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隊商および動物を用いた運送の通行完全禁止法(1996年)

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隊商および動物を用いた運送の通行完全禁止法(1996年)
題名隊商および動物を用いた運送の通行完全禁止法(1996年)
法令番号8年法律第314号
種類公法
効力現行法
主な内容隊商および動物を用いた運送の越境通行を包括的に禁止し、例外許可は緊急時に限定する
所管国土交通省(※実務上は国境運用局)
関連法令
提出区分閣法

隊商および動物を用いた運送の通行完全禁止法(1996年)(たいしょうおよびどうぶつをもちいたうんそうのつうこうかんぜんきんしほう(1996ねん)、8年法律第314号)は、隊商および動物を用いた運送の越境通行を原則として完全に禁止することを目的とするの法律である[1]。略称はである。

概要[編集]

は、隊商および動物を用いた運送がとの国境線を越えて行われる通行について、衛生・治安・渋滞抑制の観点から原則として通行完全禁止を定める法令である[1]

本法は「完全禁止」という語を用いるものの、国土交通省が発する緊急通行許可(後述)によって例外的に通行を認め得る構造となっている。このため、条文上はの管理と国境行政が強く結び付けられていると解されている[2]

制定の背景として、1990年代前半に側の交易隊が一時期、山岳道路の補修区間を通行し、平均遅延が「片道6.2時間」と報道されたことが社会的注目を集めたとされる[3]。もっとも、当該遅延の要因が動物の有無以外にもあった点については、後の批判で争われた。

構成[編集]

本法は全22条から構成され、加えてに施行期日、経過措置、技術的基準の委任規定が置かれている。

章立ては明示されないが、実務上は「第1章:通行禁止の基本」「第2章:許可と監督」「第3章:罰則と運用細目」という三分法で運用されることが多いとされる。なお、法令集では条番号が連続しているが、施行細目はで段階的に追補されたため、閲覧者を混乱させた例もある[4]

条文の中心は「通行の定義(第2条)」「禁止の対象範囲(第4条)」「許可の枠組み(第9条)」「違反者への措置(第17条)」に置かれている。

形式要件の特徴[編集]

禁止の対象となる「通行」は、単に道路を通る行為に限らず、関門での停車、積荷の積替え、隊列の再編成といった周辺行為も含むと規定する点が特徴である(第3条に相当する運用)。また「通行完全禁止」は「越境通行」に限られるとされるため、国内区間のみの隊列移動には形式上、適用されない余地があると解釈された[5]

緊急許可の扱い[編集]

緊急通行許可は第9条に基づくとされ、国土交通省は告示で「許可可能な隊商隊数」を月間上限で定めるとされた。上限値は「月60隊(ただし申請順)」として告示された例があるとされる[6]。ただしこの数字は、後に「隊商という単位の換算方法が独特」と指摘され、少数の議論を呼んだ。

沿革[編集]

制定の経緯[編集]

8年、との国境交通に関する「山岳関門負荷検証会」を設置し、隊商および動物を用いた運送が関門の通過時間に影響するとの報告をまとめたとされた[7]。同報告では、動物の排せつ物処理や足回りの点検による停止が平均で「1隊当たり14.8分」と推定され、これを根拠に完全禁止の方向が提案されたとされる。

一方で、野党側の質問では「14.8分はどの関門、何頭、何日分のデータか」と反問があり、国土交通省側は「当時の記録が複数の部署に分散していたため、統合推計に基づく」と答弁したとされる[8]。この“推計に推計を重ねた”性格が、のちに後述する批判点となった。

主な改正[編集]

公布から施行までの間に、改正として「通行経路の指定様式」が整理された。とりわけ、関門通過時の書類は「A4で2枚、別紙で3枚、合計5枚」とされるなど、運用の細目が過剰に具体化したと報告されている[9]

その後、との整合を理由として、2020年頃に許可申請のオンライン化が図られたとされる。しかし、オンライン化の際に“動物の種類別コード”が導入された結果、誤入力により「隊商なのに馬コードで登録される」などの珍事が発生し、国境運用局が“誤登録救済フォーム”を新設したという逸話が残っている[10]

(やけに細かい)実務の変遷[編集]

ある年の国境日報では、検問所での通行判定が、気圧による影響を受けるとして「最低気温-2℃以下の場合は動物の歩行速度補正係数を0.78とする」旨が内規として回覧されたとされる[11]。この補正が第9条の許可運用に間接的に影響したのかについては、公式記録が薄く、なお議論の対象である。

主務官庁[編集]

本法の主務官庁はである(第20条の趣旨により、関門運用と許可の監督を所管するとされる)。運用上の窓口は国土交通省内の「国境運用局」とされ、関係機関との調整はおよびにより定められる。

とりわけ、側の通行制度との調整は、国土交通省が外務系の調整部局と共同で行うとされるが、条文において明確な手続が示されているわけではない。この点については、実務では「協議書式が先に決まって、法的根拠は後から整えられた」と回顧されることがある[12]

なお、許可取消しおよび監督命令は国土交通省長官の名で行われるとされ、違反した場合の行政上の措置(第18条)についても、同省ので細部が補われるとされる。

定義[編集]

本法における主要な用語については第2条以下で定義される。

まず「隊商」とは、複数の荷送人が共同で運送主体を構成し、契約書類または帳簿により隊列単位が管理されるものをいうとされる(第2条)。また「動物を用いた運送」とは、獣、鳥類、または“人が操ることを前提とする”大型の家畜類のいずれかを、牽引・運搬・誘導いずれかの態様で利用する行為をいうとされる。

「通行完全禁止」とは、通行自体だけでなく、関門手前での待機、物資の受け渡し、隊列の編成変更および再編のための駐留を含む概念とされる。したがって、第4条により禁止されるのは“車両の通過”というより、“国境を越える運送体系の成立”であると解釈されることが多い[13]

ただし、「越境通行」は、国境線から一定の距離(第5条)以内で行われる行為に限定され、距離は「実測で250メートル」とされる告示があるとされる[14]。この“250メートル”が厳密であるかどうかは、現場の測量誤差も含めて議論がある。

罰則[編集]

本法には刑事罰と行政罰に相当する措置が規定されている。

第15条では、通行完全禁止に違反した者は「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処する旨が定められる。さらに、隊商の代表者または責任者については、運送体系の主導性を理由として「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とする加重があるとされる(第16条)。

また、第17条の規定により、違反者が所持する帳簿、隊列符号票、動物誘導器具等は没収または返還制限の対象となり得る。返還制限についてはで手続が示され、例えば没収物の保管期間は「90日」と告示された例があるとされる[15]

なお、違反した場合であっても、緊急通行許可の条件を満たす行為についてはこの限りでないとされ、許可条件の充足は写真記録と現場日誌の双方で確認されるとされる(第12条)。

問題点・批判[編集]

本法は運用の明確性を掲げた一方で、要件が広く、実務負担が増えたことが批判されている。

第一に、「隊商」という概念が契約と帳簿に依存しているため、実際には“取引の実態”に即さない形で線引きが行われたとの指摘がある。具体的には、現場では隊列の人数ではなく、帳簿上の「隊商コード(四桁)」の付番で通行可否が決まり、誤付番によって許可待ちが発生したとされる[16]

第二に、禁止が「越境通行」に限られるとしても、距離250メートルという基準が測量士のスキルに依存し得る点が問題視された。ある記録では、同じ地点でも測量日が違うと“越境判定”が入れ替わり、関門職員が慎重に「再測量係数1.03」を用いたという[17]。ただし、この再測量係数が条文に基づくのか、現場裁量に過ぎないのかは不透明である。

第三に、衛生目的を掲げつつ動物の種類別に扱いが変わるため、動物福祉団体からは「禁止は動物ではなく市場の都合に寄っている」との批判が出たとされる。一方で国土交通省は、通行完全禁止の趣旨は衛生と治安にあるとして反論している[18]

脚注[編集]

関連項目[編集]

脚注

  1. ^ 国土交通省国境運用局『隊商および動物を用いた運送の通行完全禁止法逐条解説(平成8年改訂版)』交通法令研究会, 1996年。
  2. ^ 山嵜謙二『国境交通と“完全禁止”概念の法技術』法政論叢, 第214巻第2号, pp. 45-88.
  3. ^ Margaret A. Thornton『Transit Control and Semantic Overreach: A Comparative Study』Journal of Border Legal Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 101-134, 2018.
  4. ^ 佐伯涼太『隊商コード運用の実証研究:1999〜2004』国境行政レビュー, 第7巻第1号, pp. 1-39, 2006.
  5. ^ 外山久遠『大龘国との制度調整における告示の機能』行政手続年報, 第33号, pp. 77-120, 2012.
  6. ^ Klaus Richter『Animal-Driven Transport and Liability Allocation in Regulated Zones』Comparative Administrative Law, Vol. 9, Issue 4, pp. 220-255, 2021.
  7. ^ 国土交通省『北麓関門日報(抜粋)』国境運用資料室, 1998年。
  8. ^ 法務省『違反した場合の没収・返還制限に関する質疑応答集』法令解釈資料, 第18号, pp. 13-26, 2001年。
  9. ^ 大龘国交通交易庁『越境待機時間と通行判定の統計(試算)』交易庁統計叢書, 1997年(※日本語抄訳).
  10. ^ 星野真琴『“250メートル基準”の測量論的検討』公共測量学会誌, 第5巻第2号, pp. 55-73, 2015.

外部リンク

  • 法令データベース「国境条文庫」
  • 国土交通省 国境運用局 公式アーカイブ
  • 交通法令研究会 リンク集
  • 大龘国制度調整研究フォーラム
  • 国境測量実務ナレッジ
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