3.13
| 名称 | 3.13 |
|---|---|
| 読み | さんてんいちさん |
| 初出 | 1958年ごろ |
| 提唱者 | ラルフ・E・マッキンレー、田所久重ほか |
| 分野 | 数値文化史、工学史、民間統計 |
| 中心地 | 東京都、ロンドン、ボストン |
| 関連組織 | 国際小数規格委員会、東亜計量研究所 |
| 特徴 | 境界値、補正値、誤読の多発 |
| 別名 | 3.13問題、三点一三現象 |
| 主な用途 | 表記揺れの説明、暫定値の記録 |
3.13(さんてんいちさん)は、において小数点以下第2位の扱いをめぐって生じたとされる符号的概念であり、後半のとで別個に発達した「境界値の呼称」として知られている[1]。とくに、、およびの交点に位置づけられ、後年は「三と一三のあいだに生じる不安定な揺らぎ」を指す比喩としても用いられた[2]。
概要[編集]
3.13は、もともと付きの単純な数値ではなく、の現場で「3と13/100の間にある、わずかに未確定な値」を表すために使われた便宜的表現である。特にの工業規格との品質管理文書において、同じ記号列が異なる意味で流通したことから、独自の文化圏が形成されたとされる[3]。
この概念は、後半にの輸入部材検査との冷蔵輸送記録をつなぐ電話会議で偶発的に生じた、という説が有力である。もっとも、後年の研究では、実際にはの計測研究グループがに配布した内部資料『暫定値の書式に関する覚書』が基礎になったとも指摘されている[4]。
成立史[編集]
前史[編集]
3.13の前史は、末期の官庁文書に見られる「三・一三」表記にさかのぼるとされる。当初これは日付ではなく、帳簿上で「第3類・第13項」を意味する略記であったが、後にの統計学者・が、これを「小数と分類のあいだに横たわる曖昧な境界」と読み替えたことで、概念化が始まったという[5]。なお、三輪は実在しないとする説もあるが、の目録には同姓同名の書簡集が残っているとされる。
標準化運動[編集]
、は、工場間でばらつく「3.1」「3.10」「3.13」の表記を整理するため、暫定的な注記符号として3.13を採用した。議長を務めたは、3.13を「不完全だが実務上は十分な精度を持つ値」と説明し、これがのちに「3.13原理」と呼ばれることになる[6]。
一方、日本側ではが系の会議で「三・一三は誤差の最終形ではなく、誤差の入口である」と述べたとされ、以後、工学系大学の講義で半ば格言として定着した。もっとも、当時の議事録は一部欠落しており、発言の前後関係は再構成の余地が大きい。
大衆化[編集]
、の特集番組『数のゆらぎを歩く』が3.13を一般向けに紹介したことで、概念は研究者の外へ流出した。番組内で内の精密機械工場が「許容差3.13ミリ」と掲示していた場面が話題となり、視聴者のあいだでは「3.13を超えると機械が怒る」といった俗信まで生まれたという[7]。
この頃から、3.13はだけでなく、の変動幅やの僅差、さらにはの文脈でも比喩的に用いられるようになった。とりわけの喫茶店「サードポジション」では、3.13を超えた注文ミスに対しコーヒーを一杯無料にする制度があり、常連客の間で伝説化した。
用法[編集]
3.13の用法は大きく、暫定値、境界値、象徴値の三つに分けられる。暫定値としては、製品の試作段階で「3.13前後」と記すことで再測定の猶予を残す用途が多く、境界値としては「3.13を下回れば安全」といった判定基準に使われた[8]。
象徴値としての3.13はやや特殊で、以降の都市文化では「ぎりぎり成立する状態」を表す便利な言い回しとして浸透した。たとえばの広告業界では、予算達成率が3.13倍に達した案件を「三と一三の祝福」と呼ぶ社内慣行があったとされるが、これは後年の社員回想録で初めて確認される記述である。
批判と論争[編集]
3.13に対しては、当初から「数値として中途半端すぎる」との批判があった。とくにの現場では、3.13がやと混同され、児童が小数の位取りを誤認する事例が報告された[9]。
また、にはの改訂会議で、3.13を正式な補助記号として残すべきかが議論され、の若手研究員・が「3.13は値ではなく、値が迷ったときの避難所である」と主張した。これに対し保守派は「避難所にしては桁が少ない」と反論したという。結果として制度化は見送られたが、現場慣行としてはむしろ長く残った。
社会的影響[編集]
3.13は、数値の正確さよりも「説明可能な曖昧さ」を重視する文化を広めた点で評価されている。これにより、、、などの分野で、完全な確定値を急がず中間報告を許容する運用が一般化したとされる[10]。
一方で、3.13は「曖昧であることの免罪符」として濫用されることもあり、のある地方自治体では、予算執行の遅延説明に3.13を連発したため、住民説明会が紛糾した。なお、この件をきっかけにが内部向けに「3.13型表現の使用基準」を出したとする文書が存在するが、公開版は未確認である。
派生概念[編集]
3.13からは複数の派生概念が生まれた。代表的なものに、3.130(ゼロ補正を強調する用法)、3.13A(行政文書用の暫定記号)、および「逆3.13」(確定しすぎてかえって危険な状態を指す俗語)がある[11]。
また、の社会言語学者は、3.13が「数式の形をした合意形成装置」であると述べ、これが文化における“ひとまず3.13で置く”慣行の理論化につながったと主張した。ただし、彼女の論文は発表当初、数値表記がすべてカンマ区切りで統一されており、編集段階でかなり修正された形跡がある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ Ralph E. McKinley, "On the Administrative Use of 3.13", Journal of Decimal Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 41-67, 1959.
- ^ 田所久重「三・一三表記の実務的意義」『計測と制度』第4巻第2号, pp. 88-103, 1962年.
- ^ Margaret L. Sloane, "Boundary Values and the Semi-Exact Number", Proceedings of the Boston Institute of Standards, Vol. 8, No. 1, pp. 5-22, 1964.
- ^ 三輪孝一『暫定値の書式に関する覚書』東京帝国大学統計学研究室, 1938年.
- ^ Helen C. Worsley, "3.13 as a Negotiation Device in Technical Meetings", The London Review of Quantification, Vol. 19, No. 4, pp. 201-230, 1978.
- ^ 木下栄治「3.13型表現の保存と廃止について」『計量標準報告』第27巻第6号, pp. 14-29, 1983年.
- ^ 『数のゆらぎを歩く』制作班『NHK特集 3.13の世界』日本放送出版協会, 1974年.
- ^ S. T. Wainwright, "Precision Anxiety in Postwar Japanese Industry", Industrial History Quarterly, Vol. 15, No. 2, pp. 119-146, 1987.
- ^ 東亜計量研究所編『3.13資料集成』東亜計量研究所出版部, 1991年.
- ^ 藤村光彦「逆3.13現象の社会心理」『現代記号論』第11巻第1号, pp. 77-90, 1998年.
- ^ Eleanor P. Finch, "A Curious Treatise on Three Point Thirteen", Cambridge Working Papers in Number Culture, Vol. 3, No. 2, pp. 1-18, 2005.
外部リンク
- 国際小数規格委員会アーカイブ
- 東亜計量研究所デジタル資料室
- 数値文化史センター
- 3.13口承事例集
- 計測と比喩の会