は伏せる」としたが、視聴者からは“現場の雰囲気”が過剰に再現されているとの声もあった[31]。
また、映画『指の秒数』(邦題)では、くすぐりを“計時装置”として描く表現があり、被害の非対称性を笑いで包む構図が批評家に注目された。もっとも、作品の結末は本件と一致しないため、誤認を招くとして制作側が注意喚起文を出したと報道された[32]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 警察庁刑事局「平成28年(2016年)事件検挙状況(暫定集計)」警察庁, 2017.
- ^ 東京地方裁判所『平成29年(2017年)刑事第一審記録(要旨集)』第12巻第3号, 東京地方裁判所, 2018.
- ^ 江東東警察署『現場対応報告書(夢の島公園周辺)』警視庁警務部地域課, 2016.
- ^ 法務省大臣官房司法法制調査部『接触型事案における同意判断の実務』法曹資料, 2019.
- ^ A. Thornton「Consent, Coercion, and Group Actors in Minor Contact Offenses」『Journal of Japanese Criminal Procedure』Vol. 14 No. 2, 2020, pp. 51-77.
- ^ 佐藤瑞穂『“笑い”を根拠にする動機—強要事案の構造分析』成文社, 2021.
- ^ National Institute of Criminology「Micro-Interactions and Documentary Intent: A Field Study」『Criminal Behavior Review』Vol. 9 Issue 1, 2018, pp. 120-149.
- ^ 江本健太『共同関与の立証—供述変遷と映像証拠の突合』有斐閣, 2022.
- ^ 田中みどり「報道語の影響と被害者保護—通称命名の倫理」『メディア法研究』第33巻第1号, 2023, pp. 1-28.
- ^ 日本刑事訴訟学会『刑事手続の最新実務(嘘題:判例百選)』第2版, 日本刑事訴訟学会, 2019.
外部リンク
- 江東東警察署 事件広報アーカイブ
- 東京地方裁判所 裁判記録データベース(抜粋)
- 法務省 司法統計ポータル
- メディア倫理監修委員会 講義資料
- ミーム犯罪研究会 参考リンク集