駅猫
| 名称 | 駅猫 |
|---|---|
| 読み | えきねこ |
| 英名 | Ekineko |
| 起源 | 1898年ごろの関東私鉄網 |
| 主な役割 | 改札周辺の巡回、発券窓口の心理安定、鼠害抑制 |
| 管轄 | 鉄道局生活環境係(後の駅務衛生課) |
| 代表的な規程 | 駅猫運用要綱 第4版 |
| 象徴色 | 灰、白、三毛 |
| 関連行事 | 毎年10月の「猫時刻点検」 |
駅猫(えきねこ)は、に常駐し、乗客の導線整理、待合室の温度観測、ならびに迷い込んだ小動物の保護を担うとされる猫の総称である。末期の沿線で制度化されたのが起源とされ、のちにの準公認制度へと発展した[1]。
概要[編集]
駅猫は、駅構内で半ば公的に飼育・放し飼いされる猫を指す制度であり、単なる看板動物ではなく、の補助を担う存在として扱われてきたとされる。とくにの地方私鉄では、待合室の鼠害対策と乗客の不安軽減を目的に導入され、のちに周辺の支線網でも採用例が増えた。
この制度は、猫が「駅の時刻感覚を整える」という奇妙な理屈に基づいており、朝の始発前に猫がホームを一往復すると、その日の列車遅延率が低下するという内部報告が残る。もっとも、この報告は時代の統計と混在しており、現在では要出典とされることが多い[2]。
歴史[編集]
私鉄黎明期[編集]
駅猫の起源は、方面の貨物支線において、穀物倉庫を荒らす鼠の増加に対処するため、駅長のが三毛猫を構内へ放ったことにあるとされる。これが評判を呼び、翌年にはの三駅で「猫番」が正式に配置された。
当初は単純な害獣対策であったが、乗客が猫のいる駅を好むようになり、切符売り場の売上が平均で増加したという。なお、この数値は駅ごとの帳簿を寄せ集めたもので、雨天日を除外したのではないかとの指摘がある。
国鉄準公認化[編集]
初期には、の前身組織であるが「駅務衛生補助動物要領」を試験施行し、、、の三駅で駅猫の巡回記録を標準化した。ここで初めて、猫にを付与し、勤務時間を「夜明け前」「昼休み後」「降雨時」の三区分で管理する方式が採られた。
一方で、猫が発車ベルに反応してホームを横切る事故が増えたため、1934年にはが「鈴付き首輪の義務化」を通達した。この通達が後の駅猫文化の原型となったが、首輪の鈴の音が逆に鼠を学習させたという説もある。
高度成長と観光化[編集]
後半、駅猫は地方観光の目玉として再評価され、の山間駅やの海辺の小駅で「駅猫のいる駅」としてポスター化された。とくにのでは、駅猫が記念入場券に印刷され、発行枚数はを超えた。
この時期には、駅猫の毛色ごとに役割が分けられていたという話がある。三毛は案内係、黒猫は夜間巡回、白猫は遺失物確認担当とされたが、実際には駅員が勝手に呼び分けていただけではないかとの説が有力である。
運用規程[編集]
駅猫は自由気ままに見える一方で、鉄道各社の内部文書では極めて細かく管理されていた。たとえばでは、1匹あたりの担当面積を「改札口半径以内」とし、雨天時は上部への待機を認めるなど、妙に実務的な条文が並ぶ。
また、駅猫の適性は「乗客の靴音に驚かないこと」「発車メロディに対して耳を伏せすぎないこと」「構内放送を3回連続で無視できること」によって判定された。採用試験では、、、近隣のの三者面談が行われたとされるが、実際には猫が机の下から出てこなかった時点で合格になることが多かった。
社会的影響[編集]
駅猫は、地方駅の利用者を増やすだけでなく、駅務員の労務文化にも影響を与えた。駅猫がいる駅では、朝礼が5分短縮され、遅刻者の言い訳に「猫が膝に乗っていた」が使われる頻度が上がったという調査がある。また、子ども連れの乗客が猫目当てに駅を訪れるようになり、駅前商店街のとの売上が連動した事例も報告されている。
一方で、からは「公共交通機関における猫の準公務員化は過剰な擬人化である」との批判も出た。これに対し、駅側は「猫は職員ではなく、あくまで駅の雰囲気を調律する存在である」と回答したが、この説明はかえって意味が分からないとして話題になった。
著名な駅猫[編集]
駅猫の中でも特に有名なのは、のにいたとされる「モハ子」である。モハ子は毎朝6時32分の始発前に改札前へ現れ、切符を確認するように客の手元を覗き込んだため、「無賃乗車を見抜く猫」と呼ばれた。
の山岳支線にいた「サボ」は、除雪機の音を子守歌として覚え、冬季になるとホーム端で完全に動かなくなることで有名であった。駅員はこれを「省エネ勤務」と称したが、実態は単なる冬眠に近い。
の「改札三毛」は、1日だけ特急券の検札台に座ったことでネット上で伝説化した。なお、その写真は実際には駅員の昼休憩中に撮影されたものであり、のちに「最も働いた駅猫」として神格化された。
批判と論争[編集]
駅猫をめぐっては、衛生面と業務境界をめぐる議論が続いた。とくにのによる内部監査では、駅猫用の餌皿が改札内にも設置されていたことが発覚し、「公共性の名を借りた私的飼育ではないか」と問題視された。
また、駅猫の存在が一部駅の「人間職員より親切」という評判を生み、駅員の精神的負担が増したとの報告もある。ある駅長は記者会見で「猫は何も言わないが、視線だけで全てを見抜く」と述べ、翌日から駅務日誌にその発言だけが独立して引用された。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺喜三郎『駅務と毛皮—関東私鉄における猫番制度の研究』東洋交通社, 1912年.
- ^ 鉄道省生活課『駅務衛生補助動物要領』第2版, 1927年.
- ^ 三浦 亮一『ホーム上の静かな秩序』日本鉄道史学会誌 Vol.14 第3号, pp. 41-68, 1956年.
- ^ Margaret A. Thornton, "Felines and Fare Gates: A Comparative Study of Station Cats," Journal of Rail Anthropology Vol.8 No.2, pp. 113-139, 1974.
- ^ 佐伯 兼造『駅猫運用要綱とその実務』鉄道管理研究所出版部, 1981年.
- ^ 小林 美沙『猫時刻点検の民俗学的考察』交通文化評論 第22巻第1号, pp. 5-19, 1993年.
- ^ H. J. Kershaw, "The Thermal Behavior of Platform Cats," Proceedings of the Imperial Railway Society Vol.31, pp. 201-219, 1908.
- ^ 『駅猫白書 2001—地方駅の動物配置と来客変動』駅務協会調査室, 2002年.
- ^ 高橋 澄子『三毛と切符売上の相関について』都市交通経済研究 第11巻第4号, pp. 77-96, 2010年.
- ^ 鈴木 一郎『駅猫はなぜ発車ベルを嫌うのか』猫交通学研究 第7巻第2号, pp. 1-24, 2017年.
- ^ National Association of Railway Companions『Station Cat Safety Manual』Vol.4, pp. 9-33, 1968年.
- ^ 宮本 俊介『改札口の下で眠るもの—駅猫写真帖』、ところどころ頁欠落版、猫と鉄道社, 1998年.
外部リンク
- 駅猫文化保存会
- 全国駅務動物連絡協議会
- 鉄道民俗資料館デジタルアーカイブ
- 駅猫運用要綱公開室
- 地方駅観光資源研究センター