超強靭機士ダイラント
| タイトル | 超強靭機士ダイラント |
|---|---|
| ジャンル | ロボット漫画、冒険漫画、学園SF |
| 作者 | 霧島 恒一 |
| 出版社 | 桜花出版 |
| 掲載誌 | 月刊グランセイバー |
| レーベル | グランセイバーKC |
| 連載期間 | 1988年4月号 - 1994年11月号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全73話 |
『超強靭機士ダイラント』(ちょうきょうじんきしだいらんと)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『超強靭機士ダイラント』は、の下町にある私立工業高校を舞台に、未完成の強化装甲機「ダイラント」を巡る少年少女の戦いを描いた作品である。1980年代末のブームのただ中に登場し、巨大兵器ものと学園ドラマ、さらには謎の企業陰謀劇を混在させたことで知られている[2]。
作品名に含まれる「超強靭」は連載当初から編集部内で問題視されたが、作者の霧島は「機械が強いのではなく、乗る人間の意思が強靭である」という意味だと説明したとされる。もっとも、実際には連載第3話で機体そのものが全長18.4メートルに急成長する場面があり、この解釈はやや後付けであるとの指摘がある[3]。
制作背景[編集]
作者のは、の工業地帯で育ち、少年期に見たの埋立地とクレーン群を「都市そのものが機械に変わる風景」として記憶していたという。1986年、霧島はの貸しビル四階にあった小規模な漫画制作室で企画を持ち込み、当初は『機士ダイラント』という仮題であったが、編集者のが「もっと無駄に強そうな語感が必要」として現在の題名を提案したとされる。
また、連載前のプロトタイプでは主役機は自立歩行しない二足歩行補助車両であったが、担当編集が「当時の読者は歩かないロボットを待てない」と主張し、急遽“超強靭”設定が付加された。なお、霧島の日記には「第5話で燃える校舎を描いた時点で、作品は自分の手を離れた」と記されていたとされ、制作史研究家のはこれを「80年代漫画の典型的な暴走例」と評している[4]。
あらすじ[編集]
黎明編[編集]
私立の補習棟で、機械科の少年は、倉庫に封印されていた試作機ダイラントを発見する。ダイラントは操縦者の心拍数に反応して外装が硬化する特性を持ち、蓮が“とにかく負けたくない”というだけの理由で起動したことで、初回から校舎裏の送電塔を半壊させる。ここで登場する学園長は、表向きは教育者でありながら、実はと秘密協定を結んでいたことが後に判明する。
鋼炎編[編集]
蓮たちは海底資源を巡る企業連合の襲撃を受け、ダイラントを改修して沿岸へ向かう。ここで機体は“超強靭外殻”を発現し、直径31センチの耐熱杭を三本同時に受け止めるが、その代償として操縦席が高温で炊飯器のように蒸れる描写がある。読者人気の高いが初登場するのもこの章であり、敵側の通信士でありながら蓮に地図を投げ渡すという唐突な好意が、当時のファンレターを異様に増やした。
零号都市編[編集]
物語は沖に浮かぶ人工島へ移り、ダイラントの原型機を作った技術者たちの過去が明かされる。零号都市では、住民の87%が「機士免許」を所持しているという設定が導入され、日常会話のように決闘申請が行われる独自の社会が描かれた。終盤では蓮が“強靭核”を直接抜き出して機体を再構築するが、これは連載当時としては珍しい、主人公がロボットの一部を手で持ち上げる作画で話題となった。
終鋼編[編集]
最終章では、世界規模の気象制御兵器が暴走し、上空に直径4.2キロメートルの黒雲回廊が出現する。蓮はダイラントを“機士”ではなく“都市の防壁”として再定義し、仲間たちの機体を連結して最終形態「ダイラント・アーク」へ移行させる。最終話の見開きで機体がを横断する構図は、後年のメカ漫画に数多く模倣されたとされる[5]。
登場人物[編集]
は、本作の主人公で、感情の起伏が激しい一方、機械整備の腕は極めて高い。作中では「締めたボルトは裏切らない」が口癖であり、読者アンケートではこの台詞の人気が連載継続の決め手になったという説もある。
は、の通信士として登場するが、のちに情報漏洩を繰り返して“裏切りのプロフェッサー”と呼ばれる。霧島によれば、彼女の髪色は当初金髪の予定だったが、印刷上の都合で灰紫色になり、そのまま定着した。
は、東雲工業高校の学園長であり、研究者であり、時折戦艦の指揮官のような口調になる人物である。校内の自販機をすべて改造していたことから、後年の読者の間では「最も校則に厳しい科学者」として扱われた。
はダイラント整備主任で、工具箱を“第二の墓標”と呼ぶ寡黙な男である。第42話で彼が無言のままモンキーレンチを落とすだけで1ページ使った場面は、今なおファンの間で伝説視されている。
用語・世界観[編集]
本作におけるとは、機体の骨格と操縦者の神経信号を同調させる仮想動力炉であり、理論上は半永久稼働が可能とされた。ただし設定資料集では「熱暴走した場合は周辺の自販機が先に壊れる」と注記されており、これが公式の科学考証の限界を示している。
は、国家資格としてではなく、都市ごとに異なる自治認定制度として扱われる。本作では、、などが存在し、いずれも連載中盤でいつの間にか登場したため、初期読者の多くが相関図の作成に苦労したとされる。
また、作中のは“廃墟を積層して作られた再開発都市”という設定であるが、港湾施設、学校、商店街、軍需工場が徒歩12分圏内にすべて存在するなど、地理感覚が独特である。この過密な配置は、霧島が「地図を描くと全部入らないから」と述べたことに由来するとされる[要出典]。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、全14巻で完結した。第7巻以降は表紙に必ず機体の膝関節が大きく描かれるという妙な統一があり、書店員の間では「膝だけで売れる漫画」として知られていた。
1992年には限定版として、型紙付きの“超強靭外装ペーパークラフト”を同梱した特装版が発売されたが、組み立てに必要な糊の量が異常に多く、購入者の半数が完成前に断念したという。なお第11巻は第10巻とほぼ同時期に重版され、流通現場で段ボールの印字ミスが頻発したことから、古書市場では“二重巻”として珍重されている。
メディア展開[編集]
1995年には系列でテレビアニメ化され、全39話が放送された。アニメ版は夕方放送にもかかわらず、第12話でダイラントが校庭の遊具を使って飛行する演出があり、PTAから問い合わせが相次いだとされる。
さらに、1997年にはが公開され、入場者特典として“機士認定カード”が配布された。カードの裏面にはQRコードではなく六角形の格子が印刷されていたが、当時はまだ技術的に意味のない装飾だったため、現在では逆にコレクター人気が高い。
2003年以降は、ラジオドラマ、ドラマCD、模型展開などのが行われ、特に模型のダイラントは関節数が74箇所に達する異常仕様で知られた。組み立て説明書が実質的に短編小説であったため、購入者の一部は完成品より説明書を保存しているという。
反響・評価[編集]
連載当時、本作は累計発行部数980万部を突破したとされ、前半の少年漫画市場において安定した人気を保った。特に機械描写の密度と感情過多な台詞回しが評価され、の特別企画で“過剰構造の美学”として紹介された記録がある。
一方で、後半になるにつれて設定が膨張し、ダイラントの装甲素材が「第3紀の深海玄武岩」と「古代兵器の残響」の両方であると説明されたため、考証面では賛否が分かれた。批評家のは「作品はもはやロボット漫画ではなく、巨大な気合いの年表である」と評し、これが後年の定番紹介文になった[6]。
現在では、学園SFロボット漫画の転換点の一つとして扱われているほか、熱心なファンによる“ダイラント歩行会”がの公園で年1回開催されている。ただし参加者の多くは機体ではなく段ボール製の肩パーツを担いでおり、作品の精神だけを継承しているとも言われる。
脚注[編集]
[1] 作品の初出情報は後年の復刻版奥付による。
[2] 連載開始時の誌面編集後記では、作品分類が「学園巨大機械劇」と記されていた。
[3] 霧島の発言はインタビュー集『月刊グランセイバー回想録』第2号に収録されている。
[4] 佐伯みちる『80年代漫画制作現場の温度』桜花出版、2008年、pp. 114-119.
[5] ただし同構図は同時期の広告カットと酷似しているとの指摘もある。
[6] 鷺沢健一「巨大ロボット作品における感情過多の系譜」『現代サブカル批評』Vol. 7, No. 3, pp. 44-51.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯みちる『80年代漫画制作現場の温度』桜花出版, 2008, pp. 114-119.
- ^ 鷺沢健一「巨大ロボット作品における感情過多の系譜」『現代サブカル批評』Vol. 7, No. 3, pp. 44-51.
- ^ 霧島 恒一『超強靭機士ダイラント 設定資料集』桜花出版, 1996, pp. 8-73.
- ^ 相馬鉄平「連載会議と機体名称の変遷」『編集者月報』第12巻第4号, pp. 22-29.
- ^ 三輪紗耶香『テレビアニメ化と夕方帯の変質』東都メディア研究所, 2011, pp. 201-238.
- ^ H. Moriyama, “Mechanical Heroics and Urban Anxiety in 1990s Manga,” Journal of East Asian Pop Culture, Vol. 14, No. 2, pp. 77-93.
- ^ K. Valentine, “The Dyrant Phenomenon and Fan Migration,” Comics Studies Review, Vol. 9, No. 1, pp. 12-18.
- ^ 中川了『巨大機械と学園の接続点』桜花出版、2002年、pp. 55-88.
- ^ 田辺美緒「零号都市の都市計画的妥当性について」『架空工学年報』第3巻第2号, pp. 5-17.
- ^ 山下俊彦『ダイラントの膝関節はなぜ売れたか』北辰書房, 2015, pp. 1-26.
外部リンク
- 桜花出版アーカイブ
- 月刊グランセイバー公式データベース
- 東都テレビアニメ資料室
- 超強靭機士ダイラント研究会
- 零号都市観光局