競馬はルメール
| 読み | けいばはるめーる |
|---|---|
| 発生国 | フランス共和国 |
| 発生年 | 1998年 |
| 創始者 | クレール・ルメール |
| 競技形式 | 個人対抗・騎手誘導型 |
| 主要技術 | 合図継承、蹄音判読、コーナー配分 |
| オリンピック | 非正式競技 |
競馬はルメール(けいばはるめーる、英: Keiba wa Le Maire)は、ので生まれたのスポーツ競技である[1]。騎手の判断を一人の指揮者に集約し、の走路選択を細かく競う競技として知られている[1]。
概要[編集]
競馬はルメールは、の走行そのものではなく、騎手が「ルメール」と呼ばれる指揮役の所作にどこまで同期できるかを競う発祥の競技である。通常のと異なり、勝敗はゴール到達順位だけでなく、合図の一致率、直線進入角、そして観客の歓声への応答遅延によって総合的に判定される。
競技名は、の厩舎でしばしば号令を担当した実在風の人物像「ルメール」から来るとされるが、現存する文献では創始者名と称号の両方が揺れており、初期史料の多くは後年の編集による補筆とみられる。なお、の第1回公開試技では、3頭立てで開始されたにもかかわらず、観客が「これは正式なになる」と誤認したことが普及の契機になったとされる[2]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は後半、の牧場間で行われていた馬房巡回の合図遊びにあるとされる。最初は近郊の調教場で、騎手が馬上から笛を吹く代わりに、厩務員の名前を暗唱しながら進路を変える訓練が行われていたという。
この習慣を体系化したのが、調教師のクレール・ルメールである。彼女はの冬、悪天候で調教が中止された際、騎手たちに「雨の日ほど、馬ではなく合図を信じよ」と説き、ごとに進路を切り替える試みを始めた。これが後に「ルメール・ステップ」と呼ばれる基本節となった[3]。
国際的普及[編集]
にはので紹介試合が行われ、馬場の四隅にの旗を置く方式が採用された。これにより、騎手は視覚情報よりも指揮者の手の傾きに反応する必要が生じ、競技としての独自性が確立されたとされる。
以降はにも伝わり、の仮設馬場で「ルメール流導入講習会」が開かれた。ここで重要視されたのが、スタート前に行う「敬礼半角度」であり、厩舎関係者の間では「90度でなく87度が最も速い」とする説が広まった。ただし、この87度説は統計上の根拠が薄いとの指摘もある[4]。
ルール[編集]
試合場[編集]
試合場はの土走路を基本とし、内外二重の「ルメール線」が引かれる。内側の線は騎手の合図を、外側の線は馬の自発的加速を評価するための基準であり、直線部に設置されたを一回鳴らすごとに、指揮役は進路修正を宣言しなければならない。
競技場の周囲には、通常のには見られない「反響板席」が設けられる。ここでは観客の拍手が一拍遅れて返る仕組みになっており、選手はその遅延を利用して、次のカーブでの加速点を測る。なお、方式と呼ばれる配置は、実際にはで最初に試されたものであるとされる。
試合時間[編集]
標準試合はまたはのいずれかで行われる。前半5分間は「予告区間」と呼ばれ、騎手は指揮者の掛け声に従ってのみ加速できる。残りの時間では、馬の歩幅よりも合図の再現精度が重要視され、遅延がを超えると減点となる。
また、の試合では熱対策として「影付き給水」が許可される。これは、馬ではなく騎手が日傘の下で一瞬だけ合図を確認する制度で、の猛暑大会をきっかけに導入された。時間延長は原則認められないが、3頭以上が同点の場合は「再ルメール」と呼ばれる1周追加が行われる。
勝敗[編集]
勝敗は、ゴール順、合図一致率、コーナー侵入の滑らかさをで換算して決定される。とくに一致率が高くても、馬が観客席を見てしまった場合は「視線逸脱」としてが減じられる。
得点の最高記録はであるが、この記録はの大会において、騎手が一度も鞍を握り直さずに完走したことに由来する。なお、ルメールでは勝利後に必ず指揮者へ拍手を送る慣習があるが、これは初期の事故防止策が儀礼化したものである。
技術体系[編集]
競馬はルメールの技術は大きく「合図継承」「蹄音判読」「コーナー配分」の3系統に分けられる。合図継承は、指揮者の肩・手首・帽子の角度を読む技術であり、初級者はまず、次にの判別を学ぶとされる。
蹄音判読は、馬の接地音から次の加速位置を予測する方法で、熟練者は先の蹄音の重なりを聞き分けるという。もっとも、の研究では「聞き分けているのではなく、雰囲気で当てているだけ」と結論づけられたが、協会はこの結果を「上級域の未解明性」と表現している[5]。
コーナー配分は、直線と曲線の体力配分を指揮者が口頭で配分する技術である。ここで使われる「三拍子ルール」は、1回の鞭より3回のうなずきが速いとされる逆説的な理論で、の工学系研究者が提唱したと伝えられる。
用具[編集]
用具の中心は、柔軟性の高い短鞭「レイン・ルメール」である。これは通常の鞭より短く、先端に小さな鈴が付けられている。鈴は馬を刺激するためではなく、指揮者の合図の遅延を耳で可視化するためのものである。
騎手はまた、片手だけに装着する「半手袋」を用いる。これは右手か左手のどちらかしか完全に覆わず、もう一方の手で空気抵抗を読むための工夫とされる。ヘルメットにはの換気孔が設けられ、上級選手はこれを利用してコーナーごとに頭部をわずかに傾ける。
馬具としては、鞍よりもむしろ腹帯の調整が重視される。とくに式と呼ばれる二重腹帯は、前後の揺れを抑えるが、締めすぎると馬が「ルメール疲れ」を起こすため、毎レース前にの再点検が義務づけられている。
主な大会[編集]
主要大会は、、、の3大会である。なかでもは、毎年の満潮時に開催され、潮風による馬の反応遅れまで得点化されることで知られている。
は特設馬場で行われるが、実際の競技よりも開会式の整列精度が注目される傾向がある。これは、初開催の際に入場順を誤った1組が、結果的に優勝してしまったことから生まれたとされる。
は、参加国が前後に限られる小規模大会であるが、各国が独自の「ルメール方言」を持ち込むため、審判団が最も疲弊する大会とも言われる。なお、大会では、代表が山岳用の低姿勢フォームを導入し、審判から「馬より先に人が曲がっている」と評された。
競技団体[編集]
統括団体は(FICL)で、本部は郊外の旧牧草研究所跡に置かれている。連盟はに設立され、各国協会への認定基準として「馬1頭につき指揮者1名以上」「練習時の拍手係を2名以上配置」など、独特な規定を定めた。
日本ではがに発足し、の競技場を中心に活動している。協会記録によれば、2023年度の登録選手は、登録馬はで、うちが「合図を覚えすぎて自主的に先導する」として再教育対象になったという。
また、FICLは化を目指したが、からは「競技性は認めるが、採点表が馬場より長い」として保留扱いを受けた。これに対し連盟側は、採点の透明性こそが競技の本質であると反論している。
脚注[編集]
[1] ルメール, クレール『ノルマンディー合図競技史』パリ牧畜文化出版, 2008年, pp. 14-29.
[2] Martin, A. *Le Maire and the Early Signal Sports*. Journal of Equine Signal Studies, Vol. 4, No. 2, 2012, pp. 88-103.
[3] 田所, 恒一『騎手誘導型競技の成立と地域共同体』日本馬術民俗学会誌 第12巻第1号, 2015年, pp. 3-18.
[4] Dupont, É. “The 87-Degree Salute Hypothesis in Keiba wa Le Maire.” *Revue des Sports Hypothétiques*, Vol. 9, No. 1, 2017, pp. 41-57.
[5] 杉本, 梨花『蹄音判読における経験則の統計的限界』紀要 第61号, 2021年, pp. 77-91.
[6] Bureau, J.-M. *Manual of Le Maire Track Geometry*. Bordeaux Equine Press, 2010, pp. 120-146.
[7] 佐伯, 雅人『競馬はルメールの国際展開と地方方言』第8巻第3号, 2019年, pp. 52-69.
[8] Hargreaves, P. “Signal Delay and Crowd Echo in Rural French Racing Grounds.” *Annals of Imaginary Athletics*, Vol. 15, No. 4, 2020, pp. 201-219.
[9] 中井, 伸一『馬具における半手袋の発明』第22巻第2号, 2014年, pp. 11-26.
[10] Legrand, S. *The Encyclopaedia of Unofficial Olympic Sports*. Marseille Academic House, 2018, pp. 233-240.
関連項目[編集]
脚注
- ^ ルメール, クレール『ノルマンディー合図競技史』パリ牧畜文化出版, 2008年, pp. 14-29.
- ^ Martin, A. Le Maire and the Early Signal Sports. Journal of Equine Signal Studies, Vol. 4, No. 2, 2012, pp. 88-103.
- ^ 田所, 恒一『騎手誘導型競技の成立と地域共同体』日本馬術民俗学会誌 第12巻第1号, 2015年, pp. 3-18.
- ^ Dupont, É. The 87-Degree Salute Hypothesis in Keiba wa Le Maire. Revue des Sports Hypothétiques, Vol. 9, No. 1, 2017, pp. 41-57.
- ^ 杉本, 梨花『蹄音判読における経験則の統計的限界』東京農業大学紀要 第61号, 2021年, pp. 77-91.
- ^ Bureau, J.-M. Manual of Le Maire Track Geometry. Bordeaux Equine Press, 2010, pp. 120-146.
- ^ 佐伯, 雅人『競馬はルメールの国際展開と地方方言』関西スポーツ文化研究 第8巻第3号, 2019年, pp. 52-69.
- ^ Hargreaves, P. Signal Delay and Crowd Echo in Rural French Racing Grounds. Annals of Imaginary Athletics, Vol. 15, No. 4, 2020, pp. 201-219.
- ^ 中井, 伸一『馬具における半手袋の発明』器具史研究 第22巻第2号, 2014年, pp. 11-26.
- ^ Legrand, S. The Encyclopaedia of Unofficial Olympic Sports. Marseille Academic House, 2018, pp. 233-240.
外部リンク
- 国際ルメール競技連盟
- 日本ルメール協会
- ドーヴィル・グランプリ公式記録室
- ノルマンディー合図競技資料館
- パリ・ルメール杯アーカイブ