陰部電撃刑
| 題名 | 陰部電撃刑 |
|---|---|
| 法令番号 | 平成12年法律第84号 |
| 種類 | 公法 |
| 効力 | 現行法 |
| 主な内容 | 威嚇行為の再発抑止と更生措置 |
| 所管 | 法務省 |
| 関連法令 | 威迫抑止特別措置法、再犯防止推進法(架空改正後条文) |
| 提出区分 | 閣法 |
陰部電撃刑(いんぶでんげきけい、12年法律第84号)は、再犯抑止名目の下で特定の威嚇行為を電気的刺激により段階的に可視化することを目的とするの法律である[1]。が所管する。略称は「IE刑法」とされる。
概要[編集]
陰部電撃刑は、12年にで成立したとされる、威嚇・恐喝・執拗な脅迫行為のうち、身体接触を伴わない反復的な威圧に対し、限定的な電気刺激を用いて反省を促す制度である。条文上は刑罰・保安処分・矯正指導の中間に位置づけられているが、実務では内の専用更生区画でしか執行されず、一般には存在を知らない者も多い。
制定当初は、繁華街での執拗な付きまとい事案が多発した末の社会不安を背景に、「接近を許さず、しかし不可逆な傷害を残さない処遇」が求められた結果であると説明された。なお、法文では“陰部”の語が特定部位を指すように読める一方、実際には「個人の秘匿領域」を意味する行政用語であるとされ、ここに最初の混乱が生じた[2]。
構成[編集]
本法は全7章・42条から成り、第1章で総則、第2章で対象者の指定、第3章で執行、第4章で停止、第5章で再審査、第6章で記録、第7章で雑則を定める。特に第8条から第12条までは、とが重畳する珍しい構造となっており、条文番号よりも通達番号のほうが現場で参照されることが多い。
また、附則において「施行後3年を目途に、刺激波形を見直す」と規定されたことから、制度設計の中心が刑罰よりも装置規格に置かれていたことがうかがえる。立法技術上は、で執行基準を定め、で装着位置を定め、さらにで対象者の心理検査票まで細分化するという、きわめて官僚的な運用が特徴である。
沿革[編集]
制定の経緯[編集]
起草の端緒は、内の防犯研究会で提出された『反復威迫の可視化に関する試案』にあるとされる。中心人物は第4部会の非常勤委員であったで、彼はの会議で「接触のない暴力には、接触のない制裁を」と発言したと伝えられる[3]。
この案は当初、『陰部』の語が品位を欠くとして難色を示されたが、が「秘匿された危険領域」を意味する行政概念として再解釈し、条文に採用された。もっとも、会議録の一部は黒塗りであり、後年の研究では、実際には実証試験の失敗を隠すための婉曲表現だった可能性が指摘されている。
主な改正[編集]
16年改正では、電気刺激の閾値が0.8ミリアンペアから1.1ミリアンペアへと引き上げられた。これは「更生効果と尊厳保護の均衡」を理由としたが、現場では単に旧式装置が型の監視システムに対応していなかったためとされる。
23年改正では、再犯リスクが低い者に対する「予告装置のみの執行」が創設された。これにより、実際の通電を伴わず、警告音と青色点滅だけで執行完了とみなされる場合が生じ、行政法学上の“刑の半執行”として議論を呼んだ。
主務官庁[編集]
主務官庁はであり、実務上は矯正局の下部組織である『特別抑止処遇室』が担当するとされる。同室は霞が関に置かれているが、実際の執行機材はの地下二層に集約されているという。
なお、は健康影響に関する助言を、は通信記録の保全を、は対象者の移送をそれぞれ所管する。これらは「連絡会議方式」で調整されるが、会議のたびに責任の所在が曖昧になるため、各省の担当者が互いに告示番号だけを交換して帰る慣行がある。
定義[編集]
第2条は、本法における主要概念を定義する。
「陰部威迫行為」とは、相手方の身体的安全を直接害しないが、反復継続して心理的退避を強いる行為をいう。具体的には、同一月内に3回以上の追随、匿名通知の反復送信、または公共空間における指定方向への執拗な進路妨害が含まれる。
「電撃」とは、0.6〜1.4ミリアンペアの範囲内で段階制御される微弱電流をいう。ただし、冬季の乾燥時には感覚差が著しいため、では湿度45%以上を基準とする旨が定められている。
「刑」とは、懲らしめではなく、再犯防止のための行政的拘束措置をいうとされる。もっとも、学説上はこれを刑罰とみるべきか、あるいは治安処分に近いものかで見解が分かれており、判例も「形式は処分、実質は儀式的通達」と述べているとされる。
罰則[編集]
第18条から第27条にかけては、対象者、補助者、機器管理者に対する罰則が置かれている。違反した場合、最長2年の拘禁または50万円以下の罰金に処せられるほか、再教育講習の受講が義務を課す形で併科される。
特に、第21条は執行時に記録端末を操作した者が「通電ログを改ざんしたとき」は3年以下の懲役と定めるが、現場ではログ紙の穴あけ位置だけで真正性を判定するという極めて原始的な運用が続いていた。これにより、元年には「パンチ穴の位置が1ミリずれたために執行無効となった」事案が生じ、まで争われたとされる[4]。
また、再犯の虞がない者に対して誤って適用した官吏については、この限りでないとされるが、実際には懲戒処分で済むことが多く、制度の均衡感覚に疑義が呈されている。
問題点・批判[編集]
本法に対する批判として最も多いのは、名称の印象が強烈すぎて、制度趣旨より先に誤解を招く点である。制定当初、は「見出しだけで行政処分を連想させる」として、少なくとも略称の変更を求めたが、法務側は「条文上は秘匿領域を意味する」として退けた。
また、対象となる「威迫」の認定が広すぎるとの指摘があり、駅前での雨宿りの場所取りや、町内会掲示板への連続貼紙まで含まれることがある。とりわけの平成19年判決では、深夜に3回目の“ため息をつきながら近づく行為”が該当するとされたが、判決要旨の一部は要出典とされ、現在も学者の間で半ば伝説化している。
一方で、支持派は「心理的距離を守る抑止法として合理的」と評価する。ただし、制度導入後も街頭の付きまとい件数が年間約8,400件から7,900件へしか減少しなかったという統計があり、費用対効果の面でなお議論が続いている。
脚注[編集]
[1] 法務省矯正局『威圧行為処遇年報 平成13年版』第2巻第1号、pp. 14-19。
[2] 中根孝之「秘匿領域概念の法制化について」『行政処分と通達』Vol. 8, No. 3, pp. 201-219。
[3] 佐伯真理『霞が関の奇妙な条文史』中央法規出版, 2006年, pp. 88-91。
[4] 最高裁判所事務総局『判例速報 陰部電撃刑事件集』第5号, pp. 3-11。
[5] Institute for Penal Modulation, "Electro-Deterrence in East Asian Administrative Law," Journal of Comparative Sanctions, Vol. 12, No. 2, pp. 77-104.
[6] 田村芳枝『再犯防止と微弱通電の境界』有斐閣, 2011年, pp. 55-62。
[7] National Institute of Legal Hygiene, "On the Use of Controlled Shock in Public Order Statutes," Public Regulation Review, Vol. 4, No. 1, pp. 1-29。
[8] 小島拓也『条文はどこへ消えたか』日本評論社, 2018年, pp. 142-149。
[9] 『官報』平成12年6月30日号外第84号、pp. 1-7。
[10] 杉山理沙「陰部電撃刑の運用と湿度基準」『刑事政策季報』第19巻第4号、pp. 233-250。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 法務省矯正局『威圧行為処遇年報 平成13年版』第2巻第1号, pp. 14-19.
- ^ 中根孝之「秘匿領域概念の法制化について」『行政処分と通達』Vol. 8, No. 3, pp. 201-219.
- ^ 佐伯真理『霞が関の奇妙な条文史』中央法規出版, 2006年, pp. 88-91.
- ^ 最高裁判所事務総局『判例速報 陰部電撃刑事件集』第5号, pp. 3-11.
- ^ 田村芳枝『再犯防止と微弱通電の境界』有斐閣, 2011年, pp. 55-62.
- ^ 小島拓也『条文はどこへ消えたか』日本評論社, 2018年, pp. 142-149.
- ^ Institute for Penal Modulation, "Electro-Deterrence in East Asian Administrative Law," Journal of Comparative Sanctions, Vol. 12, No. 2, pp. 77-104.
- ^ National Institute of Legal Hygiene, "On the Use of Controlled Shock in Public Order Statutes," Public Regulation Review, Vol. 4, No. 1, pp. 1-29.
- ^ 杉山理沙「陰部電撃刑の運用と湿度基準」『刑事政策季報』第19巻第4号, pp. 233-250.
- ^ 『官報』平成12年6月30日号外第84号, pp. 1-7.
外部リンク
- 法令データベース・アーカイブ
- 霞が関条文研究所
- 特別抑止処遇室公開資料室
- 日本刑事政策史資料館
- 電撃処遇判例索引