P-MODEL(1985年)
| 名称 | P-MODEL(1985年) |
|---|---|
| 読み | ピー・モデル せんきゅうひゃくはちじゅうごねん |
| 分類 | ネット文化・和製英語・複製文芸 |
| 成立時期 | 1985年頃 |
| 発祥地 | 東京都千代田区神田および大阪市北区の同人頒布圏 |
| 主な媒体 | BBS、テレホンカード裏面、フロッピーディスク頒布物 |
| 関連人物 | 平沢進を名乗る匿名投稿者、渡辺精一郎、M. Thornton |
| 特徴 | 反復、変奏、誤記の保存 |
| 派生語 | P-ヤー、1985化、モデル返し |
P-MODEL(1985年)(ピー・モデル、いわゆるP-MODEL1985)は、1985年前後のとを起点に成立した和製英語のサブカル用語であり、特定の投稿様式を指す。これを反復的に書き込む人をP-ヤーと呼ぶ。
概要[編集]
P-MODEL(1985年)とは、にの大学サークル掲示板群で観測された、短文を反復しながら微妙に改変する書式を指す。和製英語として成立したとされ、のちに上で再解釈された[1]。
この用語を用いる人はP-ヤーと呼ばれ、主に文章の一部を“モデル化”して保存し、再投稿時に末尾だけを差し替える作法を好むとされる。現在ではの一種として扱われることが多いが、明確な定義は確立されておらず、愛好者のあいだでも「1985年を参照するのか、1985年型の文体を指すのか」で解釈が分かれる[2]。
また、同語はという既存の音楽ユニット名としばしば混同されるが、嘘ペディア界隈ではむしろこの混同そのものが文化の核とされている。すなわち、実在の固有名を“年号つきの投稿規格”へ誤読したことから、半ば自動的にサブカル概念へ転化したのである。
定義[編集]
P-MODEL(1985年)は、初出の文字列を固定しつつ、括弧内の年号や記号を操作して意味をずらす投稿技法を指す。単なるコピペではなく、参照元の文脈を残したまま別の話題に転用する点に特徴がある。
この手法は、同一文面を何度も頒布する文化と、掲示板での応答を短文化する文化の接触から生まれたとされる。特に“1985年”が付される場合、投稿者は自らの文章を「時代の保存庫」として扱う傾向があり、誤字や句読点まで意図的に残すことが美徳とされたという[3]。
なお、P-ヤーの間では「完全一致よりも、2文字だけ異なる状態が最も価値を持つ」とする説が強い。一方で、過度な変奏は単なる改変と見なされるため、投稿の差分は概ね7〜13文字以内に収めるのが慣例であったと推定されている。
歴史[編集]
起源[編集]
起源については、春にの喫茶店で行われた深夜のメモ交換会に求める説が有力である。そこでという通信工学系の学生が、レポートの見出しに誤って“P-MODEL”と打ち込み、その下に年号を付して保存したところ、周囲がこれを「投稿テンプレート」と解釈したという[4]。
同年夏には北区の同人頒布会でも同様の記法が確認され、印字のかすれ具合まで含めて複製する慣習が広まったとされる。初期のP-MODEL(1985年)は、いわば“文章の版画”であり、1枚の原稿を平均4.7回転写してから頒布するのが標準だったという記録が残る。
年代別の発展[編集]
頃には、ワープロ専用機の普及により、P-MODEL(1985年)は「同じ文を少しだけ変える遊び」として若年層に浸透した。とくに周辺の部室ネットワークでは、1つの掲示板に対し最大18件の派生版が並ぶ現象が報告され、編集者のあいだでは“モデル渋滞”と呼ばれた。
からにかけては、パソコン通信の掲示板群で定型句の自動生成が始まり、P-ヤーたちは文章の先頭3語だけを残して全体を差し替える“前頭固定”を編み出した。これにより、読み手は同じ話題を追っているつもりでも、実際には毎回別の論旨に誘導されるようになった。なお、この時期の投稿は1日あたり平均62.3件に達したとする記録があるが、集計方法には要出典の指摘がある。
以降はからへの頒布媒体移行が起こり、テキストだけでなく改行位置や余白まで含めて保存する“空白の継承”が定着した。ここでP-MODEL(1985年)は単なる文体ではなく、差分管理を伴う一種のネット作法として再定義されたのである。
インターネット普及後[編集]
インターネットの発達に伴い、P-MODEL(1985年)はやへ拡散した。投稿者は画像よりもテキスト差分を重視し、見出しだけを毎回変える“見出し回転”が流行した[5]。
2000年代中頃には、海外のミーム文化と接触したことで、本文をそのままに脚注だけを過剰に増やす“注釈肥大”が発生した。これにより、ある投稿は本文8行に対して脚注が143行に達し、閲覧者が本文を読まずに注釈のみを追う事態が多発したとされる。
さらに時代には、140字制限のなかで1985年の空気を再現する試みが行われ、投稿者は句読点の位置を1985年のタイプライター風に再配置した。これが「1985化」と呼ばれるようになり、現在でも一部の愛好者は投稿前にタイムスタンプを昭和へ換算してから書き込むという。
特性・分類[編集]
P-MODEL(1985年)には、主に三つの型があるとされる。第一は、語尾だけを変える「終止変奏型」、第二は、年号の前後を入れ替える「括弧転位型」、第三は、固有名詞を架空の研究所名に置換する「官庁化型」である。
愛好者の間では、最も完成度が高いのは“意味が通るのに元文より少しだけ気持ち悪い”状態とされる。たとえばをに置換し、しかも本文内の助詞だけは正しく残すことで、読者に妙な既視感を与えるのである。
また、分類上はに近いが、単純な揶揄ではなく、元文の格調をむしろ強めてしまう点が異なる。このため一部の研究者は、P-MODEL(1985年)を「笑わせるための改変」ではなく「真面目さを過剰適用した結果の逸脱」と位置付けている。
日本におけるP-MODEL(1985年)[編集]
日本では、の高校文化祭実行委員会やの学生放送局を中心に流行したとされる。とくに文化祭の告知文にP-MODEL(1985年)を取り入れることで、同じ案内文が学年ごとに微妙に異なる“世代差の可視化”が可能になった。
1990年代のでは、喫茶店の伝票裏や駅前の掲示板に短い変奏文が貼られることがあり、店主がそれを剥がさずに残した例も確認されている。理由は「削ると版が終わるから」と説明されたというが、当時の店主が本当にそう述べたかは定かではない。
2000年代以降は以前の前史として再評価され、コメント欄の定型反復文化と接続して論じられるようになった。なお、一部のP-ヤーはの文具売場で売られていた方眼ノートを“1985年対応ノート”と呼んで愛用したとされる。
世界各国での展開[編集]
海外では、の大学フォーラムで“P-Modeling”として紹介され、改変よりも署名の固定に重点を置く方向へ変質した。特にの学生コミュニティでは、投稿ごとに著者名だけを3世代継承する“祖先署名制”が採用されたという。
では、皮肉文化と結びつき、本文よりも句読点の礼儀作法が重視された。ロンドンの一部の掲示板では、1985年相当の文体を再現するために、あえて半角英数の割合を63%に調整する手法が知られていた。
とでは、短文メッセージ文化と融合して急速に広まり、P-MODEL(1985年)は“改変を見抜く遊び”として若者層に受容された。もっとも、各国で年号の解釈がずれたため、1985年を西暦ではなく“第1985版”と理解するグループも存在した。
P-MODEL(1985年)を取り巻く問題[編集]
最大の問題はとの境界である。元文をどこまで残せば別作品で、どこからが複製になるのかについては、編集者や法学者のあいだで意見が分かれてきた。とくに1980年代後半には、同一文面が7紙の同人誌に同時掲載され、誰が初出かを巡って半年にわたる編集合戦が起きた。
また、表現規制との関係も無視できない。過度に1985年らしさを演出するために、当時の広告文体や官庁文体をそのまま再現した結果、公的通知と見分けがつかなくなった事例がある。このため、いくつかの自治体では“年号付き改変文”に対する注意喚起を行ったが、かえってP-ヤーの創作意欲を刺激したとも言われる。
なお、近年は生成AIによる自動変奏が問題視されている。1秒あたり平均28案を出力するモデルが普及したことで、投稿者本人がどの版を頒布したのか分からなくなる現象が起こり、いわゆる“作者の1985年問題”として議論されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『掲示板文体の保存技術――P-MODEL(1985年)の成立』情報文化出版, 1998.
- ^ M. A. Thornton, "The 1985 Model and Its Afterlives," Journal of Net Folklore, Vol. 12, No. 3, 2004, pp. 41-67.
- ^ 佐久間理恵『差分を愛する人々――反復投稿の民俗誌』青木書店, 2007.
- ^ Harold P. Wexler, "Bracketed Timecodes in Japanese Subculture," Media Archeology Review, Vol. 8, No. 1, 2011, pp. 9-29.
- ^ 中村航平『和製英語の生成と変異』現代言語社, 2012.
- ^ K. Sato, "Fanzine-to-Forum Transmission in Urban Japan," Asian Cultural Studies, Vol. 5, No. 4, 2015, pp. 118-146.
- ^ 『P-MODEL(1985年)運用細則 第3版』東京サブカル資料室, 2001.
- ^ 吉田澄子『1985年化の実際――句読点と余白の政治学』みすず文化叢書, 2019.
- ^ N. R. Bell, "The Ancestor Signature System," Proceedings of the Society for Digital Humanities, Vol. 14, No. 2, 2020, pp. 201-219.
- ^ 『図説 変奏する掲示板文化――P-MODEL(1985年)入門』港北学術出版社, 2023.
外部リンク
- 日本P-MODEL研究会
- 1985化アーカイブセンター
- 差分文学資料室
- 掲示板文化年表データベース
- P-ヤー連絡網