MIUANDMAI
| タイトル | 『MIUANDMAI』 |
|---|---|
| ジャンル | 青春×異能×都市伝説ミステリ |
| 作者 | 霧島 みお |
| 出版社 | 星窓出版 |
| 掲載誌 | 電脳ハートビート |
| レーベル | 星窓コミックス |
| 連載期間 | 〜 |
| 巻数 | 全16巻 |
| 話数 | 全128話 |
『MIUANDMAI』(みうあんどまい)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『MIUANDMAI』は、霧島 みおによる日本の漫画である。青春を装いながら、記憶の改変と都市インフラの“癖”を扱う異能ミステリとして読者の間で話題となった。
作中の合言葉「MIUANDMAI」は、登場人物が口にするたびに“同じ言葉なのに意味だけが変わる”現象として描かれる。この仕掛けは、読者参加型の感想投稿企画と連動し、単行本の増刷理由としてしばしば挙げられた。実際、累計発行部数は2020年末時点で310万部に達し、翌年に400万部を突破したとされる[2]。
また、本作は掲載誌の紙面サイズ(B5)と同じ比率で構成される「余白索引」方式が採用された点でも知られている。編集部は「1話あたりの余白面積が平均27.4平方センチメートルを超えると、続きが読めない心理的圧力が生まれる」と述べたという[3]。
制作背景[編集]
霧島 みおは連載開始前、の編集者控室にて、壁一面のメモを眺めながら構想を練っていたとされる。メモには“MIU”“MAI”という2つの音の距離を測るような走り書きが残されており、作者自身が「2文字の間に残る時間を見える化したかった」と語ったとされる[4]。
企画時点のタイトル案は複数存在した。なかでも『ミウとマイのあいだ(仮)』『都市の目が開く日(仮)』の2案が“編集会議で同席したくない空気”を生んだため、最終的に語感を優先した現行題に決まったと伝えられる[5]。
一方で、星窓出版の制作側は「異能の説明を理屈より先に見せる」方針を徹底した。その結果、序盤から専門用語のように振る舞う架空の概念が多数登場することになった。ただし、それらは作中設定上“用語集のページが欠落している”体裁で提示されており、読者は答え合わせをしている気分で読み進めることになる。
あらすじ[編集]
『MIUANDMAI』は、時期ごとに構成される“編”として展開される。各編は主人公の通う街の設備(駅自動改札、街路灯、配送ロッカー)に対応しており、異能の正体へ近づくほど舞台が狭くなる特徴があった。
以下、〇〇編ごとの概要を示す。
あらすじ(第1編〜第4編)[編集]
第1編『余白索引の少年』では、主人公・透川ユイ(とがわ ゆい)が、クラスの掲示板に貼られた“存在しないプリント”を見つける。プリントにはMIUANDMAIという文字列だけが並び、翌朝には授業内容が数分前倒しで始まるという不具合が発生する。
第2編『改札の向こうの音』では、駅の自動改札が「誕生日の曜日」を誤って読み取り、住民票の記録と連動してクラスの席替えが巻き戻される。ユイは“巻き戻しは怒りのエネルギーで起きる”と気づき、感情を制御する練習を始めるが、本人の思考だけが静かになっていくという逆効果に悩まされる。
第3編『街路灯は覚えている』では、夜間の停電復旧の瞬間にだけ、街路灯の点灯順が異様に規則化される。ユイは点灯順を暗記し、友人・真白マイ(ましろ まい)が口にする“MIUANDMAI”が合図ではなく鍵であることを知る。なお、この編の終盤で初めて「記憶は配線を通って増殖する」という示唆がなされる[6]。
第4編『配送ロッカーの海』では、配送ロッカーに入れたはずの荷物が、別の曜日に“別の中身”として届く。ユイとマイは、ロッカー番号の算術が“怒りの平方”と関係していることを突き止めるが、編集部は後に「この計算式は読者アンケートの自由記述から逆算して入れた」と回想記事で明かしたという[7]。
あらすじ(第5編〜第8編)[編集]
第5編『ゼロ時の保健室』では、保健室の体温計が“未来の体温”を読み取るようになる。測定値は日常的な体調ではなく、誰がどの記憶を他人に渡そうとしているかを示しているとされる。
第6編『MIUの鏡、MAIの鍵』では、ユイが過去の自分に宛てた手紙を見つけるが、差出人欄が“本人ではない”状態で印字されている。この矛盾が、作中で初めて「文字は責任を免れない」というテーマとして前面化する。
第7編『夜間工事の告白』では、都市インフラの夜間工事が異能の発動条件になっていることが判明する。真白マイは、工事関係者の名札に刻まれた漢字の偏(かたよ)から、変化の起点が“怒りではなく罪悪感”であると推測する。
第8編『終電の余白』では、物語の中心が駅から各家庭の“余白”(日記欄、落書き、空欄)へ移る。ユイは自分のノートの空白が増えていることに気づくが、その空白を埋めるほど現実が薄くなっていく。
登場人物[編集]
透川ユイは、記憶の不具合に巻き込まれる高校生である。自分の感情が原因とされる現象に対し、当初は“気のせい”と片づけようとするが、第2編の席替え巻き戻しで現実性が固まる。
真白マイは、MIUANDMAIを口にすることで変化を“同期させる”役割を担う。人当たりが良い一方、沈黙の時間が異様に長いと周囲から評され、作者は「沈黙はページの厚み」とインタビューで述べたとされる[8]。
ほか、駅員ではないのに改札の前で名乗りを上げる男、夜間工事車両の無線を聞き分ける少女、そして余白を管理するらしい図書館司書が登場する。とくに図書館司書は第9編以降で“出典を持たない注釈”を配布し始めるため、読者が一斉に読解姿勢を変える契機となった。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、記憶は個人の脳だけでなく、都市の配線と“余白”に蓄積されるとされる。このため、同じ出来事でも書き残し方によって結果が変わる。
作中で頻出する概念としてとがある。MIUは“反射された記憶”、MAIは“未反射の記憶”として説明されるが、辞書のように厳密な定義は一貫して提示されない。むしろ編集部の企画で、読者が自分の解釈を書き込み、次話で“採用された誤読”が救われるという趣向があったとされる[9]。
また、余白索引方式に関連してという用語が登場する。余白密度は1ページあたりの未使用面積の割合で算出されるとされ、単行本第6巻では平均が0.183(小数点以下3桁まで明記)と記載された[10]。一見ふざけた数字だが、物語の転換がちょうどその比率付近で発生したため、読者が“偶然か仕様か”と熱く議論することになった。
書誌情報[編集]
『MIUANDMAI』は星窓出版のレーベルより刊行された。掲載誌は『』であり、全16巻・全128話で完結したとされる。
単行本化にあたっては、各巻末に“解釈候補”として1ページの余白注釈が追加される仕様が採られた。第3巻では、編集部が「読者の誤読を統計処理した結果、最も多い解釈が最も救われる」として、意図的に紛らわしいコマ割りを残したと説明した[11]。なお、累計発行部数は最終巻刊行時点で540万部を突破したと報告されている。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化は第10巻あたりで企画が持ち上がり、に制作発表が行われた。制作は架空制作会社とされ、監督はであると報道された。なお、主人公2人の声はオーディションで“沈黙の演技”が評価されて決まったとされる[12]。
アニメは全26話で構成され、各話のラストに必ず「次話の余白」が表示される形式を採用した。これによりSNSでは、誰が最初に余白注釈を“辞書的に”読んだかが競われる現象が起きたとされ、社会現象となったとも言及されている。
さらにメディアミックスとして、公式ファンブック『MIUANDMAI 余白索引帳』と、スマートフォン向け“配線マップ”アプリが展開された。アプリでは、都市の特定地点(実在地名を模した抽象座標)に近づくと“文字の意味が変わる”表示が出るとして話題になった。
反響・評価[編集]
連載中から、読者の間では「読解力ではなくメモ癖が問われる作品」と評されることが多かった。特に、第7編の夜間工事シーンはコマ内の沈黙の面積が多いとして、漫画好きだけでなく美術系大学の課題として取り上げられたという。
一方で、設定の密度が高すぎるという批判もあった。作者は単行本の帯コメントで「答えは1つではない。余白は逃げ場だ」と述べたとされるが、結果として“自分の解釈が正しいと証明したい”読者ほど脱落しやすい構造になったと指摘されている[13]。
にもかかわらず、テレビアニメ放送後は再評価が進み、特定の“誤読”が視聴者投稿で裏付けられた回があり、その回は平均視聴率ではなく、コメント速度(投稿が最速だった秒数)で最優秀回として表彰されたという[14]。この評価軸の独特さが、作風と合っていたため支持を得た。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島 みお「『MIUANDMAI』余白索引の設計思想」『電脳ハートビート 編集会議録』第12号, 星窓出版, 2017, pp. 3-19.
- ^ 星窓出版『星窓コミックス 売上統計 抄』Vol.8, 星窓出版, 2021, pp. 44-52.
- ^ 和久津 玲「沈黙の演出技法と“余白の温度”」『アニメーション演出学会誌』第5巻第2号, 夜風書房, 2020, pp. 77-95.
- ^ 山崎ユイナ「改札の向こうの記憶改変モデル」『都市インフラ文学研究』Vol.14, 霞界大学出版局, 2018, pp. 101-130.
- ^ Marina T. Kessler「On Misreadings as Narrative Recovery in Japanese Manga」『Journal of Panel Semiotics』Vol.9 No.1, University Press of Hoshimado, 2022, pp. 55-74.
- ^ 透川ユイ(取材記事)「私の手帳はなぜ空白が増えるのか」『若葉通信』第33号, 若葉社, 2019, pp. 12-27.
- ^ 小野寺ハル「余白密度 0.183の意味論」『図書館注釈論叢』第2巻第4号, 文字札学館, 2020, pp. 201-224.
- ^ Miu-and-Mai Working Group『都市伝説ミステリのメディアミックス効果測定』Vol.3, Signal & Ink Lab, 2021, pp. 1-31.
- ^ 佐倉レン「MIU/MAIの音韻と記憶同期」『音韻心理研究』第7巻第1号, 鳥居学術出版社, 2019, pp. 9-38.
- ^ 『MIUANDMAI 余白索引帳』星窓出版, 2020, pp. 88-113.
外部リンク
- 星窓出版公式MIUANDMAI特設ページ
- 電脳ハートビート編集部アーカイブ
- 夜風フィルム公式アニメサイト
- 余白索引ファンコミュニティ
- 都市インフラ×物語研究会