KONA
| 名称 | KONA(コナ) |
|---|---|
| 別名 | 王冠粉(おうかんこな)/ 康納豆圧(こうのうとうあつ) |
| 発祥国 | アイスランド |
| 地域 | レイキャネス半島沿岸・レイキャヴィーク北港 |
| 種類 | 粉末型/ 圧縮型(タブレット) |
| 主な材料 | 発酵豆粉、海塩、乾燥海藻、脂肪分(羊乳由来) |
| 派生料理 | KONAスープ、KONAラップ、KONA粥(かゆ) |
KONA(こな)は、をしたのである[1]。
概要[編集]
は、日持ちと栄養の両立を狙って考案されたであり、粉末状のものと、握って食べられる圧縮成型のものが併存しているとされる。一般に、で香味を立てたのち、豆粉を細粒化してから圧縮する工程が特徴とされる。
現在では、寒冷地の携行食としての評価が高く、特にの漁労現場で「補給が速い」として広く親しまれている。また、粉末型は即席の粥やスープに、圧縮型は緊急食として分けて常備されることが多いとされる。なお、栄養面では「三大栄養素に“季節補正”が入る」ような言い回しで説明されることもあるが、これは流通業者の営業資料に由来するという指摘もある。
語源/名称[編集]
という呼称は、アイスランド語圏の漁師が使っていたとされる短縮語「kon-(港での粉末補給)」から来たという説が有力である[2]。一方で、首都の小規模製粉所が、原料豆を発酵槽から“そっと”取り出す動作を「こなす(粉にする)」と呼んだことに由来する、という別説もある。
なお、圧縮型の別名であるは、タブレット表面に付く微細な放射状の圧痕が“冠”に見えることから付けられたとされる。この圧痕は製造機のダイ(押し型)の摩耗で年によって形が変わるため、「王冠の枚数で在庫が分かる」と言い伝えられ、現場では妙に細かい観察が行われていたとされる。
語源研究の分野では、アルファベット表記のが「氷(ice)の下で熟成する豆粉」を意味する工業コードから採用された、という見解も見られるが、当時の規格書が現存しないため確証はないとされる。
歴史(時代別)[編集]
成立期(18世紀後半〜19世紀初頭)[編集]
が“料理”として確立したのは18世紀後半とされる。当時の沿岸では、乾燥豆の輸送が遅れる日があり、港の倉庫番が「粉にしてしまえば腐りにくい」と判断したのが最初だと説明される[3]。ただしこの説明は、のちに資料編纂者が付け足した可能性があるとして、学術界では慎重に見られている。
一説では、漁期の“栄養補給帳”が残っており、1831年の冬だけで粉末型が1日平均34グラム、圧縮型が1日平均29グラム配られたという記録が紹介されている。もっとも、その帳簿は筆致が改変されているとの指摘もあり、「数字だけ整いすぎている」という理由で再検討が求められている。
工業化期(1920年代〜戦後)[編集]
1920年代にで製粉機メーカーと共同した「低温発酵ライン」が整備されたとされる。ここで温度管理が行われ、発酵槽は「氷点近くの7段階」に調整されたという。具体的には、槽内温度を「-1.2℃、-1.0℃、-0.8℃…」のように細分化した調整表が使われていたと説明されるが、当時の温度計の精度から考えると誇張ではないか、という疑義もある。
戦後になると、携行食としての需要が高まり、圧縮型は“割って食べる”方式に転換したとされる。ある調理研究者は、タブレットを割る際の最適角度を「72度」と主張し、角度試験のために地元の若者が無駄に集められたと笑い話が残っている。
現代(1990年代〜現在)[編集]
1990年代以降、栄養バランス指標の再計算に伴っては「三栄養素配分の季節別最適化食」として再定義された。一般に、粉末型は体温で溶けやすく、圧縮型は携帯時の湿気吸収に強いとされる。
現在では、家庭向けの調理キットも流通しており、粉末に湯を注ぐだけで即席が作れると宣伝される。もっとも、メーカーの広報文では「所要時間は87秒」と書かれている一方、実際の調理は“温度が落ちる”ため100秒前後かかることが多いと、購入者レビューで報告されている。
種類・分類[編集]
は大きく粉末型と圧縮型に分類される。粉末型は「すぐ溶かす」用途に向き、圧縮型は「噛む/割る」用途に向くとされる。さらに粉末型の内部では、発酵豆粉の熟成度によって“薄熟・中熟・濃熟”の3系統があるとされ、味の立ち方が変わると説明される。
また、販売形態によっても呼び名が変わる。いわゆる日常品は家庭用袋詰めとして流通し、漁師向けは防湿の内袋付きで「北港規格」と呼ばれることがある。北港規格は、含水率の目標を「2.3%±0.4」とする、といったやけに具体的な数値がラベルに記されていた時期があり、衛生検査員が「この数字を見ると安心する」と言ったことがきっかけで定着したとされる。
なお、近年では植物性志向に対応して、羊乳由来脂肪分を別素材に置換した派生が出回っているとされるが、元のの“体温でとろける感じ”を再現できていないという不満もある。
材料[編集]
の主材料は発酵したであるとされる。豆粉は、低温で数日〜数週間熟成されると説明され、熟成中に微量成分の香味が整えられるとされる。一般に、塩味はで付与され、風味にはが少量混ぜられる。
圧縮型では、脂肪分の役割が重要になるため、歴史的には羊乳由来の脂肪が用いられたとされる。ここが面白い点で、当初のレシピは「乳を入れると硬くなる」と言われ、硬さの指標として“指の腹の戻り”を観察したと語られる。指が戻るまでの時間が「5秒前後」という記録が残っているが、記録者の手が乾燥していた可能性もあるとされ、真偽は定かでない。
また、香り付けとしてシトラス系の微粉末が使われる場合もあるが、これは輸入コストが高く、主に都市部の“上位版”に限られるとされる。このように、地域と流通状況が配合を左右する点がの特徴とされる。
食べ方[編集]
粉末型の代表的な食べ方は、にする方法である。一般に、粉末を湯に混ぜ、海藻の粒がほぐれるまでかき混ぜるとされる。メーカーは「よく振ってから30秒待つ」と推奨するが、体感では45秒ほどかかるという声が多い。
圧縮型は、割ってから噛むか、溶けるまで温かい飲み物に落として食べるとされる。圧縮型のタブレットは表面がわずかにザラついており、噛むと香りが立つと説明される。ある調理書では「タブレットは左右どちらから先に割るべきか」を扱っており、72度の角度試験の話が再掲されている。
また、粉末型を米の代わりに使って即席を作る家庭もある。現在では、粥に入れる具材は自由度が高いとされ、実際には漁の副産物(干し貝や魚粉)を混ぜる例が多いとされる。
文化[編集]
は寒冷地の携行食として定着しただけでなく、“栄養の会話”を生む文化も作ったとされる。レイキャネス半島では、食卓で「今日は薄熟か濃熟か」が話題になる習慣があるという。一般に、濃熟のほうが満腹感が強いと信じられており、漁師同士の勝負(誰が早く作業に戻るか)に結びついた時期もあったとされる。
さらに、年末の行事としての在庫を数える“冠寄せ”が行われていた地域もある。これはタブレット表面の圧痕の“冠”を数える遊びで、成人が子どもに「今日は何冠か」を当てさせることで、栄養管理を学ばせたと説明される。ただし、この行事は一部の地域でしか確認されず、記録の欠落が指摘されている。
近年では観光客向けに試食ツアーが組まれることもあり、の小さな食品展示館が「87秒体験」として粉末型を提供している。体験の趣旨は健康面よりも“蒸気の香り”を楽しむことにあるとされ、展示館のスタッフがなぜか必ず「海藻が最初に匂う」と口にするのが定番になっている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ エイナル・ハルステイン『北港の粉食文化史(改訂版)』北洋出版社, 1998.
- ^ マルグレート・エーリクスドッティル「KONAの圧縮挙動と官能評価」『アイスランド応用食品学会誌』Vol.12第4号, pp.41-58, 2006.
- ^ スヴェイン・ヨーンソン『氷下発酵の現場記録』港湾補給研究会, 1963.
- ^ H. Thorsen, “Low-Temperature Fermentation of Legume Flours in Maritime Diets,” *Journal of Cold Nutrition* Vol.7 No.2, pp.101-119, 2001.
- ^ カリン・ソールスタイン「王冠粉という呼称の系譜:口承資料の分析」『民俗調理論叢』第3巻第1号, pp.12-27, 2012.
- ^ Sigurd Ásbjörn “Moisture Targets for Compressed Emergency Foods,” *International Journal of Packaged Nutrition* Vol.19 Issue 1, pp.77-90, 2015.
- ^ オルソン・リベルト『レイキャヴィーク台所の数字』東欧食情報センター, 2009.
- ^ E. R. McLachlan, “Thermal Dissolution Kinetics of Powdered Comfort Staples,” *Food Physics Letters* Vol.23 No.6, pp.330-345, 2017.
- ^ ヨハン・グンナル「72度割断実験の再評価」『調理工学年報』第18巻第2号, pp.201-219, 1989.
- ^ Lárus P. Kjartansson『海藻微粒子と香味の相関:KONA研究ノート』レイキャネス実験食工房, 1974.
外部リンク
- 北港KONAアーカイブ
- アイスランド低温発酵データバンク
- 王冠粉(KONA)試食ガイド
- 携行食規格研究室
- レイキャヴィーク食品展示館 87秒体験