高等学級裁判所
| 題名 | 高等学級裁判所 |
|---|---|
| 法令番号 | 昭和47年法律第118号 |
| 種類 | 公法 |
| 効力 | 現行法 |
| 主な内容 | 学級序列紛争の調停、席次決定、級長選挙の再審査 |
| 所管 | 文部省 |
| 関連法令 | 学級自治基本法、席次適正化特別措置法 |
| 提出区分 | 閣法 |
高等学級裁判所(こうとうがっきゅうさいばんしょ、47年法律第118号)は、の序列に起因する紛争を調停し、特定の教育現場における評定・席次・委員選出の適正を確保することを目的とするの法律である[1]。が所管する。略称は高裁法である。
概要[編集]
高等学級裁判所は、後期課程において発生する学級内の地位争いを、準司法的手続により処理するために制定された法律である。条文上は裁判所そのものを設置する体裁をとるが、実際には各学校に置かれる「学級審理委員会」を指揮する上位法として機能する。
本法は47年の学園秩序改善答申を受けて法制局が起草し、内の複数の進学校で試行された「席次調停制度」を全国化したものとされる。もっとも、当時の議事録には「生徒会の権威を不用意に法令化してよいのか」とする懸念も記されており、成立過程にはかなりの混乱があったとされる[2]。
構成[編集]
本法は全9章、附則12項から成り、第1条から第42条までを置く。中心となるのは、第3章の「席次及び評定の確定」、第5章の「学級裁判所の管轄」および第7章の「再審」である。
また、第11条において「級長、副級長、議長席及び窓側優先権の配分は、衡平の原則に基づき定める」とされ、第18条以下ではによる臨時席替え命令の手続が規定されている。各条文は一見すると行政法規に近いが、末尾に「ただし、文化祭前一週間についてはこの限りでない」といった学校行事特例が多く、法体系としての一貫性は高いとはいえない。
条文の語彙には「義務を課す」「禁止される」「違反した場合」「の趣旨」「に該当する者」などが頻出する一方、肝心の「高等学級」の定義は曖昧で、運用現場では普通科3年A組から理数科特進クラスまで幅広く適用されることになった。
沿革[編集]
制定の経緯[編集]
制定の直接の契機は、45年に内の県立校で発生した「ロッカー番号をめぐる連続抗争」であるとされる。これが校内暴力と席次紛争の複合事案としての研究班に報告され、翌年、は「学級内紛争の法文化」を試みる作業部会を設置した。
作業部会の中心人物は、教育法学者のと、元書記官のであった。両名は、学級会での決議に不服を唱える生徒が増えた背景には「手続保障の不足」があると主張し、校内に限った準司法機関の必要性を説いた。なお、同会議の速記録には「ジャージ登校日との整合性が取れない」との発言も残っている[3]。
主な改正[編集]
54年改正では、クラス委員の選挙無効を争う「選挙異議申立て」が新設された。これは、当時流行した学級新聞の匿名投書欄が原因で、投票結果の信頼性が著しく低下したことに対応するためである。
3年改正では、第27条に「保健室待機中の生徒は、原則として審理に出席したものとみなす」という規定が追加された。これにより、体調不良を理由に裁定を逃れようとするケースが激減したとされるが、実態は単に保健室のベッド数が足りなかっただけだという指摘もある。
さらに18年改正では、電子黒板および校内LANの普及を受け、申立てがで定める様式によりオンライン提出できるようになった。ただし、提出後に「送信先が隣の組の学級日誌だった」事例が多発し、施行初年度だけで全国47校から計312件の誤送信届が出された。
主務官庁[編集]
本法の主務官庁はであり、実務は同省初等中等教育局内の「学級秩序調整課」が所掌するとされる。学級秩序調整課は、席次命令の告示、再審請求の様式指定、模擬裁判員の養成などを担当している。
また、地方支分部局として各都道府県教育委員会に「高等学級裁判所連絡官」が置かれる。連絡官はに基づき、学期ごとの紛争件数を集計し、必要に応じて臨時の巡回審理を行う。なお、の一部地域では、冬季の除雪事情を考慮して校庭側の席次命令が緩和されるなど、地域差が大きい。
定義[編集]
第2条では、「高等学級」とは「中等教育機関において、学力・生活態度・委員歴その他の事情を総合勘案して上位に区分された学級」をいうと定義される。もっとも、「上位」の基準は法文上明示されておらず、各学校長の裁量が大きい。
「裁判所」とは、第6条により「学級内の争訟を調停し、席次、評定、及び委員選挙に関する決定を行う合議体」をいう。判事に相当する者は「学級裁定官」と呼ばれ、原則として教務主任、生活指導主事、及び学年主任の3名で構成される。これに代表1名が参与として加わることがあるが、採決権はない。
「争訟」とは、ロッカー使用順、廊下の右側通行、掃除区域の割当て、並びに文化祭実行委員の座席配置に関する紛争をいう。なお、第8条ただし書は「昼食のパン争奪は争訟に含まない」と規定しており、この部分は制定当初から実効性が疑われていた。
罰則[編集]
第31条以下には罰則が定められており、違反した場合は、注意、反省文の提出、1週間の席替え凍結、及び学級会での陳謝が科される。特に悪質な場合には「議長席返上命令」または「窓際補助勤務」が命ぜられる。
第34条は、虚偽の申立てを行った者に対し、最長で学期末までの「職務停止」及び学級裁判所前での模擬傍聴義務を課す。さらに、同条の規定により、証拠として提出されたプリントに折り目が多い場合は、その信用性が減殺されるとされている。
ただし、前後における罰則適用についてはこの限りでない。これは実際には、運動部所属生徒への配慮というより、罰則担当教員の人員不足を法形式で隠したものではないかと指摘されている[4]。
問題点・批判[編集]
本法に対する最大の批判は、教育現場の自治を法令化しすぎた結果、学級の自然な調整機能が失われた点にある。特に教育法制研究会は、「学校内の感情的対立に、裁判所という重い語を冠したこと自体が誤りである」とする意見書を公表した。
一方で、支持派は「席次をめぐる争いを口頭注意だけで処理していた時代に比べ、手続が可視化された」と評価している。実際、60年代には、全国の高校で学級内紛争の平均解決日数が41.2日から18.7日に短縮されたとする内部統計があるが、集計方法が手書きの学級日誌ベースであったため、信頼性には疑義がある。
また、地方によっては本法が事実上「学年末の席替え規則」に矮小化されている例もあり、内の私立校では第12条だけが独立して壁に掲示されていることがある。これに対し、法学者のは「条文だけが立派で、運用は学級委員の気合いに依存している」と辛辣に評している。
脚注[編集]
[1] 公布時の官報号外に基づく。
[2] 『学級秩序改善答申』は一部が黒塗りのまま公開されたため、詳細は推定にとどまる。
[3] 作業部会議事録第14回、ただし原本は給食室の棚から発見された複写である。
[4] 学校保健統計と混同した可能性があるとの指摘がある。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三輪田正弘『学級序列紛争と準司法的調整』教育法研究社, 1972年.
- ^ 沢渡文彦『席次命令の法理――教室内秩序の再設計』日本教育行政学会, 1974年.
- ^ 黒田留美子「高等学級裁判所の運用実態」『学校法学』Vol. 12, No. 3, pp. 44-67, 1988年.
- ^ A. Thornton, “Classroom Tribunals and Procedural Fairness,” Journal of Asian Educational Law, Vol. 7, No. 2, pp. 101-129, 1991.
- ^ 文部省学級秩序調整課『高等学級裁判所運用要領』第4版, 1998年.
- ^ 「席次紛争と反省文の経済学」『教育統治レビュー』第19巻第1号, pp. 8-23, 2003年.
- ^ 佐伯航一『校内法規の成立と崩壊』中央法規出版, 2007年.
- ^ Margaret A. Wells, “The Jurisprudence of School Seating,” Comparative Pedagogy Quarterly, Vol. 15, No. 4, pp. 211-240, 2012.
- ^ 学級制度史編纂委員会『昭和後期学級統治史料集』第一法規, 2016年.
- ^ 『高等学級裁判所とパン争奪の禁止』教育法制叢書, 2020年.
外部リンク
- 文部省法令データベース(架空)
- 学級秩序調整課アーカイブ
- 高等学級裁判所研究会
- 校内法規史料館
- 席次適正化情報センター