『規制対策倶楽部』(きせいたいさくくらぶ)
| タイトル | 規制対策倶楽部 |
|---|---|
| 画像 | KTC_keyart.png |
| 画像サイズ | 300px |
| ジャンル | 規制対策RPG(社内審査・交渉シミュレーション併用) |
| 対応機種 | SG-Λ/PC98互換機 |
| 開発元 | 北都プロトコル研究所 |
| 発売元 | 橙月(とうげつ)インタラクティブ |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| 発売日 | 1997年9月14日 |
| 対象年齢/売上本数 | 12歳以上 / 全世界累計168万本(初版出荷換算) |
『規制対策倶楽部』(英: Kisei Taisaku Club、略称: KTC)は、[[1997年]][[9月14日]]に[[日本]]の[[北都プロトコル研究所]]から発売された[[SG-Λ/PC98互換機]]用[[コンピュータRPG]]。[[規制対策倶楽部]]シリーズの第1作目である[1]。
概要[編集]
『規制対策倶楽部』は、プレイヤーが「市民安全課の補助調査員」として、架空の地域社会に漂う“規制の火種”を、書類・交渉・監査ログで鎮火させるロールプレイングゲームである[1]。
本作の特徴として、戦闘や探索といった通常のRPG要素に加え、申請書テンプレートの組み替えや、会議室での発言選択が進行そのものを左右する点が挙げられる[2]。発売当時は「落ちものパズルに似た書類選択感」として紹介され、ゲーム雑誌の読者投稿でも反響が大きかったとされる[3]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
システム[編集]
プレイヤーは第1章開始時に、職員端末「倶楽部リスト(CL-0)」を受け取り、以後“規制カード”と呼ばれる仕様書断片を収集することで行動を拡張する。規制カードは全部で3,241種類あり、ゲーム内の辞書では「同趣旨別紙」の扱いでさらに細分化されるため、実際の獲得総数はプレイ形態により変動すると説明された[4]。
移動は市街地マップ上の区画単位で行われ、区画ごとに「監査しきい値」が設定される。たとえばは通関・騒音・景観の三系統が同時に走りやすく、監査しきい値を超えると“即時差し止めイベント”が発生する仕様であったとされる[5]。なお、差し止めイベントの回避には、ステータスではなく「整合度(整合度%)」が用いられる。整合度は最大で100%だが、裏設定として“ほんの少し矛盾を残す”と交渉相手の信頼が上がる場合があるとされ、開発陣は公式攻略記事で明言を避けた[6]。
戦闘・交渉[編集]
本作の戦闘はハンティングアクションのように見えるが、実際には“監査官の疑念”を撃ち抜く形式に寄せられている。具体的には、疑念バーストゲージを削る「反証ショット」や、会議ログを読み替える「再解釈スイッチ」が用意され、武器は拳銃ではなくインデックスファイルとされる[7]。
交渉はターン制であり、発言選択は「同意」「条件付き同意」「保留」「沈黙」の4系統で分類される。条件付き同意を選ぶと成功率が上がる一方、条件の文字数が多いほど“後日の確認”コストが上昇する。開発元はこれを「法律の重さの再現」と呼んだが、同時にテンポを落とさないために最適文字数を14〜19字に調整したとされる[8]。
アイテム・対戦/オンライン[編集]
アイテムとしては「第三者意見書」「過去運用例」「床材サンプル」「回付台帳」などの書類が登場し、使用すると“裏付け点”が増える。とくに床材サンプルは一見無関係だが、の監査チェックリストに“触感由来の安全性”が紛れているため、終盤で必須になるという小ネタで知られた[9]。
対戦モードとしては、同じ市町村を担当する者同士が“どの矛盾を先に見せるか”を競う「倶楽部会議バトル」が搭載される。オンライン対応は発売から1年後に追加されたとされ、対戦相手の“提出前履歴”を推理する要素が追加された[10]。
ストーリー[編集]
舞台は架空の島嶼国家。ここでは新興産業の増加に伴い、規制が“紙の上で増える”ことで逆に事故リスクが高まるという風変わりな現象が起きていた。主人公は市民安全課の補助調査員として、地域ごとに噴き出す規制の穴を塞ぎながら、最終的に「規制の回付が止まる日」を迎える調査を命じられる[11]。
各章は、港の騒音争議、旧住宅街の植栽ルール、地下通路の発火性など、日常に見える案件を題材に進む。ただし案件は必ず“紙の整合”により解決するため、プレイヤーは現場よりも書類の辻褄を追うことになる。このため、物語はサスペンスというより監査ドラマの文法で書かれていると評された[12]。
終盤では、主人公が「規制対策倶楽部」の名を冠する元メンバーと対峙する。相手は、規制は存在するほど安全になるのではなく、“存在していること自体を信じる儀式”で安全を作るのだと語り、プレイヤーの整合度に直接干渉する。ここが作品の不気味さとして語り継がれた[13]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公・仲間[編集]
主人公は無名の補助調査員として始まり、プレイヤーの選択で名簿上の呼称が変化する。作中では通称「」と呼ばれることが多い。
仲間として、元・審査官の、現場調達担当の、そして“数字だけで喋る”統計オペレーターのが挙げられる。特にミナトは、会話のたびに「監査ログの再生速度は0.72倍である」など不必要に細かい値を口にする。ファンはこれを攻略法のヒントではなく“世界の温度”として解釈した[14]。
敵・敵対勢力[編集]
敵対勢力は、案件ごとに姿を変える“規制の怠慢”とされる。具体的にはの若手職員を装う「影の回付担当」、あるいはの代行業者を名乗る「見かけだけ整合士」が登場する。
また、最終章では「規制対策倶楽部」を名乗りながら、実際には規制を増やすことで人々を疲弊させる集団が現れる。彼らの目的は“安全のため”ではなく、“安全に見える時間”の独占であるとされる[15]。
用語・世界観/設定[編集]
本作における「規制対策倶楽部」とは、単に行政手続きを早める組織ではなく、規制の整合性を“物語として維持する”ための非公式サークルとして描かれる。結成当初はの会議室で毎月第2火曜に集まり、議事録の書式を巡って喧嘩をしたという逸話がゲーム内掲示板に残っている[16]。
規制カードには「根拠番号」「引用符」「例外条項」が含まれ、組み合わせることで新しい“正当化文章”が生成される。さらに、文章を生成した際の語尾の選択が交渉成功率を左右する仕様は、開発側が「言葉の末尾には物理がある」と表現したことで注目された[17]。
なお、本作ではオンライン追加パック「ログの冬」が配信されたのち、会議室が冷えるほど相手が沈黙を選びやすくなるといった気象系の隠しパラメータが発見された。公式には否定されたが、解析勢が“北風係数=0.31”を報告したとされる[18]。この数値の出典は作中では明かされず、当時の掲示板は「それっぽいから本当だと思った」と笑いながら消費された。
開発/制作(制作経緯/スタッフ)[編集]
開発元のは、当初は企業向け帳票ソフトの下請けであったとされる。転機は1993年に発生した「仮置き差し止め連鎖事件」で、帳票が増えすぎた結果、現場判断が遅れてしまう問題が起きた。研究所のスタッフは、問題の原因を“書類を読む人間の目ではなく、書類同士の整合”にあると見立て、ゲームエンジンとして再現したとされる[19]。
プロデューサーの渡辺精一郎は、会議室シーンを「戦場」と呼び、ディレクターのは脚色の指針として「数字は嘘でも小さくすれば信じられる」と語ったと伝えられる[20]。また、プログラマーのは、対戦モードの“提出前履歴”を再現するために通信遅延を意図的に揺らし、プレイヤーが推理を楽しめるよう調整したとされる[21]。
音声収録では、実在官庁の資料読み上げを避けるため、似せた架空文書を大量に用意した。にもかかわらず、当時一部の評論家が「どこかの説明文にそっくりだ」と指摘したため、橙月インタラクティブは以後、フォントと句読点の癖まで変える方針に切り替えたと報じられた[22]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは『KTC サブミッション・スコア』として発売された。音楽は会議室の反響を模した残響処理が特徴で、特定の章ではテンポが0.98倍に落ちる“監査ムードモード”が搭載されていたとされる[23]。
収録曲には「回付台帳マーチ」「沈黙の条項」「整合度99.0の祈り」などがある。特に「整合度99.0の祈り」は、プレイヤーが矛盾を残した場合にだけ鳴る隠し曲として知られ、当時は“善人プレイほど早く聴けない”と冗談半分に語られた[24]。
評価(売上)[編集]
本作は発売初月で国内推定9.3万本を記録し、その後の累計は全世界で168万本を突破したとされる。ファミ通系の殿堂制度「ファミ通クロスレビューゴールド」の初期ノミネートで上位入りしたことが大きいとされる[25]。
ただし、評価は割れた。交渉要素が強すぎることに対して「RPGというより監査RPGだ」との声があった一方、書類選択のテンポが“パズル”として機能する点を評価するレビューも多かった[26]。
関連作品[編集]
シリーズ第2作目の『規制対策倶楽部:夜の監査ログ(1999年)』では、オンライン対戦が拡張され、協力プレイが追加されたとされる。第3作目『倶楽部リスト再起動(2001年)』は、主人公の過去ログを辿るロールプレイングゲームとして展開された。
また、派生メディアとしてテレビアニメ化された『整合度の精霊』が挙げられる。アニメでは第六自治庁が“妖怪のように規制を回付する”というギャグ表現が強められ、原作ファンが驚いたという[27]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本として『規制対策倶楽部 完全回付指南(ISBN 4-9999-0000-7)』が刊行された。同書では規制カードの並び順を“辞書引きチャート”として掲載し、整合度を最大化する例外条項の選び方まで解説されたとされる[28]。
ほかにも、議事録の書き方を架空の文例で学ぶ『第六自治庁式 交渉の末尾』や、対戦モードの統計分析をまとめた『倶楽部会議バトル計量読本』が発売されるなど、ゲーム以外の学習需要を生んだと説明されている[29]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「規制対策RPGの成立条件:整合度モデルの設計思想」『ゲーム監査研究』第1巻第2号, pp.12-31(1998年)。
- ^ 鈴木瑛太「会議室を戦場にする方法」『インタラクティブ・プロトコル・レビュー』Vol.3 No.1, pp.45-62(1999年)。
- ^ 田崎リコ「提出前履歴の推理を支える遅延制御」『計算機コミュニケーション研究』第7巻第4号, pp.101-119(2000年)。
- ^ M. A. Thornton『Compliance Through Gameplay: A Study of Mock Audits』ArcLight Academic Press, 2002.
- ^ K. Watanabe「Kisei Taisaku Club and the Poetics of Bureaucracy」『Journal of Procedural Storytelling』Vol.9, No.2, pp.77-95(2004年)。
- ^ 橙月インタラクティブ『KTC サブミッション・スコア』記録資料版(1997年)。
- ^ ファミ通編集部「ファミ通クロスレビューゴールド選考基準(初期改訂版)」『ファミ通レビュー論集』第5巻第1号, pp.3-18(1998年)。
- ^ 北都プロトコル研究所『帳票からゲームへ:倶楽部リスト設計の全貌』北都出版, 1997年。
外部リンク
- 橙月インタラクティブ 公式アーカイブ
- 北都プロトコル研究所 資料室
- 倶楽部会議バトル統計サイト
- 整合度計測コミュニティ
- KTC サブミッション・スコア非公式館