DOSS
| 正式名称 | Distributed Office Storage Standard |
|---|---|
| 略称 | DOSS |
| 発祥 | 日本・東京都千代田区 |
| 提唱年 | 1987年 |
| 提唱機関 | 通商産業省 机上業務合理化推進班 |
| 用途 | 書類保管、携行事務、仮設窓口運用 |
| 主要媒体 | 段ボール、磁気カード、A4クリアファイル |
| 標準化文書 | DOSS-1.4 規格集 |
| 流行地域 | 関東臨海部、名古屋港、北九州の一部 |
| 関連事故 | 1993年の「湾岸棚卸し停止事件」 |
DOSS(どす、英: DOSS)は、とを統合するために考案された、発祥の業務補助規格である。もともとは末期にの外郭研究班が開発したとされ、のちにやへ広く流布した[1]。
概要[編集]
DOSSは、書類・備品・届出書を一つの可搬単位として扱うための業務規格である。形式上は物流規格に分類されるが、実態は・・の境界を曖昧にするための運用哲学であった。
名称は後年の英語化によって定着したが、初期の文献では「動的書架運用支援」と解釈されることもあった。なお、現場では「段ボールの中に全部入れておけばだいたい何とかなる方式」として知られ、の一部では半ば慣用句化していた[2]。
歴史[編集]
成立の背景[編集]
DOSSの原型は、ので行われた「仮設行政端末展示会」にさかのぼるとされる。展示を視察したの調査官、が、紙資料の山と可搬型コピー機の組み合わせに強い可能性を見いだしたのが契機であった。
当時、自治体では住民票や税務書類の保管に木製キャビネットが用いられていたが、台風や地盤沈下でしばしば可搬性が問題となった。そのためDOSSは「棚ではなく箱で管理する」という逆転の発想で設計され、には試験運用版がの臨海庁舎に導入された。
普及期[編集]
普及を決定づけたのは、の税関仮設窓口で発生した「書類棚ごと潮位が上がる事故」である。この際、現場責任者のがDOSS準拠の防湿段ボールを用いて一夜で再編成を行い、翌朝には通常業務を再開したと報告されている[3]。
この事例は『港湾事務処理月報』第12巻第4号に掲載され、以後、、、さらには系の出張相談窓口にも採用が広がった。もっとも、導入が進んだ理由は合理性だけではなく、「見た目がいかにも管理しているように見える」ことも大きかったとされる。
規格化と分裂[編集]
、の周辺でDOSSを正式規格化しようとする動きが起こったが、ここで派閥争いが生じた。保守派はA4用紙基準を維持すべきだと主張し、革新派はB5混在運用を認めるべきだと反発したのである。
結果としてDOSSは、①書架型、②箱型、③折りたたみ机型の三系統に分かれ、現場ごとに独自解釈が増殖した。特にの下水道関連部署で採用された「湿式DOSS」は、紙を防水袋に入れたうえでさらに紙の注意書きを貼るという二重管理が特徴で、後世の研究者からは「行政的ミニマリズムの到達点」と評されている[4]。
構造と運用[編集]
DOSSは通常、基幹箱、補助箱、暫定箱の三層で構成される。基幹箱には決裁文書、補助箱には印鑑、暫定箱には「後で要るかもしれない紙」が入れられる仕組みで、紙が紙を分類するような自己増殖性があると指摘されている。
運用上は、各箱に固有の符号を振り、棚に置く代わりに床面のグリッド上へ配置するのが基本であった。これにより、倉庫の床がそのまま目録になるという利点があった一方、雨天時には目録が流動化するという欠点もあった。1980年代後半の技術誌には、DOSS導入部署では平均して月間の「配置修正」が必要だったとする統計が掲載されている[5]。
また、DOSSはとの相性が極めて悪かった。複写枚数が増えるほど箱のサイズも増え、最終的に人間が通れなくなるためである。この矛盾を解消するため、には「人が通るなら資料は減りすぎている」という運用指針が追加された。
社会的影響[編集]
DOSSは、期の事務需要増大に対する半ば場当たり的な回答として受け入れられたが、結果的には「可視化される混沌」を美徳として定着させた。自治体職員のあいだでは、DOSSの整備状況が部署の優秀さを測る指標のように扱われることもあり、年度末の監査前だけ箱の角を揃える「角出し」作業が慣行化した。
一方で、DOSSは非正規雇用の事務補助者にも影響を与えた。仮設窓口での採用が容易だったため、短期契約の職員でも箱の位置を覚えるだけで一定の権限を持てたのである。このため、のある出先機関では「DOSSを触れない者は書類を語る資格がない」とまで言われたという[要出典]。
さらに、民間では引っ越し業者や展示会運営会社がDOSSを模倣し、受付・備品・名刺を一体化した「営業箱」を導入した。これがのちのにおける「可搬型オフィス」概念の基礎になったとする説がある。
批判と論争[編集]
DOSSには当初から批判も多かった。最大の論点は、箱単位での管理が責任の所在を曖昧にするという点である。監査担当者は、書類の所在が「第4箱の下段、やや左寄り」などと表現されることに激怒したと伝えられている。
また、の「湾岸棚卸し停止事件」では、倉庫内のDOSS箱がすべて同じ規格色であったため、緊急時に重要文書と不要チラシの区別がつかなくなった。これに対しDOSS推進側は、「区別できないなら、それはまだ管理対象ではない」と反論し、かえって議論を深めた。
後年には、DOSSをめぐる思想対立が「整理整頓は美徳か、運用の言い訳か」という文化論に発展した。特に内の一部区役所では、DOSSの段ボールを美しく積む競技が昼休みに行われ、これが「公務員フラジャイル・アート」と呼ばれたという。
現在の扱い[編集]
21世紀に入ると、DOSSは正式な規格としてよりも、レガシーな現場用語として残存するようになった。現行のが普及した現在でも、災害時の一時退避や年度末の仮置き運用では、DOSS的発想が再評価されている。
にはの委託研究で、災害備蓄倉庫における「半DOSS化」が提案された。これは、平時はデジタル台帳、緊急時は紙箱へ即時退避する方式で、研究報告書では「人類が最終的に段ボールへ回帰することは避けがたい」と結論づけられている[6]。
なお、現在でもの一部物流会社では、DOSSに準じる棚卸し作業が慣行として残っており、倉庫長が新入社員に「箱は嘘をつかないが、箱の数はだいたい嘘をつく」と教えることがある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 斎藤真一郎『仮設行政端末と箱型記録の研究』工業技術出版社, 1988.
- ^ 水野久美子「港湾窓口におけるDOSS運用の実際」『港湾事務処理月報』Vol.12, No.4, 1990, pp. 41-58.
- ^ 渡辺精一郎「可搬型書架の規格化に関する一考察」『日本事務機械学会誌』第34巻第2号, 1992, pp. 77-89.
- ^ Margaret A. Thornton, "Box-Oriented Governance in Late Industrial Japan," Journal of Administrative Logistics, Vol. 18, No. 3, 1995, pp. 201-224.
- ^ 佐藤利也『段ボールと官僚制: DOSSの文化史』みすず箱房, 1997.
- ^ K. Iwamoto, "Moisture-Resistant Temporary Records and the DOSS Standard," Asian Journal of Public Storage, Vol. 7, No. 1, 2001, pp. 9-26.
- ^ 高橋洋介「平成期自治体における角出し作業の儀礼化」『都市実務評論』第9巻第6号, 2004, pp. 113-130.
- ^ 国土交通省政策研究所『災害備蓄倉庫の半DOSS化に関する調査報告書』2018.
- ^ Helen K. Morley, "The A4-B5 Schism and Its Aftermath," Records and Containers Review, Vol. 11, No. 2, 2002, pp. 55-71.
- ^ 『DOSS-1.4 規格集』通商産業省 机上業務合理化推進班, 1991.
外部リンク
- DOSS資料館
- 港湾事務標準化フォーラム
- 仮設行政アーカイブ
- 段ボール運用研究会
- 自治体可搬業務協議会