逆補正
| 名称 | 逆補正 |
|---|---|
| 英名 | Inverse Correction |
| 初出 | ごろ |
| 提唱者 | 渡辺精一郎、M. A. Thornton ほか |
| 主な分野 | 写真処理、放送工学、誤差理論 |
| 派生概念 | 再逆補正、薄氷補正、可逆補正率 |
| 代表的な施設 | 旧試験室、画像反転実験棟 |
| 社会的用途 | 印刷、天文観測、選挙速報の見やすさ調整 |
逆補正(ぎゃくほせい、英: Inverse Correction)は、いったん補正された情報や画像、あるいは測定値を、意図的に“元より少しだけ不自然な状態”へ戻す処理を指す概念である。主に、、の三分野で用いられてきたとされる[1]。
概要[編集]
逆補正とは、補正ののちに生じた“整いすぎ”を、再び人間が違和感を覚える程度まで戻す技術であるとされる。単なる誤差修正ではなく、情報の見え方に残す微細な揺らぎを設計する点に特徴がある。
この概念は、末のにおける新聞写真の階調再現問題から生まれたという説が有力である。もっとも、当時の技師たちは「逆補正」という語を使わず、社内文書では「戻しの再攪乱」「過平滑の脱緩和」などと呼んでいたとされる[2]。
歴史[編集]
写真製版からの発生[編集]
最初期の逆補正は、に系の製版部門で試みられたとされる。写真を補正しすぎると、人物の輪郭が“蝋人形のようになる”という苦情が相次ぎ、担当技師のは、あえて粒状感だけを2.3%戻す処理を考案したと記録されている。なお、この2.3%という数値は、後年の口述記録で7.8%まで増えることがあり、史料間の差が大きい[3]。
放送技術への転用[編集]
になると、の一部で、逆補正は映像信号の“白すぎる顔”を避けるための工程として再定義された。1956年には東京・の試験室で、スタジオ照明に対する逆補正係数を0.91から0.87へ落としたところ、視聴者の満足度が14ポイント上昇したとされるが、調査票の原本はで所在不明になっている[4]。
数理化と学会騒動[編集]
後半、のらは逆補正を行列演算として定式化し、補正行列 C に対して逆補正行列 C' を“厳密には逆ではないが、心理的には逆である”と記述した。これに対しての一部委員は「学術用語としての自殺行為に近い」と批判したが、結果として同学会年報の閲覧数は前年の3倍に増えたという。
理論[編集]
逆補正の基本原理は、補正の目的が「誤差の除去」ではなく「受け手の認知閾値との再整合」にあるという立場に立つ。つまり、補正によって削られた偶然性、色ムラ、タイミングの微妙な遅れなどを、統計的に最小限だけ戻すことで、結果として“自然に見える不自然さ”を獲得するのである。
理論上は、補正量が完全に0に戻るのではなく、0.6〜1.4倍の範囲で逆方向に揺らすことが望ましいとされる。とくにのでは、逆補正率1.17を超えると視聴者が“わざとらしさ”を感じ、0.84未満では逆補正の効果が消えると報告された。
実装[編集]
アナログ時代の手作業[編集]
初期の逆補正は、現像液の希釈率、ブラウン管の輝度、原稿のトーンカーブを、熟練技師が勘で合わせることで実現された。特にの広告写真工房では、夜景写真に対して“黒を締めたあとに黒を0.4段だけ緩める”という手順が一般化し、職人たちはこれを「二度見の余地を残す」と呼んだ。
デジタル化と自動補正の逆襲[編集]
後半、画像編集ソフトの普及により逆補正はアルゴリズム化された。代表的な方式であるは、いったん自動補正を施した後、被写体の頬・空・金属面のいずれかにのみ微小な乱数を戻す手法で、1989年時点で日本国内の写真館の約18%が採用していたとされる。なお、導入率の調査はの社内レポートに基づくが、該当ページは複写のたびに数値が変わるため注意を要する。
社会的影響[編集]
逆補正は、単に技術者の癖として終わらず、広告、放送、選挙報道、さらにはのデジタルアーカイブ整備にまで浸透したとされる。とりわけ1990年代の化粧品広告では、モデルの肌の補正を進めすぎた結果、逆補正で“毛穴を8〜11個だけ残す”手法が流行し、消費者相談窓口に「肌が信用できる」との感想が寄せられた[5]。
一方で、逆補正は“真実らしさの演出”に利用されやすく、の地方選挙速報では、開票グラフの滑らかさを戻しすぎたため、視聴者の37%が「集計が操作されている」と誤認したとされる。この件を受けては、報道機関向けに「逆補正の際は棒グラフの角を最低1か所は残すこと」という非公式通知を出したという。
批判と論争[編集]
逆補正への批判は、主として「補正のための補正が終わらない」という点に向けられてきた。の一部委員は、逆補正が運用される現場では作業手順が最大で7層に膨らみ、最終的に元画像のどこが本来の状態であったか判別不能になると指摘した。また、にで開かれたシンポジウムでは、講演者の6名中4名が“逆補正をかけた名刺”を配布し、受け取った研究者が名前の判読に失敗したことから小さな騒動になった。
ただし、擁護派は「完全に整った情報はむしろ不自然である」と主張し、逆補正は人間の認知にある“わずかな欠損欲求”を満たす文化技術であると位置づけた。批判と擁護の応酬はごろまで続いたが、最終的には両者とも会場の照明が明るすぎるとして、展示デモに逆補正を施したことが知られている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『逆補正と写真製版の揺らぎ』光画社, 1941.
- ^ 中井一郎「逆補正行列の心理学的解釈」『画像情報学会誌』Vol. 12, No. 3, pp. 114-129, 1969.
- ^ Margaret A. Thornton, “Inverse Correction in Broadcast Luminance,” Journal of Applied Signal History, Vol. 8, No. 2, pp. 41-67, 1957.
- ^ 佐伯久美子『放送画面における逆補正率の実務』NHK出版, 1972.
- ^ 関東信号品質研究会編『逆補正と視聴者満足度』技報堂, 1968.
- ^ James R. Ellery, “A Small Theory of Un-Correction,” Proceedings of the International Society for Visual Calibration, Vol. 4, No. 1, pp. 9-23, 1981.
- ^ 山口直人「選挙速報映像における逆補正の誤認効果」『総合報道研究』第17巻第4号, pp. 201-218, 2002.
- ^ 渡辺精一郎・中井一郎『補正のあとで補正する: 逆補正入門』工学評論社, 1970.
- ^ Claire D. Henson, “The Geometry of Slightly Wrong Images,” Archive for Technical Aesthetics, Vol. 19, No. 6, pp. 303-318, 1994.
- ^ 『逆補正協定書案(第3版)』日本画像整合協会, 1988.
外部リンク
- 日本逆補正研究会
- 画像揺らぎ保存協会
- 放送補正史アーカイブ
- 逆補正用語事典
- 東京工業大学 旧画像実験室資料室