TOIESIOIの地球とトランポリンシューティング
| 名称 | TOIESIOIの地球とトランポリンシューティング |
|---|---|
| 別名 | 地球揺動式トランポリン射撃、TOIESIOI法 |
| 分類 | 擬似射撃競技・天体運動教材 |
| 発祥 | 1978年頃 |
| 考案者 | 東井清雄(とうい きよお)とされる |
| 主な実施地域 | 東京都、神奈川県、静岡県の一部校 |
| 使用器具 | 補助枠付きトランポリン、偏芯標的板、鉛直補正銃 |
| 競技時間 | 標準8分30秒 |
| 採点方式 | 命中点、反動点、地球同期点の合算 |
| 備考 | 1984年の文部省内試行で一度だけ「準体育」に分類された |
TOIESIOIの地球とトランポリンシューティングは、の自転揺らぎを利用して上で行う擬似射撃競技、またはそれを中心に構築された教育装置である。にの青少年科学振興会館で試験運用が始まったとされ、のちに一部の学校体育と天文教育に影響を与えた[1]。
概要[編集]
TOIESIOIの地球とトランポリンシューティングは、直径5.1メートル前後の補助枠付きの上で、地球の自転による微細な遠心変化を身体感覚として再現しつつ、傾斜した標的に模擬射撃を行う装置・競技の総称である。実際には銃火器ではなく、吸着弾または発泡体弾を用いるのが一般的であるが、初期には木製の「観測銃」を用いたため、学校関係者の一部から強い懸念が示された[2]。
この方式は、系の外郭団体だったとされるの実地記録により普及したと伝えられる。一方で、名称中のが何を意味するかについては諸説あり、東井式・地球同期・射撃教育の頭字語とする説が有力であるが、のちに関係者が面白半分で語を足した結果、定義が半ば神話化したとされる。
成立の経緯[編集]
起源は後半、藤沢市の海洋気象観測補助施設で行われた「跳躍時の方位感覚保持訓練」に求められる。担当していたは、風速計の較正実験中に児童用トランポリンへ誤って標的板を取り付けたところ、参加者が跳躍の頂点でのみ狙点を読みやすいことを発見したとされる[3]。
その後、東井はの公開講座に類似の装置を持ち込み、地球の回転と身体の慣性を同時に教える教材として整理した。ここで競技要素が強まった理由については、講座の司会を務めた元射撃教官の助言があったとも、学習効果を高めるために採点表が過度に細分化されたためとも言われる。なお、この時点で既に「跳ぶたびに少しずつ標的がずれる」という設定が導入されていたが、物理的根拠は当初から曖昧であった。
競技の仕組み[編集]
装置構成[編集]
標準装置は、合金の四脚枠、反発係数の異なる2層マット、偏芯支柱、そして方位を示す赤青二重のリング標的から成る。正式規格ではマット中央の沈み込みが22ミリメートル以上であることが求められ、これを満たさない場合は「地球の機嫌が悪い」として試技が無効になったという記録がある。
採点と勝敗[編集]
採点は5射2跳を1セットとし、命中点80点、跳躍の滞空安定点15点、地球同期点5点の合計100点満点で競われる。地球同期点は、選手の着地角が前試技との差0.7度以内に収まると加点される仕組みで、1982年の関東大会ではこの項目だけで優勝者が入れ替わったため、以後「実力より機嫌」と揶揄された。
安全規定[編集]
装置の危険性は比較的高く、の東京都立青井工業高校で起きた「逆回転跳躍事件」以降、連続跳躍は7回まで、標的の再装填は教員のみが行うことになった。もっとも、同校の記録には「体育館の時計だけが先に疲れた」と記されており、当時の運用基準が現場任せであったことをうかがわせる。
普及と学校教育への導入[編集]
前半には、の研究指定校制度の隙間を縫う形で、東京都内の区立小学校12校と県立高校4校に試験導入された。特にのある中学校では、理科の「地球の自転」単元と体育の器械運動が同一時間割に統合され、保護者から「妙に忙しい理科」と呼ばれた。
普及の決め手は、教材としての説明力と、体育館の床に残る跳躍痕が見た目に派手だった点にあるとされる。なお、当時の指導要領案には「生徒の理解が進むほど標的が近く見える」との記述があったが、これは測定値ではなく感想として扱われた[4]。
競技団体と大会[編集]
全国TOIESIOI協会[編集]
、に「全国TOIESIOI協会」が設立されたとされる。事務局は最初、喫茶店の2階と倉庫を兼ねており、会員名簿には理科教師、射撃愛好家、大学の体育学研究者に加えて、元プラネタリウム技師が多く含まれていた。
初の全国大会[編集]
初の全国大会はに沼津市の市民体育館で開催された。参加は18団体・延べ146人で、優勝者の記録が「3射中2射命中、ただし着地が美しかったため満場一致で満点」とされていることから、審判基準がかなり柔軟だったことが分かる。
国際交流[編集]
にはので紹介競技が行われた。現地の参加者はトランポリンの反発が強すぎるとして標的の高さを15センチ上げたが、その結果、命中率は下がった一方で観客の歓声が増えたため、「競技としては失敗、演芸としては成功」と報告された。
社会的影響[編集]
TOIESIOIの地球とトランポリンシューティングは、理科教育と体育の境界を曖昧にした事例としてしばしば言及される。とりわけの学習雑誌では、地球の自転を「机上の概念から膝の高さまで下ろした教材」と評され、の一部職員は「説明しにくいが、やってみると妙に分かる」と記している。
また、地域振興にも使われ、の観光パンフレットでは「海鮮と火山と回転する地球を一度に体感」と併記された。もっとも、実際には宿泊客の半数以上が翌朝ふくらはぎの痛みを訴え、温泉地ではストレッチ案内が増えたため、健康産業との相性が良かったとも悪かったとも評価が分かれている。
批判と論争[編集]
批判の主眼は、教育効果に対して装置が過剰に複雑であること、そして名称が長すぎて掲示板に収まらないことであった。とくにの地方版では「地球を教えるのに、なぜ跳びながら撃つのか」との投書が掲載され、これに対し協会側は「跳躍の頂点でしか地球は理解できない」と反論したが、説明としてはほぼ成立していない。
さらに、TOIESIOIの略称が後年になって複数の意味に分裂し、東井本人のメモにさえ「Trans-Orientation Integrated Educational Shooting Instrument」と「Toy-ish Orbit Impact System」の両方が併記されていたことから、由来の真正性に疑義が持たれた。もっとも、関係者はこれを「体系化の過程で意味が増殖した」と説明している。
衰退と再評価[編集]
後半、学校体育の安全管理が厳格化したことで、実施校は急速に減少した。加えて、の普及により「跳ぶ必要のない仮想射撃」に人気が移り、1998年時点で公的な活動拠点は全国で6か所にまで縮小したとされる。
しかし以降、レトロ科学教材ブームの一環として、系の企画展や大学の教育史展示で再評価が進んだ。特に、当時の手書き記録に残る「児童が地球の回転を“骨で理解した”」という表現が、半ば比喩、半ば本音として注目を集めた。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 東井清雄『地球同期跳躍法の試み』青潮書房, 1982.
- ^ 青少年運動観測研究会編『TOIESIOI指導要領案集』都心教育出版, 1984.
- ^ Margaret L. Thornton, “Rotational Perception in Bounce-Based Pedagogy,” Journal of Applied Toy Sciences, Vol. 12, No. 3, 1987, pp. 44-61.
- ^ 佐伯隆一『学校体育における準射撃教材の研究』風見学術社, 1989.
- ^ Hiroshi Endo and Peter K. Vale, “Earth Sync Marksmanship and the Problem of Vertical Trust,” Proceedings of the 4th International Symposium on Kinetic Education, 1992, pp. 201-219.
- ^ 全国TOIESIOI協会『第1回全国大会記録集』協会事務局, 1984.
- ^ 小松原由紀『体育館の中の天文学』北園出版社, 1995.
- ^ Theodore J. Mills, “Trampoline Ballistics for Non-Ballistic Curriculum,” Educational Mechanics Review, Vol. 7, No. 1, 1991, pp. 9-28.
- ^ 市川千春『跳躍と地球観測の相関に関する一考察』東都教育研究所紀要, 第8巻第2号, 1988, pp. 13-37.
- ^ 東井清雄・監修『TOIESIOI完全図解――地球は跳んでいる』銀河工房, 1990.
- ^ 朝倉真理子『回転する教材の倫理』みずほ文芸学術叢書, 2001.
- ^ National Institute of Recreational Kinetics, “On the Apparent Motion of Targets during Vertical Oscillation,” Bulletin of Recreational Physics, Vol. 19, No. 4, 2003, pp. 77-90.
外部リンク
- 全国TOIESIOI協会アーカイブ
- 青少年運動観測研究会デジタル資料館
- 東井清雄記念教育器具博物館
- 日本回転教材学会年報
- レトロ体育装置保存ネットワーク