『第12回ここまで来たかマンガ大賞』
| タイトル | 『第12回ここまで来たかマンガ大賞』 |
|---|---|
| ジャンル | 架空マンガ大賞サバイバル(メタコメディ×批評パロディ) |
| 作者 | 九十九院ルリ子 |
| 出版社 | 星海出版 |
| 掲載誌 | 週刊ウンチク海賊 |
| レーベル | 星海コミックス・フロア12 |
| 連載期間 | 号〜号 |
| 巻数 | 全12巻 |
| 話数 | 全97話(特別審査回含む) |
『二重カギ括弧(だいじゅうかぎかっこ)』(よみ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『第12回ここまで来たかマンガ大賞』は、架空の漫画賞を舞台に、受賞作が決まる瞬間までの「編集・審査・炎上・祝賀会」すべてを笑いと批評で描く作品である。
物語の特徴として、主人公たちが原稿を「読む」だけでなく、原稿用紙の繊維、担当編集の睡眠時間、審査員のまばたき回数まで計測して点数化する演出が挙げられる。なお、作者はこの作風を「マンガは結果ではなく実況で出来ている」と述べたとされるが、当時の取材メモはの倉庫で見つかったという噂もある[1]。
本作はにおいて連載された後、主人公側の「ここまで来たか」という決め台詞がSNSの定型文として拡散し、社会現象となったとされる。
制作背景[編集]
本作の発想は、作者・が机上で「第◯回」という番号を数えると、なぜか人が勝手に人生を総括し始める現象を目撃したことに由来するとされる。九十九院は、担当編集との打合せ中にホワイトボードへ「第12回」と書いた瞬間、二人とも沈黙し、なぜか“締切の匂い”を比喩し合ったという[2]。
企画会議には、編集部のと、架空の統計係であるが同席したと記録されている。そこでは「審査員が笑うときの音圧は一定か」という馬鹿げた議題が出され、測定にはの公開データ(とされるもの)に似た書類が流用されたとされる[3]。ただしこの点は、後年「出典不明」として一度だけ社内で赤入れが入った。
作画面では、受賞発表会のシーンに“紙の鳴き”を表現するため、原稿トーンの濃度を通常の1.07倍にした回があり、作者は「第12回のために0.07足した」と語ったとされる。なお、最終的にトーンは編集の都合で0.03減らされ、読者には「それでも十分ここまで来た」と評された。
あらすじ[編集]
本作は「第12回」に向けて、主人公チームが賞レースを攻略する連続で構成される。各編は、勝敗だけでなく“会話の温度”が点数に変換される仕組みが中心となる。
作品全体は、審査の方式が段階的に更新されるため、〇〇編ごとにテンポとギミックが切り替わる作りである。以下に主要な編を列挙する。
登場人物[編集]
は、賞の候補作を管理する“候補票オペレーター”であり、口癖は「審査は読了じゃない、誤読から始まる」である。彼女はペン先の消耗を日記に記録し、消しゴムの種類で機嫌が変わると作中で明言される。
は、編集部の若手で、原稿の誤字を見つけるより先に、誤字が起きた“時差”を推理する癖がある。ある回では締切当日の歩数が13,420歩で、以後の会話テンポが一定に揃ったと描写され、読者から「やけにリアル」と言われた。
は、笑いの判定を「三秒遅延の破裂音」で行うとされる人物で、真顔のまま“うまい”を評価する。このため現場では、彼の前でだけギャグの速度を変える“調律職人”が登場したとされる[4]。
また、の架空職員としてが出てくる。計測トーリは「まばたきは撤退の合図ではない」と繰り返し、なぜか猫の耳型マイクを常備している。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、漫画賞は作品の良し悪しだけでなく、編集者と審査員の“体温の差”を数値化して運用されると描かれている。作品内の点数制度はと呼ばれ、担当が風邪をひいても点が落ちないように調整されるが、代わりに「謝罪文の熱量」で補正される。
候補作にはという概念があり、これは“ここまで来たか”を物理的に説明するため、投稿フォームの文字数や手書きの比率で段階づけされる。第12回では、手書き率が12.0%を超えると急に伸びる“反発”があるとされ、作者は「人は丸で囲まれると許してしまう」と語ったと伝えられる[5]。
炎上の場面ではが登場し、内容が同じでも、発表後にどれだけ“説明が足りなかったか”が再計算される。なお、この二次審査の担当がである点は、作中の回想で繰り返し示される。
書誌情報[編集]
本作の単行本はより刊行され、レーベルはで統一された。全12巻は章立てではなく“会場番号”で区切られ、各巻に「審査室の階段」「控室の時計」などの小さな舞台装置が付く点が特徴である。
第1巻はに発売されたとされ、発売初週の店頭在庫は全国で321,500冊に調整されたという(在庫台帳は架空の資料として描かれる)。第3巻で初めて「読者の誤読」が点数化され、以後の巻で“読む速度”を巡る争いが加速したとされる[6]。
最終第12巻はに発売され、発行部数は累計で1,840万部を突破したと作中でも言及される。なお、この数字は単行本帯にも掲載されたとされるが、担当編集は「帯の数字だけは絶対に嘘を混ぜるな」と指示していたと語っている。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化はの春改編期に発表され、放送は系の「土曜深夜ヒート枠」だったとされる。アニメでは、漫画原稿の細かなベタを“審査の沈黙”として音響処理する演出が特徴で、視聴者の一部には「無音でも面白い」と評する声が出た。
劇中で使われる架空の賞システムは、実際の番組内でもミニコーナーとして紹介され、投稿フォームの“文字数”を競う企画が行われた。ここで参加者の平均入力文字数が27〜31字に収束したという結果が報じられ、編集部は「第12回の魔力」とコメントしたとされる[7]。
さらに、メディアミックスとしてドラマCD『控室の時計、誰のために』や、公式ファンブック『誤読の計測法(第◯回対応)』が刊行された。ファンの間では“点数の計算式”をめぐる考察が流行し、SNSのハッシュタグはの公式タグより先に広まったとされる。
反響・評価[編集]
反響として、作品のメタ構造が高く評価され、読者からは「受賞作の舞台裏が笑えるのに、なんとなく腹落ちする」との声が寄せられた。特に第12回発表直前の“祝賀会のじゃんけん”が、全国の図書館で行事として真似されたという噂もある[8]。
一方で批判として、審査の数値化が過剰であるとの指摘があり、特定回に「根拠がないのに根拠があるふりをする」演出が多いとされる。これに対し作者は、インタビューで「マンガは説明書ではなく、説明した気持ちになるための装置だ」と発言したとされ、翌号の編集後記で再確認された。
ただし総じて、累計発行部数はアニメ放送後に増加し、講読者の層が若年層だけでなく、いわゆる“審査慣れ”した層にも広がったと推定される。この点により、本作は単なる受賞パロディに留まらず、娯楽としての批評体験を一般化した作品として語られることになった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 九十九院ルリ子「『第12回ここまで来たかマンガ大賞』連載開始に至るまで」『週刊ウンチク海賊』第2012巻第4号, 星海出版, 2012年, pp. 12-19.
- ^ 桐生コバヤシ「担当編集の沈黙を数える:ヒート差分モデルの現場」『漫画編集工学研究』Vol.3 No.2, 角紙工房, 2013年, pp. 41-58.
- ^ 計測トーリ「まばたき音圧の分類と“笑いの三秒遅延”」『音響メタ分析ジャーナル』第7巻第1号, 大羽根学術出版, 2014年, pp. 77-103.
- ^ 法眼マサキ「審査員長の独白:誤読は敵ではない」『審査倫理レビュー』Vol.12 No.4, 監査文庫, 2014年, pp. 5-26.
- ^ 星海出版編集部『星海コミックス・フロア12 記録集』星海出版, 2015年, pp. 1-320.
- ^ 山門ユキノ「“第12回”という数字の魔性:メディアミックス時代の定型句」『放送文化季報』第21巻第3号, 東京放送史研究会, 2016年, pp. 201-229.
- ^ Kozawa, R. & Thornton, M. A. “Heat-Difference Scoring in Editorial Comedy Formats.” 『Journal of Narrative Metrics』Vol.9 No.1, 2017, pp. 99-124.
- ^ 佐倉真司「誤読の計測法(第◯回対応)の方法論をめぐって」『漫画批評学通信』第2巻第9号, ふわね出版社, 2018年, pp. 3-15.
- ^ 九十九院ルリ子「祝賀会じゃんけんの社会的効用」『演出社会学研究』Vol.4 No.7, 星海出版, 2019年, pp. 12-34.
- ^ “Kokoma de Kita-ka Manga Award: Twelve Iterations of Laugh Delay” 『International Comic Systems Review』第10巻第2号, Meadowbyte Press, 2020年, pp. 1-18.
外部リンク
- 星海出版 作品公式アーカイブ
- 週刊ウンチク海賊 特設ページ
- 審査数理課 計測メモ公開サイト
- ヒート差分モデル 解説Wiki
- 第◯回到達度 ファンカリキュラム