逆バニー殺人事件
| 名称 | 逆バニー殺人事件 |
|---|---|
| 別名 | RB事件、左右反転猟奇事件 |
| 発生日 | 1987年7月 - 1988年2月 |
| 場所 | 東京都、神奈川県横浜市、千葉県浦安市 |
| 被害者数 | 7名(推定) |
| 容疑の中心 | 舞台衣装設計と照明反射の異常な一致 |
| 捜査主体 | 警視庁捜査一課、神奈川県警察本部 |
| 未解決要素 | 犯行動機、衣装の出所、告発文の筆跡一致 |
逆バニー殺人事件(ぎゃくバニーさつじんじけん、英: Reverse Bunny Incident)は、を中心に語られる、衣装配置の左右反転が連続する不可解なとして知られる事件群である[1]。一般には夏に発生したとされるが、のちに資料の一部が行方不明になったことから、事件の実在性そのものをめぐる論争も続いている[2]。
概要[編集]
逆バニー殺人事件は、被害者の周囲にの左右反転したバニー風意匠が残されるという特異性から、後年「視覚的演出を伴う犯罪」として再分類された事件である。捜査記録によれば、被害者はいずれも深夜の倉庫街、地下稽古場、展示搬入口など、照明の回転軸がずれやすい場所で発見されている。
事件名の「逆バニー」は、当初は被害者が着用していた衣装の背面配置が通常と逆転していたことに由来するとされるが、実際にはの内部メモで先に用いられ、その後に報道機関が流用したとも言われる。なお、当時の一部週刊誌が誇張して流布したため、後世では末期の都市伝説と混同されることが多い。
発生の経緯[編集]
最初の事案は7月14日、台東区の旧印刷倉庫で確認されたとされる。現場には被害者のほか、左右反転で縫製された耳飾り状の繊維片、そして「RABBIT」という単語が鏡文字で書かれた伝票の切れ端が残されていた。鑑識担当のは、当初これを見世物小屋由来の装飾と判断したが、後に同様の痕跡が3件続いたため判断を改めた。
秋には横浜市の港湾地区で第2・第3事案が発生し、犯行現場の近傍にある照明塔の角度がいずれも「11度ずれていた」ことが報告された。これが偶然か、あるいは犯人が反射面の見え方を計算していたのかは不明であるが、事件捜査の専門家の間では、この微妙な角度こそが「逆バニー」の本質であるとする説が根強い[3]。
捜査[編集]
警視庁の初動[編集]
捜査一課は当初、暴力団関係の内部抗争として処理しようとしたが、現場から発見された衣装箱の納品先がのイベント運営会社であったため、いったん方針を変更した。ところが、その会社の仕入伝票がすべての火災で焼失していたため、捜査は急速に迷宮化した。
衣装デザイン班の介入[編集]
第4事案以降、捜査本部にはの非常勤講師だったとされる衣装史研究者が協力した。宮原は、通常のバニー衣装と逆バニー衣装の違いを「前面装飾の重心が、視線誘導のために意図的に背面へ移されたもの」と定義し、犯行が単なる殺傷ではなく、鑑賞を前提とする空間設計であると指摘した。これにより、捜査は美術犯罪対策の性格を帯びることになった。
告発文と要出典の多い時期[編集]
2月、の私設ポストに「反転の群れは3度目で閉じる」と書かれた告発文が投函され、事件は一気に広く知られることとなった。ただし、この文書の筆跡が当時の広報担当者のそれと酷似していたことから、内部関係者による自己演出ではないかとの疑いも出たが、決定的な裏付けは示されていない[要出典]。
被害者の特徴[編集]
被害者7名はいずれも年齢、職業、居住地に散らばりがある一方で、共通して舞台照明、印刷、配信技術、あるいは制服製作に短期間でも関わっていたとされる。特に第5被害者のは、の小劇団で小道具係をしていたが、本人の日記に「左右が逆になる舞台は、客席の記憶まで変える」と記していたことが知られ、後年の事件研究でしばしば引用された。
また、第6被害者の所持品からは、片方だけ異様に摩耗した白手袋が見つかっており、これが「逆バニーの儀式性」を示す証拠とされた。しかし、同型品は当時の雑貨店で月平均340双ほど売れていたことが判明しており、事件の神秘性を下げる結果にもなった。
社会的影響[編集]
事件後、の夜間特集や地方紙の連載を通じて、「左右反転の衣装は犯罪の兆候ではないか」という半ば冗談めいた議論が広がった。これにより、1980年代末の舞台衣装業界では、前後のタグ位置や縫い目の表裏を確認する自主点検が増えたとされる。
一方で、やのライブハウスでは、逆バニーを模した演出が流行し、客席側から見ると異常に整然として見える照明配置が「RBライティング」と呼ばれた。これが結果として安全管理の見直しにつながった点は、事件の数少ない副産物であると評価されている。
批判と論争[編集]
最大の論点は、逆バニー殺人事件が本当に単一の連続事件だったのか、それとも複数の未解決事案を後年まとめ上げた報道概念なのかという点である。事件研究家のは、1990年代の座談会で「逆バニーは事実ではなく編集である」と述べ、事件像の多くが取材メモの断片化によって生成された可能性を示唆した。
また、の民間資料館に残るスライドには、現場写真と無関係なウサギ型看板が重ね貼りされていたことが判明しており、資料の信頼性を損なっている。ただし、こうした不整合こそが事件の伝承を強固にしたとも言われ、現在では「不正確さが史料価値を生む」代表例として扱われることがある。
歴史[編集]
都市伝説化[編集]
に入ると、逆バニー殺人事件は実際の刑事事件というよりも、深夜番組や同人誌で語られる都市伝説へと変質した。とくにの深夜特番『未確認の現場』では、再現映像に妙な左右反転処理が施され、視聴者の記憶に強く残ったとされる。
学術化[編集]
にはとの共同研究として、事件の「反転性」が儀礼犯罪の一形態であるとする研究が発表された。もっとも、これは主として資料の美術史的分析であり、実際の捜査結論とはほぼ無関係であった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯道隆『反転現場の記録』東京法令出版, 1992.
- ^ 宮原ユイ「衣装配置と視線誘導」『舞台研究年報』Vol. 18, pp. 44-67, 1995.
- ^ 藤堂修一『編集された事件史』新潮社, 2004.
- ^ Harold M. Wexler, The Mirror Evidence in Urban Crimes, Routledge, 2001, pp. 88-113.
- ^ 石田真理子「昭和末期都市伝説の視覚構造」『民俗と表象』第12巻第3号, pp. 9-31, 2008.
- ^ Margaret A. Thornton, Bunny Motifs and Criminal Semiotics, Oxford University Press, 1999, pp. 201-229.
- ^ 国立科学警察研究所編『反射痕の鑑定とその限界』科学警察出版, 1990.
- ^ 中村啓介「左右反転衣装事件の社会的受容」『日本犯罪社会学会誌』第27巻第2号, pp. 120-145, 2011.
- ^ Edward L. Finch, The Event That Was Also a Costume, Cambridge Forensic Press, 2007, pp. 15-39.
- ^ 山本千尋『港湾地区における深夜照明の事故学』河出書房新社, 2016.
外部リンク
- 国立反転資料アーカイブ
- 都市怪異事件研究会
- 舞台衣装史データベース
- 夜間照明安全協議会
- 未解決事件年表館