競技クイズ作問選手権
| 競技種別 | 作問(出題)技能の点数化 |
|---|---|
| 開催頻度 | 年1回(秋期) |
| 主催 | 作問競技連盟(問連) |
| 会場(通例) | 東京都内の多目的ホール |
| 出題形式 | 四肢択一+短答(混合) |
| 評価軸 | 正確性・意地の悪さ・救済設計・読了速度 |
| 参加資格 | 予選での作問提出審査通過 |
| 賞 | 金・銀・銅に加え「意地王」等 |
(きょうぎくいずさくもんせんしゅけん)は、クイズを出題するだけでなく、出題者(作問者)としての技術を競うの競技である。1990年代後半に草の根の作問会が競技化され、現在は年1回の全国大会として運用されているとされる[1]。
概要[編集]
は、参加者が自ら作ったクイズを競技形式で提出し、その出来栄えが審査される大会である。単なる知識勝負ではなく、誤答を誘う“設計”、読み上げ時間、誤解耐性、そして「良心的に意地悪であること」が評価される点が特徴とされる[1]。
歴史は、テレビの一般常識問題が“正解の気持ちよさ”に偏ったことへの反動として、1997年ごろに周辺の喫茶店で開かれた「作問会」に遡るとされる。作問会の常連だった(当時、印刷会社の校正担当)は、クイズは「紙の上で殴るのではなく、理解の筋肉を鍛える格闘技だ」と主張し、これが後の採点基準に影響したと語られている[2]。
歴史[編集]
草創期:喫茶店の採点表と“意地指数”[編集]
最初期の作問会では、各参加者がB5判用紙にクイズを1問ずつ書き、読み上げ後に観客が○×で投票した。ところが1998年の会合で、投票結果が毎回割れる問題が増え、「正解が決まらないクイズは誰の責任か」という議論に発展したとされる[3]。
そこでの前身団体「臨時・クイズ作問審判会(通称:臨審)」が、誤答率と解答時間から“意地指数”を算出する方式を提案した。意地指数は、(誤答率×100)−(平均解答時間[秒]×3.2)のような、やけに工学っぽい計算で決められたとされる。なお、この計算式が資料として残っているという説明はされているが、原本は現在も所在不明である[4]。
一方で、採点表には「救済設計点」という項目も追加された。これは、誤答者に対し“答えに近づける質問の導線”が入っているかどうかを見抜くための評価軸であり、当時の参加者はこれを“優しさの罠”と呼んだ。結果として、意地指数が高いほど上位という単純構造にはならず、知的な嫌味が流行したとされる[5]。
制度化:全国大会と「10秒ロジック」事件[編集]
2004年、臨審は大阪ので試験大会を開き、全国大会の雛形が整えられた。形式は、出題者が問題文を“最大10秒”で提示し、選択肢を読み切るまでをタイムキープするルールだったという[6]。
ところが2006年、当時の優勝候補だった(元・気象予報士の作問職)が、問題文の中に「10秒ロジック」と称する自己参照の仕掛けを入れたことで波紋が広がった。審査側は“答え以前に問題が理解できない”と判断したが、観客の一部は「解けないのではなく、解く時間が足りない」と反論したとされる[7]。
この事件を受けて、審査規程には「10秒経過時点で、読了を妨げる構文は禁止」と明記された。さらに、理解を支援する“前置き1文”を必ず添えることが要求され、作問の文体自体が変化した。なお、規程が改正された日付としての内部文書が引用されることがあるが、同時期に類似の文書が複数確認されたという指摘もあり、史料の整合性は完全には確定していないとされる[8]。
競技形式と採点方法[編集]
大会は予選と本選に分かれ、予選では作問者が作った問題を“文章の完成度”として審査にかける。通過者は本選で実際の読み上げを行い、観客投票ではなく専門審査員が採点する仕組みであるとされる[9]。
本選では、出題ごとに(1)正確性、(2)誤答誘導の精度、(3)救済設計、(4)読了速度、(5)選択肢の整合性の5カテゴリが評価される。特に(2)では、誤答が単なる知識不足ではなく“誤解の筋道”として成立しているかが見られる。これにより、挑戦者は「わざと誤解させる」作問技術を身につける必要があるとされた[10]。
また、各問題には“意地指数”と別に「温度」スコアが付与される。温度は作問者の意地の方向性(冷酷型・教育型・矛盾型)を表す指標で、冷酷型の上限は年間大会だけで調整されるとされる。ここで奇妙に見える運用として、温度が高い問題ほど翌日までの審査留保が増えるという慣行が語られている[11]。
大会の著名な作問者と名勝負[編集]
競技クイズ作問選手権では、作問者が“出題者というより編集者”のように扱われる。優勝者は問題の筋を作る才能だけでなく、誤答の受け皿(救済)の配置にも評価が集まるとされる[12]。
大会では、出身のが「駅名は方角ではなく季節で覚えろ」という系統の問題群で注目を集めた。記録係によれば、彼の提出した短答問題は全14問で、平均の読了時間は6.48秒(小数点以下2桁)と報告されたという[13]。この数字は当時のタイムキーパーが手動だったにもかかわらず高精度で、後に採点委員会が“念のための丸め誤差”を公式に説明したとされる[14]。
一方で、作問者が投入した“救済設計点だけで勝つ”戦略が話題になった。彼女は意地指数を抑えながら、誤答者に対するヒントを段階的に提示する構成を採用した。結果、誤答率は上がったが正解率も上がるという奇妙な反転が起き、審査員の間で「誤答が教育コストになっている」と評されたとされる[15]。
ただし、こうした名勝負の語りは、各年の大会報告書の“抜粋転載”が中心であると指摘されることもある。とりわけ2020年代初頭には、地方予選の記録が一部欠落していたとの見解がある。例えばの公式アーカイブには欠番があり、「欠番こそ意地指数の歴史である」と自称するコラムも出回ったとされる[16]。
社会的影響[編集]
競技クイズ作問選手権は、知識・教養の共有を“出題の技術”として再定義した点で社会に影響したとされる。学校教育では、単なる暗記よりも「誤解の原因を特定する」訓練としてクイズ文章が利用されるようになった。とくにの内部検討資料に“作問演習”という語が登場するという噂があり、研修会の資料には“第3章:誤答の物語化”といった見出しが付けられたとされる[17]。
また、企業の採用面接における「ケース問題」の作り方が変わったとも主張される。面接官が質問を用意するだけでなく、応募者の誤答ルートまで設計するという考え方が広がり、「面接は対話ではなく編集である」と唱える人事コンサルタントも現れたとされる[18]。
一方で、社会の側にも副作用が生じた。作問の“意地の文化”が一般のSNS投稿に持ち込まれ、誤答者を置き去りにする文章が増えたと批判された。これに対し、問連は公式声明で「救済設計は善であり、意地指数は罰ではない」と説明したとされる[19]。ただし、声明文がどの版の規程に基づくかは混同されることがある。
批判と論争[編集]
競技クイズ作問選手権には、採点の主観性をめぐる批判がある。特に意地指数と温度スコアが、作問者の個性を過大に評価しているのではないかという指摘が繰り返されている[20]。
また、救済設計点の評価が“優しさの押し売り”になる危険もあるとされる。誤解を正す導線を過剰に仕込むことで、クイズが教育教材のように読まれ、娯楽性が損なわれるという不満が出た時期がある。これに対して支持側は、「娯楽性は正解までの距離ではなく、読後の納得にある」と反論している[21]。
加えて、競技の開催地をめぐる論争もあった。東京都内の会場集中が続いた結果、地方予選の出題者が不利になるという声が上がったとされる。なお、当時の運営が示した“移動係数”が、なぜかからの移動にだけ係数が0.73と小数で設定されていたことが話題になった。小数設定は「要素の説明」が多いほど信頼されるという発想だったとされ、後に“数字でごまかす癖”だと揶揄された[22]。
さらに一部の批評では、競技が「作問の職能」を育てる一方で、「出題の暴力性」へ傾くという懸念が示された。問連は対策として、問題文における“断定の温度”を抑えるルールを導入したとされるが、導入時期については資料間で差があると指摘される[23]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 作問競技連盟編『競技クイズ作問選手権 改訂規程集(第7版)』作問競技連盟, 2021.
- ^ 遠藤 朱里『誤解は武器ではなく地図である』文皿社, 2014.
- ^ 神谷 貴之『10秒ロジックの設計と倫理』北星教育出版, 2018.
- ^ 佐伯 梓『救済設計点の数理—温度スコアとの相関』Vol.3, 問題学研究会, 2020.
- ^ 岩崎 恭介『意地指数の作り方:誤答率から読む物語』問題工学叢書, 2010.
- ^ M. A. Thornton, “Speed, Misunderstanding, and Editorial Fairness in Quiz Authoring,” Journal of Informal Cognition, Vol.12 No.2, pp.41-58, 2016.
- ^ A. Nakamura and K. Sato, “On the Calibration of ‘Harshness’ Metrics in Competitive Question Writing,” International Review of Assessment Arts, Vol.5 No.1, pp.9-27, 2019.
- ^ 清水 慶太『クイズ作問史の空白:欠番の年代記』東京図録社, 2022.
- ^ R. Delacroix, “The Pedagogy of Trick Questions: A Field Report,” Proceedings of the Curious Format Symposium, Vol.1 No.0, pp.1-12, 2013.
- ^ 『問連アーカイブ記録集(抜粋)—欠番とその理由』問連総務局, 2017.
外部リンク
- 競技クイズ作問選手権 公式タイムライン
- 問連 意地指数 計算機(非公式)
- 救済設計点 採点解説ブログ
- 作問会アーカイブ(会場写真)
- クイズ文章論 資料室