22
| 定義 | 日本のプロ野球現場で「攻守万能キャッチャー」を連想させる数の通称 |
|---|---|
| 起源とされる領域 | 港湾気象観測(コード化された数列) |
| 主な採用先 | 複数球団のスカウティング運用、打撃/守備のメモ表記 |
| 象徴の条件 | 捕球・送球・判断が「22点満点の基準」を満たすとされる |
| 使用される場面 | スコアラーのメモ、守備指導、公式戦の内規呼称 |
| 論争点 | 特定選手の評価を固定化し、データの恣意性が問題視されることがある |
22(にじゅうに)は、において「攻守に優れたキャッチャー」を象徴する現場慣行として語られることがある数である。元来は別分野の記号であったとされ、のちに球団運用・選手育成へ取り込まれた経緯がある[1]。
概要[編集]
は、数字そのものというより、現場で「攻守優れたキャッチャー」を連想させる“評価記号”として機能することがある数である。球団のスコアラーが打球性状・捕球姿勢・送球到達のタイム差などを独自の係数で換算し、その合算値が「22」に到達した選手を“22型捕手”と呼んだのが始まりだとする説がある[1]。
同様の言い回しは1950年代末から散発的に確認され、1970年代に入ると、練習試合の打撃成績よりも守備判断と投手との呼吸を重視する球団改革の文脈で再び注目されたとされる。なお、22が「どの要素を足すと22になるのか」は球団ごとに調整され、統一基準として整備されたわけではないと指摘されている[2]。一方で、語感の良さと“二桁の中でも語呂が立つ”点が普及を後押ししたとも説明される。
歴史[編集]
港湾気象観測からの転用説[編集]
の起源については、港湾気象観測のコード表から来たとする見解がある。横須賀の海上気象担当が、風向・波高・視程をそれぞれ2桁で記録する運用を導入した際、「捕手の判断力に似た“乱れの少なさ”」を表すコードが22番だったというのである[3]。もっとも、この時点では野球とは無関係であり、現場では「二十二号コード」と呼ばれていたとされる。
そのコードが野球に移った経緯として、1959年に内の港湾倉庫を練習施設として転用した球団が、記録係を増員する過程で気象出身者を雇い入れたことが挙げられる。この人物が、捕手の守備練習を“視程が落ちない条件”にたとえて整理した結果、記号22が「攻守のブレが少ない捕手」の比喩として定着した、という筋立てが語られることがある[4]。
また、記録係が作った手書きのメモ用紙には、送球の到達時間差を「±2秒の範囲で収まる」場合のみ加点する項目があり、その合計が22点になるように設計されていたという。ところが当時の球団内規が残っていないため、詳細は“伝承”に依存しているとされる。
「22型捕手」運用の成立と改造[編集]
1970年代、を模したとされる守備重視の改革が、複数球団で同時期に進んだ。このとき、キャッチャーの役割を「投手の機械」ではなく「投手の友軍」として扱う方針が掲げられ、はその象徴語として社内掲示に登場したとされる[5]。
球団の練習ノートでは、22型捕手に該当する基準がやけに細かく規定された。たとえば捕球は「三塁側へのバウンド処理を、1回目で78%、2回目で98%へ寄せる」こと、送球は「二塁到達までの“手元—受け手—ベース”の遅延を0.22秒単位で記録し、最大でも+2.2を許容する」ことなどが書かれていたとする証言がある[6]。ただし当該ノートの写真は、のちにコピー機の故障で一部が欠けた形で残っており、「22という語が先にあって数字が後から当てはめられたのでは」という疑念も出た。
それでも22の運用は定着し、公式戦では守備交代の判断会議で「今日は22が勝ちやすい配球になる」といった、比喩と統計の境界が曖昧な発話が増えた。こうした運用が、投手側の“安心感”を作り、結果的に投球の球質が安定したという球団関係者の語りも残っている[7]。
社会的影響[編集]
は競技内の合意を超えて、ファンの理解のしかたにも影響したとされる。テレビ中継では解説者が「今日の捕手は22」と言い換えることで、“良いキャッチャー”の条件を一瞬で共有しようとする文脈が生まれた。たとえばのローカル局で放送された企画では、視聴者が「攻守どっちが重要?」と投票すると、票の大半が“両方”に集まり、そこで22が説明なしに使われたと報じられている[8]。
また、スカウト文化にも波及した。地方球場での練習視察では、打率よりも捕手が返球をためらわない瞬間、配球が遅れない瞬間を“22的な挙動”として記録し、後日、選手名ではなく「22」「11」「33」のような分類でリスト化されたとされる。結果として、評価が“数字で見える化”される一方、数値に合わない選手が「別枠」と扱われる危険も指摘された。
さらに、捕手専門の育成塾では「22点ドリル」が商品化された。これは捕球体勢、立ち上がり、送球モーションをそれぞれ22の係数に対応させ、毎週、自己申告ではなく“遅延センサー”で測るという触れ込みだったという[9]。一方で、測定器の校正が不十分な回があり、その週だけ成績が跳ね上がった受講者が続出したため、管理側が急遽「校正係数は0.22を引く」と訂正したという逸話も語られている。
批判と論争[編集]
が“攻守万能捕手”の代名詞として使われるほど、逆に多様性が損なわれるとの批判がある。守備が強い捕手はいるが打撃が伸びない、またはその逆がある。にもかかわらず、現場では「22型捕手=勝ちやすい」という連想が先行し、選手の特徴が単純化される問題が指摘された[10]。
加えて、22の算出方法が球団ごとに異なる点が論争の種になった。ある球団では送球の安定を“±2秒の範囲”で評価するとされ、別の球団では「二塁送球だけは+2.2秒を許容」と記録が残っているという。こうしたズレが、成績の比較可能性を損なうとの見解が出ている[11]。
さらに、社会一般への影響として「22が良い」という空気が強まると、捕手に求められる要素が“測定できる項目”に偏り、測定できない直感や投手との対話が軽視されるのではないか、という反論もあった。もっとも、賛成派は「直感も結局は22に近い動きとして現れる」として、反論を切り返したとされる。ここが最大の笑いどころであり、真偽よりも“22と言えば通じる”状況が実際に生まれたこと自体が、野球文化の面白さになっているとも説明される。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中律也『捕手の比喩語彙史:22型捕手の誕生』青雲社, 2012.
- ^ Margaret A. Thornton「Numerical Charms in Japanese Baseball Scouting」『International Journal of Sports Semiotics』Vol.12 No.4, 2018, pp.41-63.
- ^ 佐伯光輝『港湾気象観測の2桁コード体系と記号転用』海文堂, 2006.
- ^ 斎藤絢人「記録係が持ち込んだ運用:港湾コードから野球へ」『月刊記録法研究』第7巻第2号, 2009, pp.15-29.
- ^ Kenta Watanabe「Catching as Coordination: A Case Study of 1970s Reform Teams」『Journal of Baseball Fieldwork』Vol.3 No.1, 2015, pp.77-101.
- ^ 【要出典】西田眞琴『スコアラー手帳の断片と22点満点』スコアリーグ出版, 1999.
- ^ 松岡和也『守備改革の社会学:安心感が球を変える』講和書房, 2020.
- ^ 李承佑「Broadcast Lexicon and Fan Understanding in Nippon Professional Baseball」『Asian Sports Communication Review』Vol.9 No.2, 2017, pp.120-144.
- ^ 内海みさ『22点ドリル商品化の裏側:育成塾現場報告』グラウンド新書, 2011.
- ^ 小川真一『二桁が支配する世界:評価指標の恣意性』学術出版企画, 2013.
外部リンク
- 捕手資料庫22研究室
- 守備改革アーカイブ
- 気象コードと記号の博物館
- プロ野球スコアラー協会 旧掲示板
- 育成塾カタログ倉庫